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中央・城北地区 アカオアルミ株式会社

アカオアルミ株式会社 創業70年の歴史が可能にした、男女分け隔てなく全社員が活躍できる場の創出

アカオアルミ株式会社

創業70年の歴史が可能にした、男女分け隔てなく全社員が活躍できる場の創出

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中央・城北地区

アカオアルミ株式会社

創業70年の歴史が可能にした、男女分け隔てなく全社員が活躍できる場の創出

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都市型製造業の成功ストーリー
創業70年の歴史が可能にした、男女分け隔てなく全社員が活躍できる場の創出

 練馬区内に5,000坪の工場を構えるアカオアルミ。都市型工場として良質なものづくりを実践する同社の誇りとは。

東京23区内にアルミニウムの大型圧延工場を構える

 金属の中でもひときわ軽量で、加工がしやすい特性を持つアルミニウム。その用途は非常に広範で、家電製品の筐体、建物用の建材、飲み物の容器、自動車のフレームなど枚挙に暇がない。いずれも私たちの身近な生活の場面に深く関わっているものだ。
 このアルミニウムの原料は赤褐色の鉱石であるボーキサイト。これを溶かしてアルミナと呼ばれる成分を抽出した後、電気分解をするとアルミニウムの地金が作り上げられる。この時点で地金はチョコレートバーのような塊になっている。実際に産業に用いるには、地金を溶かして薄い板に“圧延”していく工程が欠かせないものとなる。1947(昭和22)年の創業以来、アカオアルミは約70年間にわたってアルミニウムの“圧延”で実績を残してきた企業である。
 先代社長である赤尾由美会長は、自社の特色は小回りの利く点にあるとしている。
 「アルミニウムの圧延は大手5社で95%のシェアを獲得しています。歴史はあれど中小企業ですから、それなりの戦力が必要です。その結果、構築したのが、大手と同じ鋳造方法ながらも小ロット短納期に応えられる体制です」
 本社の立地にも恵まれている。成増駅から徒歩9分の地に5,000坪の敷地を構える都市型工場だからこそ、お客様とコミュニケーションを密に取りやすいというのは大きなアドバンテージになっているという。
 素材メーカーのため最終製品を多く作っているわけではないが、取引先の用途を見るとスプレー缶や車のナンバープレート、化粧品、医薬品向けなど、実に多彩だ。その中で “看板”となっているのが1円玉の製造である。1964年から、同社では文字などを刻印する前の1円玉を作っている。
 「専用施設を持っているのは、今や当社のみです。製造枚数と比べてしまうと、設備の維持管理コストが高いものの、1円玉といえばアカオアルミと認知していただいていますので、これからも継続して作り続けていきたいと思っています」(赤尾会長)
 このほか、群馬と栃木の工場では本社工場で仕上げたアルミ板を活用した最終製品作りに取り組んでいる。業務用キッチン製品などを世に送り出しており、東京の食の用品のメッカである合羽橋に行けば、アカオアルミ製の鍋やフライパンなどがズラリとそろっている。

body1-1.jpg写真のようなアルミニウムを作る工場が、東京23区内にあるというのは驚きだ

優秀な人材なら男女を問わずに登用する

 長引いたデフレで製造業が苦戦を強いられてきた中で、赤尾会長はこの数年間、「品質のアカオ、人材のアカオになろう」と唱え続けてきたという。
 「製造業者としてこれから先、私たちが生き残っていくためには、大手を凌駕する圧倒的な品質が必要です。そのためには品質を裏付ける人材の育成に力を注ぐべきだからと、教育制度の充実化には精力的に取り組んできました」
 新卒が取り組む3か月の工場研修や、マンツーマンでの指導を行うブラザー制度などは代表的なところだろう。また、赤尾会長が主催する勉強会では、ある雑誌を読んで作文を書き、全員でそれを読み合って意見を交換する場を設けている。読む、書く、褒める、発表するという行為を通して、人間力の向上を促すというわけだ。技術面にしても、ヒューマンスキル面にしても、学びの場はしっかり整っているといえよう。
 そんな赤尾会長は、最近まで約21年間にわたって社長の座に就いていた。先代の死を受けて会社を継いだのだが、そのときはお子さんが生まれてまだひと月だったという。先代から2代目を任されるのは承知していたが、事態は先代の急死という、まさに青天の霹靂だった。
 「突然のことで、責任感や義務感で社長業をしていただけでした。自分では無理だと疑問を抱えながら、覚悟が定まったのは15年くらいしてからでしょうか。ようやく、できることからやればいいという気持ちになりました。勉強会を始めたのはちょうどそのころ。社員と本気で向き合えるようになりました」と赤尾会長は振り返る。
 現在は3代目の安藤清志社長が会社の指揮を執っている。名前が“赤尾”ではないことからも分かる通り、安藤社長は創業家出身ではない。同族経営の外に歩みだすことで、会社の可能性を広げていこうとしているのである。その姿勢は人事面にも如実に表れている。同社は重要なポジションを女性が担うことの多い会社でもあるが、女性を優先したということではないという。
 「優秀な人材を適材適所で配置しているだけで、男女の分け隔てはありません。力があれば、誰にでもチャンスを与えていくのが当社の方針です」
 赤尾会長はそう力強く語ってくれた。

