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多摩地区 株式会社キャリア・マム

株式会社キャリア・マム ママ10万人と企業を結び、主婦の視点を活かせる在宅ワークシェアを実現

株式会社キャリア・マム

ママ10万人と企業を結び、主婦の視点を活かせる在宅ワークシェアを実現

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多摩地区

株式会社キャリア・マム

ママ10万人と企業を結び、主婦の視点を活かせる在宅ワークシェアを実現

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多様な働き方実現ストーリー
ママ10万人と企業を結び、主婦の視点を活かせる在宅ワークシェアを実現

 “10万人のママのネットワーク”を築き、主婦目線を活かしたマーケティング支援や働きたい女性と企業をつなぐチーム型クラウドソーシングを展開する株式会社キャリア・マム。ネット社会が訪れる前からインターネットを活用し、子育てに励む主婦の在宅ワークを後押ししている。そんな同社が推進する「ライフスタイルに合わせた働き方」を紹介する。

育児で「働く」が閉ざされる。そこに理不尽さを感じた

 堤香苗代表は大学在学中からフリーアナウンサーとしてテレビ・ラジオのパーソナリティやイベントの司会などで活躍していた。しかし、1980年代の社会には女性が働くことへの偏見があった。
「女性は24歳までに結婚し、仕事を辞めて家庭に入るべきという不文律がまかり通っていた時代でした。私も25歳を過ぎると仕事先での風当たりが強くなり、実力よりも若さばかりがもてはやされることに理不尽さを感じずにはいられませんでした」
 堤社長は29歳で長男を出産後、アナウンサーの仕事に復帰したが、今のような支援制度はなく、育児に時間を取られるあまり、仕事の準備さえもままならない状態が続いた。
「子どもを持つ友人からも『子どもがいるだけでキャリアを諦めざるを得なかった』という話を聞くにつけ、『女性ばかりがどうして?』という疑問を募らせていました」
 当時は、女性は結婚を機に家庭に入り、家事に専念するのが当たり前。子育ても女の役目で、育児に専念する母親たちの出かけるところといえば、近くの公園と買い物くらいのもの。行動半径の限られたママさんたちがコミュニティを作っても、話題の中心は子どもの習い事や塾の話。自分の夢を子どもに託すばかりで、みんな自分のアイデンティティを押し殺してしまっていたと堤社長は、閉塞感いっぱいの時代にため息を漏らす。
 「こんな状況は変えなければいけない。自分から動こう」と決意した堤社長は1995年、東京・多摩ニュータウンを拠点に育児サークル「PAO」を立ち上げた。コンセプトは、「ママが笑顔でいられる場所」。インターネットが普及する以前のことで情報伝達ツールとして主流だったのは「パソコン通信」。言わずもがな、インターネットほどの威力はない。それでも、孤立するママさんを繋ぐアイテムにはなり得た。今風に言えば、ネット上にコミュニティを作り、会報誌の発行や親子イベントを開催するなど積極的な活動を開始した。その活動が新聞各紙に取り上げられ、口コミでも賛同の輪が広がり、みるみるうちに1,500名ものママのネットワークに拡大していった。

body1-1.jpg前例のないチャレンジに挑んだ堤香苗社長

ワークシェアを確立し、口コミで主婦10万人に

 「このネットワークを活かし、ママ仲間と何かビジネスを起こせないだろうかと考えたのが、キャリア・マム設立のきっかけです。会員のママたちの中には、前職の経験からパソコンを得意とする方が多くいらっしゃって、新店舗のサービス調査などの仕事を企業から受託することから始めました」
 拠点にしていた多摩ニュータウンに多くの通信系企業が集まっていたことも、この発想のきっかけになった。そうした環境も手伝って事業は軌道に乗った。シリコンバレーを訪れ、ネット社会の到来を確信していたので、テレワークの導入を開始。会員のママたちは自宅にいながらつながりあい、お互いに協力して仕事を進めていけるようになった。
 今の在宅ワークやワークシェアの奔りといえるビジネスモデルである。会員数は口コミを通じて年々増加。やがて全国10万人に拡大し、主婦の目線や本音を商品開発等に活かせることに企業からの注目も高まった。店舗調査やモニター調査などのマーケティング支援、主婦の声を活かした商品・サービス企画、在宅ワーカーがWebサイトの企画・制作・運営などを受託するアウトソーシング事業などへ、ビジネス領域を拡大させていった。

body2-1.jpgオフィスには主婦の声が続々と寄せられている

シングルファーザーとして3児の子育てと仕事を両立

 こうした在宅ワークをはじめとするフレキシブルなワークスタイルは、キャリア・マムで働く社員自身も実践している。営業部の関東エリアマネージャー・須藤慎一さんもその一人だ。
「私は寿司職人だった前職時代、離婚して2歳と4歳の娘2人を育てるシングルファーザーになりました。寿司職人の仕事は朝から夜遅くまで拘束時間が長く、子育てと両立するのはとても難しい状況。そこで、フレキシブルに働ける環境を求めてキャリア・マムに転職しました」
 キャリア・マムに入社後、預けていた中学生の長男も引き取り、帰宅後に家族で夕飯を食べることができるようになったと喜ぶ。
「Web会議や出勤管理システムなど、当社には場所を選ばず働ける仕組みがありますので、クライアントとの打ち合わせの合間にカフェなどで仕事を進めることも出来ますし、直行直帰も可能です。メーリングリスト等で仕事の進捗状況を共有しあっているため、子どもが熱を出したといった時などは、あとはやっておくからお子さんのそばについていてあげてと、チームのみんなが心強く送り出してくれたことがあり、助かりました」
 当然、仕事へのモチベーションも高くなると須藤さんは力強く付け加える。
 須藤さんの担当は主に行政とのコラボレートによる在宅就業支援。「世田谷区ひとり親家庭等在宅就業支援事業」では、カウンセリングや子どもの学習支援等を行う交流会イベントや職業訓練などを企画・運営してきた。
「私自身、会社勤めもPCワークも当社で初めての経験で、周りのフォローを受けながら子育てとの両立を実践してきた身。同じ境遇の方々の支援もしつつ、支援領域や在宅ワーカーのネットワークをさらに広げていくことが、私の目標であり、やりがいです」

