<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城南地区 株式会社クライム・ワークス

株式会社クライム・ワークス 製品開発、試作の高い技術力で高機能、多様化する顧客ニーズに応える

株式会社クライム・ワークス

製品開発、試作の高い技術力で高機能、多様化する顧客ニーズに応える

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城南地区

株式会社クライム・ワークス

製品開発、試作の高い技術力で高機能、多様化する顧客ニーズに応える

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開発と試作で利益を生み出す技術ストーリー
製品開発、試作の高い技術力で高機能、多様化する顧客ニーズに応える

 企業にとって世の中のニーズをいかに早くキャッチし、他社に先んずるかはまさに命運を握る一大事といっていいだろう。とりわけ、メーカーにとってのそれは激烈といわれ、新製品の先駈けとなる試作品作りには大きなウエイトがかけられている。
 金属加工とプラスチックなどをはじめとした樹脂の成形加工の試作品を開発するクライム・ワークスは、自動車関連部品や電子精密機器部品などを専門とした試作品作りで、メーカー各社からの多大な信頼を得ている。

利益は設備投資と社員に還元

 株式会社クライム・ワークスは、26年前に山口誠二社長と現在幹部社員である技術者の2人で設立した金属加工会社。当初は同業者の下請けを行っていたが、厳しい時代を生き抜くには個性が必要と、市場の中で行くべき道筋を模索。そこで目をつけたのが試作品の加工だった。無論、ないものを作り出す開発試作に携わるには高度な技術が不可欠。その上、スピードも求められるという厳しい条件をクリアしなければならない。しかし、若き企業家のチャレンジ精神がそれで萎えることはなかった。試行錯誤することも多かったが、品質にこだわる姿勢が認められ、徐々にではあったが注文が確実に増えていき、やがて、先行設計、先行試作、2次試作、量産設計、量産試作、量産までの工程を一貫して行う「ワンストップサービス」に辿り着く。
 チャレンジはさらに続く。業績が軌道に乗ると、事業のフィールドを広げるべく、自動車、カメラ等の精密部品などに用いられる樹脂加工にも乗り出したのだ。金型づくりにはじまり、やがて成形まで行うことになり、今では、金属と樹脂が連携することで、より細かな部品の試作品のニーズにも応えられるようになった。
 同社には他社が追随できない個性があった。
 「普通の会社だったら、社長自らが社員に直接指示を出すことなんてないでしょう。ところが当社の社長は現場にどんどん声を届けるんです。それもスピーディに業務を進める秘訣の一つです」
と、石井直総務部長は胸を張る。
 たとえば、大手メーカーが監視カメラの会社を買収したから監視カメラの製品やノウハウをまとめておけと社長から担当者が直々に命じられる。命令系統に無駄がないぶん仕事がスムーズに進み、営業が資料を手に売り込みに行くと、「ちょうどいいところに来た」というタイミングにつながる。
まさに上意下達の妙味といえよう。
 一事が万事、スピードと品質にこだわる同社の勢いは文字通りの天井知らず。船や航空機への業務拡大も計画し、すでに社長の故郷でもある長崎に工場を建設すべく用地を確保しているという。
 もちろん、社長の馬力だけでは企業の成長はありえない。社員のやる気を醸成する環境づくりも欠かせない。同社はそのあたりにも抜かりがない。社長の希望は、会社の規模を大きくすることでも上場することでもないという。まず大事なのは社員で、そこへの利益還元を第一に考え、福利厚生に力を注いでいるという。その成果は、社員たちの仕事に対する姿勢に如実に現れていた。

body1-1.jpg業務のさらなる拡大、と語る石井直部長

学びたいだけ研修に行ける。総務部、小出優一郎さん

 「僕の仕事は、簡単に言うと、技術の総務です」
と言うのは、入社2年目の小出優一郎さん。総務部戦略技術担当として顧客ニーズを調べ提案のための資料作成をしたり、要素技術の立ち上げをしたり、といった業務に携わる。大学では理工学部に籍をおき、大学院で高分子材料の博士課程を修了した工学博士だという。
「進路を考えた時に日本を支える多くの中小企業、その現場で起きている課題に理論的な検証と最先端技術を即座に反映させることが必要であり、それができる存在になりたいと思ったんです。そんな視点で就職活動を展開した結果、現場の仕事ができる弊社を見つけたというわけです。実際、入社してみて研究室ではわからないものづくりの現場を目の当たりしたのは新鮮でしたね」
 そう述懐する小出さん、入社1年目の研修で営業や樹脂形成の現場も経験した。とりわけ、樹脂の現場では貴重な経験をしたという。
「どんなに精密な設計をして、クオリティーの高い型を作ったとしても、製造過程で小さなでっぱりができてしまうんですね。その小さなでっぱりを500個くらい、カッターで延々と削ったこともありました。そこで材質の硬さなんかが想像していたより、柔らかかったり、硬かったりするなど、びっくりさせられる場面に幾度も遭遇しました」
と実際に見て、触れてみることでより理解が深まったと振り返る。
 そんな小出さんの発見は技術だけではない。社長の言葉に日々触発されているという。その一つが、「需要は自分で作り出して、相手にぶつけろ」という言葉だ。これは注文を待っていては駄目。こちらから提案をして、相手が「なるほど、そういうやり方もあるのか」と気付かせたら、注文が来るようになるという教えだ。そんな社長の行動力に学び、ただ社長の指示を待つだけでなく、営業と連携を図り、開発に提案もするようになったという。
そんな社員のやる気が萎えないようなバックアップ体制も万全に整っていると小出さんは喜ぶ。
 「基本的には、自分がこういう勉強をしたいと申し出れば、会社の費用でいろいろな研修にも行かせてもらえます」
 実際、1週間にも及ぶ有料のソフトウェアの研修への参加を申し出たところ、すんなり参加が認められたといい、その知識をさらに業務にも役立てているという。
 「会社のある大田区はものづくりの街です。産業と学術の架け橋になって、大田区のものづくりに貢献したいですね。現代は、ものすごい勢いでグローバル化が進んでいますから、新しいモノを開発する力がなければ、諸外国に負けてしまうでしょう。研究室からはなかなか現場が見えない。学術で開発したものを現場で活かせる、そんな環境を作っていきたいですね」
 小出さんの夢は膨らむ一方のようだ。

