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多摩地区 株式会社大熊工業

株式会社大熊工業 「地盤改良」のプロフェッショナル集団。働きやすい組織作りにも尽力

株式会社大熊工業

「地盤改良」のプロフェッショナル集団。働きやすい組織作りにも尽力

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多摩地区

株式会社大熊工業

「地盤改良」のプロフェッショナル集団。働きやすい組織作りにも尽力

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土木技術で街の未来を支えるストーリー
「地盤改良」のプロフェッショナル集団。働きやすい組織作りにも尽力

「地盤改良」という、土木の中でも特殊な技術を有する大熊工業。社会インフラを支える仕事の醍醐味に迫った。

社会インフラを作り上げるプライド

 大熊工業は、土木工事会社として1996年に事業を開始。初期段階こそ土木のみを専門としてきたが、多様化が進む時代の流れを受けて業容を拡大。現在はインテリアショップ「Kaja」などを運営するインテリア事業、注文住宅とリフォームの建築事業「KAJA DESIGN」なども手掛けている。どちらの事業ともリゾートテイストという独自性の高い方向性を打ち出しており、会社としての可能性を大いに広げている。
 もちろん、本業の土木では極めて特殊な工法である「地盤改良」を専門としているだけに、会社の主軸は土木事業に据えている。土木事業部の責任者の一人である高口賢治副本部長はこう解説する。
 「地盤改良を簡単にいえば、地面を固める工事のことです。上下水道、トンネル、橋梁などのインフラ整備や大型ビルの基礎などの工事で地面を掘り進めていくと、どうしても地盤の崩落や地下水の漏出といった問題がつきまといます。そのまま放置しておいたのでは、構造物の安定性を損ないますし、現場で働く作業員の安全も確保できません。そこで地面の強度を高めていく地盤改良が必要になるわけです」
 大熊工業ではその技術力の高さから、難易度の高い工事を任せられることが多い。実際、港区の再開発、東京湾の港湾の地盤、大規模発電所の場内施設、鉄道線路など、私たちの身近な生活を支える重要なインフラ事業に携わっている。近年は東日本大震災の発生で顕著化した液状化対策案件も増加しているという。さらに、東北の被災地で新たに建てられたスーパー堤防なども地盤改良の専門家として工事にも参画。こうした社会を支える仕事に関わるのは、土木事業部のメンバーたちの誇りともなっている。
 高口副本部長は新工法の考案にも取り組んでおり、先日は鉄道線路の補強工事において、社内初の方法を試して成功を収めた。
 「地盤改良はかつて薬液を注入して土を固めていたのですが、今では垂直に掘り下げた幾つもの立坑(たてこう)に、セメントミルクを高圧噴射するなどして地盤を強化する工法が主流です。機械の大型化も進んでおり、次々と新機種が登場しています。技術はどんどん進歩していますから、新しい技術への対応が不可欠な世界だと肝に銘じています」
 オリンピック特需で土木建築業界は盛り上がっているが、業界各社はその先を見据えた取組が求められている。高口副本部長は、新工法の探求を通して、会社の可能性の開拓に挑んでいるのである。

body1-1.jpg高口賢治副本部長は数々の現場で最先端技術を駆使してきた

福利厚生の充実度にも光るものがある

 最新鋭の機器を駆使し、数々の現場をこなしてきただけに同社の社員はいずれも精鋭そのもの。しかし、一見すると同じように見えても地盤は実に複雑な構造になっており、現場によって状況は全く異なるという。特に砂が多い軟弱な地盤などでは、機械の操作一つにも熟練の技が求められる。それだけに技術に精通した人材だけを採用していると思いきや、土木事業部は全くの未経験者が大多数を占めていると高口副本部長は明かす。
 「実は私自身も技術系出身ではないんです。ほかのスタッフもほぼ同様で、スタートラインに立ったときはゼロ。仮に土木を勉強していたとしても、地盤改良に関して精通している人はほとんどいません。ですから、クレーン操作や玉掛けといった現場に欠かせない資格取得も、会社の補助でしっかりと支援します」
 教育支援制度も含めた福利厚生に関しては、この2年ほどで一気に充実度が高まったという。さらに、会社の外に出掛けて見聞を広げようと意欲を見せる社員には、「外の空気を吸おう制度」で支援。また、社外研修やビジネスマッチングのための旅を企画する者には「旅に出ようプロジェクト」を用意するほか、理容室・美容室・ネイルサロン・マッサージなどの費用を50%助成する「心と身体を綺麗にする制度(リフレッシュ制度)」など、非常に独創的な制度が数々ある。
 「土木事業部のメンバーに好評なのは、夏場の朝食支援制度。熱中症対策に朝食が効果的だからと、毎日500円が助成されます。体力を使う仕事だけに、こうした支援があるのは助かっています」
食に関する補助は特に手厚い。本社には冷凍食品やレトルト食品、季節の野菜なども設置。自由に持ち帰って良いという。
 一方で建築やインテリア事業では女性社員も増えたため、在宅勤務や時短勤務などを整備する「サポート制度」も導入した。多様な人材が集う会社だからこそ、働きやすい環境作りも多角的に進めているのである。

