水道や下水道は、人々の生活に欠かせない社会インフラの一つ。その中でも、下水処理場は家庭やオフィスなどで使用した汚水をきれいな水にして川や海に戻す機能を持ち、環境保全という面でも重要な役割を担っている。
　宇都宮工業は、下水処理をはじめとした水処理施設の汚水を浄化する装置の開発・設計・施工、プラント設備のメンテナンス等を行う企業として60年以上の歴史を持ち、主に関東地方１都6県の下水道工事関連の事業に関わる。
　「当社は施工のみならず設備設計もできるのが強みで、自治体などに対して最善のシステムを提案して採用されています」（宇都宮代表）
　同社では自社製品の開発にも力を入れている。汚水には汚泥や油分なども含まれているが、汚泥は下にたまりやすく、油分は水に浮くという性質がある。その油分を除去できる装置の特許を取得し、製品化。省エネで効率的にCO２の削減を図り、多くの水処理施設で採用されている。
　また、同社は海外への事業展開にも目を向けている。ビジネスフィールドを拡大し、３年前にベトナム支社を設立。同国の下水処理場に自社製品を組み込んだ水処理システムを提案するなど、市場開拓にも力を注ぐ。
　「当社に研修に来ていたベトナムの方が、帰国してからも汚水処理の事業を続けたいと、現地法人を立ち上げました。今後、大きな経済成長が見込めるベトナムでの事業拡大や、油分処理をする自社製品の販路拡大という面でも期待しています」（宇都宮代表）
　市場拡大はベトナムだけではなく他の地域にも及んでいる。開発途上国への国際協力を行う機関が推進する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を受託し、ブラジルやアフリカの下水道環境の整備にも携わるなど、グローバルな活動を展開している。

　社員を大切にする社風は、「人財育成」にも表れている。同社では技術力の向上とともに人間力を高めることに重きを置く。例えば、朝礼では人材育成のための小冊子を活用。そこに書かれている項目について社員が語り、それを聞いた別の社員が感想を述べるという。
　「仲間への感謝の心を育み、相手の話を聞く、自分の意見を伝えるといったコミュニケーション能力を養います。現場のスムーズな意思疎通だけでなくお客様との信頼関係づくりにも良い影響を与えています」
　そう語るのは、統括本部の田中部長。28年前に営業職から職人にあこがれて転職し、1級土木施工管理技士の資格も取得。同社では施工や溶接で必要な各資格は全額会社負担しており、社員のスキル向上を支援している。