<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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北星鉛筆 株式会社

北星鉛筆 株式会社 テレビ番組の最新文房具総選挙で5位にランクインの商品を生み出す<br>「鉛筆のある限り、家業として続ける」。次代につなげるため、「大人の鉛筆」「もくねんさん」などのヒット文具を開発

北星鉛筆 株式会社

テレビ番組の最新文房具総選挙で5位にランクインの商品を生み出す
「鉛筆のある限り、家業として続ける」。次代につなげるため、「大人の鉛筆」「もくねんさん」などのヒット文具を開発

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輝く技術 光る企業

北星鉛筆 株式会社

テレビ番組の最新文房具総選挙で5位にランクインの商品を生み出す 「鉛筆のある限り、家業として続ける」。次代につなげるため、「大人の鉛筆」「もくねんさん」などのヒット文具を開発

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  • 社名:北星鉛筆 株式会社
  • 設立年月:1951年1月
  • 資本金:9000万円
  • 従業員数:28名
  • 代表者:代表取締役社長 杉谷 和俊
  • 社員平均年齢:40歳
  • 初任給:約200,000円
  • 主な勤務地:東京都
  • 休日:土日祝日、有給休暇、夏期・冬期休暇※土曜日は隔週
  • 本社所在地:東京都葛飾区四つ木1-23-11
  • 電話番号:03-3693-0777
  • 公式HP:http://www.kitaboshi.co.jp/
  • ・鉛筆を柱に「大人の鉛筆」「もくねんさん」「ウッドペイント」等の新商品も
  • ・ヒット商品を生み出せるのは、「鉛筆を作り続ける」と決めているから
  • ・自分で考えてモノづくり。社員自身が考えて仕事することを尊重
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業種

鉛筆製造全般・エコロジー商品の研究開発

事業紹介

弊社は創業62年の学童鉛筆を中心とした鉛筆製造メーカーです。
自社ブランドの製品製造を中心として、他社のOEM商品の製造や、プライベートブランド商品の製造等も手掛けます。
また、鉛筆の製造はもちろんの事、鉛筆を作る技術を利用して、木軸のシャープペン・ボールペンの製造、木製定規などの文房具、その他耳かきや、小筆の軸等、鉛筆とは関係ない物も作っています。
しかし、その鉛筆製造には大量のおがくずが発生します。その中で、リサイクルや環境に配慮した商品を企画製造も行ない、「おがくず」の再利用や、再製品化の研究開発と事業化を推進中。
最近では敷地内に「東京ペンシルラボ」という見学施設を作り、鉛筆の素晴らしさをもっと幅広く知ってもらい鉛筆ファンを増やし、東京の地場産業の「鉛筆」をPRしています。

何を作ってる?

北星鉛筆が作るのは、社名のとおり鉛筆だ。創業は1897年。もともとは鉛筆の材木屋だったが1943年に鉛筆メーカーを買収した。以来70年、「鉛筆はわが身を削って人のためになる。真中に芯の通った人間形成に役に立つ立派で恥ずかしくない職業だから、鉛筆のある限り、利益などは考えず、家業として続けろ」という教えを守り続けてきた。 けれど、鉛筆の需要は年々減ってきている。そんな中でも、鉛筆メーカーという軸はぶらさず、どうやって次代に事業を継承していくかと模索。いくつかのヒット商品を生み出してきた。 その1つが「大人の鉛筆」。シャープペンシルのように芯を押し出しながら書いていくが、書き心地は鉛筆。芯の部分だけを削りながら使っていく。テレビ番組「お願いランキングGOLD」の第1回最新文房具総選挙筆記用具部門で5位に輝いた製品だ。 他にも鉛筆製造中に排出するおがくずを再利用する製品を開発。おがくず粘土「もくねんさん」や絵の具に入れた「ウッドペイント」といった製品も世に送り出している。

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04.jpg ヒット中の商品「大人の鉛筆」。スマートフォン/
タブレットの操作用にも使える