body2-1.jpg工事の初期段階で地盤を強化していくのが地盤改良の役割だ

細かなコミュニケーションが、確実で安全な工事に繋がる

 土木事業部の福家千造課長は、この道20年近いベテランである。これまでに首都圏はもとより、地方の地盤改良にも多数、関わってきたが、最近は港区の再開発という大型案件に携わっている。
 「地下鉄に繋がる地下通路、約300メートルの地盤を固める作業に取り組んでいます。地盤改良は普通、1か月程度で完結することが多いのですが、今回は規模が規模だけに4~5か月かけてじっくりと取り組んでいます」
 市街地の地下には、電話線や上下水、電線などが埋設されている。万が一、作業を間違えてこれらに傷をつけてしまうと、一帯の都市機能がマヒしてしまう恐れもある。ミスは絶対に許されない。だからこそ、福家課長はしつこいくらいに関係者と話をして、確認に確認を重ねることに時間を割き、確実性の高い工事を実現していると話す。
 「期限がある仕事ですから、話などせず、作業に集中したほうがいいという見方もあります。しかし、しっかりと意思疎通を図らなければ、早くできるものもできませんし、作業員が思わぬケガをしてしまう原因を作ってしまうかもしれません。円滑な工事には、話し合いは絶対に欠かせないと思っています」
 福家課長は部下を教育する立場でもある。未経験者が多数を占める大熊工業だが、技術に偏った指導はしない。まずはケガすることなく、安全に終わってこその工事ということを徹底的に教え込んでいるという。
 「基本的に地下での作業となりますので、危険が伴う仕事です。それだけに慎重な作業進行が求められますから、納期通りに無事に工事を終えたときの喜びは非常に大きいですね」
 安全第一の工事を目指して、福家課長は今日も現場で厳しい目を光らせる。

body3-1.jpg「やる気と忍耐力さえあれば、経験の有無を問わずに活躍できるはずです」と福家千造課長

未経験から、プロの技術者へ

 沖縄出身の屋嘉部航太さんは、建築とは無縁の普通科高校出身という。それでも、モノを作る土木という仕事に興味があったことや、アットホームで温かな雰囲気の大熊工業に安心感を覚え、入社を決めたと話す。もちろん、未経験の土木への道は不安がなかったわけではない。周囲に助けられたから今があると振り返る。
 「機械の操作はもちろん、用具や専門用語も全く分からず、文字通りのゼロからのスタートでした。苦労も多かったですが、先輩方がしっかりと指導してくださったのが心強かったです」
 地盤改良の場合、短期間で工事が終了することが多い。屋嘉部さんも線路や地下道、道路など、入社以来の3年ほどで実に多彩な現場を経験した。だが、地盤改良は工事の初期段階で行うので、自分が手掛けた現場の完成は見られないことも少なくないという。大きなものだと、完成するのは数年先。非常に気の長い話となる。
 「それでも、大変なことを乗り越えて地盤改良を終えたときの達成感はたまらないものがあります。そして、様々な工事を経験して成長する自分がいることが何よりのやりがいとなっています」
 屋嘉部さんが目指すのは、社員一人ひとりから信頼される存在になること。そのためには、目の前に山積みとなった課題を一つずつクリアしていかなければならない。現場と先輩にとことん鍛えてもらうと気を引き締める。

body4-1.jpg周囲に支えられながら、屋嘉部航太さんは着実に成長を遂げている

編集部メモ

社員発信で会社の未来を考えていく


 大熊工業では近年、独自性の高い福利厚生を展開している。その一環として、会社の仕組みそのものを社員発信で変える取組が進められている。その舞台となっているのが「未来ミーティング制度」。
 建築事業部やインテリア事業部など、部署の垣根を越えてメンバーが集結し、会社の未来に必要な新しい提案や改善手法について、年2回「提案・決議」していくというものだ。この制度のおかけで事業部間のコミュニケーションが活発になり、会社をスピーディーに変化させる土壌が整った。

edit-1.jpg土木の中でも地盤改良という分野で、大熊工業は力を発揮している