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城東地区 興和電気工事株式会社

興和電気工事株式会社 50年続く老舗電気工事会社。若手育成に力を入れ、さらなる歴史を積み重ねていく

興和電気工事株式会社

50年続く老舗電気工事会社。若手育成に力を入れ、さらなる歴史を積み重ねていく

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興和電気工事株式会社

50年続く老舗電気工事会社。若手育成に力を入れ、さらなる歴史を積み重ねていく

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会社発展ストーリー
50年続く老舗電気工事会社。若手育成に力を入れ、さらなる歴史を積み重ねていく

 東京オリンピックが開催された翌年の1965年に創業した興和電気工事。その軌跡と電気工事のやりがいを紹介する。

老舗企業の創業のきっかけ

 電気工事というのは、コンセントや照明器具などの電気を必要とする箇所に電線を繋ぐ仕事。興和電気工事が手掛けるのは、マンションやスーパーマーケット、あるいは公共施設などといった、いわゆる中、大規模の電気工事である。同社の受け持ちは、電柱から引き込んできた6600Vの電気を100Vや200Vに変圧するキュービクルという受電設備に繋ぎ、そこから基礎コンクリートと化粧板の間などの隠れた隙間に電線を這わせていく作業だ。建物を生き物の例えると、電線は躯体の中に張り巡らされている血管のようなものなのである。同社はこうした電気工事に携わって50年のいわゆる老舗企業。創業者である林新三社長は、会社設立のきっかけをこう話す。
 「高校生の頃に仲の良かった同級生の父親から、電気工事の仕事を手伝ってくれといわれて、その会社に入ったんです。長年、そこに勤めて専務にまでなったのですが、そこが潰れてしまったんですね。もちろん、自分も途方にくれましたが、部下の再就職先を最優先し、同業者の方々に声を掛けてまわりました」
 ところが、4人が再就職を拒否。実は「林さんの下で働きたいから会社をつくってくれ」と懇願してきたのだという。そこまで頼られて断るわけにはいかなくなった林社長、腹をくくって興和電気工事を立ち上げたと当時を振り返る。その語りっぷりは矍鑠としており、齢83歳を思わせぬほどに明朗快活。若い頃のパワフルな姿は想像に難くなく、ついていきたいと直談判した社員の気持ちもよく分かる。事実、その人柄は、前会社時代からのクライアントが高く評価するところで、創業早々に仕事の依頼が舞い込んできたという。

body1-1.jpg創業のきっかけを語る林新三社長

資本を溜め、事業を拡大する

 「ありがたいことに、付き合いのある業者さんから次々と仕事をいただけたので一日も遊ぶことなく働けました。とりわけ多かったのは、道路脇にあるハイウェイ灯の設置工事です」
 同社が創業した65年は、東京オリンピック以後にあたる。したがってオリンピック景気を真正面から受けたわけではないが、開催に向けて整えられた高速道路建設や幹線道路を軸に、都内近郊の都市化が急ピッチに進んだ時代。幹線道路に立ち並ぶハイウェイ灯の設置工事はまさに天井知らずの仕事。明治通りを任されたときには、荒川区の当時の泪橋から江東区の福神橋付近までハイウェイ灯を立てていったというからその規模の大きさは容易に計り知れる。いずれにしろ、この大規模受注で事業拡大のための資本も溜まり、マンションや公共施設の電気工事といった案件が手掛けられるようになり、現在まで続いているという。
 「やはり事業を起こしてから切り開いた案件は思い入れが違いますよ。初めての仕事は荒川区の中学校の電気工事でした。点灯式で一斉に明かりが点いた瞬間が今でも目に焼きついています。こうした感激がある電気工事の仕事が今でも大好きなんです」
 目を輝かせ当時を語る林社長。今、メインとする事業はそこからの信頼の積み重ねときっぱり。その思いを大事に仕事に当たっているというのは井ノ川栄次工事部部長だ。

body2-1.jpg若手育成に力を入れていきたいと語る井ノ川栄次さん

電気工事の面白さ

 井ノ川さんの仕事は、現場で作業する職人や工事の工程を管理する現場代理人。その業務は多岐にわたり、建築家が引いた設計図を元に配線の長さや種類を書き込んだ施工図を作成し、施工図通りに進んでいるか現場をチェックし、さらには工事部長として会社全体の工事も監督するという役目も担っている。そんな井ノ川さんは電気工事の仕事の面白さをこう話す。
 「例えば、幼稚園なんかはトイレがすごく小さく設計されていたり、建物によってそれぞれ特徴があるので、図面を眺めているだけでも楽しいものです。また、その図面が実際の建物になると、達成感を感じますね。それに、弊社は地元の仕事も多く、その幼稚園も通勤途中にあるので、小さい子たちが遊んでいたりするのを見る度に、この仕事に携われて良かったと感じるんですよ」
 井ノ川さんは、現場から戻ってきた若手に対して仕事の進捗を聞くなどのフォローも欠かさないという。そんな若手の一人が、工事部の齋藤健さんだ。

body3-1.jpg「一日でも早く先輩の力になりたいです」と語る齋藤健さん

先輩について仕事を学ぶ

 齋藤さんは高校を卒業した後、ガソリンスタンドや飲食店のアルバイトを経験し、電気工事の仕事に就いた。そこはいわゆる一人親方が切り盛りする個人経営の会社で、昔気質の親方は、仕事は目で見て覚えろという考え方だったと話す。
 「どんなに忙しくしていても、私に教えてくれるための時間を作ってくださる先輩方には、ひたすら感謝するばかりです。まだ入社して間もないのでできることは限られていますが、与えられた仕事をきちんとこなして、早く尊敬する先輩の力になりたいです」
 一見するとまさに今どきの若者である齋藤さんは、今後、電気工事士や施工管理技士といった電気工事に関わる国家資格を全て取得したいと抱負を語る。同社で仕事のやりがいを見い出したようだ。

body4-1.jpg先輩が見守る中、作業を進めていく

編集部メモ

社員を大切にしたい

 「会社を興した当初から、自分一人では何もできない、ついてきてくれた社員を大切にしなければならないという思いがありました。でも弊社は大企業と違って、別荘や厚生施設を持っていません。ですから、せめて給料面だけでもと、なるべく多く支払うよう努めてきました。経済面、ひいては家庭が安定してくれれば、仕事にも身が入りますしね」と話す林社長。さらに、電気工事士や施工管理技士といった仕事に関わる資格はもちろん、自動車の運転免許などどんな資格でも、その講習費や資格取得費を会社負担にしているという。かつては夜間学校に通っていた従業員の学費を出していたこともあるというから、その思いは一方ならぬものがある。こうした姿勢は半世紀という歴史の中でDNAとなり、同社の次の50年の道筋を切り開いていく原動力となるのであろう。

edit-1.jpg電気工事の仕事は、小さなミスも許されない。施工図を見る目は、真剣そのものだ