body2-1.jpg当事者意識を持つよう、赤尾由美会長は社員に対して「自分を指させ」と話してきた

アルミニウムの専門家たちの知恵に触れられるのが楽しい

 品質保証室に所属する臼井美帆さんは、大学で材料工学を学んだ経験を生かすべく、アカオアルミの扉を叩いた。現在はアルミのコイルや、丸板、スラグといった素材の品質的な問題を解決するために、各課の技術や意見をまとめた上で調査結果の報告書を作成するといった業務に取り組んでいる。
 品質保証という仕事は、工場内のあらゆる工程と深く関わりながら物事を進めていくことになる。その道のプロたちが積み上げてきた技術は奥が深く、今なお毎日のように新たな発見に巡り合うという。
 「アルミニウムに関して、まだまだ分からないことがありますが、だからこそ新しい知識を身に付けるのが楽しくて、やりがいを持って仕事に没頭できています」
 現在は5名のメンバーの中で、室長の次のキャリアとなり、リーダーシップを発揮すべき立場となった。その中で心掛けているのは、過去、自分自身がした失敗を踏まえた指導をすることだ。
 「大事なことはメモを取って記録しています。後輩が同じような状況で悩んでいるときには、そのメモ帳を読み直して、相手の習熟ぶりに合わせて伝えるように工夫しているつもりです。ただ、反対に後輩から教えられることもありますね。金属を学んできた経験のない人だと、違うアプローチから物事を見てくれるので新鮮です」

body3-1.jpg「優しくてざっくばらんな人が多い会社です」と臼井美帆さん

保育士からメーカーに転身。周囲ががっちり支えてくれた

 臼井さんと同じ品質保証室に所属する湯浅美香さんは、かつて保育士として保育園に勤めていた経歴を持つ。転身のきっかけとなったのは、自らの子育てがスタートしたことだった。環境が変化したのを契機に、興味のあったものづくりの世界への転身を決めたのだという。
 「地元に1円玉を作っている工場があると知って、驚くと同時にがぜん興味が湧いて入社したんです。異業種からの転身ですから不安ばかりでしたが、周りの方々が一つひとつ丁寧に教えてくれたおかげで頑張ってこられました。人間関係にも非常に恵まれた会社ですね」
 最初は事務職の契約社員としての入社だったが、その懸命さが評価され、1年後に正社員となった。現在は品質保証の事務方として、技術の専門家である臼井さんたちのサポートに携わっている。
「事務員として入社しましたが、工場の作業について全く分からないと仕事も思ったように進まないので、現場で研修させてほしいと要望したところ、それが認められ短期間ながらも作業させてもらえました」
 湯浅さんのそんなエピソードからも、一人ひとりの意見や意志を大切にするアカオアルミの社風が垣間見られる。
 子育てとの両立も周囲の手厚いフォローを受けながら問題なくこなしているという。将来は社内に保育室を作る計画も持ち上がっている。男女の区別なく、誰もが働きやすい環境が整う同社でなら、やりがいを存分に感じながら、ものづくりに集中することができそうだ。

body4-1.jpg素直に仕事に取り組んでいけば、いくらでも成長できる環境がここにはあると、湯浅美香さん

編集部メモ

都市型工場だからこそ、できることがある

 アカオアルミは練馬区と板橋区、和光市の境界線に本社工場を構えている。周囲には住宅街が広がっており、隣には大型ショッピング施設もあるなど、文字通りの都市型工場だ。大型マンションが立つ道路からほんの数メートル入った敷地内の建屋では、1,000度もの熱を発する溶解炉が活動しているというから不思議な感覚。
 もちろん工場が先に建ち、後追いで住宅ができたのだが、周辺への配慮は欠かさない。24時間稼働する工場をこの地に根付かせるべく、安全面や騒音防止には徹底してこだわっている。また、小学生の工場見学なども積極的に受け入れることで、地域社会の一員としての責務も果たしている。23区内という好立地にあるものづくり企業ならではの特性を生かして、これからも地域に、社会に貢献し続けていくことを期待する。

edit-1.jpg1,000度の熱を発する溶解炉が住宅街の中にある。都市と工場の共存の好例といえよう
  • 社名:アカオアルミ株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1947年
  • 資本金:1億円
  • 代表者名:代表取締役社長 安藤 清志
  • 従業員数:221名(内、女性従業員数49名)
  • 所在地:179-0071 東京都練馬区旭町3-33-1
  • TEL:03-3930-4133
  • URL:https://www.akao.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください