<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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アルケア株式会社

アルケア株式会社 医学と工学の融合により、医療の現場に新たな価値を生み出していく<br>研究から開発、製造・販売まで一貫して手がける医療消耗材分野のトップメーカー。研究開発型企業として、技術を核とした製品開発で受賞歴も多数

アルケア株式会社

医学と工学の融合により、医療の現場に新たな価値を生み出していく
研究から開発、製造・販売まで一貫して手がける医療消耗材分野のトップメーカー。研究開発型企業として、技術を核とした製品開発で受賞歴も多数

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輝く技術 光る企業

アルケア株式会社

医学と工学の融合により、医療の現場に新たな価値を生み出していく 研究から開発、製造・販売まで一貫して手がける医療消耗材分野のトップメーカー。研究開発型企業として、技術を核とした製品開発で受賞歴も多数

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  • 社名:アルケア株式会社
  • 設立年月:1955年
  • 資本金:9000万円
  • 従業員数:440名
  • 代表者:代表取締役 鈴木 訓夫
  • 社員平均年齢:38.4歳 2011年6月
  • 初任給:(基本給)院卒:213,520円、大卒:196,820円
  • 主な勤務地:東京都墨田区、千葉県千葉市、その他全国主要都市
  • 休日:土日祝日、有給休暇、夏期・冬期休暇ほか
  • 本社所在地:東京都墨田区
  • 電話番号:03-5611-7800
  • 公式HP:http://www.alcare.co.jp/
  • 第45回グッドカンパニー大賞・グランプリ、2009年・2011年東京都ベンチャー技術大賞・優秀賞、第8回勇気ある経営大賞・大賞、第3回ものづくり日本大賞・経済産業大臣賞と数々の賞を受賞してきたアルケア株式会社。大手企業と比べれば小規模な組織ながら、キーになる独自技術をベースに事業を展開し、目覚ましい成果をあげてきた。中堅企業や中小企業であっても、技術を武器にして競争に打ち勝てるというその方法論とは。
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事業紹介

独自のコア技術を活かし、ベストケア創造する企業へ。アルケアは創業以来、数々の医療機器や医療衛生材料を医療の現場へお届けしてきました。技術開発型企業として培ってきた独自技術ベースに、整形外科、外科、看護、在宅医療へと事業の領域を着実に広げています。高齢化社会がますます進展しく日本。アルケアは、怪我や病気で苦しむ人だけでなく、年を重ねても健康で豊かな生活を送ることのできる医療福祉社会の実現を目指し、健康でありたいと願うすべての人々に最良の製品とサービスを提供し続けていきます。

7領域で強みを発揮する製品を開発できた理由は、“傘”に見立てた研究開発戦略

アルケア株式会社の事業領域は、外科、整形外科、形成外科、皮膚科、看護、在宅など、「ケア」が必要とされるほとんどすべての場面に及ぶ。関節固定装具・サポーター、創傷の保護などに使うドレッシング材、体圧分散用品、排液管理用品などと実にさまざまで、取り扱い製品数は350種類2000品目に及ぶ。 同社の従業員数は440人。決して少ない人数ではないが、大手メーカーと比べると規模では見劣りしてしまう。それでも幅広い分野の製品を扱うことができ、多くの医師や看護師から支持される優れた製品を開発できるのはなぜなのだろうか。同社取締役常務執行役員の岩嵜徹治氏は次のように説明してくれた。「市場のニーズに深く着目し技術の本質を見極め、キーテクノロジーの構築を通して基盤技術を強化し、その技術を用いて商品として応用展開してきたからです」 「モノづくりに必要な技術的要素を分解していくと、要素技術を基点として、評価技術、素材・マテリアル・ソフト、生産技術へと広がっていきます。製品だけを見ますと、技術的なつながりがないように思えるかもしれませんが、当社では、ある共通した要素技術をいくつも持っていて、それらを市場のウォンツに合わせて一気通貫で製品化しているのです。 当社のような中堅企業にとって限られた資源をいかに効率良く活かしていくかは必須命題です。ですから、核となるキーテクノロジーを確立して応用展開していく力が特に重要になるのです。この力を伸ばすことで、技術を製品化するスピードも速めることができます」(岩嵜氏) つまり、同社は多数の製品を有しているが、医科学に材料科学、そして人間工学の三つのコア技術を基点に学術領域を深めている。コア技術から見ると、それぞれの製品に使われている技術は共通しているものが多い。同じ技術をさまざまな領域・製品で使うようにすることで、キーになる独自技術をフル活用し、経営の効率化を図っているのだ。

03.jpg 取締役常務執行役員研究開発本部長 岩嵜 徹治 さん
04.jpg “傘”に見立てた3次元的な事業展開のイメージ図
05.jpg さまざまな領域で製品展開している

医師と対等に話せるまで時間は掛かるが、自立できるまで支援

大学では、医科学だけ、材料科学だけ、人間工学だけを学んできたという学生は多いだろうが、それらをまたいだ技術を深く学んできた学生はまれだろう。 従ってアルケアでは、入社後に日々の仕事を通じて自分を成長させ、それまでの専門領域を強みとしながらも、別の技術も身に付けていくことが求められる。入社してから学ぶことの多い同社では、ある程度自分で仕事が作れるようになるまで6〜10年ほど掛かる。特に医師とコミュニケーションを取り、抱えている問題について医師から情報を引き出せるようになるまでは長い時間が掛かる。そこで若手社員が独り立ちするまでは、会社として手厚く支援。例えば、医大のカリキュラムを1年間受講できる機会を設けるなど、医学と工学の基本的な知識を習得できるようにしている。 大学などの研究者との共同研究も多数進められていて、 足りない部分の専門知識を外部から取り入れる機会もあり、多くの学びの場が提供されている。

06.jpg 医工学研究所 研究棟

研究開発で禁物なのは、中和されることとそろばん勘定

アルケアが求める人財像は、高い志を抱いた人。高尚なものでなくても構わないので「自分はこうなりたい」という意欲を持っている人財だ。時に研究開発は、困難や逆境を乗り越えねばならないので、忍耐力も兼ね備えた人が望ましいと岩嵜氏は語る。 「研究には創造力が、一方の製品開発には関係者を動かすというパワーが必要とされます。『自分はこうなりたい』という気概を持っていれば、この両面をうまく伸ばしながら、醍醐味ある仕事ができます。 研究開発者にとって重要なのは、中和されないことと、そろばん勘定をしないこと。他人の意見に耳を傾けすぎて自分の色を失ってしまっては、技術者としては成功しません。また、開発に取り掛かる前から『これくらい売上が見込めそうだ』とそろばん勘定からはじめる人も成功できないのではと思います。画期的な技術は周到な準備と、チャレンジしてみるという精神から生まれるのではないでしょうか」(岩嵜氏) アルケアの社名は、「ALL CARE」を略したものだ。事業対象とするのはその名のとおりケア領域全般。技術の共通化が難しくなってしまうので、ケア領域を超えていくつもりはないが、研究開発の在り方はより良いものを求めていきたいと岩嵜氏。「当社の研究開発は、現在のやり方では限界に近づきつつあるのではと考えています。これまでとは違うやり方や考え方を採り入れて、新しいアルケア研究開発の姿を描き出していくことが今の私の課題です」

07.jpg 研究成果を共有する発表会
08.jpg 研究棟内コラボレーションスペース

先輩メッセージ
医療への貢献を目指し、困難を乗り越えていくことに大きなやりがいがある

開発部 ウンド&ナーシンググループ
川波さん
――入社に至るまでの経緯について聞かせてください。
大学では運動生理学を学び、人体のホルモンに関する研究などをしていました。運動生理学を専攻に選んだのは、健康や医療の分野に興味があったためです。ですから、就職先を考える時にも、健康・医療の業界に絞って探しました。私の研究領域とアルケアの事業領域とは直接的な重なりはありませんでしたが、身体に対するアプローチという意味では同じでは、と考えて入社試験を受けました。 たくさんの企業の中からアルケアに入社を決めたのは、まず研究だけでなく製品開発にも携わることができることと、面接選考などで感じた会社の雰囲気が良かったことが理由でした。社風がとてもアットホームで、社長から社員一人一人に声を掛けてくださるなど経営トップと現場との距離感が近いことに惹かれました。現在でも、他部署の社員とも打ち合わせやプロジェクトなどで顔を合わせる機会も多いですし、社員同士の距離も近い会社だと思います。
――現在は商品開発を担当されているそうですね。
ウンド&ナーシンググループで、患者さんのケアに使う材料などの設計から商品化するところまでを担当しています。学生時代の研究と現在との違いで一番強く感じていることは、商品開発した後も、長期間に渡って市場で販売していくことを想定しておかなくてはいけないところです。目的の機能を出す素材を選ぶだけでなく、安定的に調達できる材料か、基準内の品質を維持して生産し続けられるかなども考える必要があり、「商品開発が終わったら私の仕事は終わり」ではありません。責任が大きいですが、その分やりがいも強く感じています。 最近では、寝たきりの患者さんに使われる医療材料の開発にも携わりました。ほかの社員と共同で開発をして、試作段階の製品評価などを主に担当しました。商品化するまで3年くらい掛かったのですが、病院の医師に実際に使っていただいて意見を求め、改善点を修正するということを積み重ねるトライ&エラーの毎日でした。苦労も多かったので、製品が発売されて医療現場で良い評価をいただいた時にはとても大きな喜びを感じました。「一つ解決できた」と思ったら別の問題が生じる、「100の課題をクリアしたら完成」と思っていたのに実際に100まで進んだら10戻らなくてはならない、といったようなことは日常的です。それら一つ一つを着実に乗り越えていく時にもやりがいを感じます。
――最後に、今後の抱負について教えてください。
医療機器の研究開発を通じて医療にかかわっているわけですから、たとえ時間は掛かっても少しでも良い製品を生み出していきたいですね。 個人の成長という点では、入社して間もないころは正直なところ、「なぜこの仕事をしなければいけないのか」と疑問を感じながら取り組む仕事もありました。ですが、今ではそう思う仕事でもしっかりと続けてきたことが、今の自分を支える力になっているということを感じています。どんな仕事でも、自分のためになるか無駄になるかは心がけ次第だと思っています。まずは与えられた仕事を自分のものにできるように、しっかりと継続してすることの意味は大きいと実感しています。これからさらに成長できるように、このことをこれからも心掛けていこうと思っています。

09.jpg 川波さん

自分の開発した製品が発売され、医療現場で喜ばれることが一番のやりがい

バイオインターフェイス研究部エンジニアリンググループ
金木さん

――アルケア入社の決め手は?
私は学生時代、材料系を専攻して新規の分析手法を構築する研究室に所属していました。元々、モノづくりが好きで、「メーカーに入社して役立つ基礎技術を身に付けよう」と考えていました。就職先を選ぶ時には、自分の専門を活かすことよりも、消費者向けの最終製品を作っているかどうかを優先していました。大学で学んだ専門的な知識は仕事の中のどこかで活かせればいいくらいに考えていました。 食品、化学、石油製品、鉄鋼など業界を問わずに就職活動を行いましたが、面接などで社員の方の話を聞かせていただくと「何か違うな」と感じていました。それがはっきりしたのは、基礎研究の仕事に就いている社員の方からお話を聞いた時です。みなさん非常に優秀な方ばかりで憧れる部分もありましたが、基礎研究をずっと続けるよりも自分の視野をもっと広げられるような環境に身を置きたいと感じました。自分の得意分野で仕事ができるかどうかよりも、技術的な知見や自分が影響できる範囲が広がるような仕事を自分は求めているのではないか、と。 アルケアの選考を受けたのは就職活動も後半に入ってからです。医療の分野にも興味があり、「医療業界の開発型の企業で、私の専攻も合致する企業」という条件で検索してみたら、アルケアだけがヒットしました。 会社の説明を聞いてみると、顧客となる医師や看護師の方と直接お話する機会があること、国の研究機関や大学と共同研究する機会があること、さらには、学会で研究発表を行う機会もあることなど、広いフィールドで研究開発の仕事ができるという点に魅力を感じました。
――現在はどんな研究を担当されているのですか?
製品に使われる新素材について研究しています。特定条件下で製造した時にだけ、目指す物性を持つ素材ができることが分かってきましたので、今は素材の製造プロセスを見直して、特定条件が何かを突き止めることがテーマです。 研究の仕事を通じたやりがいは、自分の担当した製品が発売された時です。特に、医師、看護師や患者の方々に喜んでいただいた声がとてもうれしいですね。 アルケアは、技術開発から製品化して市場に流通されるところまで一貫して手掛けています。私もメーカーの研究開発者として、技術開発から市場までを俯瞰できるように知識と経験の幅を広げていきたいと思っています。さらに、自分の技術を展開して幅広い商品群に活かしていきたいですね。
――これから就職活動をする学生に向けてのメッセージをお願いします。
自分の専門分野を活かせる仕事に就ければ素晴らしいですが、そこにこだわりすぎて自分が将来ありたい姿を見失ってしまうというようなことがないようにしてもらいたいと思います。修士卒なら大学で6年勉強することになりますが、その後の社会人人生はその何倍もの時間続くことになります。学生時代に培ってきたものは自分の強みとしながらも、視野を広げて自分がどのように社会に貢献していきたいかをあらためて考える機会にすることは、とても大切なことだと自分の経験を通じて実感しています。

10.jpg 金木さん