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城東地区 有限会社パムック

有限会社パムック 製造から介護まで幅広い福祉事業で社会に貢献。若手社員の奮闘記

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製造から介護まで幅広い福祉事業で社会に貢献。若手社員の奮闘記

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製造から介護まで幅広い福祉事業で社会に貢献。若手社員の奮闘記

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現場経験で成長する若手ストーリー
製造から介護まで幅広い福祉事業で社会に貢献。若手社員の奮闘記

設立23年を迎えたパムックが今、切実な問題として対策を急ぐのが若手育成である。企業の未来を背負って、現場で奮闘する3名の若手に迫った。

介護業界変革に先駆けて利用者目線のサービスを

 2000年に介護保険制度が施行されて以来、介護業界を取り巻く環境は大きく変わった。それ以前の介護政策は行政措置といって、利用者に対して行政が介護業者を手配し、利用者の介護に当たるという仕組みが取られていた。つまり、当時の介護業界にとって顧客とは利用者ではなく、行政だったわけである。いわずもがな、利用者が直接の顧客でなければ利用者のニーズに合ったサービスが期待できるはずもなく、事実、介護のあり方が問題視されていた。
 そうした状況を払拭すべく施行された介護保険制度では、行政が行うのは主に金銭的なサポート。これに伴い、介護業者は顧客である利用者が満足できるサービスを提供することで、同業他社との差別化を図ることとなった。どんな介護を、どんな業者に頼むのかを利用者自身が、それぞれの状況に合わせて選べるようになったのである。
 パムックが設立したのは1995年というから、介護業界の変革が起こる前夜、いわば維新前のこと。まだ利用者目線のサービスが少なかった時代に、利用者に寄り添ったサービスの提供を目指す「社会貢献企業」を社是に掲げて立ち上がった。当初は、車椅子の修理を主としていたが、直に改造やオーダーメイドまで手掛けるようになった。現在は車椅子だけでなく福祉用具の販売・レンタル、住宅改修など、高齢者や障害者の生活の幅を広げ、その人らしい自立した生活を送れるサポートを行う一方で、デイサービス(通所介護)やケアマネジメント、訪問看護なども展開し、地域の安心を支えている。
 事業自体は制度の転換も追い風となって、徐々に拡大し、順調に業績を伸ばしてきた。しかし、設立から15年もたつと、社内の高齢化が顕著となってきた。立ち上げ間もない中小企業は、新人を一から育てる体力がなく、即戦力となる経験者を優先的に採用するため、高齢化が早くなりがちなのだ。改めて社内を見渡せば、社員の平均年齢は50歳。10年後には存続の危機という状況だった。
 一刻も早く若返りを図らなければならない。ちょうど中途採用の育成に伸び悩んでいた時期でもあり、2012年から新卒採用と若手の育成に力を入れ始めた。その第1期生となったのが、2013年に入社したオーダー課の佐藤寛伸主任だ。

body1-1.jpg川畑善智代表(取材当時)(写真中央)を5年目以内の若手が囲む

現場で見て、聞いて、話すこと。それが一番の勉強の場

 「満面の笑みを浮かべ、車椅子に乗っている子どもの写真が就職サイトに掲載されていたんです。それがとても印象的で、面接を受けることにしたんです」
 佐藤主任は入社のきっかけをこう振り返る。体に不自由を抱えた利用者が、自由を手に入れたときの至福の表情。まさに、福祉業の魅力が集約された一葉だったのだろう。それまでは福祉を専門で学んだわけでも、特段の興味があったわけでもなかったが、そこに何かを感じ取ったのだという。
 入社すると営業部レンタル課に配属された。レンタル課の仕事は、介護保険の適用となる特殊寝台や歩行器、車椅子のクッションといった福祉用具の貸出しだ。ここで大切なのが利用者の要望を聞き取ることなのだが、ときに利用者の要望通りではいけないこともある。利用者は福祉用具に詳しいわけではないので、自分の状況を改善するために何が必要か分かっていないケースも少なくないからだ。そこで利用者の要望と必要性とを冷静に判断し、適切なものを提案することもレンタル課スタッフの任務になる。
 「知識と経験が不可欠ですから、初めは上司に同行して、利用者とコミュニケーションを取りつつ、分からないところはその都度、上司や先輩にぶつけて知識を身に付けていきました」
さらに、佐藤主任に好都合だったのが事務所の下階に倉庫と工場があったこと。疑問があれば、実際に用具を手に取ってみたり、製造の技術者に直に話が聞いたりできた。現場が一番の勉強の場となったと振り返る。
 丸4年レンタル課で経験を積み、今年4月からはオーダー課に転属、役付きとなった。しかし、レンタル課とオーダー課では勝手が違うため、今の業務は部下のほうが詳しいくらいだと苦笑い。
 「できることは何もない、という初心に帰って、また一から覚え直しです。ただ、私が持っている福祉用具の知識は決して無駄にはならないと思うので、そうした知識を後輩に教えつつ、一緒に成長していきたいです」

body2-1.jpg本社の倉庫には車椅子がずらり。実際に手に取ることが佐藤寛伸主任の一番の勉強法

1年で部署異動に。 新しいやりがいが見つかる

 佐藤主任のように定期的に部署異動をさせ、多様な経験を積ませるのは、企業が行う王道の育成手法だ。2016年に入社した新井祐里さんは、1年目は営業部オーダー課、2年目からはレンタル課と、2年目にしてすでに二つの部署を経験している。
 1年目のオーダー課は、利用者一人ひとりの体や生活に合った車椅子をオーダーメイド、あるいは既製品を改造するのが仕事になる。そのために利用者と密に接し、要望を聞いたり、相談に乗ったりするところから始まる。情報を共有できたならば利用者への提案のまとめ、方向性が定まれば採寸し、形を決め、部品の発注や技術者とのやりとりも担当する。覚えることや、気を付けなければならないことが多いのはもちろん、利用者の生活に深く踏み込むためには、事情をとことん打ち明けてくれるだけの信頼関係を築くことも重要となる。
 「先輩に付いて現場へ行って、その場で色々な説明を受けたり、帰ってきてから質問したり、調べたりして一つひとつ覚えていきました。覚えることが多く、1年ではモノにならないというのが正直なところだと思います。それでもお客様と直接触れ合う中で、相手の命に関わるものを作っているという実感がわき、お客様との信頼関係を築けた瞬間の喜びは、大きなやりがいでした」
そして2年目からはレンタル課の事務方になった。こちらは介護保険の請求やレンタル用品の発注、発注内容の確認など、主に書類作成で営業をサポートする役だ。対象者は主に高齢者となるため、オーダー課とは勝手が異なる。介護保険制度の内容や役所などに提出する書式など、新しいことも覚えていかなければならない。
 「新しい部署に移ったことで、新しい知識も得られますし、視野も広がったと思います。これから介護保険のことももっと勉強しなければいけませんし、後輩も1人入ってきたので先輩としてのサポートもしていきたいです」と、新井さんはいたって前向きだ。
最近の社内傾向として、事務方だけを集めた会議なども行われるようになり、若手の意見が通りやすい環境になってきている。自分でも意見を提案して、積極的に改善を図っていきたいと意気込みを語った。

body3-1.jpg倉庫の横には工場。技術者との連携が取りやすい環境で学ぶことは多い

人と接するからこその失敗。ミスから仕事の心構えを学ぶ

 同じ2016年に入社の髙橋研さんは、介護事業部のデイサービスセンターに配属された。デイサービスとは、通所型の介護サービスで、そこでは、要介護者が日中の食事や入浴のサービス、機能訓練やアクティビティーなどのプログラムを通して、住み慣れた地域で安心して暮らし続けていくためのサービスを提供している。利用者に対して直接サービスする立場となるため、安心安全を担保する高度な専門性に加えて、一層の緊張感と繊細な気遣いが求められる仕事だ。
 「もともとは体育教師を目指していましたが、介護職に就く母と兄の姿を見て福祉業界に気持ちが傾きました。当社にはレンタル、製造、介護事業と三つの分野があり、様々な方向から福祉に携われるのが魅力ですね」
体育と福祉は“遠からず”の関係だと高橋さんがいうだけあって、大学在学中にホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)を取得するなど、入社時点で全くの門外漢というわけではなかった。しかし、人間を相手にする現場では常に予想しない事態が起こるもの。現場でしか学べないことがたくさんあると話す。
 「入社間もないころ、お客様の気分を害してしまったことがありました。自分では平等に接していたつもりだったのですが、一人ひとり感じ方は違いますから、不公平に感じられたようなのです。もちろん、不公平ではいけませんが、それぞれに合った細やかなサービスを心掛けることの重要性を痛感しました」
 失敗は成長のための通過儀礼。早い段階で失敗を経験し、福祉に携わる人間としての心構えを学べたのは、幸運だったといえるだろう。この出来事をきっかけに高橋さんの仕事への向き合い方は変わり、技術的な向上心も生まれた。社内で開かれる介護技術や専門用具の研修に参加するなどして励み、福祉用具専門相談員の資格も取得を目指している。
 目まぐるしい1年目が終わり、ようやく一通りの仕事を把握できるようになったと話す高橋さん。しかし、これからも日々のサービスをどうやって向上するか、新規に始まる訪問看護事業にどう関わっていくかなど、課題は多い。それを「色々なところでチャレンジできる」と表現した髙橋さんの姿は頼もしかった。
 若手の社会人にとって年の近い先輩の存在は大きい。佐藤主任たちは、新卒採用1期生として20歳以上も年の離れたベテランに囲まれた環境で奮闘してきたが、佐藤主任たちが上の立場になった今、これからの世代には身近な先輩がいる。次世代が互いに刺激し合って、ますます成長に弾みがついていくだろう。

body4-1.jpg高齢者の豊富な体験談を聞けるのも楽しいと高橋研さん

編集部メモ

ぶれない軸があるから、幅広い事業に対応できる


 車椅子のオーダーメイド、改造、修理は製造業。デイサービスや訪問看護はサービス業。福祉という意味では同じでも、業種の違う事業を手掛けるその根っこには「できるを増やす。望みかなえる」という全社で共有する理念がある。
 体に不自由や不安を抱えた利用者の生活を少しでも豊かにするという目的を軸に、情報収集やノウハウの蓄積をしてきた同社だからこそ、このような幅広い事業に対応できるというのを実感させられた。こうした理念が次世代にも受け継がれていってほしい。

edit-1.jpgパムックはトルコ語で「綿」という意味。綿のように優しく包み込むという思いが込められている

  • 社名:有限会社パムック
  • 設立年・創業年:設立年 1995年
  • 資本金:2,000万円
  • 代表者名:代表取締役 西内 豊
  • 従業員数:78名(内、女性従業員数 38名)
  • 所在地:133-0061 東京都江戸川区篠崎町7-23-5
  • TEL:03-5666-4801
  • URL:http://www.pamuk.co.jp