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多摩地区 株式会社ウィズチャイルド

株式会社ウィズチャイルド 短時間勤務の導入で保育士の多様な働き方の実現に成功した保育園

株式会社ウィズチャイルド

短時間勤務の導入で保育士の多様な働き方の実現に成功した保育園

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多摩地区

株式会社ウィズチャイルド

短時間勤務の導入で保育士の多様な働き方の実現に成功した保育園

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常識にとらわれない多彩な働き方ストーリー
短時間勤務の導入で保育士の多様な働き方の実現に成功した保育園

 短時間勤務の普及は著しいといわれているが、あらゆる企業を対象に見渡すとまだまだ身近な制度とはいえない。保育園を経営するウィズチャイルドでは、短時間勤務など多様な働き方を実現している。

子どもたちの主体性を重視した保育教育を実践

 多摩川沿いの豊かな自然に恵まれた「さくらがおかこども園」は、三つの東京都認証保育園と一つの民間学童保育施設を多摩市内で運営するウィズチャイルドの保育園の一つ。同社の独自の環境作りや教育方針は特徴的で注目度も高い。
 「子どもの主体性を尊重した教育で知られる『モンテッソーリ教育』をベースに独自の保育を導入しています。特徴的な例を挙げると、大人が企画して子どもに『させる』発表会はしません。特に運動会・学芸発表会などは学年別一斉保育の典型で、『本番』に向けての準備や練習を連日行う事で、子どもたちも保育士も疲弊してしまいます。保育士はイベント屋ではありませんから。いわゆる『行事』準備に一年中とらわれている大人の姿に疑問を感じたわけです。そこで、日常を一緒に体感できる『保育参加』や『親子遠足』に切り替え、何をしたいかも子どもたちと一緒に考えるようにしたんです。そのほうが子どもたちの真の成長を感じとる事ができます」
 運営方針をそう説明する田中鉄太郎代表の経歴はとてもユニークで、前職はすし職人。我が子が生まれたときには料理長として多忙を極め、家庭を顧みない夫だったと吐露する。そんな状況を一変させたのが保育園を経営していた両親からの「一緒に働かないか」との声掛けだったという。全くの異業種から参入した田中代表の視点は教育界の常識にとらわれない新鮮さに満ちていて、根拠のない慣習を見直しながら独自の運営方法を築いていった。
 「当時の自分は休みもほとんどなく、仕事最優先の生活に迷いがありました。ですから、家庭を大切にするためにも良いきっかけだと考え、まずは給食室から働き始めました」
 当初は園児の食事を作る調理責任者として関わった田中代表、子どもたちの健康を考えて揚げ物をやめ、和食で培ったスキルを生かして、煮る、蒸す、焼くという調理で安全・健康・おいしい食事提供に務め、徐々に保育園の運営にも関わるようになっていった。

body1-1.jpg保育業界の慣習に縛られない自由な発想で独自の運営をする田中鉄太郎代表

保育の質の向上を目指し短時間勤務にシフトする

 保育園運営に乗り出した田中代表を最も悩ませたのが、保育業界の離職率の高さだった。保育士の入れ替わりが激しいようでは子どもたちとの関係性も築きにくく、田中代表が目指す保育は不可能だった。試行錯誤した末にたどり着いた答えの一つが、短時間勤務正社員を複数雇用することだった。
 「短時間勤務はフルタイムと比較すると自由度の高い働き方が可能になり、仕事とプライベートのバランスが保ちやすくなります。例えば、子育てをしている保育士さんも働きやすいので定着しやすくなるわけです。ただし、短時間勤務者が少数派だと周りに気兼ねしてしまう懸念があったので短時間勤務の方を増やし、しかも正社員として登用しました」
 田中代表の予想通り、短時間勤務を積極的に打ち出し採用をかけると、フルタイムで働けなかった子育てママの応募が相次いだ。今では社員の約7割が短時間勤務で働いている。そもそも、子育て中の親に長時間労働させれば、親子の時間は決定的に不足する。会社が1~2時間でも早く帰してあげれば、触れ合う時間が増える。子育ての視点に立って社会が変われば、短時間勤務は当たり前になり、子どもの生活環境はより良くなる。
 「より良い環境で育った子どもたちに20年後の日本社会を創ってほしいじゃないですか。」と田中代表は続ける。
 田中代表には短時間勤務を社会全体に普及したいという壮大な夢がある。
 更に同社では、副業を持つ人も大歓迎というスタンスを打ち出している。実際、脚本・作詞家として活躍する保育士も在籍する。また、通常の保育園では保育士の資格がないと採用に至らないが、同社ではまず準正社員として雇用。働きながら保育士の資格を取得してもらい、正社員に登用するという取組にも積極的で、勤務時間内に勉強できる環境を整え、授業料も全額支給するという手厚いバックアップを行っている。
 子どもの主体性を重視する保育と同じように、社員一人ひとりに合った働き方を考え、人材を育てる同社ではまさに多彩な人材が多様な働き方をしている。

body2-1.jpg短時間勤務で働ける同社には様々なキャリアを持つ保育士が在籍

野外保育のプロを目指して社外研修などに打ち込む

 短大で保育を学んだ鳥谷修平さんは2015年4月に入社。同社が三つの保育園に加えて、学童保育を開設すると聞いて興味を覚えた。民間学童保育「こどもリビング」は、「さくらがおかこども園」に隣接したカフェスタイルの施設で、自然の中で子どもたちが自由に遊べる環境もある。
 希望が叶って入社した鳥谷さんは、午前中は聖蹟桜ヶ丘駅前の「さくらがおか幼保園」に勤務し、午後は「こどもリビング」で小学生の放課後の居場所づくりに専念している。そんな毎日を過ごす鳥谷さんは田中代表と相談して、ある目標を設定した。それは、日本ではまだ少ない「野外保育」のプロフェッショナルになることだ。
 「野外保育は、自然のなかで遊び込みながら子どもたちの生きる力を育むとともに環境教育へも関連付けていく日本ではあまり浸透していない保育の在り方です。この分野では、幼児期に“即時反応”という、言葉にすぐ反応できるようになるための遊びもします。この遊びをしておくことで、転びにくくなるなど、日常のためになる効果もあります。また、自然を使って遊ぶネイチャーゲームやネイチャークラフトなども取り入れており、外部研修やセミナーにも積極的に参加しています。当社で働く最大の魅力は、保育士の考え方を尊重してくれ、一緒になって未来を考えてくれることです」
 そんな鳥谷さんは毎年、卒園児と行くキャンプを楽しみにしている。成長した子どもを見ると、自然との触れ合いを通して成長に関われていることを実感し、やりがいの大きさを再確認するそうだ。

body3-1.jpg田中代表と保育士が一緒になって「未来の保育」を考えられる環境が魅力という鳥谷修平さん

脳神経工学の研究から保育の道に進む

 大学院で脳神経工学を学んだという妹尾綾さんは、今年で入社4年目を迎える。大学院では霊長類の社会性やコミュニケーション力の発達過程を脳神経工学の視点で研究を掘り下げていったと話す。そんな妹尾さんだったが、興味の対象は霊長類から人間の子どもに移った。
 「人間の子どもたちの社会性やコミュニケーションが育つ過程に興味が広がったんですね。それを知るためには子どもたちと実際に触れ合う保育士になるのが先決だと考えて、大学院に通いながら保育士の資格を取得しました。その後、同社に見学に来たのがきっかけで、『ここで働きたい』という思いを抱くようになりました。自然が豊かな環境や子どもの主体性を伸ばすモンテッソーリ教育に共感したのも入社の大きな理由です」
 多くの人が妹尾さんの経歴に対して「なぜ保育なの?」と疑問を投げかけるが、田中代表は面接で、人間の成長に携わる仕事がしたいという妹尾さんの夢に「一緒に実現しよう」と共感してくれたという。幅広いキャリアの人材を受け入れている同社の企業風土も入社の決め手になったと妹尾さんは微笑む。
 そんな妹尾さんは子どもたちに十分愛されているようだ。つまずいたり、忘れ物をしたりすると、子どもたちが「大丈夫だからね。そのうちできるから」と励ましてくれるのだという。そんなエピソードを披露してくれた妹尾さんの表情は輝きに満ちていた。

body4-1.jpgいつも弾けるような笑顔で子どもたちと接する妹尾綾さん

編集部メモ

バランスが良い年齢構成で子どもを支援


 一般的な保育園の保育士の年齢別構成は「半数以上が20代の若手でリーダーも任されている。子育て世代の30~40代はほとんどいない。働きたくても働けていない現状がある」と、田中代表は業界を説明する。ところが、同社の保育士は30~40代の保育士が半数以上を占め、リーダーシップも適材適所で分担している。保護者からみれば同世代の先輩ママでもあり、地元からの雇用が多いため近隣の子育て事情にも精通している方も多い。また働くママの気持ちに立ったきめ細やかな対応には頭が下がる。20代の若手保育士たちにとっても豊かな学びの場となり、子育て中のママさん保育士の活用は一石三鳥の効果だという。同社の「働き方革命」が功を奏した好例といえるだろう。

  • 社名:株式会社ウィズチャイルド
  • 設立年・創業年:設立年 2001年
  • 資本金:300万円
  • 代表者名:代表取締役 田中 鉄太郎
  • 従業員数:100名(内、女性従業員数99名)
  • 所在地:206-0011 東京都多摩市関戸 1-1-5 ザ・スクエアE-5
  • TEL:042-376-3541
  • URL:https://www.with-jamp.com
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください