<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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多摩地区 株式会社ヤマデン

株式会社ヤマデン 採用から教育までコンセプトを一貫。 価値観の共有を成長の原動力に

株式会社ヤマデン

採用から教育までコンセプトを一貫。 価値観の共有を成長の原動力に

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東京カイシャハッケン伝!企業
多摩地区

株式会社ヤマデン

採用から教育までコンセプトを一貫。 価値観の共有を成長の原動力に

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地道な 努力で 人間力育成ストーリー
採用から教育までコンセプトを一貫。 価値観の共有を成長の原動力に

2代目社長の就任以来、人材採用・育成に力を入れてきたヤマデン。
「基礎を地道に積み重ねる」という経営哲学に則ったユニークな育成方法で、ほかには真似できない人間力の向上を目指す。

第2のスタート。 人間力で差別化を

 プラスチックの射出形成や切削加工、電子機器の設計・組立ての会社として1965年に創業(1967年法人化)したヤマデンは、顧客のオーダーごとに違った製品を少量で作る多品種少量生産タイプに属する製造会社。町工場的な技術力や小回りの良さを残しつつ、量産にも対応できる、ある意味良いとこ取りの経営スタイルで信用を積み上げてきた。
 「北は秋田から南は福岡の久留米まで、全国に拠点を展開していて、ある程度まとまった数の注文でも希望通りの納期で仕上げられます。仕上げもきれいだと好評を頂いています」と胸を張るのは山口臣賢社長。
 2009年に社長に就任し、それからの5年間を「第2創業期」と位置付けて、様々な改革を実行してきた。その中心にあるのが若手人材の育成だ。
 「ソフト=人間力の強化をテーマに掲げました。何事も基本的なことを地道にやるのが私のモットーです。地道に積み重ねていかないとできない人材育成は、当社の独自性を打ち出せると考えました。特に今は人間の代わりを機械が務める時代ですから、機械には真似できない部分で独自性を打ち出すことが重要だと考えています」
 人材育成は経営哲学にかなった方法だったと説明する。そして、2017年4月には採用活動をスムーズにする取組として、社名変更が行われた。
 「創業以来、『山口電材株式会社』という社名だったのですが、より多くの皆さんに親しみを持ってもらえるようにとカタカナの名前に変えました。もともと取引先では『ヤマデンさん』と呼ばれていたので、意外とすんなり受け入れられましたね」
 これから新しく生まれ変わろうとしている同社の姿勢を象徴する出来事だといえよう。

body1-1.jpg「基本の積み重ね」をモットーに人材育成を進める山口臣賢社長

社長の考えが浸透し、 実行力が高まる

 山口社長が人材育成のキーワードに据えるのは、「価値観の共有」だという。経営者の持つ価値観や目標を社員に伝えれば、全員が同じ方向を見据えて進むことになり、効率化が図れるというわけだ。社長から社員へ、先輩社員から後輩社員へとうまくバトンが渡っていくように、コミュニケーションの場を増やし、流れを整備した点が特徴的だ。
例えば、外部のコンサルティング会社が開くセミナーには職責上位者から順に参加する。経営に近い立場の人間から順に価値観を共有していったほうが、確かに伝播しやすい。全員のセミナー参加を目標に、数年掛けて徐々に進めてきた結果、今は半ばといったところまで来ているという。
 「また、入社2~3年目の若手社員には、手当てを支給して、1対1で後輩の面倒を見る『お世話係』にもなってもらっています。新入社員が早くなじみ、安心して働ける環境作りの一環ですが、教える側の若手社員にとっても、技術的な指導や仕事の進め方、会社の考えなどを伝えることで、自身の成長を促すことにもなっています」
 会社に早くなじみ、仕事を続けていくのは、スキルアップの大前提。その点は強く意識しており、入社前の内定者懇親会で内定者同士がコミュニケーションを取れるように図らい、また、入社後も飲み会や社員旅行などイベントも開催している。これも定着率アップに一役買っているという。
 「教育体制を整えてからは明らかに社員の実行力が上がっていますね。今までは考えても実行に起こすまでに時間が掛かっていたのですが、それが短縮されてきた。『考えてからやってみる』ではなく『やってみてから考える。失敗したらまた次の手を打つ』という私の考えが浸透してきた何よりの証しと確信しています」
 考えるよりも試行する回数を増やすことで経験値も増え、技術の向上や人間的な成長に繋がっていくというわけだ。それには素直であることが重要で、製造業には不可欠な素養なのだと山口社長は説く。

body2-1.jpg事務所の壁にはスタッフの顔写真がずらり。これもコミュニケーション活性化の一環

一人でできたときの達成感を糧に成長を続ける

 2015年入社の小林理沙さんは、理系出身というだけあって就活時にはものづくりに仕事を求め、メーカー各社を回ったという。特に高分子化学に興味があったことからプラスチック加工のメーカーである同社に目が止まり、インターンシップに参加して、優しい社員が多く、働きやすい環境を体感して入社を決めた。
 「1年目は射出成形に携わり、2年目からは切削加工の担当になりました。同じ切削加工でも小ロット加工と量産加工とでは勝手が違い、色々なものづくりを経験させてもらっています」
 切削加工は主にコンピューターで数値制御された工作機械を使用し、人が機械の動きをプログラミングして加工を行う。機械が自動でやるなら人間の出る幕はないようにも思えるが、ことはそう簡単に運ばない。材料の性質や形を熟知した上で、手順や刃物の回転スピードなどを細かく設定しなければならないため、緻密なプログラミングが欠かせないのだ。
 しかもプログラミングが無事に済んだとしても、実際の加工となれば数値通りとはいかず、気温や刃物の劣化などによって誤差が出ることがある。こまめにサイズを測って誤差がないかに目を配らなければ、図面通りには仕上がらない。つまるところ、経験を積んだ人間の腕と目が頼りになるというわけである。
 「だからこそ、最初に一人でプログラムを組み上げて、寸法通りに仕上げられたときはうれしかったですね。先輩の作業を見たり、相談したりしながら、昨日までできなかったプログラムができるようになった瞬間は成長を実感できます」
 小林さんは、ものづくりのやりがいを糧に、知識や技術を身に付けようと努力を惜しまないときっぱり言い、会社が用意したセミナーでは、環境整備の大切さなどものづくりに携わる人間に必要な考え方を学び、工作機械のメーカーが開く講習会では、機械の使い方をさらに深めた。様々な経験を積む中で意識するようになったのはチームワークの重要性だと語る。
 「ものづくりはチームワークですから、自分の作業だけに没頭するのではなく、周りの様子にも目を配るようにしています。作業が大変そうだったり、遅れていたりするところはフォローしてチーム全体でスムーズに進行するように発想を柔らかくしていきたいですね」
 個人のスキルアップだけでなく、人としても成長できるのが同社の育成の魅力と、小林さんは目を輝かす。

body3-1.jpg若手社員が笑顔で働ける環境だ
 

会社と価値観の合う就活生を求めて

 人材を育成するには、その前提として企業の価値観や方向性に合った人材を採用することが重要となる。採用活動と教育制度の充実は、人材育成のニ本柱といえよう。当然、同社も教育だけでなく採用にも力を入れており、それに伴って人事に新たな戦力を投入した。2016年入社で営業事務出身の鈴木美皐さんだ。
 「生活の当たり前を作る仕事に憧れ、水道や電気といったインフラ関係を見て回っていたのですが、目先を変えて見ればインフラと呼べる業種はもっとたくさんあることに気付いたんです。そこで目を付けたのが、身の回りのあらゆるところに使われているプラスチックでした」
 と自らの就職活動を振り返る鈴木さん。視野を広げたことで同社を見つけ、インターンシップで同社の社員たちの仕事ぶりや雰囲気を知り、入社への気持ちが固まったと話す。
 入社から2年弱は営業アシスタントとして注文処理や経理などを担当し、2017年12月から人事担当となった。若い世代への訴求力を高めるには、同じ若い世代の発信力が不可欠との采配だろう。
 「採用ホームページを作ったり、合同説明会に参加したりと新しいことの連続です。教わったことは一回でマスターできるようにしようと、メモを取り、一通り終わった後は手順をマニュアル化して残しておくことを心掛けています」
 営業アシスタントのころは、営業の行動を先読みして動くことをモットーにしていたという鈴木さん。それには段取りを体系化しておくことが必要で、そのときに培った仕事のスキルが、働く部署が変わっても生かされているというわけだ。
 さらにもう一つの重要な仕事が、すでに内定した学生へのフォローである。これから社会人という未知の世界に踏み出す内定者たちは不安でいっぱいになっている。そんなときに内定先の企業から丁寧にフォローしてもられば、どれだけ心強いことか。自分のときも親切に面倒を見てもらった経験から、後輩に対しても内定者研修の日程や場所、行き方をこまめに連絡するなど、不安が少しでも解消されるように気を配っているという。
 「当社には分からないことは分からないと言える素直な人が向いていると思うので、価値観の合う人を、一人でも多く採用に繋げて会社の発展に貢献したいです」
 素直な人材――山口社長の思い描く社員像は、ちゃんと社員に伝わっているようだ。
 こうした人材の採用・育成の先に見据えるのは事業拡大、売上No.1といった会社の発展である。ひいてはそれが給料アップ、賞与、残業時間の削減といった社員への還元へと繋がる。会社の成長が社員のモチベーションアップや成長を促すという山口社長が描く理想的な形になるというわけだ。「それから社員旅行でハワイに行くのもいいですね」と次々と社員への還元案が出てくる山口社長を見て、同社がこれから先、どんな成長を遂げるのか楽しみになった。

body4-1.jpg未来を担う人材発掘を任された鈴木美皐さん

編集部メモ

人間力を伸ばすには歴史を知ることが重要


 山口社長の経営哲学が大いに発揮されている研修の一つに、鹿児島県・知覧町への研修旅行がある。知覧といえば、戦時中に特攻隊の基地が置かれたことで知られている町。当時の資料が残された記念館もあり、そこで歴史を学んでもらうのだという。
「歴史があってこそ、今の社会や自分があるのですから、それを知ることは重要です。歴史に興味を持ってもらいたいので、個人的な旅行でも城や史跡など歴史的な場所を訪れる場合は、交通費を負担しています」(山口社長)

  • 社名:株式会社ヤマデン
  • 設立年・創業年:設立 1967年
  • 資本金:4,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 山口 臣賢
  • 従業員数:189名(内、女性従業員数 56名)
  • 所在地:196-0002 東京都昭島市拝島町1-13-9
  • TEL:0425436011
  • URL:http://yamaden.net
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください