<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城南地区 株式会社金羊社

株式会社金羊社 音楽・映像・ゲームの パッケージ印刷でトップシェア。 その品質に世界も唸る

株式会社金羊社

音楽・映像・ゲームの パッケージ印刷でトップシェア。 その品質に世界も唸る

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城南地区

株式会社金羊社

音楽・映像・ゲームの パッケージ印刷でトップシェア。 その品質に世界も唸る

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“こだわり”に挑む若手活躍ストーリー
音楽・映像・ゲームのパッケージ印刷でトップシェア。 その品質に世界も唸る

CD・DVD・ゲームの“顔”であるパッケージの印刷を手掛け、世界的にもその名を轟かす金羊社。
デザイン、形状、色味、紙質など、クリエイターたちの強いこだわりをカタチにする若手社員の活躍に迫る。

ファンも称賛した高難易度のパッケージ

 昭和の音楽シーンを彩ったレコードジャケットの印刷に力を注ぎ、現在はCD・DVD・ゲームなどのパッケージ印刷を幅広く手掛ける金羊社。同分野では国内シェアの半分近くを占め、本社の展示スペースには同社が手掛けた有名アーティスト作品がズラリと並ぶ。2009年の「ザ・ビートルズ MONO BOX」の発売に際し、イギリスからやってきた発売元が同社の印刷品質にほれ込み、全世界向けのパッケージ印刷を一手に任せてくれることになったという。それは同社の技術が世界的にもトップレベルだと認める何よりの証しといえよう。
 メディアパッケージ部の営業担当である2016年新卒入社の佐藤栞さんは、音楽・映像制作の大手企業を顧客に、仕様のヒアリングから始め、イメージを具現化するための印刷工程の検討、工場手配、進行管理などをトータルに担当。直近では世界的に注目される気鋭の映画監督の新作パッケージを担い、そのデザインを手掛けた有名グラフィックデザイナーのこだわりを真正面から受け止めた。
 「先方から届いたのは、黒一色の紙に銀1色刷りで作品名と場面写真を施したシンプルでありながら、独創的なデザインでした。しかし、同時に頭を駆け巡ったのは、『これは手ごわいな』という現実でした。黒は印刷時の傷が目立ちやすく、銀色の色彩を再現するのも困難を極めるからです。製造部とは紙を傷から守るコーティングの厚みから検討し、仕上がりを確認する試し刷りも何度も重ね、微調整を繰り返す日々。『これで行きましょう』と、やっとのことでお客様からGOサインを頂いたときには、全身の力が抜け切るほどの安堵感に包まれました」
 パッケージがネット上にアップされるや否や、SNSにファンからの称賛の声が続々と湧き上がり、顧客からも「次回作もぜひ!」と喜びの声が届けられたという。
 印刷の奥深さを実感する毎日だという佐藤さんは、早く一人前になれるように経験と知識を積み重ね、行く行くは大好きなアニメ作品のパッケージを手掛けたいと目を輝かせた。

body1-1.jpgパッケージの魅力にはまり、アナログレコードの収集が趣味になったという佐藤栞さん

人気バンドの記念すべきCDパッケージを担当

 佐藤さんと同期入社の関谷健祐さんは、営業として主に音楽CDのパッケージ印刷を担当。音楽好きの関谷さんにとって、音楽に携われるこの仕事には興味とやりがいが尽きないという。そのやりがいを実感できたのが、近年の音楽チャートを賑わす人気バンドの新譜パッケージを担当したときだと語る。
 「自主レーベル立ち上げ第1弾という記念すべきシングルCDのパッケージ印刷を任されたんです。最初に話を頂いたときには興奮を隠し切れませんでした」
そのデザインとは、真っ白な表紙にレーベルのロゴをくり抜いたもの。さらに、初回仕様限定盤に特典として封入されるステンシルシールの印刷・加工も託された。これはロゴをくり抜いたシールをTシャツやバッグなどに当て、上からスプレーを吹きかければロゴを印字できるというファン垂涎のアイテム。
 「お客様は、常に理想のビジュアルを追求しています。ただ、2次元のデザイン画では自由に表現できても、いざ印刷・加工となると無理が生じることも否めません。理想とできることの折り合いをどうつけながらベストを導き出すのかが、私たち営業の腕の見せどころですね」
 関谷さんは顧客に技術的な観点から意見を伝え、製造部に何度も試作を作ってもらい、最善の形に近づけていったと当時を振り返る。
 完成したパッケージは発売前からファンの間で話題となり、関谷さんの友人たちからも「カッコいい!」「さすが!」というメールが続々と寄せられたという。
 「もちろん、入社2年目の私だけではできない仕事でしたが、経験豊富な先輩たちから、『こんなやり方も試してみたら』といったアドバイスをたくさん頂いて完成にこぎつけたんです。心強さを感じるとともに、先輩たちの引き出しの多さに感嘆する毎日でした」
 周りから貴重な経験を吸収し、若手の自分たちが主体となって新しい印刷技術にも果敢に挑めたのは、フラットで一体感にあふれた社風があったからにほかならない。そう話す関谷さんの意欲はますます盛んなようだ。

body2-1.jpg「自宅のCDコレクションにも当社印刷の作品がたくさんあるんです」と関谷健祐さん

「明日もまた会社に行きたい」と全員が思える会社にしたい

 佐藤さんと関谷さんの両名が感じる仕事のやりがいや誇り、社内のものづくりに挑む結束力は、浅野晋作社長がまさしく会社作りの中軸に据えているテーマであるという。浅野社長が現職に就任したのは2016年。就任時の社内メッセージとして、全社員が「明日もまた会社に行きたい」と思える会社にしたいと、自身の目指す姿を表明したという。
 「自分の仕事に誇りを持ち、仲間と一緒に切磋琢磨し合って仕事を楽しめたなら、日曜の夜も憂鬱になりませんよね。そんな環境を作るために、就任後から色んな取組を考え、社員が主体となって実践しています」
 例えば、今夏に実施したのは「家族会社参観日」。学校の参観日の逆バージョンとして、学校の夏休み期間中に社員の子どもたちを職場に招待し、お父さん・お母さんの日ごろの働きぶりを見てもらうという試みだ。子どもたちが大型印刷機を興味深く覗き込んだり、加工機の音に驚いたりする度に、社員たちが浮かべる誇らしげな表情が印象的だったと、浅野社長は顔を綻ばせる。
 「子どもたちがお父さん・お母さんの仕事に憧れや誇りを持ってくれたらやっぱり嬉しいですし、明日も頑張ろうという励みになりますよね。当社では納涼大会などのレクリエーションにも家族連れで参加し、家族ぐるみの交流を深め合っているんです」
 浅野社長自身も社員とのざっくばらんな関係を深めるため、2017年から毎月「社長会食」を開催し、月替わりで社員3名と食事に出掛けては、お酒も飲みながら仕事やプライベートの話で盛り上がっているという。こうした“繋がりの強さ”が、全社一体でものづくりに挑む意欲を高め、世界に誇る印刷技術のさらなる進化にも結び付いていくのだろう。

body3-1.jpg「音楽とアートの融合によって文化を生み出せる素晴らしい仕事です」と語る浅野晋作社長

編集部メモ

印刷体感イベント「印刷のいろはフェスタ」を開催


 金羊社は地域の方々に印刷の魅力や奥深さを知ってもらえるよう、毎年5月に本社を開放して印刷体感イベント「印刷のいろはフェスタ」を開催。フォント作成体験、巨大おりがみ、デジタルプリントミュージアムなど、社員主体で展示・イベントを企画し、9回目を迎えた2017年には2日間で2,000名を集客したという。近年はSNSを通じて学生にも浸透し、イベントへの参加をきっかけに同社への入社を決めた社員もいるという。楽しみながら業界を知れる良い機会となっていることは間違いない。

edit-1.jpgタイルに絵柄を印刷する建材印刷など、新しい印刷技術にも挑む金羊社の社員の皆さん。沖縄社員旅行の一枚。