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中央・城北地区 株式会社阿部兄弟建築事務所

株式会社阿部兄弟建築事務所 人材こそ最大の財産だから社員の生活スタイルに合った働き方を実践する

株式会社阿部兄弟建築事務所

人材こそ最大の財産だから社員の生活スタイルに合った働き方を実践する

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株式会社阿部兄弟建築事務所

人材こそ最大の財産だから社員の生活スタイルに合った働き方を実践する

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多様な働き方ストーリー
人材こそ最大の財産だから社員の生活スタイルに合った働き方を実践する

 建築物の設計という専門性の高い事業を手掛ける阿部兄弟建築事務所。人材こそが会社の最大の財産という企業理念を掲げ、在宅勤務、短日数労働、短時間労働など、社員のライフスタイルや価値観に合った働き方の実現に向けた大胆な制度を導入し、社員をサポートする。

建築事務所にとって最大の財産である「人材」の育成に力を注ぐ

 社員20数名の阿部兄弟建築事務所が手掛ける設計は多岐にわたり、専門知識を要する工場をはじめ、研究所、商業施設、駅舎、物流センター、オフィスビルなど幅広い。中小の建築設計事務所の場合、体力的に意匠・構造のどちらか一方だけを請け負うのが一般的だが、阿部兄弟建築事務所は、双方を請け負える盤石な体制を敷き、総合建築設計事務所として事業を展開する。窓口の一本化は煩雑な業務負担の軽減だけでなく、意思伝達もスムーズに行われるなど、顧客のメリットも少なくなく、事実、同社の取引先には誰もが知る有名企業がズラリと並ぶ。
「弊社は、創業者がプラント会社における業務経験を活かして1968年に創業した会社です。それだけに当初はプラント関係を中心にしていましたが、半世紀にわたる歴史を重ねるに従って、手がける分野は徐々に広がり、今では総合建築設計事務所として活動しております」
 と同社のプロフィールを語るのは荒井豊人代表取締役社長。プラント設計という専門分野の枠から飛び出し、活躍分野を広げてこれたのは、クオリティの高い設計力をはじめ、取引先のニーズを的確にくみ取った提案力を発揮し、顧客の信頼を勝ち取ってきた社員の努力があってのことと断言する。無論、それだけの人材育成に向け、それなりの投資もしてきた。とりわけ力を注いできたのが、社員一人ひとりの個性や考え方を尊重した労働環境作りである。これは創業以来の取り組みである。

body1-1.jpg「人材こそが建築事務所の最大の財産」と言う荒井社長

在宅勤務や短日数労働などの制度を導入して社員を支援

 中でも際立つシステムが、10数年前から導入された在宅勤務。とくに建築士の場合は、CADを活用して設計をするという仕事のためにパソコンがあれば、どこでも十分に仕事ができる。そんな職種特性もあって在宅勤務がしやすいというのも導入を後押しした。以来、在宅勤務は阿部兄弟建築事務所のポピュラーな働き方のひとつとして定着している。
実は在宅勤務は、これからの社会で不可欠な働き方になる可能性を秘めている。一般的に男社会になりがちな建築業界にあって同社は女性社員が多い。女性社員が多いと必然的に出産・育児というライフイベントと仕事を並行して行うことになる。しかし、それを実現するのは大変な労力を伴い、大きな社会問題にもなっている。もし、女性が子育てで職場からの離脱を余儀なくされるのは、本人や会社ばかりか、社会的損失にもなると荒井社長は言う。
さらに言えば、団塊の世代が高齢期を迎える近い将来には、介護問題が一層深刻な問題としてクローズアップされるに違いない。そこから手立てを考えていたのでは遅すぎる。同社はそうした時代の流れを看破し、在宅勤務導入を模索したのだと荒井社長は胸を張る。事実、阿部兄弟建築事務所では介護のために在宅勤務を利用した役員もいる。
その他にも同社では柔軟な働き方を可能にする各種制度がある。短時間労働制度や短日数労働制度などだ。短時間労働制度では社員と出勤・退勤時間を相談しながら決めているが、在宅勤務と併用するケースもあるという。一方の短日数労働制度は、通常週休2日制のところを週休3.5日など、社員のライフスタイルに合わせて休日を取れる。この週休3.5日制度を利用してボランティア活動に打ち込む社員もいる。
「社員にいい仕事をしてもらうには、一人ひとりが充実した生活を送ることが大前提です。従ってこれだけ制度を設ければ十分というのはありません。社員の声を拾いながらオーダーメイドで働きやすい環境を整えていきたいですね」
そう語る荒井社長は、「社員一人ひとりの生活や人生に対する考え方を把握するのに中小企業は適している」とも言う。阿部兄弟建築事務所のこうした多様な勤務形態ができる制度が評価を得て、東京都の「東京ワークライフバランス認定企業」にも選ばれている。

