<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 株式会社アパレルウェブ

株式会社アパレルウェブ ファッション業界の革新を目指し、アパレルメーカーの海外進出を支援する

株式会社アパレルウェブ

ファッション業界の革新を目指し、アパレルメーカーの海外進出を支援する

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中央・城北地区

株式会社アパレルウェブ

ファッション業界の革新を目指し、アパレルメーカーの海外進出を支援する

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海外進出支援ストーリー
ファッション業界の革新を目指し、アパレルメーカーの海外進出を支援する

 ITの力を活用して「ツナガル」「ヒロガル」を旗印に、アパレルメーカーを支援するアパレルウェブ。国内ではITを利用した「ツナガル」マーケティングを展開し、海外ではインターネットとリアルの両面からアパレルメーカーの「ヒロガル」を支援。そんな同社の海外進出支援プロジェクトを追った。

アパレルメーカーのマーケティングと海外進出を支援

 アパレル業界は、1990年代前半のピーク時には20兆円規模に達していたが、現在は10兆円まで縮小しているといわれている。同じように総合スーパーや百貨店に出店するアパレルの店舗数は1997年を境に毎年減少傾向にある。こうした状況をみる限り、アパレル業界を取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ない。
 そんな状況で新しいアパレル業界のあるべき姿を追い求める企業がある。2000年に設立したアパレルウェブである。起業したのは千金楽健司(ちぎらけんじ)代表取締役社長だ。それまで千金楽社長は、下着やパジャマなどのリラクシングウェアのOEMを手がける企業で長年働いていた。年商は70億円ほどで業界では上位クラスを維持していたが、当時からアパレル業界に危機感を覚えていたという。
 「どうにしかしたいという気持ちはありました。でも具体的な方法が思いつかない。そんな時にある通信系営業担当者との会話の中で閃いたんです」
それはWebという新しいメディアだった。その営業担当者によると、従来のテレビや新聞、雑誌などが、広告主が消費者に情報を発信するPUSH型のメディアなら、WebはPULL型メディアという説明。つまり、情報を押し付けるのではなく、消費者が自ら情報を持ってきて来てくれるのだという。しかも双方向でコミュニケーションが取れるのでマーケティングにも優れているというのだ。
 消費者とのつながり改善はWebで道筋が見えてきたが、千金楽社長にはもう一つ克服しなければならない課題があった。市場縮小の国内市場だけに頼っていては将来がないという危機感があり、海外進出は不可欠だと考えていたのだ。そもそも、輸出大国・日本の産業界にあって、アパレル業界は95%を輸入に頼っている。起業して、この輸入過多をなんとか逆転する手立てが講じられれば、日本のアパレルメーカーを支援できる。
 ややもすれば見切り発車にも思えるが、アパレルメーカーの「マーケティングサービスの活用」と「海外進出」を支援する企業としてアパレルウェブはスタートを切った。

body1-1.jpgファッション業界の革新を目指して、さまざまなサービスを提供する千金楽健司社長

ASEANへの進出プロジェクトがスタート

 アパレル業界は一見、時代の先端をいく業界のようで、実は古い体質の側面も持ち合わせている。千金楽社長のビジネスの着眼点は良かったが、Webという新しいメディアを理解してもらうのに時間がかかった。
 「ホームページとかを作ると、いくら儲かるの?」という顧客の冷たい反応に合いながらも、粘り強く何度も説明していった。そうした地道な活動によって徐々に、同社のアパレルの情報ポータルサイト「apparel-web.com」への広告出稿や、アパレルメーカーのWebサイト構築の仕事が増えていき、ついにはWebによるマーケティング関連事業を軌道に乗せるところまでたどり着いた。
 もう一方の日本アパレルメーカーの海外進出も、当初はなかなか思い通りにいかなかった。その最大の要因はビジネス慣習の違いだ。2003年頃には中国の百貨店などと連携し、日本ブランドの販売を試みたのだが、商習慣の違いから撤退を余儀無くされるという憂き目にもあった。
 それでも千金楽社長には不退転の覚悟があった。新たな市場に活路を見出した。ASEANである。
「ASEANの人口は約6億人。しかも若い世代が圧倒的に多いのが特徴です。例えば、ベトナムやフィリピンの平均年齢は20代半ばという若さです。日本はもちろん、中国や韓国でも今後すさまじいスピードで高齢社会を迎えますが、これから働き盛りを迎える年齢層が多いASEANは大きな可能性を秘めています」
 しかも、ASEAN諸国は経済成長期にあり富裕層が増加している。今後さらに購買力が増すに違いない有望株の市場。入念なリサーチを行い、ついにシンガポールに自社店舗をオープンした。

body2-1.jpg若手でも意見を言いやすい社風だから、社員のどの表情も活気にあふれている

2012年、シンガポールに自社店舗をオープン

 シンガポールに現地法人を設立し、2012年には「JRunway」(ジェイランウェイ)と命名したセレクトショップをオープン。常時、30社ほどの日本アパレルメーカーのブランドを販売している。
「アパレルメーカーがASEANに進出する時、必ずといっていいほどゲートウェイになるのがシンガポールです。周辺諸国の中で経済的にもっとも成熟していますし、ASEAN諸国からも注目されている国です。ですからZARAなどのブランドを展開する世界最大のアパレルメーカーのインディテックスをはじめ、それに続くH&M、GAPなどもASEANに進出する際は、まずシンガポールに出店しています。当社も日本のアパレルブランドのブランディングとテストマーケティングのためにJRunwayをオープンさせたのです」
 この店舗はシンガポールの一般消費者の反応をリサーチするのにうってつけで、滑り出しから順調で、一般消費者だけでなく、現地のバイヤーの注目を集めて売り上げを伸ばした。オープン2年目の2014年には2億円以上を計上した。
 この結果は、実は商品の力だけではない。「ランウェイ」という店名からも想像がつくように、現地のバイヤーやマスコミ、ブロガーなどを集めて店内でミニファッションショーを開催しては、市場に影響力のある人々に日本のアパレルブランドの魅力を発信する工夫をしているのだ。いわばJRunwayは日本のアパレルメーカーの情報発信地としても大きな役割を果たしている。
 もちろん、専門家や一般消費者の反応は各アパレルメーカーにフィードバックし、ASEAN市場で売れるための商品づくりに役立てるといったコンサルティング活動にも役立てている。

body3-1.jpgファッショナブルな社員が多く、オフィスには洗練された雰囲気が漂う

オムニチャネルで日本のアパレルメーカーを支援

 アパレルウェブのASEAN市場への進出プロジェクトで、「JRunway」と共に大きな役割を果たすことになるのが、ECサイト「JRunway.com」である。「JRunway」がASEANにおける情報発信地ならこちらは売り場としての機能を果たすことになる。
「シンガポールポストという日本の郵便局のような郵便事業会社と提携することができ、商品をデリバリーする流通ネットワークも獲得しました。今後はASEANの売り上げ拡大を図る原動力となって日本のアパレルメーカーを支援することになると思います」
 リアルな店舗とWebサイトの相乗効果によって、アパレルウェブの海外進出支援事業はいよいよ本格的な稼働を迎えることになる。アパレルウェブが目指す新しい販売戦略は、さまざまな販売・流通チャネルを統合したオムニチャネルである。「オムニ」は「すべて」とか「あらゆる」を意味し、いくつかの販路を組わせることからマルチチャネルとも呼ばれている。
 「実際の店舗やECサイト、SNSなどを組み合わせたカタチで展開していくつもりです。例えば、店舗で商品を見て、ECサイトで購入するというのも可能ですし、その逆も可能です。店舗で欲しい商品の在庫がなければECサイトで注文することもできますから、消費者にとっては便利なスタイルになるはずです」
 まさに順風満帆に事業拡大が進む同社だが、市場開拓に向けた課題がないわけではない。それは日本のアパレルブランドの認知度の問題だ。アパレル分野もクルマや家電製品などと同じように「Made in Japan」の品質に対する信頼は高い。しかも渋谷や原宿のファッションが「カッコいい」「カワイイ」という高い評価を得ている。しかし、個々のブランド名が浸透しているかといえば、必ずしもそうとは言えないというのである。
 「個々のブランド名を知っていただき、ファンになってもらえるように情報発信をしてきたいですね。分厚いファン層ができてこそ、初めて継続的に購入していただける信頼関係が生まれるものなんですよ」
 日本のアパレルメーカーの海外進出支援を、事業の柱に据えて設立したアパレルウェブ。創業時に描いたビジョンは、確実に実現へと近づいている。もちろん、そこから先、どう発展して行くのか、同社の動向から目が離せそうにない。

body4-1.jpg通路でもお互いの意見交換やアイディアを聞く姿が見かけられる

編集部からのメッセージ

アパレル業界に特化した質の高いサービス


 ITを手段にサービスを提供する企業は多い。社会インフラを支える大規模な情報システムからスマホのアプリ開発まで実に多彩だ。ただし、大企業のような資本力のない中小企業は、どうしても戦略上ニッチな市場を狙わざるを得ない。しかし、そこに大きな勝機がある。ニッチな市場だからこそエキスパートとしてノウハウが蓄積され、他社の追随を許さない質の高いサービスの提供につながるともいえるのだ。アパレルウェブも質の高いサービスを提供先であるアパレルメーカーとショップに限定して成功した企業である。
 そして現在は、同社は「アパレルクラウド」というサービスを提供している。これは商品、店舗情報、スタイリング・ニュース・在庫などアパレルメーカーが必要とする全データを一元管理し、外部ECサイトやブログ、アプリ、SNSなど顧客と接点を持つあらゆるチャネルとつなげられるサービスだ。これによって「小さなアパレルメーカーでも1兆円のアパレルメーカーと同じ土俵に立てる」(千金楽社長)というサービスが誕生している。これもアパレル業界に特化してサービスを提供してきた同社の類まれな発想と開発力の賜物といえるだろう。

  • 社名:株式会社アパレルウェブ
  • 設立年・創業年:創業年2000年
  • 資本金:1億円
  • 代表者名:代表取締役社長 千金楽健司
  • 従業員数:79名(内、女性従業員数37名)
  • 所在地:103-0012 東京都中央区日本橋堀留町2-2-1住友不動産人形町ビル5F
  • TEL:03-3662-4976
  • URL:http://www.apparel-web.co.jp/
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください