<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城東地区 ChatWork株式会社

ChatWork株式会社 非常識にみえる働き方が社員や顧客の幸せを創り出す「Make Happiness(メイクハピネス)」経営

ChatWork株式会社

非常識にみえる働き方が社員や顧客の幸せを創り出す「Make Happiness(メイクハピネス)」経営

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非常識にみえる働き方が社員や顧客の幸せを創り出す「Make Happiness(メイクハピネス)」経営

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働き方を変えた経営ストーリー
非常識にみえる働き方が社員や顧客の幸せを創り出す「Make Happiness(メイクハピネス)」経営

 「電話を使わない」「社員をクビにしない」「顧客に会わない」など、ユニークな経営方針を実践するChatWorkはネットを利用したコミュニケーションツールを提供するIT企業。「働き方革命」ともいえる大胆な経営で社員の幸せを追求する同社の考え方や、社員の働き方にスポットを当てた。

利益ではなく社員第一の経営を目指す

 「顧客第一主義」を謳う企業は多いが、「社員第一主義」を掲げる企業は珍しい。ChatWorkは、社員第一主義を堂々と掲げ、社員の行動指針を明確に示し、具体的な制度に落としこんでいる。同社を立ち上げた山本敏行代表が突飛にも映る経営理念の背景には若き起業家の忘れられぬ苦い経験がある。
山本代表が起業したのは2000年のこと。留学先のロサンゼルスでChatWorkの前身である個人事務所を創業し、検索エンジン登録代行業を始めた。帰国後も仕事を継続して行い、顧客は1000社を優に超える勢いで法人化に踏み切り、5人の創業メンバーと東奔西走。しかし、5人で1000社以上の顧客対応は難しく、ミスが続出、顧客からのクレーム相次ぐ中で社員が次々と辞めていくという最悪の事態に陥った。
 山本代表は経営者として自分に足りないものを痛感。経営者として1からのスタートを決意し、知人縁者はもとより、あらゆるつてをだどり、1000人以上の経営者に体当たりで教えを乞うた。そこから導きだされたのが、どの経営者も実践していなかった社員第一主義という考え方だった。
「会社が上手くいっている経営者の話には、ある共通点があることに気がついたんです。それは社員のために自分の時間を使っている、社員についての愚痴や不満を言わない、そして自分の会社や社員のことを楽しそうに話すことでした。つまり、そこに自分の社員のことを第一に考えているという姿勢があったんです」
山本代表は格闘技に汗した根っからの体育会系。「自分がこれだけ頑張っているんだから社員もわかってくれるはず」という純粋な上下社会が身についていた。ところが、多くの経営者たちは、自分を見てくれていることを期待するのではなく、自分の下についてきてくれるものたちを見ているというのだから、まさに目からウロコ。
 そして、たどり着いたのが、「利益ではなく社員第一の経営」。いったん決めたら徹底して貫く体育会系人間の真髄がここで発揮され、新しい働き方を目指して一目散に走り始めた。

body1-1.jpg「社員満足がない企業に顧客満足は生まれません!」(山本敏行代表)

まず「しないこと」を決めて、それを貫く経営

 山本代表が取りかかったのが、社員が満足感を覚える環境づくりとそれに向けた経営方針を打ち出すことだった。そこには社員満足は、必ず顧客満足につながるという信念があった。しかし、社員の満足する会社と口で言うのはたやすいが、実践するのは難しい。山本代表は満足にたどり着く道筋を考えた。そこで浮上したのが、「しないこと」を基軸にした、「社員をクビにしない」「売上目標に固執しない」「会社規模を追求しない」という、普通の経営者だったら決して口にしないような三つの柱だった。
副産物もあった。社員をクビにしないという方針のおかげで、採用面接などでとことん話し合うなど、ミスマッチにならないよう慎重になった。逆転の発想で、解雇したい社員が現れないようにと適材適所を徹底追求。個人特性と業務のマッチングという面に配慮した結果、やる気が醸成され、業務効率も向上した。さらに、仕事がうまくいっていない社員がいれば、能力が発揮できる部署への異動はもちろん、場合によっては社員にあった部署を新設したケースもあるというから驚きだ。
 「こんなケースもあります。その女性はパソコンやネットワークに関するスキルも問題解決能力も高いものを持っているけど、人間関係を全く構築できない。そこで彼女と話し合い、新しい部署を立ち上げたんですよ。これが大成功でした」
新規に設けられたのは「業務推進部」という社内のパソコンやネットワークトラブルなどの相談窓口だった。人付き合い云々をいってられないほど、さまざまなトラブルが寄せられた。女性のスキルはもともと高く、その一つひとつを見事に解決していった。まもなく、どの社員からも感謝され、尊敬される存在となる。いつしか女性も、社員たちに心を開くようになり、良好な人間関係を築いていった。その後その女性は、日本屈指のマーケッターと目されるようになり、今ではグループ会社の経営を任されているという。まるでドラマのようなサクセスストーリーが「しない」から誕生したのだ。