body3-1.jpg「家では子どもたちに自慢の手料理を振る舞っています」という須藤慎一さん

在宅ワークを柔軟に取り入れ、仕事もプライベートも充実

 営業部部長の込戸雄太さんは、2003年に同社に入社して以来、“10万人のママ”の活躍フィールドを営業の最前線で切り拓いてきた。
「個人と企業、個人と個人をつなぐクラウドソーシングが数年前から注目されていますが、キャリア・マムはその先駆けとして仕組みを作り上げてきました。私たちの取組にようやく時代が追いついてきたといえるくらい、開拓してきた自負があります」
 込戸さんが担うのは、クライアント企業の要望に応じて、サービスをカスタマイズして企画提案すること。例えば大手グルメサイトでは、飲食店の料理人にフォーカスを当てたコンテンツの企画・制作に、主婦たちの力を結集させた。
「10万人の会員の皆さんは、一人ひとり違ったスキルや強み・弱みをお持ちです。文章を書くことは苦手だけど、電話取材なら得意という人もいれば、逆に電話取材はできないけど、文章力に長けている方もいます。そうした方々の長所を上手に活かし、チームによるワークシェアで補い合うことで、一つのコンテンツを作り上げていくことができるのです」
 そんな込戸さんのワークスタイルも、とてもフレキシブルだ。グループウェア等を活用しながら、自宅や外出先でも時間を有効に活用して仕事を進めているため、ワークライフバランスも良好に保てているという。
「当社の社員は約半数が在宅ワーカーです。私自身、事務業務が中心の日などには自宅で仕事をしています。当社では『いつどこで仕事をするか』ということよりも、『働く』を場所の制約から解放させ、『いかに効率よくパフォーマンスを高められるか』に力点を置いているんです」
 週1~2回は仕事を定時で切り上げ、フットサルを楽しんでいる込戸さん。仕事もプライベートも充実し、来年にはお子さんも生まれる予定だという。
「生まれてくる子どもと過ごす時間を大切にし、妻と協力して子育てをしていきたいと思っています。当社には子育ての先輩が多く、何かと相談できるので心強いです」

body4-1.jpg商工会議所で企業向けセミナーの企画・運営も手がける込戸さん

在宅勤務で通勤地獄からの解放

 同社では在宅、内勤、外勤に関わらず、全社横断型の「働きやすさ向上プロジェクト」を立ち上げている。例えば、年2回働きやすさ調査を実施し、集まった社員の意見を制度や環境のブラッシュアップに活かしている。フレックスタイム制の導入もそのひとつで、午前休や1時間休など有給休暇を細分化させて取得しやすくする休暇制度も、社員の意見を反映したものだという。
「ワークライフバランスを良好に保ったほうが、仕事の効率も格段に上がりますよね。毎朝通勤ラッシュに飲み込まれると、会社に着いた時にはで疲れ切っている、そんな状態ですよね。自宅でできる仕事だったら、無理にオフィスに来なくても自宅で終わらせればいいのです。私もそうしています。自分で仕事をコントロールし、パフォーマンスを最も発揮できる環境で働くこと。それがキャリア・マムのスタイルなのです」(堤社長)
 こうした多様な働き方でもパフォーマンスを適正に評価できる人事評価制度を導入し、Web会議等を通じて全体での情報共有もこまめに行っているという。そのため、在宅勤務だからといって疎外感を味わうこともなく、会社全体に一体感が育まれている。2012年に東京都から「東京ワークライフバランス認定企業」に認定されたことも、社員一人ひとりがライフスタイルに合わせて働けるように環境を整えてきた成果だ。

編集部からのメッセージ

主婦による、主婦のための商品づくりをサポート

 キャリア・マムの最大の強みは、主婦10万人の口コミネットワークにある。企業が商品・サービスを開発・改善する際、マーケットに最も近い主婦の本音は、精度の高い指針になり得るからだ。例えば、ある不動産開発会社は、オリジナルキッチンを開発するにあたって、キャリア・マム会員の主婦とグループインタビュー形式で「欲しい機能」「いらない機能」などをとことん話し合い、それをもとに機器・収納の使用感や商品コンセプトなどを決定したことで、「主婦による主婦のためのキッチン開発」に成功した。流通会社ではネットスーパーを立ち上げる際、キャリア・マム会員による座談会を参考に、主婦が楽しく買い物できるサイト制作を行うことができたという。
 また、同社は在宅ワークを実践してきた経験とノウハウを活かし、行政や企業とのコラボレーションによって、在宅ワークの啓蒙活動や業務開拓、キャリア支援、企業・求職者向けセミナー等の開催も行っている。主婦マーケティング、クラウドソーシング、在宅ワーカー育成、女性起業支援など、キャリア・マムの活躍の場は今後もさらに広がっていくに違いない。

  • 社名:株式会社キャリア・マム
  • 設立年・創業年:創業年 1995年
  • 資本金:3,875万円
  • 代表者名:代表取締役CEO 堤 香苗
  • 従業員数:31名(内、女性従業員数29名)
  • 所在地:206-0033 東京都多摩市落合1-46-1 ココリア多摩センター5階
  • TEL:042-389-0220
  • URL:https://corp.c-mam.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください