<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 株式会社TOK

株式会社TOK 一人ひとりの成長を力に世界にチャレンジする老舗ものづくり企業

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一人ひとりの成長を力に世界にチャレンジする老舗ものづくり企業

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一人ひとりの成長を力に世界にチャレンジする老舗ものづくり企業

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働きがいの秘密ストーリー
一人ひとりの成長を力に世界にチャレンジする老舗ものづくり企業

 「人材育成に力を入れる企業」「働きがいのある企業」として次々と表彰を受けている企業がある。ユニークな育成施策と積極的な経営姿勢の狙いを聞いた。
※トックベアリング株式会社は、2017年4月に株式会社TOKへ社名変更

摩擦を減らすキー部品

 ベアリングというと回転機械などに組み込まれた鉄製のものをイメージするが、事務机の引き出しや冷蔵庫の引き出しなどをスムーズに動かすのには樹脂のベアリングが活用される。オフィスや家庭内の隠れた力持ちとして重宝される存在だ。TOKは樹脂ベアリングで国内トップシェアを誇る企業。さらに、ピアノや便器の蓋をゆっくりと閉じるのに使われるロータリーダンパーやベアリングの回転方向を一方向に絞ったワンウェイクラッチを開発し、コピー機やプリンターに欠かせない部品として市場で高く評価されている。同社の製品はこの3種にほぼ集約されるが、その活用の場は限りなく広く、使われるケースごとにオーダーに応えるうちに品目数は1000を超えるという。
 「樹脂であることの最大の利点が、柔軟な設計ができること。その分『ちょっとアレンジしてほしい』という細かい注文がお客様から寄せられ、一つひとつ丁寧に応えていたら、いつのまにかこんな数になってしまいました」と吉川桂介社長は胸を張る。

body1-1.jpg「顧客の業界はさまざま。だから不況に左右されにくく80年近く続けてこれたのだと思います」と語る吉川桂介社長

通信講座受講を奨励

 たしかに樹脂なら金属に比べて設計の自由度は高そうだが、柔軟な設計や顧客の注文に小まめに応えるためには、社員の発想力やコミュニケーション力に頼るところも多いという。
 「当社は、経営方針の一つに『“企業は人なり”常に人材の育成を図る』とうたっています。一人ひとりの成長が、企業の成長につながる。そう考えて、社員の学びを応援してきました」(吉川社長)。 
 それだけに、これまでもさまざまな教育施策を展開してきた。3年前からは、民間教育機関に依頼し、社員向けの通信講座185コースを用意、通信教育講座の受講奨励もスタートしている。一つの講座の受講期間は2〜5か月で、半期に一度、社員全員が自分の興味のある講座を自由に選んで受講でき、受講料は全額会社が補助。英会話や原価管理、生産士資格講座など、業務に直結したものから、「幕末リーダーに学ぶリーダーシップ」「ペン字・文章力入門」など、一見仕事にはつながりにくそうな教養系の講座も少なくない。
 「どんなことを学んでもいいんです。学ぶ姿勢を持つこと。それによって日々の生活が前向きになりモチベーションが高まれば、仕事にも必ずよい影響がでるでしょう」(吉川社長)
 制度開始3年間で社員の半数が何らかの講座を受講。取組は着実に浸透してきている。ユニークな取組には社外からの評価も高まっており、「いたばし働きがいのある会社賞」「TAMAブランド大賞『人材育成大賞』など、相次いで雇用関連の賞を受賞。特に「いたばし働きがいのある会社賞」の審査項目である社員に対するアンケートでも、「成長できるという実感を持っている」と答えた社員が多かった(吉川社長)という。

body2-1.jpg開発部門のオフィス。吉川社長の机もここにある

欧米の先進企業に積極営業攻勢

 同社はここ数年、積極的な経営姿勢を打ち出している。「市場で先行しても、すぐに競合が現れるのは製造業の宿命です。それに打ち勝つためには、より付加価値が高く、お客様に認められるものを作り続けなくてはならない」と吉川社長。その考えにもとづき、海外展開にも積極的に取り組んでいる。2000年代に入って同社のトイレ用ダンパーがヨーロッパで大きく売上げを伸ばした。同社の営業担当が、メーカーをしらみつぶしに当たり、市場を開拓していった成果だ。パイプをより太くするべく、2014年には、ドイツ・デュッセルドルフに駐在員事務所を開設。顧客の要望に即応できる体制を築いている。さらに、今年に入って、米カリフォルニアにも拠点を開設した。こうしたグローバル市場、分けてもヨーロッパ、アメリカへ矢継ぎ早に攻勢をかけるのには、明確な狙いがある。
 「欧米のメーカー品はやはり、品質や技術面で最先端です。そこで認められるものをいち早く形にすることで、我々の市場価値も高めていけるのです」と吉川社長。
 「もちろん、欧米にも樹脂ダンパーやベアリングを製造する企業はあります。また、中国企業の技術力も向上し、品質では私たちに肩を並べるものもあります。そこで抜きん出るためには、どれだけお客様の要望にタイムリーにお応えできるかが勝負となります。対応力では決して遅れをとらないようにと肝に銘じています」と海外事業部営業グループの若手、久保田博之さんの言葉に力がこもる。

body3-1.jpg海外事業部のメンバー。中央が久保田博之さん

開発に集中する専従グループを設立

 一方、開発部門では2013年に、「製品開発センター」を設立した。
 それまで、同社のエンジニアは、顧客からの問い合わせに日々対応しながら、時間を縫って製品開発に当たっていた。顧客との距離感を縮めるという点では意味のある体制だが、付加価値の高い製品の開発をスピードアップさせるためには、開発に集中できたほうが合理的。その判断のもと、専従部隊の立ち上げにいたった。
 「製品開発センターでは、何をどうやって実現するか、スタッフの手に任されています。簡単な課題はありませんから、試行錯誤を繰り返すことになるのですが、その分、達成感は大きいですね」とは、高橋大輔国内事業統括部マネージャー。すでに成果も出た。高橋さんが開発したオイルの抵抗を使って途中でトルクを変える仕組みが内蔵された「トルク可変多回転ダンパー」は、優れた新技術・製品を表彰する「中小企業優秀新技術・新製品賞」で優秀賞を受賞。これをブラインドに組み込むと、一定の速度で下りていくようになり、ブラインドの動作音が小さくなり高級感を演出できる優れもの。その動作はモーターの力を駆使しているように映るが電気は使われてない。
 「電気を使えば大抵のことはできますが、私たちは、樹脂製品を使った機械仕掛けで、いろんな動きを出していけるのが強み。ブラインドにこのダンパーを使えば、モーターの騒音もなければ、電灯線を引く必要もなく、スマートに開閉ができます。こうした『新しい動き』をどんどん作り出して、世の中に貢献していきたいですね」(吉川社長)
 世界へ、新市場へ、打って出ていくトップの姿勢と、社員のチャレンジを認める風土。それこそが働きがいにつながっているといえるだろう。

body4-1.jpg「これまでに無い動きを提供できる新製品を開発したい」と語る高橋大輔さん

編集部メモ

現状に満足せず、歩み続ける

 「売上げとは、社外の人の会社に対する評価。それなら評価を受けるためには売上げを伸ばすほかない」と、吉川社長は、業績拡大への意欲を隠さない。まるで設立まもないベンチャー企業のような勢いがある。どれだけ成長を実感できても、社員の収入が伴わなければ、成長への意欲は途切れてしまう。「売上げを増やす」という言葉は、社員の経済的な充足を満たしたいという吉川社長の思いのあらわれといえるだろう。
 部品のスムーズな動きを実現する樹脂ベアリング。電気を使わなくてもモーターを組み込んだかのような動きを実現できるロータリーダンパー。ニッチな市場だが、吉川社長は積極的にトップブランドを目指しており、海外進出や新製品開発の手を緩めない。そんな社長の思いが社員に伝わり、老舗企業でありながら、若々しい空気も社内に充満されている。
 現在、製品開発センターを中心にして、風向風量計やロボット用のアクチュエーターなども開発し、次の事業の柱とすることを目指している。これからも、同社の事業からは目が離せそうにない。

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body4-1.jpg2021年度 vol.1 製造業