住宅を購入する個人と、建設会社や不動産会社の間に立って、どちらからも中立な立場で建物を調べアドバイスする住宅診断を手掛けるさくら事務所。住宅の購入や、リフォームは初めての方が多く、不動産会社や建設会社の担当者と比較すると圧倒的に知識や情報の差がある。それでは対等な取引はできないと、依頼者側に立ち、不動産版“かかりつけ医”を目指して不動産会社出身の前社長が、全国の建築士や不動産関連の有資格者のネットワークを立ち上げた。
　「購入時に施工不良がないかを確認したり建物の状態に合わせた維持管理のコストや方法を知ることで、不動産の価値を適切に維持していくことができます」（大西社長）
　人と不動産の関係を幸せにすることを理念に掲げていると言う大西社長。同社の考える「幸せ」とは、購入する側が買って良かったと思えることはもちろん、不動産業界や空き家問題などに苦しむ地域社会の活性化にもつながり、更に同社で働く社員一人ひとりが社会貢献による充実感を得ることを意味する。
　「この理念に沿ってさえいれば、既存の事業だけでなく、新しいサービスでも積極的に展開していきます」と社員の自主性に期待する。
　実際、同社のサービスメニューは次々と増えており、近年はマンション共用部の傷み具合を調査したり、管理会社の業務実施状況をチェックしたりするマンション管理組合を対象としたコンサルティングサービスにも乗り出した。
　入社３年目、経営企画室の田村さんは、自身も住宅診断士として活動する傍ら、不動産投資を考えるユーザー向けに建物のコンディションを調べ、修繕計画も提案するサービスを企画し、2019年９月にリリースした。
　「収益物件の取引は頻繁に行われていますが、そのコンディションはあまり問われることはなく、地価と築年数程度で価値が評価されていました。入念にチェックし、それを評価すれば、買い手が適正な金額で購入できるのはもちろん、資金を融資する銀行にとってもリスクヘッジができます。多くの方に利用していただきたいです」と期待する。

　入社後、役員による経営方針や事業内容の勉強会を行い、月に一度は不動産業界でどのようなことが起こっているかなどのカンファレンスを開催。更に、OJT研修など基本的な研修制度は用意されているが、その後は、自分が挑戦したいことに積極的にチャレンジできるのが同社の社風。
　「挑戦したいことに対して、年次関係なく手を挙げることができ、社員皆で応援するというのが当社の方針です。なんでもやらせてもらえて、失敗しても決してとがめられることはありません。失敗を恐れることがないので、自分の思う通りに何でも挑戦できます」（辻さん）
　入社３年目の田村さんが新サービスをリリースできたのも、こうした社風が後押しになっているという。レールは自分で作り、失敗の中から学んでいく。それがチャレンジ精神を持つ力強い社員を育てている。