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多摩地区 社会福祉法人 合掌苑

社会福祉法人 合掌苑 多様な人材を受け入れ働きやすい環境を創造し介護業界をリードする

社会福祉法人 合掌苑

多様な人材を受け入れ働きやすい環境を創造し介護業界をリードする

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多摩地区

社会福祉法人 合掌苑

多様な人材を受け入れ働きやすい環境を創造し介護業界をリードする

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女性が活躍できる環境創出ストーリー
多様な人材を受け入れ働きやすい環境を創造し介護業界をリードする

職員の約8割が女性という合掌苑では、社員それぞれが状況に応じて働ける仕組みや制度を数多く導入している。そんな恵まれた環境の中でいきいきと働く職員たちの姿を追った。

入居者が幸せになるにはまずは職員が幸せに

 東京・町田市で、養護老人ホーム「合掌苑金森」、有料老人ホーム「輝の杜」「鶴の苑」を運営する社会福祉法人合掌苑。その源流を訪ねると、1945年の東京大空襲で焼け出された身寄りのない人を引き受けたあるお寺にたどり着く。その活動は一過性のもので終わることなく、1953年に社会福祉事業の認可を受けて、その後、合掌苑の運営へと繋がった。
 「身寄りのない人を受け入れたお寺の住職が当法人の創業者です。そんな歴史から、合掌苑は『人は尊厳を持ち、権利として生きる』という創業者理念を大切に守りながら、『入居者様が本当に幸せになること』を目標に施設運営してきました」
 合掌苑の森一成理事長は同法人の成り立ちと理念をそう語り、理念を貫くには当然、それに共感する人材確保が肝になると続ける。もちろん、それを求めるだけで人は集まらない。
 「入居者様が幸せになるには、お世話する職員が幸せでなければなりません。いやいや仕事していたのではとても入居者様に幸せを感じていただくことはできません。そこで私どもでは、職員満足度(ES)を上げることこそ顧客満足度(CS)の向上に繋がると位置付け、数々の取組を行ってきました」(森理事長)
 同法人の取組で注目すべきは、制度それぞれが職員の状況に合わせて使いやすいように重きを置いている点だ。同法人の職員構成比を見てみると、マネージャーや管理部門も含め、約8割を女性職員が占める。そこで、まずは女性も働きやすい職場作りで職員満足度の向上を目指し、これまで様々な仕組みを導入してきた。

body1-1.jpg入居者の満足度向上を目指して、職員が働きやすい環境作りに取り組む森一成理事長

職員の意見を取り入れ使いやすい制度を導入

 最も象徴的な制度は、ライフイベントである出産・子育て時の支援である。産前休業は出産予定日の6週間前からということになっているが、同法人では8週間前から取得できるようにした。その上で実際のところを聞き取り調査すると、出産前よりもつわりの時期のほうが身体的に辛いことが浮き彫りになった。
 「そこで2週間分の有給休暇を妊娠初期のつわり時などに充てられるようにしました。当法人ではこの出産前休業に限らず、職員の状況に応じた制度の導入・運営を原則としています」
 時間単位で取得できる看護休暇制度も、現実的な状況に配慮した仕組みの一つだろう。これは復職した後に、子どもの急な発熱などで病院に連れていく時間を看護休暇に充てられるというものだ。さらに同法人独自の採用方針として「25大雇用」を掲げ、ひとり親家庭や外国人の受入れ態勢の充実など、働きやすさを実践する様々な取組が行われている。
 採用基準でも異彩を放っている。多くの社会福祉法人では介護の資格を取得している人材を採用するが、同法人では資格のない人でも採用する。その背景にはひとり親家庭など経済的弱者に陥りがちな人たちも受け入れて、経済的な自立を図ってもらうことで、各自のモチベーションが上がるという考え方に基づいてのことだ。
 しかも、アルバイトやパートといった非正規職員という採用ではない。限定制正職員という雇用形態を設けて、勤務時間も1日7時間で週5日、8時間で週4日、土日出勤なしといった、職員一人ひとりの状況に合わせた働き方ができる制度を導入しているのである。もちろん、正職員なので各種手当など福利厚生面の支援も受けられる。早くから働き方改革に着手して、職員が幸せに働ける環境作りを行ってきた同法人は、まさに先進的な組織といえるだろう。