body2-1.jpg情報収集などの業務に多忙な小出優一郎さん

自分の手を動かし経験することで独自の発見もあり成長できる

 戦略技術担当をメインの仕事とする小出さんには複数のミッションが与えられている。その一つが展示会の準備を始めとした総務全般の仕事。さらに、石井さんに同行し大学でのリクルートという重責もそのひとつだ。
 小出さんの実家は会社のすぐ近くの町工場。いわば大田区のものづくりを体感しながら育ってきたのだという。大学では研究の道に進んだものの、ものづくりの現場に戻って来た以上、とことんものづくりにこだわっていきたいと力強く語り、地元大田区に貢献したいという思いも相当に強い。
「学生さんたちの安定志向や大企業志向もわかりますが、視野を広げていろいろな可能性を見ることも大事だと思うんです。これからの製造業はどんどん自動化が進む。そんな中で誰でもできる仕事をしていたのでは淘汰されてしまいます。たとえ、ある技術のエキスパートになっても時代が変われば、その技術はいらなくなってしまうかもしれない。そんな時代を生き抜いていくには、企業の大小だけで測るのではなく、自分が成長できる環境があるかどうかが大事なのではないでしょうか」

body3-1.jpg総務部、営業部のスタッフ

現場経験で顧客の声に応える営業部、齋藤陽太さん

 営業部で活躍する齋藤陽太さんも大学で工学を学んできたという。もちろん、就職活動中から営業を志望していたわけではない。同社と共同開発をしていた研究室の教授が、ものづくりに携わりたいという齋藤さんの思いを聞き届け、同社のへの就職を斡旋してくれたという。
 齋藤さんも小出さん同様に現場などで研修を積んだ。もちろん、その時には、大学で学んだ設計が生かせる職場を希望していたが、研修の時に出会った営業部の先輩に感化され、180度方針が転換した。
「営業部の先輩に、人と話をしてものを売るという面白さをいろいろと教えていただき、自分にもそれが向いていると思いました」
 その齋藤さんの熱い思いは100パーセント汲み取られる形で営業部に配属された。
 齋藤さんは納期などの顧客の質問にもすぐに応えられるスキルまで身についている。いうまでもなく、実践的な研修の成果である。
 いまは得意先をルーティーンで受け持ち、関連企業の展示会があれば、積極的に出掛けて人脈を広げているという。
「まだ、自分で一から開拓した顧客はいないので新規開拓が大きな目標ですね。自分で開拓したお客様に喜んでもらえる提案ができ、満足していただけたら、これ以上に嬉しいことないでしょうね」

body4-1.jpg現場のスタッフと打ち合わせをする齋藤陽太さん

編集部からのメッセージ

福利厚生・技術研修の充実で社員のスキルアップを後押し


 同社が社屋を構えるのは、京浜急行穴森稲荷駅から徒歩20分を要する大田区のはずれに位置する。交通には不便な立地条件は否めないが、送迎バスも用意されていれば、社員食堂もある。実のところ周辺企業でバスを用意しているところは少ない。これを実現できるのは、同社の業績が好調というのは言うまでもないが、会社の利益が従業員に還元されているという石井部長の言葉の裏付けと捉えてもいいだろう。事実、福利厚生面での社員へ気配りが随所に見られ、社会保障や保養所などの施設も整っている。なにより大きいのが、社員がさまざまな技術研修に参加できる環境があることだ。社員のスキルアップは、会社の利益に繋がるだけでなく、社員一人ひとりのパーソナリティを育てることにもなる。人を育て、技術を育て、そこから「ものづくり日本」を発信していく企業として、同社のこれからに大いに期待したい。

  • 社名:株式会社クライム・ワークス
  • 設立年・創業年:設立年 1990年
  • 資本金:3,800万円
  • 代表者名:代表取締役社長 山口誠二
  • 従業員数:51名(内、女性従業員数10名)
  • 所在地:144-0033 東京都大田区東糀谷6-4-17 OTAテクノCORE1F
  • TEL:03-3742-0691
  • URL:http://www.climbworks.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください