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中央・城北地区 日本エンドレス株式会社

日本エンドレス株式会社 独自路線を貫き、顧客の心を捉えるとともに魅力ある職場を実現した創業経営者

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独自路線を貫き、顧客の心を捉えるとともに魅力ある職場を実現した創業経営者

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日本エンドレス株式会社

独自路線を貫き、顧客の心を捉えるとともに魅力ある職場を実現した創業経営者

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創業ストーリー
独自路線を貫き、顧客の心を捉えるとともに魅力ある職場を実現した創業経営者

 猛烈な青春時代の熱い思いをそのままに、独自のやり方を貫くことで顧客に喜ばれ、社員が志高く働ける会社を育ててきた。業界の常識に挑み、革新をもたらした日本エンドレス株式会社の成毛義光社長に、創業時から貫く思いを聞いた。

アメリカで見つけた起業家スピリット

 飲食店で供されるおしぼりをはじめ、トイレのキャビネットタオル、床吹き用のフロアモップやテーブルを拭くハンディモップなどがレンタルであることはよく知られるところだが、その業界がダストコントロール業と区分されることを知っている方は少ないだろう。日本エンドレスは、ダストコントロールを手がけ、四十有余年。飲食店や企業にとって重宝されるパートナーとして発展してきた。
 このダストコントロール業、誰もが知る超大手を筆頭に同業者は少なくなく、その多くがフランチャイズ制をとっているのに対して、同社だけは、自社で企画から開発、製造、レンタル・販売・洗浄まで一貫して行うシステムを確立し、顧客の信頼を得て群雄割拠の業界を勝ち抜いてきた。
「どんなビジネスでもライバルはあります。必ずちょっと目先の変わったことをお客様に提供する。それが会社発展の原動力です。同じことをしていたら、値段でしか差別化を図れなくなります」
 と、成毛義光社長は自身の経営哲学を語る。
 成毛社長は昭和18年生まれ。大学を卒業した後、コンピュータ企業の先駆けである日本NCRに入社し、自他ともに認める猛烈社員として営業に走り回り、実績を挙げていた。
「サラリーマンとして登り詰めようという野心の固まりでした。営業の同期が300人もいて、そのなかでどうしても抜きん出たかったんです」
と若き日を振り返る。その活躍ぶりは会社も大いに認めるところで、入社3年目に親会社での研修生に抜擢され、一年間の渡米というチャンスに恵まれた。ビジネスマネジメントを勉強、そこで運命が動き始めた。
「アメリカでの研修で、いろんな企業を見て回る中で、実力のある人はアメリカンドリームを求めて活躍しているというのを目の当たりにしたんです。これが刺激にならないはずがありません。これといった具体的な目標はなかったものの、いつかは自分もという思いが芽生えました」

body1-1.jpg「社員みんなが元気で魅力的」と営業サポートの矢作さん

逆風のなか直感を信じて起業

 そんな志を抱いた成毛青年のアンテナにある企業が引っかかった。モップやマットのレンタルで、全米にサービス網を拡げていたスタイナー社である。同じころ、日本でも創業13年のダスキンが、破竹の勢いで売り上げを伸ばしているとの新聞記事を目にし、「これは当たる」と直感した。
思い立ったが吉日と即行動を開始した。直感を信じた成毛青年はアメリカ・シカゴに本社のあるスタイナー社に乗り込み、どうしたら日本でこのビジネスをできるか、直に尋ねたのだった。
 担当者の答えはつれなかった。
「ダスキンなど、すでに日本で事業を展開しているフランチャイズになるのが得策」
見ず知らずの青年にも関わらず、その先行きを案じてのアドバイスだったのだろうが、成毛青年は一介のフランチャイズ店長になるつもりはない。独自のやり方で事業をしたいのだと食らいついた。その一念が担当者に通じた。アメリカ・スタイナー社と日本の商社・丸紅と合弁で設立した日本スタイナー社への紹介状をしたためてくれた。
 まさにトントン拍子の成り行きだったが、その紹介状を胸にすぐさま日本にとって返す成毛青年ではなかった。広いアメリカにもっと琴線に触れる事業はないかを探るべく、アメリカ中の企業を回って歩いた。しかし、レンタルマット以上にときめきを感じさせるものはなかった。
 大きな収穫を得ての帰国だったが、成毛青年は、すぐには行動しなかった。日本に戻ってさらに1年、渡米させてもらったお礼奉公のつもりで営業に走り回り、人の3倍の営業実績を残すようになったところで日本スタイナー社を訪ねた。
「最初は、アメリカ本社で言われたのと同じように、フランチャイズに入ることを勧められましたが、1週間に1度顔を出し、しつこく自分のやり方でやりたいと訴えたら、条件付きで認めてくれました」
 その条件とは、「商品の仕入れは現金払い」「同業他社の顧客は奪わない」「ダンピングをしない」「業界のモラルを乱したら即撤退」「獲得した顧客についての報告義務」の5つ。これだけ厳しい条件を出せば、あきらめると思ったのかもしれないが、成毛青年はこれを飲み、マンションの一室で起業した。28歳のときのことだった。

