地域に愛されるレストランを目指し、朝礼や日報等の様々な機会で若手社員を育てる
フランス料理店3店、売店2店を経営するTERAKOYA。フランス料理を独自の理論・技術・サービスでアレンジし、世界規模の食のアワードで受賞するなど脚光を浴びている。サービス向上のため、日報などで代表の考えや課題を共有し、人材育成にも力を注ぐ。
伝統と革新で来店者の心を掴む
全国名水百選にも選ばれた湧水が育む緑豊かな小金井市に1954年にオープンしたフランス料理店TERAKOYA。四季の移ろいを感じさせる独創的な料理の数々に加えて、ダイニングから眺められる庭園や、周辺の散策情報なども提供。都会のけん騒を忘れさせるレストランとして人気を得てきた。オーナーシェフである間代表が掲げるのが「伝統と革新」。３代目としてフレンチの技を受け継ぎながら、独自の料理理論を展開し、自ら開発したハイテク調理器などを料理に応用。例えば、魚肉に味を染み込ませる過程で、減圧しながら加熱する調理器を導入することで、より色鮮やかに、軟らかく仕上げている。創作料理は3,000にも上り、「目でも舌でも楽しめる逸品」を提供している。
スタッフ教育も行き届き、自然な笑顔と付かず離れずの距離で、来店者を心ゆくまでもてなしている。
「最高の素材、アイデア、手間を掛けたオリジナリティあふれる料理をお出しする。お客様に喜ばれるにはそれが一番です」（間代表）
国内・海外の料理学会で最先端技術を発表する一方、ハムやソーセージ等の古典的技法も今なお大切にしている。また小学校に出向いて食育教室を行うなど、社会貢献活動も行っている。
こうした仕事ぶりが広がり、2007年には吉祥寺、2010年には立川に、よりカジュアルに食事とワインを楽しめる飲食店を増店。2019年には世界的なレストランのトレンド指標となる賞を受賞している。
しかし、単なる店舗拡大は目指していないと間代表は語る。
「『我が町のレストラン』として、これからもその土地に根差し、驚きや喜びのある料理やサービスを提供していきたいです」
個別練習や資格取得支援でサービスの極意を学ぶ
同社では、経験を問わず、ホール、受付、調理業務に従事する社員を採用。先輩社員に教わりながら、同店の名に恥じないサービスを習得していく。入社７年目の橋本さんは「一流の接客を身に付けたい」と入社。「料理はお客様の右側から出すなど細かなマナーを学ぶのが大変でしたが、先輩が個別練習に付き合ってくれたので安心して覚えられました」
業務では、ワインや料理に関する知識も問われる。そこでソムリエ、サービス技能、フロマージュ、シガー･アドバイザーなどの資格受験費を会社が負担するほか、テキストの貸し出し、試飲・試食などで全面的に支援している。こうした豊富な学びの機会を利用し、若手は成長していく。
一通りの経験を得て、仕事の幅を広げたいと受付業務を希望した橋本さんは「お客様に喜ばれるために自分なりのサービスを探求し、日々向上したいです」と輝くような笑顔を見せる。
日報などで情報を共有し社員を個別にサポート
料理技術ならびにサービス向上に努める同社。情報交換の場として、朝礼と日報を習慣化している。朝礼では間代表による5分間の講話後、全社員が持ち回りで3分間スピーチを行う。業務改善案から道徳、時事まで幅広い話題が上げられるという。入社４年目、パティスリー製菓担当の陶さんもこの朝礼に深い意義を見出している。
「相手を思い行動することの大切さや、料理に関係する歴史などマニュアルでは学べない内容を教わっています。将来、独立したときにも役立つはずです」
また、全社員が１日の業務を振り返って記す日報には、間代表が一つひとつ言葉を添えている。
「日報のコメントや声掛けが励みになっています。社員同士で食事をしたり、交流も盛んです」（橋本さん）
ここがポイント！働くやりがい！
創意工夫したサービスでお客様満足を追求する お客様は一人ひとり異なるため「サービス」に正解はない。同社では礼儀作法や技術講習を行うが、そこで学べるのはあくまでも現場に立つための最低限のマナー。代表や先輩たちの所作を見て社員それぞれが、来店者一人ひとりにふさわしいサービスとは何かを考え、実践していく。自分なりに行ったサービスに対して、お客様から寄せられる「美味しかった」「また来たい」という言葉に勝る喜びとモチベーションはないという。
●第20号 (2020年3月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。
