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多摩冶金株式会社

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じっくり学んで一生ものの仕事に 世界基準の金属熱処理工業

グローバルな技術を身に付ける人材育成ストーリー
じっくり学んで一生ものの仕事に 世界基準の金属熱処理工場

金属部品の状態を、熱の力で最適化する多摩冶金。古くからの技を大切にしつつ、世界基準の品質・技術管理を導入することで、民間旅客機のエンジン部品などグローバルなニーズにも応える。また新入社員への手厚いフォローや新人事制度の導入など、従業員の働き方にも工夫を凝らす。金属だけでなく、人にも“熱い”会社だ。

熱で金属の持ち味を引き出す 航空機部品の受注が急伸


 「金属は硬いもの」、そう考える人は多いだろう。だが実際は、竹のようなしなやかさや、ざらつきを感じさせない滑らかさ、多少の衝撃ではびくともしない頑丈さなど、硬さ以外にもいろいろな表情を持つ。そうした金属のポテンシャルを引き出すのが、熱処理という技術だ。
 「古くは鍛冶職人が刀を作るときに用いた技法で、加熱や冷却を繰り返しながら金属の硬さを変化させます」と説明してくれたのは、多摩冶金取締役副社長の山田真輔氏である。
 同社では主に航空機や宇宙関連、レーシングカーなど、乗り物の金属部品を用途に応じてベストな状態に整える。
 「例えばエンジンのある部品には、圧力をかけたときにゆっくり曲がる粘性が必要です。同じ硬さでも粘性が少ないとポキっと折れてしまい、大事故につながる恐れがあるからです」(山田副社長)
 特にここ数年は、民間旅客機関連の部品の受注が急速に伸びている。国内でも希少な国際規格を取得したためだ。入社2年目の森山直輝さんは、「飛行機やロケットが大好きで、毎日本物の部品に囲まれて嬉しい」と魅力を語る。

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若手社員のみなさん。写真左が、山田真輔副社長。TAMAYAKIN Spiritを表す「誠実・直感・挑戦」のアートワークは、従業員たちの手形を用いて書かれている。秋山さんが中心となり制作された

マネジメントも重要な業務 文系人材も多く活躍


 金属を扱うと聞くと、物理や化学が得意な理系の人材が多い印象を受けるかもしれない。だが実際は、社員の半数以上は文系出身だという。
 「工場では、現場作業担当と品質管理などのマネジメント担当がおり、その人数比はほぼ同じです。特にマネジメント業務は現場の声を聞いて、工程全体を調整できるようなコミュニケーション力が問われます。そうした意味では文系・理系は関係ありませんね」(山田副社長)
 この春入社した廣野歳昂さんは、「アルバイト先で熱処理を知り、金属の赤々とした様子や炎の迫力に魅力を感じた」と話す一方で、同期の水沼美郷さんは、「この会社と出会って初めて熱処理という言葉を知りました。地元の小さな工場が世界を相手にするという構図に憧れました」というように、入社のきっかけは様々だ。

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現場の先輩から説明を受ける、新入社員の水沼さん(左)、廣野さん(左から2番目)、中途入社で加工グループ所属の市塚浩平さん(左から3番目)

専門的だから一生の仕事に 充実した研修


 熱処理は金属業界でもニッチな分野だ。人材が貴重であるのは、言うまでもない。
 「専門性が高いからこそ、一生ものの仕事にしてほしい。ですから私たちは、終身雇用を前提とした採用や育成を行っています」(山田副社長)
 この言葉のとおり、採用では会社とのマッチングを重視。最終選考では「1日体験入社」を行い、実際の業務を体験してもらう。また入社後の研修も手厚い。熱処理の基礎知識や実務をじっくり学び、3カ月弱かけて配属が決まる。
 研修期間中には、近所の金属加工会社との交換研修も行う。双方の新入社員同士が互いの会社を訪問し、アテンドも新人が務めるのである。会社を紹介することを通じて、自社の理解を深められる。また金属部品の製造プロセスで、熱処理と加工は密接な関係にある。互いの業務を知ることは、自社の業務にもプラスになるという。
 「それ以外にも全社発表やイベントの実行委員など、1年目から様々な経験ができます。特に展示会見学や取引先の工場見学では、私たちが熱処理した部品がどのように使われるのかを知ることができ、興奮しました」と、入社2年目の秋山芽依さんは振り返る。メンター制度の充実など細やかなケアもあり、ここ3年間の若手社員の定着率は100%だ。

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秋山さん(写真中央)と入社2年目の森山直輝さん(左奥)は、メンターとして新入社員をバックアップ。研修課題の相談に応じる

やりがいを感じながらコミット いい人材がいい仕事を生む


 また若手に限らず、全ての従業員がやりがいを感じながら業務にコミットできるよう、平成30年度から新たな人事制度を導入した。目玉は、社員種別の改革だ。一般企業では総合職に近い「ワイド社員」や業務範囲を限定した「エリア社員」など、年齢や期待される役割に応じて、6つの区分を設けた。従来の制度に比べて、業務内容と待遇の不公平感の解消が期待できるという。また定年を過ぎても働ける仕組みを明確化したのもポイントだ。
 入社後のケアに人事制度の整備など、働く人たちに寄り添う施策が印象的な同社だが、これほどまでに人に尽くすのはなぜなのか。山田副社長は、「人材あっての多摩冶金だから」と強調する。
 「組織とは仕事があるから人が集まるのではなく、いい人材が集まるからいい仕事が生まれると思うのです。私たちは、持続可能性の高い組織を目指しています。ですから人が育つことが何よりも大切で、経営で最も重視していることです」
  国際規格に準拠し、「TAMAYAKIN」ブランドを世界にアピールできるのも、従業員たちの努力の賜物だ。熱処理された金属のように、しなやかで強い組織に――。多摩冶金の人材への思いは、工場で処理される金属に負けないくらい熱かった。

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平成30年度から実施している社員種別の改革。求められる役割や期待を明確にした

ハツタロウー・ケンジロー・なびでんちゃんのもっと知りたい!


工場内にカフェが出現!? リフレッシュスペース


 東京の本社工場には食堂のほかに、去年夏にリノベーションしたリフレッシュスペースがあります。
 明るく清潔感のある空間で、壁際のソファー席といい、高音質スピーカーから流れるBGMといい、まるでカフェのよう。給茶機もあるので、ティーブレイクに訪れる人も多いですね。ちなみに私は、朝によく利用します。軽食の自販機があるので、始業前の腹ごしらえができるんです。あとWi-Fiを使って動画を見ることも。
 休憩時間が重なったときには他のグループのメンバーと話をしたり、終業後には有志でワイン会などのイベントを開くこともあって、社員同士の交流の場になっています。
(森山さん)

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設備を充実させたことで、社員が自然と集まる人気スポットとなった

●第13号 (2018年6月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。

企業情報

社名
多摩冶金株式会社
設立・創業年
1951年
資本金
1,250万円
代表者名
代表取締役社長 山田 毅
従業員数
120名(内、女性従業員50名、グループ会社含む)
所在地
208-0023 東京都武蔵村山市伊奈平2-77-1
TEL
042-560-4331