body2-1.jpg柔軟な働き方をできる職場は社員間のコミュニケーションも活発だ

在宅勤務で仕事と育児の両立を図る

 構造設計部の根岸裕紀さんは、出産・育児休暇を取った後、2015年4月から在宅勤務という働き方を選んだ。
「日中は保育園で預かっていただいていますが、風邪など病気を患ったときに傍にいたほうが安心ですから在宅勤務を選びました。実は私と同じように育児休暇後に在宅で働いていた先輩女性社員がいて、近くで見ていたので在宅勤務に対する不安はありませんでした。自然な感じで在宅勤務を選びましたね」
 根岸さんの場合、通勤で往復3時間かかってしまい、日々の保育園への送迎のことやお子さんが熱を出すなどの緊急時のことを想定すると、在宅勤務という選択がベストだったのだ。
 現在は週に1回だけ会社に打ち合わせに出社する以外は、メールや電話でコミュニケーションを取りながら自宅で仕事に当たっている。毎日の仕事の進捗状況などは日報として提出し、常に本社と情報共有を図っている。また、お子さんが小さいことから短時間労働制度も利用し、1日6.5時間勤務で働いている。
「何ら支障なく仕事を進めることができます。在宅勤務をした当初は、自宅で仕事するので、ONとOFFの気持ちの切り替えをするのに少し苦労をしましたが、今では慣れて上手にスイッチを切り替えています」
 そういう根岸さんの今後の目標は、「在宅勤務をしながら顧客の窓口となって案件を切り盛りすること」という。現在は一担当者として設計を行うことが仕事だが、出産前の通勤勤務時代と同じようなマネジメントまで含んだ業務に携わりたいという。その日をひとつのゴール地点として日々仕事に打ち込んでいる。

body3-1.jpg育児をしながら在宅勤務で働く根岸さん

各種イベントで社員同士の交流も活発な職場

 社員の時間を第一に据える同社であるが、第5土曜日を出勤日としている。この日にバーベキューやボーリング大会、博物館めぐりなど、趣向を凝らしたイベントを開催し、社員同士のコミュニケーション醸成を図っている。
「年1回は社員全員での旅行も行っています。毎年、幹事が旅行先をリストアップして社員の総意で決定、今年は北陸新幹線が開通したので能登に行く予定です。こうした各種イベントが社員の交流を深めてくれますし、社員数も少ないので職場はアットホームな雰囲気に包まれていますよ」
 と説明するのは構造設計部の村上清隆さん。社員同士の距離が近いことは仕事にも好影響を与えているようだ。例えば、先輩が後輩に仕事を教えたり、アドバイスする環境が整っているのはもちろん、構造と意匠の両部門があるので、同じ建築でも異なる視点から設計を学べるという点も大きい。さらに少数精鋭のために早くから責任ある仕事を任されるので成長が早いなど、視野が広い建築士を目指すには最適の環境といえるだろう。
 ほどよい規模と社員のライフスタイルに合わせた様々な働き方ができる阿部兄弟建築事務所。社員のモチベーションは自ずと高くなることはいうまでもないだろう。

body4-1.jpgアットホームな会社だから働きやすいという村上さん

編集部からのメッセージ

人材マネジメントの専門家である荒井社長

創業者の名前から付けられた阿部兄弟建築事務所。荒井社長は3代目だが社外から招へいされて社長に就任した経緯をもつ。ゼネコンで20数年間構造設計に携わった後に、大手人材情報会社で人材開発の仕事に就いた経験の持ち主。建築家としての腕と人材マネジメントの力量を買われての抜擢なのだが、そんな経歴の荒井社長に経営を任せるところにも、同社の人材育成や職場の環境づくりを重視する姿勢がうかがえる。
そんなトップ人事の効果とともに、在宅勤務への積極的な取り組みなどによって、社員の定着率は高い数値を維持している。荒井社長は在宅勤務を今後もさらに推し進めていくと抱負を語る。
「在宅勤務者が増えると本社オフィスで働く社員は必然的に少なくなるので、コンパクトなスペースで十分。コスト削減という意味でも在宅勤務は大きな効果を上げてくれるのです」
 一方で社員同士の一体感が薄れてしまいがちになるので、第5土曜日の社員交流イベントなどをより積極的に行うともいう。まさに子育てや介護と仕事の両立、通勤時間のムダなどを考えれば、在宅勤務は少子高齢化にあえぐ日本社会全体で目指していくべき働き方になるのではないだろうか。

  • 社名:株式会社阿部兄弟建築事務所
  • 設立年・創業年:設立年 1968年
  • 資本金:1,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 荒井 豊人
  • 従業員数:23名(内、女性従業員数8名)
  • 所在地:101-0032 東京都千代田区岩本町1-3-9 高木ビル7階
  • TEL:03-3866-4181
  • URL:http://abeoffice.co.jp/
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください