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株式会社木元省美堂

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多彩な制度で働き方をサポート提案型モデルで印刷の領域を越える

仕事も組織も自分事化する風土改革ストーリー
多彩な制度で働き方をサポート提案型モデルで印刷の領域を越える

書籍から商業印刷物まで、紙媒体の制作を、一気通貫で担う木元省美堂。意思疎通を重視した研修と施策で、社員が事業を動かす組織づくりに精力的に取り組む。同時に育児や介護などとの両立を図りながら活躍できる環境も整えた。設立から60余年の歴史を持つ同社は、今、変革の時を迎えている。

企画から印刷まで一貫制作 提案型営業で顧客の信頼を獲得


 印刷は、本づくりの過程で最後の要。「手に取りたくなる一冊」に仕立てるには、色味や触った時の質感などが大きく左右し、制作者の意図を汲み再現する力が求められるという。そうした中で、「きれいな文字、うつくしいカラー」をスローガンに、次の世代に残したくなる印刷物を生み出し続けてきたのが、木元省美堂だ。
 「書籍をはじめ、教科書やドリル医学書など正確さと完成度の高さを求められる分野で、長らく実績を重ねてきました」と話すのは、木元社長である。
 特にここ数年は、会社案内やカタログ、パンフレットや販促ツールなど、商業印刷にも進出。これらの制作は、普通、企画やデザインの部分を広告代理店や制作会社が舵を取ることが多い。だが同社では、コンセプト設定から印刷までを一貫で担う。印刷会社が手掛けることで「企画の段階で、試作品まで提示できるのが当社の強み」と、木元社長は胸を張る。
 入社2年目、営業部の北村さんは、クライアントと共に作り上げていく会社の姿勢に惹かれて入社した。
 「お客様の話をうかがいながら、提案ベースで話ができるのが楽しいです。営業と生産現場が同じ拠点なので距離が近くて相談しやすく、より具体的な提案ができるのもメリットと感じています」

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社員の皆さん。左から新村(美)さん、新村さん、木元社長、社長室の根本さん、北村さん、阿部さん

対話を重視した社員が主役の組織運営


 ビジネスモデルの変革と同時に、組織活性化にも着手した。会社のことを”自分事”化する、オーナーシップの醸成を図る。
 年4回の従業員調査と並行し、木元社長は毎月20人ほどの社員と個別に面談し、会社に対する思いや意見に耳を傾ける。階層別研修では、組織のあり方やアクションプランを自分たちで考える。
 身近なところでは、同じ職場で働く仲間に日頃の仕事ぶりを褒めたり、感謝の気持ちを伝えたりする「Good Jobカード」を導入した。見過ごされてしまいがちな何気ない言動に目を向けることで、仲間意識が芽生えると同時にカードを受け取った人の自信にもつながる。
 「『現場の社員が主役』のマネジメントが基本です。社内のコミュニケーションは以前よりも活発になり、離職者の数も以前の半分以下に減っています」(木元社長)
 事業面でも徐々に成果が表れている。あるクライアントの刊行物を手掛けた際に、企業ロゴの刷新を提案した。それを機に名刺やカレンダーの制作など、一気に受注範囲が広がった。一介の業者から、プロモーションイメージを築くパートナーへと変わった瞬間といえよう。
 「カタログ制作から商品データベースを作成し、スマホで確認できる仕組みなど、紙の表現に留まらない提案も増えてきました」(木元社長)
 まさに、価格から付加価値で勝負する組織へと変わりつつある。

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部署ごとに色を変えた、Good Jobカード。手前の金色のカードは社長専用。書いた枚数や受け取った枚数で表彰する制度もある。商品化もされた

働きやすさを整え結婚後も活躍できる環境に


 印刷業界と聞くと、男性中心の体育会系をイメージする人もいるかもしれない。だが同社は違う。半数近くを女性が占める。木元社長は「特に若い世代が多く活躍しています。採用段階で『こういう本をつくりたい』『プロモーション業務に携わりたい』と、やりたいことがはっきりしていて、頼もしいと感じます」と印象を語る。
 制作部の阿部さんは、学生の頃から冊子のデザインを手掛けるなど、印刷物の制作に慣れ親しんで来た。
 「就職活動ではウェブデザインの会社も回りましたが、形に残るモノづくりをしたくて、入社を決めました」
 働きやすい環境づくりにも、熱心だ。年間休日を105日から110日に増やし、水曜日はノー残業デーを設けている。また印刷現場を除く、その他全社員を対象に、フレックス勤務制度を適用しているという。前出の北村さんも「女性の場合はどうしても、体調の波があるもの。朝起きて具合が悪い時など、とても助かっています」と話す。
 女性のライフイベントを意識した施策にも力を入れる。子育て経験のある社員とランチを共にしながら、経験談を聞いたり今後を考えたりする「ライフイベントワクワク研修」はその一つ。営業部の新村(美)さんは、同僚である生産管理室の夫と受講した。
 「ゆくゆくは子どもも考えています。未定であっても上司に意思を伝えておくことで、お互いに心の準備ができることを知り、とても役立ちました」
 かつては、「結婚したら、仕事を継続するのは難しいと感じていた」と話す新村(美)さん。だが短時間勤務制度や在宅勤務制度などが整う現在は、できる限り長く働き続けたいと考えているという。
 木元省美堂は、「次の世代にも残したい」組織へと、変貌を遂げつつある。

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会社を継ぐ前は、大手総合電機メーカーに勤務していた木元社長。自由闊達な風土を、自社でも育んでいきたいと考える

新婚生活もお互いのペースで 社内カップル誕生


 去年の5月に社内結婚しました。同じ部署だった頃、毎日ランチタイムを一緒に過ごしているうちに、自然と付き合うように。交際中は親しい人を除いて内緒にしていたので、
婚約の報告をしたときはすごく驚かれました。同じ職場なので、繁忙期やちょっと大変な時など理解し合える安心感があります。家では仕事のことは持ち込まずに過ごすのが、円満の秘訣です。
 結婚して1年経ちますが、仕事や生活に大きな変化は特にないですね。家事は夫婦で分担せず、気付いた人がやるように。勤務時間もお互い違うので、それぞれのペースで過ごしています。だけど、ノー残業デーのときは特別。食事に出かけるなど、一緒に過ごす時間を楽しんでいます。(新村さん夫妻)

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さりげなくお互いを気づかう新村さん夫妻

●第14号 (2018年10月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。

企業情報

社名
株式会社木元省美堂
設立・創業年
1955年2月
資本金
1,000万円
代表者名
代表取締役社長 木元 哲也
従業員数
71名(内、女性従業員 30名)
所在地
112-0011 東京都文京区千石2-44-5
TEL
03-3946-3541