<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 田中医科器械製作所

株式会社 田中医科器械製作所 医師はじめ、医療機器メーカーを含めた関係者全員の困りごとを解決したい<br>既製品だけでは不十分。販売・製造の両輪で、医師のニーズを満たす医療器械を多品種少量/オーダーメードで製作

株式会社 田中医科器械製作所

医師はじめ、医療機器メーカーを含めた関係者全員の困りごとを解決したい
既製品だけでは不十分。販売・製造の両輪で、医師のニーズを満たす医療器械を多品種少量/オーダーメードで製作

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輝く技術 光る企業

株式会社 田中医科器械製作所

医師はじめ、医療機器メーカーを含めた関係者全員の困りごとを解決したい 既製品だけでは不十分。販売・製造の両輪で、医師のニーズを満たす医療器械を多品種少量/オーダーメードで製作

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  • 社名:株式会社 田中医科器械製作所
  • 設立年月:1953年1月(創業1916年)
  • 資本金:1000万円
  • 従業員数:72名
  • 代表者:代表取締役 田中一嘉
  • 社員平均年齢:37歳
  • 初任給:190,000円~200,000円程度
  • 主な勤務地:東京都北区
  • 休日:土日祭日、年末年始、有給休暇、積立有給休暇
    ※ 積立有給休暇とは、期限切れする有給休暇を20日を限度に積立しておき出産・育児、介護、入院を伴う療養などに使用できる制度
  • 本社所在地:東京都北区田端新町2-14-18
  • 電話番号:03-3894-7700
  • 公式HP:http://www.e-tanaka.co.jp/
  • ・医師が使うメスや鉗子などの医療器械を多品種少量で製作
  • ・“多品種”少量で作れるメーカーはごくわずか。医師への売り込みまで自社で
  • ・昔からのアットホームな企業風土。男性でも育児休暇を取りやすい雰囲気
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業種

医療器械・鋼製小物の製造販売

事業紹介

田中医科器械製作所は医療器械の製造と販売を行なっている会社です。

【製品】
我々が製造している医療器械は外科手術で使われる、鉗子・ピンセット・はさみなどに代表される鋼製小物と言われる器械です。
鋼製小物は医師の手の代わりとなって、切除・把持・剥離などをする重要な器械です。

【少量多品種の業界】
鋼製小物は患者さんの体格差や手術する部位によって、同じ器械でも様々なサイズを使い分けるため、製造についても同じ器械を大量に作るわけではなく、沢山の種類の器械をそれぞれ少しだけ作る"少量多品種"の世界です。
機械で大量生産するわけにはいかず、今日においても職人が1本ずつ手仕上げしています。

【技術の伝承】
少量多品種の都合上、技術の伝承は重要な課題です。
当社は大正5年(1916年)に創業して以来、積み重ねてきた技術・経験を伝承すべく、若い技術者の育成に力を入れています。

何を作ってる?

メスや鉗子、ピンセット、ハサミ、開創器といった手術などに使う「鋼製小物」と呼ばれる医療器械を製作する。ただし田中医科器械製作所が手掛けるのは、医師が使いやすいように注文どおりの寸法で仕上げるオーダーメード品や、大量生産するほどの数が出ない専門的な医療器械だ。既製品を大量生産するのではなく、多品種少量で医師から個別に注文を受けて製品を作ることが多い。 「病院で主に使われている医療器械は既製品です。ですが既成品だけでは 思い通りの手術が出来ない場合もあります。そういう既製品にはない形状やサイズの機器の要望や、『昔から使い慣れたサイズの器械を使いたい』という先生方に、当社の製品をご愛顧いただいております」(田中一嘉代表取締役。以下、同) さらに医療機器を扱うメーカーとも協力を進めている。医師が同社の器械とセットで医療機器を動かしている光景を目にした医療機器メーカーが、医師の推薦もあって同社製品を採用。全国に向けてセットで販売する動きも増えてきている。

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会社の強み

医療器械には既製品を製造する大手メーカーも、医師の注文どおりに特注品を作る2~3人規模のメーカーもあるが、田中医科器械製作所ほど多品種の医療器械を1点からでも納めてくれるメーカーはほかに2~3社程度。既製品で不十分なところがあれば、田中医科器械製作所1社に頼めば何とかなる。そこが医師から信頼されている点だ。 また医療器械を作るだけでなく、医師に売り込むところまでを自社で賄う。メスや鉗子などは日々使われて数が減っていく。定期的に病院・医師から直接注文が届き、注文と合わせて「そう言えば、こんなのはできないか」という相談が舞い込んでくる。販売だけなら、相談されても応えられない。製造だけなら、医師から相談さえしてもらえない。販売・製造の2つの機能を持っていることが同社にとって大きな利点になっている。

