<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 川邑研究所

株式会社 川邑研究所 宇宙や高温・低温環境などで摩擦を防ぐ固体被膜潤滑剤の研究開発型企業<br>「はやぶさ」にも使われた固体被膜潤滑剤。自動車や船舶、カメラなどの潤滑にかかわる問題を解決する製品を“処方”

株式会社 川邑研究所

宇宙や高温・低温環境などで摩擦を防ぐ固体被膜潤滑剤の研究開発型企業
「はやぶさ」にも使われた固体被膜潤滑剤。自動車や船舶、カメラなどの潤滑にかかわる問題を解決する製品を“処方”

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輝く技術 光る企業

株式会社 川邑研究所

宇宙や高温・低温環境などで摩擦を防ぐ固体被膜潤滑剤の研究開発型企業 「はやぶさ」にも使われた固体被膜潤滑剤。自動車や船舶、カメラなどの潤滑にかかわる問題を解決する製品を“処方”

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  • 社名:株式会社 川邑研究所
  • 設立年月:1977年4月
  • 資本金:2000万円
  • 代表者:代表取締役社長 川邑 正広
  • 主な勤務地:東京
  • 休日:日曜祝日隔週土曜,夏期,年末年始休暇,有給休暇
  • 本社所在地:東京都目黒区目黒1-5-6
  • 電話番号:03-3495-2121
  • ・潤滑油やグリースでは対応できない特殊環境向けの固体被膜潤滑剤を開発
  • ・顧客ごとに異なる課題を解決する製品を“処方”する研究開発力が強み
  • ・社員のほとんどが研究者。顧客からの感謝の声がやりがいを生む
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業種

固体潤滑剤の研究および固体潤滑剤“デフリック”の研究開発製造販売,各種コンサルティング業務

事業紹介

川邑研究所では、最先端の学術・知識を製品の研究開発に取り入れ、様々な分野での実用化と応用を目指してきました。ユーザーのニーズに対し、きめ細かいコンサルティングを行うことで、専門的な技術が必要な固体被膜潤滑剤の運用と導入を支援しています。


当研究所はこれからも、常に新しいテーマや知見を反映した研究開発力と、経験と実績に裏打ちされたコンサルティング力の両輪により、ユーザーニーズに応え進化する固体被膜潤滑剤を提供し、世界の産業界に貢献してまいります。

何を作ってる?

二つの物体が触れ合うと摩擦が生じる。機械の歯車を想像すれば分かるように、強い摩擦が起きると歯車は円滑に動かない。その上、無理して使い続けていると歯車自体が急速に摩耗してしまう恐れがある。そこで円滑に動くよう、潤滑油やグリースを塗っている。 ところが、油やグリースが機能しない環境がある。非常に高温で油が炭化してしまう環境、低温で油が粘化してしまう環境、真空状態で油が蒸発してしまう環境などだ。こうした特殊な環境下でも使える固体被膜潤滑剤を作っているのが川邑研究所だ。 代表的なところでは、あの小惑星探査機「はやぶさ」にも川邑研究所の固体被膜潤滑剤は使用されている。身近なところでは、カメラのシャッター羽根や、自動車・船舶・航空機のエンジンなど。川邑研究所が提供する固体被膜潤滑剤によって、カメラは高低温下でも使用できるようになり、自動車・船舶・航空機はより小形・軽量化が可能になった。

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04.jpg 顧客のニーズに応じて個体被膜潤滑剤を開発

会社の強み

機械の小型・軽量化が進むのと同時に、高出力・高性能化も求められている。そのために機械内部で動く金属部品同士が触れ合う面積は狭くなり、接触面に掛かる圧力は増してきている。すると油やグリースが押し退けられ、部品同士が直接触れ合ってしまう危険性が高まってくる。 そのような時は、川邑研究所の出番だ。「潤滑油・グリースが通用しない」と悩む企業から状況を聞き出して、適切な“処方薬”を調合するのだと同社代表取締役社長の川邑正広氏は説明する。 川邑研究所は研究開発型の企業。医者が患者の症状に合わせて最適な薬を処方するように固体被膜潤滑剤を開発する。しかも、薬は症状ごとに処方する薬がある程度は決まっているが、固体被膜潤滑剤は案件ごとに成分の配合などを検討・開発・評価していかなくてはならない。潤滑剤と一口に言っても金属の素材や機械の機構によって要件は異なり、顧客企業ごとに最適な“処方薬”を考えなくてはならない。 そうしてこれまでに多数の“処方薬”を開発。それを可能にする研究開発力や、培ってきたノウハウが同社の強みだ。

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職場としての魅力

川邑研究所の社員は約30名。そのうち約20名が開発担当の研究者だ。 少人数の組織で「上司・部下」の序列はなく、全員が対等。化学、金属、機械、電気、評価など、それぞれが得意分野を持ち、プロジェクトごとに必要な社員が集まってチームを作る。お互いを尊重し合い、気軽に意見交換のできる環境が研究者にとっての魅力になっている。 また、同社には営業部がない。研究者が顧客企業と直接やり取りして悩みを聞き出し、そのまま開発に着手する。「厳しい要求をされるお客様を担当に持つ者ほど、成長が早い。お客様からの要望が成長の肥やしとなっています」(川邑氏) 顧客から喜びの声を直接聞けることも同社で働く魅力だ。前述のように顧客は「困った」時、同社に相談をする。「困った」が解決できた時には、どの顧客からも感謝される。それが研究者にとって最大のやりがいになっているのだ。

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社長メッセージ
小型・軽量化と高出力・高性能化が進むことで、固体被膜潤滑剤への注目が高まる

代表取締役社長
川邑 正広さん
――営業部を置いていないと伺いました。取引先はどうやって見つけてくるのでしょうか。 われわれの取引先は、自動車関連や船舶、航空機、カメラなどのメーカーです。「動くもの」がある業界ならどこも対象になってきます。 何度も繰り返しご依頼いただくお客様が多いですね。業界内での口コミや既存のお客様からのご紹介によって、新規のお客様も増えてきています。 新規のお客様は「川邑研究所なら問題を解決してくれる」と強い期待を持たれています。当社として、その期待に応えないわけにはいきません。「川邑研究所でもだめだった」という残念な評価をされないように、1件1件の仕事の質を上げられるように努力しています。 はい。従来、潤滑油やグリースによって事足りていたところであっても、これから小型・軽量化と高出力・高性能化が進むことによって圧力が掛かりすぎ、潤滑油やグリースでは機能を維持できなくなる可能性があります。 また、商品サイクルの長いものはあまり開発のスピードが求められていませんので、潤滑にかかわる問題をじっくり研究して解決することができます。それが商品サイクルの短期化や競争の激化によって、開発に時間を掛ける余裕がなくなってきています。短期間のうちに潤滑にかかわる問題を解決するため、高機能な固体被膜潤滑剤への注目は高まっていくことでしょう。 職場の雰囲気は、会社ごとに異なります。「良い会社」「悪い会社」という判断基準を当てはめるのではなく、自分にとって「合う会社」「合わない会社」という判断基準で会社を見定めることが重要です。 当社には、モノづくりが好きで、コツコツと努力できる人が集まっています。野球で例えるならホームランバッターよりも、アベレージヒッター。そんな人の方が向いていると思いますよ。

08.jpg 代表取締役社長 川邑 正広さん

先輩メッセージ
製品が「はやぶさ」に使われていることを帰還後に知る。そうした成果が励みになる

研究開発部 主任研究員
横山さん
――川邑研究所に就職した経緯を教えてください。 大学では化学を専攻し、研究職として働くことを希望していました。そこで大学の先生が紹介してくださったのが川邑研究所。私のように、当社には教授の紹介で入社してくる人が多いですね。 研究開発部に所属し、お客様の要望を製品化するのが私たちの役割です。 固体被膜潤滑剤の主な素材としては、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素樹脂の三つが挙げられます。この三つの素材には、摩擦が起きる条件によって向き不向きがあります。下地となる金属の種類、使用環境の温度の高低、屋内か屋外か、あるいは防水性や耐摩耗性が必要かどうかなどを見定めます。そして三つの素材のどれを使うのか、あるいは組み合わせるのか別のものも加えるのかと考えて、試作品を作っていくのです。 実のところ、「はやぶさ」に使われていることは帰還後に知りました。潤滑剤を塗布した部品が最終的にどんな製品のどこで使われるのか、知らされないことも多いのです。 それだけに、そうした成果を聞くと励みになりますね。日ごろから、お客様の要望に応えられるたびに満足感を覚えて働いています。 分からないことがあれば、気軽に教え合える雰囲気が社内にはあります。専門外のことについても、学べる環境にあるのではないでしょうか。 学生のころは気付かないかもしれませんが、若いうちに考えていた未来よりも、もっと大きな可能性があなたの未来にはあるはずです。何にでも興味を持つことで機会を逃さず、未来の可能性を広げていってもらいたいですね。

09.jpg 研究開発部 主任研究員 横山さん

先輩メッセージ
「就職」は「就社」ではない。どの会社に入るかではなく、どんな職に就くかを考えて

システムエンジニアリング部 主任研究員
関口さん
――川邑研究所に入社した理由を教えてください。 私は大学で摩擦や摩耗の研究をしていました。当時、川邑社長が博士号を取得するため、私のいた大学に在籍していたのです。 そして研究を手伝っているうちに、川邑研究所の仕事に興味を持つようになりました。ですが卒業後は、内定が出ていた大手企業に就職したのです。 その時に大手企業を選んだのは、社会勉強のつもりもありましたし、正直なところ、「大手企業」というブランドに惹かれた部分もありました。しかし働いているうちに、「やはり自分の研究内容と直結している川邑研究所の仕事がしたい」という思いが強くなり、転職したいと考えるようになったのです。 システムエンジニアリング部という部署に在籍していますが、一般で言われる「SE」とはやや趣が異なり、試験部門と生産技術部門を兼ねています。 具体的には、社内で開発した固体被膜潤滑剤をお客様の機械に似た試験機でテストし、評価するのが役割ですね。最低でも5種類くらいは試作品が開発されるので、その中から最適な潤滑剤を選び出します。 とても広範な知識が必要とされる仕事ですが「浅く広く」にならないよう、一つ一つの分野を掘り下げ、引き出しを増やすことが求められます。 これまでの仕事の中で記憶に残っているのは、潤滑剤の素材として一般的な二硫化モリブデンなどがすべて使えない条件で潤滑剤の開発を進めたことですね。例えるなら、そば粉なしでそばを打つようなもの。しかも納期が短かったので、連日深夜まで仕事に取り組んでいました。何とか目標値を超える性能になり、お客様の機械で動作確認した時も1回で合格できました。その時は、心の底から喜びましたね。 私自身が経験したことですが、就職活動をしていると、つい会社名や会社規模で入社先を選んでしまいがちです。 しかし「就社」ではなく「就職」です。「どの会社に入るか」ではなく、「何をやりたいか」、そのために「どんな職に就くか」を考えていただきたいですね。

10.jpg システムエンジニアリング部
主任研究員 関口さん