body2-1.jpg働きやすい環境だから自然に職員の表情も明るくなる

家族との時間が大切にできる環境を作ってくれる職場

 2人の子どもを育てながら「鶴の苑」でケアスタッフとして働く米塚真悠子さんは、大学で福祉関連を専攻。就職活動の一環で合掌苑の説明会に参加し、その理念に共感して入職を決めたのは、「鶴の苑」の開設と同じ2003年のこと。入職後、3年目に結婚して4年目に第1子、その3年後には第2子を出産した。産休・育休制度を活用して、その後復職したというキャリアの持ち主だ。
 「合掌苑全体では産休・育休制度を利用して復職したケースはありましたが、鶴の苑では私が初めてのケースでした。後輩のいいお手本になれたらいいなと子育てと仕事の両立に挑戦した私にとって有り難かったのが、時間単位で休みが取れる看護休暇制度と職場の理解でした。子どもが急に熱を出して病院に連れていかなければということが起こっても、看護休暇制度が利用できましたし、同僚たちのフォローに何度も助けられました」
 そう感謝の言葉を口にする米塚さんは現在、子どもとの時間を長くとれる生活を送りたいという考え方から限定制正職員の立場で働いている。平日9時~16時半の勤務時間で、退社後には家族の夕食の準備にもたっぷり時間が取れるなど、規則正しい毎日が送れると笑顔を向ける。
そんな米塚さんの表情を見ていると、「家族との時間を大切にできるから、より入居者にもホスピタリティーあふれる対応ができるのだろう」というイメージがふつふつと湧いてきた。

body3-1.jpg2児の母である米塚真悠子さんは職場の同僚たちに感謝しながら働く

理念と行動が一致した働きやすい環境が魅力

 大学時代に同法人で実習をしたのが縁で、2014年に入職した安藤節子さん。ほかの施設でのアルバイトも経験したが、同法人で働く職員の人柄や職場の雰囲気の良さにひかれたという。
 「職場見学の際に、人間の尊厳を尊重するという理念はもちろん、行動指針には『人間大好き』『笑顔を忘れない』といったものがあり、職員の方々が実際に働く場で実践されていると強く感じたので入職を決めました」
 そう語る安藤さんは、「鶴の苑」でケアスタッフとして入居者の入浴、排泄(はいせつ)などの身体介護に当たる。安藤さんがお世話をするのは、比較的自立度の高い人たちになる。そのため入居者の生活のリズムを守りながらお世話することを心掛けているという。
 また「鶴の苑」では組織横断的な委員会があり、安藤さんはコンチネンス委員会(=お客様の排泄に関する委員会)のメンバーとしても活動している。その具体的な活動内容をこう話す。
 「お客様の尊厳が損なわれるひとつの場面として、おむつに排泄するときがあります。できるだけ、おむつではなくトイレで排泄できるように、おむつ形態を見直したり下剤を主治医と調整したり、リハビリを検討したりとその方の状態に併せて個別に対応できるように検討し、それをケアスタッフ全員に共有していくことが役割です」
 そんな安藤さんが何よりもうれしいのは、入居者からのありがとうの一言。そうした感謝の言葉を掛けられる回数もキャリアを重ねるごとに増えてきたと表情を輝かせる。

body4-1.jpg合掌苑の理念に共感、職場の雰囲気に好感を持って入職し、いきいきと働く安藤節子さん

編集部メモ

全国の福祉施設に経営ノウハウを伝授

 

 現在、介護職は恒常的に人手不足である。それに加え、団塊の世代がそろそろ要介護になる年齢に達しつつある。そんな時代背景を考慮して、同法人では未経験者を採用して育ててきた。その経営手腕が内外から評価され、見学者は後を絶たないという。この事態に、森理事長は福祉施設の運営のヒントになればと全国に講演に出掛け、職員が働きやすい環境作りに挑む同法人の考え方と取組を紹介していると話す。「当施設のノウハウを伝えることで、各地域の福祉法人のお役に立てれば嬉しいですね」と熱く語る姿は、超高齢社会の中にあって実に頼もしく映った。

edit-1.jpg有料老人ホーム「鶴の苑」のエントランス。ケアスタッフは清潔な施設で入居者のお世話をしている
 
  • 社名:社会福祉法人 合掌苑
  • 設立年・創業年:設立年 1960年
  • 資本金:-
  • 代表者名:理事長 森 一成
  • 従業員数:182名(内、女性従業員数103名)
  • 所在地:194-0015 東京都町田市金森東3-18-16
  • TEL:042-799-2144
  • URL:http://www.gsen.or.jp