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職場としての魅力

現在の本社工場は2008年に完成。きれいなオフィスには、ペットボトル・缶も50円で買える自動販売機などが置かれている。 移転時には「十分な広さだ」と田中社長は考えていたが、人手不足解消のため若手の採用を進めた結果、いつの間にか社員数は50人を突破。近いうちに新しい工場を確保する計画だ。 「少し前まで社員数は20人くらい。私の自宅が工場を兼ねていて、家族ぐるみで働いていました」 社員=家族と考え、当時は子供の具合が悪ければ会社で面倒を見て、困っている社員がいたらみんなで助けた。その文化は今も残り、男性社員であっても育児休暇をしっかりと取得。安心して子育てできるように支援している。 「ただ、社員数が50人を超えたことで、変えなくてはいけないところも出てくると感じています。家族のような付き合いをしたい人、プライベートに踏み込まれたくない人。それぞれの考え方に耳を傾けながら、できるだけ社員一人一人の考えを尊重したいと考えています」

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社長メッセージ
医療を取り巻くシステムを支え、グループの一員として関係者全員を助けていきたい

代表取締役
田中 一嘉さん
――会社として、これから事業をどのように展開していこうと考えていますか? 当社の器械を使っていただけるのはお医者様ですが、医療はお医者様だけでは成り立ちません。医師をサポートする看護師、購買・事務手続きを担当する事務員、医療機器を作るメーカーなど、さまざまな関係者がいて初めて成り立つものです。そうした医療を取り巻くシステム全体のことを考えながら、製造と販売の両輪を回し、どこかに困っていることがないかと探しては解決していく。そうしていくことで、当社も医療を担うグループの一員になっていきたいと考えています。 グループにしっかりと入り込むことができれば、単に製品が安いか高いかという判断だけではなく、品質やサービスを含めた全体で当社のことを評価いただけるようになります。そうなれば、仕事は絶対になくなりませんから。 例えば今、病院ではかなりの量の医療器械を海外から輸入しています。輸入品は国産品と比べてどうしても高くなってしまいますから、事務方としては「もっと安いものが欲しい」と考えるようになります。当社がグループの一員になっていれば、そんなときに「こんなものが作れないか」と真っ先にご相談いただけるようになるはずです。 実際、そうした案件が生まれ始めています。規模の大きな話になりそうですから、ほかの中小企業にも声を掛けながら取り組みを進めていこうとしているところですね。 モノづくりは、「大変な仕事に挑戦することが楽しい」と思える人に向いている仕事だと思います。「楽な仕事で、お金もたくさん稼げた方がいい」のは当たり前ですが、それでも大変な仕事に挑戦して、自分が技術者として成長したり、お医者様に喜んでもらえるところに喜びを見出したりできること。壁を1つ乗り越えたと思ったら、またすぐに次の壁がやってきます。それでもその壁を乗り越えようと楽しめることが、当社が社員に求める資質でしょうか。 できなかったことが、できるようになる。でもそこで満足せずに、また次のできなかったことに挑戦していく。そういう姿勢が何よりも大切ですし、そういう人と一緒に働きたいと思っています。

08.jpg 代表取締役 田中 一嘉さん

先輩メッセージ
お医者様からの感謝の言葉、「患者さんの役に立っている」という実感がやる気の源

営業部 販売課
武田さん
――医療器械の仕事に興味を持つようになったのは、なぜでしょう。 私は学校を卒業した後、当社とは別のメーカーで働いていました。ところが、家族の介護が必要になったことから、入社してすぐに辞めざるを得なかったのです。 介護が落ち着いてから、次の仕事を考え始めたとき、「医療・介護にかかわる仕事をやりたいな」と思うようになっていました。そんな気持ちでインターネットの求人情報サイトを探していたら、田中医科器械製作所のことを見つけました。 メーカーの中には「製造して終わり」の会社もありますが、当社は販売も自社でやっていますし、製品を納品した後のメンテナンスもしっかりと提供しています。そのことを知ってすごく感心したことが、「当社で働きたい」と思うようになる決め手になりましたね。 今は4つの病院を回っています。1つが東京、残り3つが千葉ですね。骨折した患者さんが病院に運び込まれたとき、患部を固定するためのインプラントと、それを取り付けるための器械を病院まで車で届けています。 まず病院から注文の電話が掛かってきて、次にインプラントメーカーへ連絡を入れて、必要な品物を全部そろえて病院まで届けます。そこまでをすべて自分1人でやっています。 「救急患者が入った。午後には使いたいから至急届けてほしい!」といった急ぎの注文が届くことも多いです。毎日、自分のスケジュールとお医者様からの依頼内容をよく考えて、最善・最短の手順・ルートを探り、できるだけ早く製品を届けられるようにしています。 日々、大変な仕事ではありますが、お医者様から「ありがとう」「助かったよ」と声を掛けていただけることがあります。そういうときには、「この仕事でよかったな」と思えますね。 そして、自分の仕事が患者さんの回復をお手伝いすることになるわけです。自然と「患者さんのためにがんばろう」という気持ちになってきます。 福利厚生が充実しているところですね。特に育児休暇は取りやすいです。男性社員の中にも育児休暇を1カ月取得し、その後も何度か2~3週間ほど利用した人がいます。中小規模の会社で、これだけ気軽に育児休暇を取れるところは、他にはなかなかないと思います。 あとは社員全員の仲がいいところでしょうか。先輩方がすごく優しく、私が大変そうにしているときはいつも気に掛けて、「大丈夫か?」と声を掛けてくださいます。この会社のそういうところがとても気に入っています。 まだ自分には医療関連の知識が足りていないと痛感しています。お医者様や看護師さんなど、医療の専門家と対等に話ができるようになり、必要とされるものをすぐに察知して届けられるようになっていきたいです。 もう1つは、当社の製品をもっともっと他の方々にも知っていただくことですね。当社製品を使用してもらい、良さを理解していただいて、広めていきたいという思いも強いです。 正直に言って私は学生のころ、自分が働いている姿を想像できませんでした。やりたいことも決まっていませんでした。 けれどいざ働いてみると、「やりがいのある仕事は意外と身近にあるのではないか」と考えるようになりました。「自分はこの業界の企業でないと、働きたくない」とあまりにこだわって、自分の可能性を限定してしまってはもったいないです。もっと自分の可能性を広げて考えてみてはどうでしょうか。そうすることで、新しい道が開けてくるものだと思いますよ。

09.jpg 営業部 販売課 武田さん

先輩メッセージ
難しい仕事だからこそ「完璧に仕上げたい」という意欲がわいてくる

技術部 技術課
黒田さん
――「モノづくりを仕事にしたい」と思うようになったきっかけは? 当社とは別の会社になりますが、父親が医療器械を作るメーカーで働いており、それで私も高校1年の夏休みに、アルバイトとして父親の仕事を手伝わせてもらったのです。 とにかく、「難しい仕事だ」と思いましたね。微妙な力加減で製品の仕上がりが全く変わってきます。「完璧に仕上げるのは非常に難しい」と感じましたが、そう感じたからこそ、「完璧に仕上げてみたい」という意欲がわいてきました。 それでモノづくりの会社で働こうと心に決めまして、父親から紹介されたのが当社でした。父親の会社では作る製品が少品種に限られていましたが、当社が扱う製品は非常に多品種。製品の幅が広い分だけ、仕事の幅も広がって面白そうだと感じましたね。 手術時には、臓器などを処置するため、メスで切り開いた開創部を固定しておく「開創器」という器械が必要になります。私は今、その開創器を中心に担当しています。 入社してしばらくは、切削や溶接といった基本的な技術を学びました。ある程度の技術が身に付いたところで、開創器を完成させるところまで、私1人にすべて任せてもらえるようになりました。 すべて手作業で最後まで仕上げることになります。技術者の腕次第で完成度が大きく変わってきますから、うまく仕上げられたときには誇らしいです。開創器の可動部を動かして、きれいにカチッ、カチッと音がする。上司から「うまくできたな」とほめられたときには、うれしかったですね。 感覚的なものなのでうまく言えませんが、開創器を仕上げるコツをつかめたときにも、うれしく感じます。1~2週間で数個ずつ製品を仕上げていくのですが、経験を積んでいくことで、うまくできなかったことがうまくできるようになってくると「成長したな」と実感できます。 教え方が上手な先輩が多いですし、優しい方ばかりです。年齢が近い若手社員も多いですし、ベテランの技術者もいますし、30代半ばくらいの働き盛りの先輩もいます。お互いに教え合ったり、加工のコツを教えていただいたり、困っていることがあれば声を掛けていただけたりと、働きやすい職場だと思います。 父親が作っている鉗子類をいつか作れるようになりたいです。会社にもその希望は伝えていまして、何年か後には任せてもらえるようにと現在は徐々に必要な技術を習得しているところです。 モノづくりは好きでないと続けられない仕事だと思います。私は学生時代の夏休みにアルバイトを通じて「モノづくりの仕事が好きだ」と確認することができました。社会に出るまで、まだ時間はあります。少しでも自分の働きたい仕事を考えて体験してみることで、「自分はどんな仕事が好きなのか」と見つめ直しておくことが大切なのではないでしょうか。 注)掲載している情報は、取材日(2013年7月)時点のものです。

10.jpg 技術部 技術課 黒田さん