body2-1.jpg「社員を信頼することで大きく発展できた」と成毛社長

お客様の声に徹底して耳を傾けることで差別化を生み出す

 1年目はたった1人。スタイナー社からキャビネットタオルやモップ、マットを仕入れ、その洗浄はスタイナー社から教えてもらった提携先。来る日も来る日も顧客開拓に靴底を減らして歩いて回ったが、反応は鈍い。営業には自信のあった成毛社長だが、「1枚のマットの契約をとる難しさが嫌というほど身にしみた」という。
 孤独と後悔の念に苛まれながらも、気持ちを奮い立たせ、一軒一軒頭を下げて回る。しかし、他社と商品に差がないことから、どうせレンタルするなら大手業者という話の流れになってしまっていたのだ。何かで差をつけなければとの命題を突きつけられた毎日。大きな宿題を課せられた頭に閃きが宿った。
「同業他社のほとんどが、2週間に1度の交換だったので、1週間に1度の交換を打ち出したんです。加えて、他社ではあまり扱っていなかったロールタオルも営業品目にラインナップしました」
営業先も同業の入り込まない飲食業、サービス業を中心に回った。
「水商売は経営が不安定というのでどこも敬遠していたんです。こんな危なっかしい営業はフランチャイズの店長じゃ許されません。苦しい日々でしたが、お客様の喜びを直に聞けるのは何よりの活力源になりました。本当にありがたかったですね」
 客先の要望にも臨機応変に応えた。これもフランチャイズだとできない。やがて、あそこならわがままを聞いてくれると評判が評判を呼び、5年目には自社ビルを建てるまでになった。地下はボイラー室、1階は工場になっており、自社で商品を洗浄加工ができる。回収した翌日には顧客のところに届けられるし、外注費も不要になり、利益率は大きく跳ね上がった。
 顧客から寄せられた声をもとに、独自の商品開発も手がけた。今では定番となっている便座に敷くシートレットや、悪臭を除去するトイレサニタリーは他社にない特長。アイデアが模倣されてもそれはサービス業の宿命。そんな業界で同社が強気の営業を展開できるのは、商品の企画から製造、販売、レンタル、洗浄加工まで一貫したシステムを構築しているからに他ならない。こればかりはおいそれと模倣できない。
 創業16年目には、布団丸洗い事業を立ち上げ、その2年後には、使い捨ておしぼりの工場を立ち上げた。多角化を進めるなかで、事業部制、子会社制を敷き、若い社員にどんどん事業を任せていった。信頼して任せることで、社員のモチベーションも上がり、優秀な人材が集まるという好循環も実現している。

body3-1.jpg社員一人ひとりが生き生きと働く明るいオフィス

受け継がれるフロンティアスピリット

 徹底して顧客の声に耳を傾ける。成毛社長の哲学は、若い社員にも引き継がれている。マットやモップのレンタル事業を行う第一事業部の深澤雄守課長は入社25年目の44歳。同事業部の管理職として新規営業、既存顧客の管理、部下の管理、新商品の開発をトータルでマネージメントする役目を担っている。
「当社は、配達や回収もアルバイトや外部スタッフに任せることなく、社員が行っています。お客様と顔を合わせることで、直接ご要望を聞き、それをサービスに反映させるのです。入社当初から一つのエリアを任されて、まるで個人で商店を経営しているような感覚がありました。それだけに責任感、やりがいを感じていましたね」
と自らの仕事の醍醐味を語り、現在、週5日の営業日で5ルートを回っている営業部員の作業効率を見直し、4日で全顧客を回れるようにしたいという目標に向かって邁進する。
「余った時間で新規事業を考えたり、後輩に指導するような社内システムを構築したい。社長はよく『残業はするな。定時の時間内で130%の力を出せ』と言っていますが、まさにその通り。その言葉を実現できるよう知恵を絞っているところです」。
 同じく第一営業部で営業サポートに就く矢作美樹さんは入社5年目の27歳。一緒に働く仲間を大切にしてくれるという企業風土が働きがいになっていると笑みをこぼす。
「新卒で入社して不安ばかりだったとき、上司や先輩が親身になって相談に乗ってくれました。その時々で的確なアドバイスをもらえたから、成長してこられたのだと思います」と5年のキャリアを語る。
 「この会社の一番いいところは、スタッフのだれもが明るく魅力的なこと。電話の向こうのお各様からも『エンドレスのみなさん元気だよね』とか『いつもありがとうございます』とおっしゃっていただける。それもきっと社員一人ひとりが責任感をもってお客様のところを訪ねているからだと思います」
 同社はいま、拡大する介護市場を見据えて、さらなるサービス展開ももくろんでいる。そこでもまた「他にどこにもない商品・サービス」で、波乱を起こすに違いない。

body4-1.jpg「営業は個人商店のよう」と深澤課長

編集部からのメッセージ

大事故で得た教訓「社員を信頼して任せる」

 日本エンドレス発展の鍵を探るうえで、見逃せないエピソードがある。創業14年目、成毛社長は高速道路を走行中に、トラックに追突され背骨を折る重傷を負った。当時会社は伸び盛り。「私がいなければ会社がダメになる」と成毛社長は思っていたが、長期入院から復帰した成毛社長が目にしたものは、5〜7%だった売上の伸びが、10%以上になっている帳簿。
「当時、ワンマン社長でしたが、社員が成長していることに気づき、それ以来、社員に責任を持たせようと思いました」
 事業部制を敷き、子会社を分離させるようになったのもこれがきっかけとのこと。部下への信頼が、会社のさらなる成長を促した形だ。社員が生き生きと働けるのもこの信頼があればこそだろう。
(※日本エンドレス(株)は、グループ企業の日本ラインファースト(株)、(株)リース東京とともに事業を展開しています。)