body2-1.jpgフリーアドレスで働く東京オフィスの社員たち

大切なのは制度内容よりも、それが生まれるプロセス

 ChatWorkの働き方を知る上で大いに役立つのがユニークな制度の数々だ。枚挙にいとまがなく、すべてを取り上げるにはスペースが許さないので、ここでは代表的なものだけに絞り込んで紹介したい。
 筆頭に挙げられるのが「出産立会制度」。まさしく会社を休んで自分の子どもが生まれる瞬間に立ち会ってくださいという制度だ。出産予定日の2週間前後を休日にできるというから、出産を控える妻たちはこの上なく力強いに違いない。
 同じく家庭を思う制度が「ゴーホーム制度」だ。これはオフィスから実家が140㎞以上離れている社員には、年2回まで1万4000円を支給しますという制度。いわゆる盆暮の帰省の足しにというものだが、これが単身赴任、つまり、配偶者の元に帰るとなると支給額は2万8000円に倍増する。
妻帯者はもちろん、そうでない若手にも支持されるのが、「バースデー制度」だ。既婚者ならば配偶者、独身者なら恋人の誕生日に食事代1万4000円を支給するという制度。とりわけ、恋人とのデートともなると大きな出費が見込まれ、この支援はありがたいに違いない。
「これらの制度で、社員の家族や親戚が、いい会社に入ったねと評してくれるのが一番ですね。こうした制度を導入した最大の理由は、社員の一人ひとりが、仕事に打ち込めるのは一人の力ではなく、家族やパートナーがいるおかげというのを意識して欲しいという思いからですから、各制度を利用して日ごろの感謝の気持ちを表してほしいですね」
 そう山本社長は表情をほころばす。まさに社員第一主義を掲げる企業ならではの制度といえるだろう。しかし、大切なのは制度自体よりも、制度をつくるプロセスにあると山本代表は声を大にする。
「当社の制度は社員の『こんなことで困っているんです…』という悩みや不便から生まれることがほとんどです。『だったら、こんな制度があればより快適に働けるよね』という感じで社員たちからアイデアが生まれてくるんです」
 つまり、トップが考えて制度化するのではなく、社員から意見やアイデアが出されてくる。いわゆるボトムアップによる制度化が大切だというのだ。
 社員の声を反映しているというだけに、制度は次々に誕生しているという。同社のオフィスがあるシリコンバレーでグローバルなビジネスを体験するシリコンバレー研修や、最新のデバイスの購入費の半額は支給される最新デバイス購入支援制度などのユニークな制度も導入され、社員から好評だ。
こうして社員が主人公の会社は、あるコンサルティング会社の組織診断で「日本でいちばん社員満足度が高い会社」にも選出された。しかし、今では社員満足度が高いのは当たり前のこと。次に標榜しているのは、みんながハッピーになれる会社。つまり「Make Happiness」を目指しているのだ。

body3-1.jpgグローバルなビジネス体験ができるシリコンバレー研修。研修の合間に記念撮影

家族との時間が生まれるリモートワークという働き方

 「Make Happiness」を目指すChatWorkの中で、すでにポピュラーな働き方となっているのが在宅勤務(リモートワーク)だ。今年、転職してChatWorkに入社したエンジニアの重村浩二さんもそんな働き方を選んだひとり。
重村さんの業務はグループチャット、タスク管理、ファイル共有、テレビ会議・音声通話などができる同社が販売するコミュニケーションツール「チャットワーク」のスマホ用アプリの開発。現在、山口県柳井市でリモートワークとして働いている。
「小さな娘がいて妻も働いているのでリモートワークというスタイルで働いてみよう考えました。以前は片道1時間かけて通勤していましたから、時間的な余裕ができたのが嬉しいですね。娘を保育園に送り迎えするなど家族との時間もとれるようになりました」という重村さん。自宅の一部屋を仕事部屋として使用し、ONとOFFの切り替えもスムーズ。しかも同社の製品でもある「チャットワーク」で、メールやテレビ会議、音声通話などを駆使して、社内打ち合わせができるので、仕事に支障をきたすことも皆無だという。そんな重村さんが最近、取り組んでいるが英語。
「エンジニアとしてスキル向上を図るためには、最先端の技術動向を常に捉えてなければなりません。その情報の多くは英語で書かれているのでネットを利用して英語のレッスンを受けています。こうしたことができるのも時間的な余裕がある働き方をしているからだと思います」
 家族を大切にでき、しかもエンジニアとしてのスキルアップも図れるという「Make Happiness」を手に入れた重村さん。重村さんのように自分自身のスキルを磨いて会社に貢献する社員が多いことからも、山本代表が実践してきた「社員第一主義」は大きな成果を上げているとみていいだろう。こうした社員のイキイキとした働き方は職場に活力を生み、それが顧客の満足度向上につながっていくという相乗効果を生んでいるのだ。

body4-1.jpgテレビ会議で取材に応じていただいたリモートワークで働く重村さん

編集部からのメッセージ

社員同士の交流も活発な社風が一体感を生む


 ChatWorkのオフィスには電話がない。また顧客と直接会うこともほとんどない。すべては同社が開発したコミュニケーションツール「チャットワーク」のメールや音声通話、テレビ会議で意思疎通ができるためだ。東京オフィス、大阪オフィス、リモートワークの社員のコミュニケーションも「チャットワーク」を利用して打ち合わせを行っている。
「そんな働き方をしているとデジタルに偏向していると思われがちですが、実はそうでもないんです。同じオフィスで働く社員同士のコミュニケーションはフェイストゥフェイスで頻繁に行われています。むしろ、社員同士の飲み会が多いのも当社の特徴と言っていいくらい人間臭い付き合いを大事にしています。大切なのはデジタルとアナログのバランスだと考えています」
 山本代表がそう語るように、普通の会社では希薄になってきたといわれる勤務時間外の社員同士の交流も大事に据え置いている。こうした仕事以外の交流が社員の一体感を生み、さらに自分たちの職場を良くしていこうという意欲につながっているようだ。

edit-1.jpg最新デバイス購入支援制度を利用した宮下さん