会社の強み

続々とヒット商品を生み出せるのは「方向性が定まっているからだ」と杉谷和俊代表取締役社長は語る。何の制約もなければ迷ってしまうが、「鉛筆を作り続ける」と決めているから、簡単に考え出せるのだと分析する。 「商品開発の上で、一番大切なことは考え続けること。そして、考え続けるための極意は2つあります。 1つ目は、相手の気持ちを考えること。将棋を指すときに相手の気持ちを考えながら1手ずつ打っていくように、自分の立場を変えながら、いろいろな方向から考えていくことです。 2つ目は、“アリの目線”と“鳥の目線”を持つこと。アリの目線ですと、細かい部分がよく分かります。一方、鳥の目線になると、時代の流れがよく分かります。 “アリの目線”や“鳥の目線”を持って、自分の位置をいろいろと変えながら考えていくこと。そうすることで『大人の鉛筆』のようなヒット商品を生み出すことができました」(杉谷社長。以下、同)

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06.jpg 木の板を鉛筆に加工していく

職場としての魅力

北星鉛筆の社内では、杉谷社長があれこれと細かい指示を出すことはない。 「一番大切なのは、『言ってやらせる』のではなく、『自分で感じて自発的にやってもらう』こと。私が都度指示を出して確認をしなくても、社員自身が考えてモノづくりできる環境をつくることで、社員みんなが働きやすい職場にしたいと考えています。 自分たちが考えたことを実行に移せる会社でないと、働いていて面白くありません。社員から提案されたことは、できるだけ芽が出るように伸ばしていってあげたいです」 バーベキュー大会を社内で開いたときには、社長自らが肉を焼くなど、社員同士の仲も良い。何より、子供のために「わが身を削って人のためになる」鉛筆を作る仕事に誇りを感じながら働けることが北星鉛筆で働く魅力なのだろう。

07.jpg 鉛筆の塗装工程
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社長メッセージ
自分の向かうべき方向性が見えないのなら、3代前までさかのぼって調べてみては

代表取締役社長
杉谷 和俊さん
――経営についてのお考えを聞かせてください。 鉛筆はどんどん使われなくなっています。私が20年ほど前に社長になって最初に考えたのは、企業が存続できるだけの価値を作ること。鉛筆を作るだけでは、十分な価値とは言えません。鉛筆は素材の半分ほどをゴミにしています。その部分を有効利用できないかと考えました。そうして生まれたのがおがくずを混ぜた粘土「もくねんさん」や絵の具の「ウッドペイント」です。 次に打った手は、鉛筆の宣伝をすること。「東京ペンシルラボ」という鉛筆のことを学べる施設を作り、工場見学や修学旅行などで学生さんを積極的に受け入れて鉛筆の魅力を訴えるようにしました。 見学に来た学生さんに「何を使って書いていますか?」と聞くと、みんな「鉛筆です」と答えてくれます。鉛筆は人を裏切りません。鉛筆以外の筆記具は試し書きをしてみないと書けるかどうか分かりません。鉛筆は試し書きせずとも普通に書くことができます。それが鉛筆を支持する理由なのではないでしょうか。 そう感じたからこそ、作ったのが「大人の鉛筆」。次の時代、どういうものが必要になるのかとアンテナを広げながら、「北星鉛筆にどんな製品が作れるのか。提案できるのか」と考え、次代を読みながら次代をつくっていきたいのです。そうして存続していくのが企業というものですから。 そして、企業に価値があれば人は集まってきます。企業に価値がなければ、どんな価値を生めばいいのかと考えるべきです。 鉛筆メーカーであっても、「東京ペンシルラボ」から情報発信をしていくことで、1万人以上の観光客が当社を訪れてくれるようになりました。子供やお年寄りも外国人も来ています。そういった環境で働くことで「自分たちの仕事はすごいものなのかな」と誇りを持てるようになります。そしてそれだけの観光客が来れば、電車に乗るお客様も増えて、当社までの道のりにあるお店も繁盛し、地元に貢献することだってできるのです。 火力発電所を立ち上げることが夢です。鉛筆を製造するときのゴミを粉にして処理していくと1000度以下で燃える燃料ができます。日本全国の鉛筆メーカーのゴミを1カ所に集めてきて、火力発電所を運営したらもっと社会に貢献できるはずです。 今の世界は、地下にある資源を早い者勝ちで奪い合っています。それを地球上の表面にあるものだけで暮らせるように変えていけば、争いはなくなりますし、孫の世代にカサカサの地球を残さなくても済むようになります。「表面にあるものだけで暮らす」という価値観に切り替えていかないといけないのです。木を植えて、育てて、管理する。本当に循環型の社会になってほしいと思っています。 学生さんの中には、「どんなところに就職したらいいのか分かりません」という人がいます。そういう学生さんには「あなたには、お父さんお母さん、おじいさんおばあさんがいる。3代くらい前までさかのぼって、どんな仕事をやっていたか調べてみるといい」と話しています。 これから先の未来は自分が作ることになるわけですが、自分の向かうべき方向性が見えないのなら「自分がどんな状況で生まれてきたか」「親がどんな思いを持っているか」と全部調べておくべきです。そうすれば、自然と自分がこれから生きる方向性が決まってくるでしょう。 そして方向性が決まったら、自分の価値を探してください。プロになることを目標にしてください。学生のプロ、職場のプロ、偉くなったら課長・部長のプロを目指してください。 人間は生きている以上、常にプロを目指すべきだと私は感じています。自分がどんなプロになりたいかと常に考え続けながら、自分のやりたいことを見つけてください。

09.jpg 代表取締役社長 杉谷 和俊さん

先輩メッセージ
鉛筆をうまく塗装できるように、工場内の湿度や設備の具合を日々微調整

塗装部
後藤さん ――入社の経緯を教えてください。
当社に入る前は、ドライバーとして働いていました。身体への負担が大きく、続けていくことが難しくなり、転職を考えました。 どんなことを仕事にしたいかと見つめ直してみて、昔からモノづくりが好きだったことを思い出しました。粘土をいじったり、折り紙を折ったり、プラモデルを組み立てたりといったことが好きだったのです。 そうして巡り会ったのが当社でした。鉛筆は小学生以降、徐々に使わなくなっていくもの。見慣れていたもののはずなのに、入社前に工場を見学した際、「作っていく過程を見るのは初めてだ」と気が付きました。大人になってから鉛筆作りに携わるのもいいかもしれない。そう思えたのです。 鉛筆は板に溝を付けて芯を挟み、見慣れた形に加工します。私はそうしてできた鉛筆を塗装するところを担当しています。その他にも、おがくず粘土「もくねんさん」を作る装置の操作も任されています。 塗装の仕事は、鉛筆をベルトコンベアに乗せて、流していきます。気温や湿度によって乾燥具合は違ってきます。窓を開閉してちょうどよく乾くように調整しないといけませんし、ベルトが左右均等に動いて塗りむらが出ないように塗れているかと日々微調整していかないといけません。 難しい仕事ではありますが、昔からプラモデルを作って色を塗ることが好きだったので、自分には合っている仕事だと感じています。塗りが終わったら工場長にうまく塗れたかと確認してもらいます。「腕を上げたな」とほめられたことがあり、すごくうれしかったのを今でも鮮明に覚えています。 技術は周りのみんなのやり方を見て、盗むようにしています。最近では鉛筆の縁をうまく塗るのが難しいので、何とかうまく塗るコツがないかと相談しても、「どうやっても難しい」という答えが返ってきて、「よし、それなら自分がうまく塗れるようになってやろう」とやる気に火が付きました。いろいろなやり方を試してみて、10回に1回はうまくいくようになってきましたが、もっと成功させる確率を上げていくことが目標です。まだまだ勉強が必要ですね。 雰囲気はいいですよ。みんな、物腰がやわらかくて、気さくに話ができます。仕事以外のことを話して盛り上がることもありますし。楽しく働けています。 後輩が入ってきて、自分が教える立場になったとき、「あの人に教えてもらうと分かりやすい」と思われることですね。 自分には尊敬できる先輩がいて、「技術者として先輩を超えたい」と思っています。自分以外にはできない技術を1つでもいいから身に付けて、後輩にも「あの先輩を超えたい」と思ってもらえるような技術者になり、いい刺激を与え合える関係を築いていきたいです。 最近の若い人は、あきらめが早いように感じます。仕事を始めて「やりたいことと違う」と思うことがあっても、我慢してもっと踏み込んで仕事と向き合ってみてはどうでしょうか。 努力したことは絶対無駄になりません。自分にとって希望どおりの仕事でなかったとしても、向き合って働いてみると、いつか人生の中で役に立つものだと思います。目の前のことを一生懸命やっていけば力になります。あきらめないで仕事に取り組んでほしいですね。

10.jpg 塗装部 後藤さん

先輩メッセージ
テレビ番組で5位に入ったことが誇らしい。毎日の仕事が刺激的で日々やりがい

営業部
鈴木さん ――どういった縁で入社に至ったのでしょうか。
以前に勤めていた会社を退職し、何をやるわけでもなくフラフラしていたとき、新聞で北星鉛筆が紹介されているのを見かけました。ものを作るのがもともと好きだったものですから、「面白そう」と感じて面接に行きました。 最寄駅で降りて会社に向かうと、街全体に鉛筆の匂いが漂っているように感じましたね。工場で鉛筆ができるまでを見学させていただき、「板と板を貼り合わせて1本の鉛筆を作る」と聞いて衝撃を受けました。モノづくりが好きなので、この会社で働きたいと思いました。もっとも、入社して配属された先は営業部だったわけですが(笑)。 文房具店やコンビニなどに「置いてください」と頼みにいくような業務ではありません。小売店に商品を流通させる問屋の担当者とやり取りすることが多いですね。 あとは企業や学校からも、「記念品として、社名/学校名を入れた鉛筆が欲しい」といった特注品の注文が入ることがあるので、そのような注文にも対応しています。よく小学校のころなどに運動会でもらった賞品の鉛筆などを特注品として作っているのです。 特注品は、お客様から希望の納品日が指定されます。そのような場合は、工場で通常行っている仕事を一時止めてもらい、期日以内に製造してもらうよう依頼します。他の製品を作るスケジュールを邪魔しないように注意しながら、工場と連携して生産をしています。 営業職として働き始めて5年になりますが、特注品の仕事を最近になって少しずつ任せてもらえるようになってきました。普段は鉛筆だけの特注品が多いのですが、鉛筆と一緒に袋に入れる台紙も含めた特注品には苦労しました。すべて一から作ることになり、困ったことがいろいろと出てきました。その分、特注品が完成したときには達成感がありましたし、「お客様のお役に立てた」と思えましたね。 最近は、「大人の鉛筆」がヒットしています。テレビ番組「お願いランキングGOLD」の第1回最新文房具総選挙筆記用具部門でも5位に入りました。メディアで当社の商品が上位で評価されたことを誇りに思いますし、この機会にもっと売り込んでいこうと力が入ります。 今はかなり注文が殺到していますので、どうやって注文に応えていけばいいかと苦労していますね。それでも、それだけの注文が入っていることを誇りに思いますし、日々やりがいを感じています。毎日の仕事に刺激を感じられ、楽しいです。 部署関係なく、社員みんなの仲がいいところです。社内でバーベキュー大会を開くなど、フレンドリーな職場です。上司・部下とか関係なく、1人の人間として接してくれるので楽しいですし、仕事がしやすいですね。 営業部の社員数はそれほど多くありません。新しい注文をもっと取ってこられるようになりたいですし、専務が担当している仕事を少しでも任せてもらえるようになっていきたいです。 そして将来的には「大人の鉛筆」に匹敵するようなヒット商品を開発したいですね。 アルバイトと違って、社員として仕事をするようになると、つらいことの方が多くなります。ですが、その中にも楽しさは絶対にあります。仕事をする中で1つでもやりがいが見つかれば、それを励みにどんどん新しいやりがいが見つかるようになると思います。 入社するまで、どんな仕事を担当することになるかは分かりません。入社する会社を好きになれるかも分かりませんが、まずは仕事の中でやりがいを見つけるところから始めてみてはどうでしょうか。 注)掲載している情報は、取材日(2013年7月)時点のものです。

11.jpg 営業部 鈴木さん