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有限会社小堀加工所

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高い技術と品質が商品に価値を吹き込む
町工場発、シルクスクリーン印刷

真似のできない技術で競合をリードする町工場ストーリー
高い技術と品質が商品に価値を吹き込む町工場発、シルクスクリーン印刷

 プラスチックやガラス製品に絵柄や文字を印字する“ シルクスクリーン印刷” を手掛ける小堀加工所。高度な技術と美しい仕上がりで、価格競争に左右されないポジションを確立している。職場環境改善や提案制度の導入など、従業員の声を活かした運営に力を入れる町工場だ。

他社では真似できない自慢の印刷クオリティ

 葛飾区内の住宅地の一角に、小堀加工所はある。創業から50 余年、シルクスクリーン印刷一本でやってきた。ガラスやプラスチック製品などに、文字や模様を載せる技術だ。複雑な形状でも美しく仕上げる技術力は、同社の自慢である。
 「上面と底面で径の大きさが違うものは、筒状のものと違って塗料を均一に載せることが難しく、にじみや版ずれが起こりやすいのです。側面全体に印刷するものでも、継ぎ目が分からない仕上がりにする自信があります」(小堀社長)
 版の位置を調整するのも経験を要するが、印刷で最も気を遣うのが塗料を混ぜ合わせて色味を調整する調色だ。印刷する素材によって塗料の種類は異なる上、ちょっとした差異が商品価値に大きく影響する。微細な色彩感覚が求められる。
 「加えて乾燥作業では、塗料がしっかり密着し、かつ素材を傷めない範囲の温度と時間のコントロールが問われます。実は奥の深いものなのです」
ものづくり業界の展示会などに出展すると、足を止めるメーカーも多い。失敗が許されない原価の高い商材や、化粧品など見た目の質感が売上げに影響するものなど、「他には頼めない」と相談が後を絶たないという。

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シルクスクリーン印刷の様子。一つひとつ手作業で行い、高度な技術を要するものにも対応している

従業員のアイデアを活かし職場環境を改善

 働きがいを大切にする制度改革や職場の環境改善にも力を入れる。担当するマネージャーの早坂さんは、入社6年目。最初はパートからのスタートだった。
 「家の近くで働ければという軽い気持ちでしたが、今は採用にシフト管理、備品の発注や見積もり作成に制度作りまで、全て任されています。こちらからの提案も聞き入れてもらえ、社内の雰囲気もより良くなりました」
 スタッフの名札には身に付けた業務スキルに応じてシールを貼り、見える化した。更に待遇にも反映させることで意欲向上につながっている。また現場の意見が取り入れられた操作マニュアルや、職場改善のアイデアを募集する制度も早坂さんが提案。実際に、機械の操作方法をタブレット型コンピューターで録画する案が採用された。これまで口伝だったものが映像化され、経験の浅いメンバーでも作業できるようになり、生産性の向上につながったという。

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身に付けたスキルに応じてシールが貼られた名札。色や個数で業務内容や技能レベルを区別している

従業員たちの憩いの場手づくりの休憩室

 さまざまな改善が功を奏し、離職率が大幅に改善、従業員の数は最少期の2倍以上に増えた。それに伴い整備したのがリフレッシュスペースだ。「以前は人数も少なかったこともあり、お昼は工場の空きスペースで過ごしたり、近所の人は自宅に帰ったりしていました。しかしスタッフの数も増え、お弁当を持って来る人も増えてきました。それで倉庫を整理して、くつろげる場所を新たに作ったのです」(早坂さん)
 スタッフみんなで机を囲むランチタイムでは子育て中の人も多いせいか、子どもの話で花を咲かせる。仕事は集中しつつ、休憩は和やかに。メリハリのある職場環境といえよう。

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倉庫だった場所を休憩室に改造。昼休憩や軽いミーティングなどにも使われる

ごみが思い出の品に付加価値をもたらす技術

 同社では、アーティストのライブ会場で配られるプラカップの印刷を手掛けることも多い。ビジュアル重視のエンターテインメント業界では印刷する絵柄が細かく、同社のように技術力の高いところでなければ対応できないためだ。人気のミュージシャンからアニメイベントまで、ジャンルは幅広い。
「無色透明なカップにロゴが入るだけで、ファンにとっては思い出の品になる。持ち帰る人も多く、ごみの減量や処分コストの削減につながっているそうです。シルクスクリーン印刷は、付加価値を生み出す力を持っているのです」(小堀社長)
技術の変化が激しい昨今だが、「この仕事が消えることはないと思う」と小堀社長。世の中が変わっても、モノが消えることはないからだ。むしろ事業の継続には、継承の重要性を感じる。技術者の高齢化により、廃業する同業者からの相談も増えているという。
「私たちの会社も、10 年後はどうなっているか分からない部分はたくさんあります。でも今いるメンバーが技術を習得し、教えられるようになったら、次の世代を受け入れることもできるはず。根気のいる作業も多いですが、当社で印刷したパッケージが店頭に並ぶ姿もよく見かけます。手掛けたものが世に出る喜びを感じられる人なら、きっと活躍できると思います」(小堀社長)
町工場プライドが感じられる同社では、大量生産にはないやりがいが待っている。

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シルクスクリーン印刷が施された製品。継ぎ目のない仕上げや複数の色を用いた多色刷りができるところは、業界でもかなり限られるという

ハツタロウー・ケンジロー・なびでんちゃんのもっと知りたい!

社長の似顔絵入りのオリジナルユニフォーム
 シルクスクリーン印刷に、ホコリは禁物。印刷面に付着しては塗料が乗りませんし、化粧品容器などは衛生上の問題もあります。ですから作業中の服装にも気を遣います。モヘアのニットなど毛羽立つものはNG。でも女性の多い職場なので作業服はオジサンくさいと不評でした。
家から着て来ることができて、作業もできる服装はどんなものだろうと考えた末、ひらめいたのがポロシャツ。どうせなら、展示会に出展した時に誰がスタッフか分かるようなコスチュームにしようと、オリジナルで作成しました。
左腕には弊社のロゴマーク、背中には弊社の取組が漫画化されたときの、私の似顔絵が印刷されています。
ちなみにオレンジは、弊社のラッキーカラーです。(小堀社長)

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創業50周年記念の集いでは、従業員全員でお揃いのシャツを着こなした

●第15号 (2018年12月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。

企業情報

社名
有限会社小堀加工所
設立・創業年
1968 年3月
資本金
300万円
代表者名
小堀 泰克
従業員数
11名 (内、女性従業員10名)
所在地
124-0004 東京都葛飾区東堀切3-12-1
TEL
03-3603-2664
採用情報