<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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株式会社 三津海製作所

株式会社 三津海製作所 有名企業と並び、超小型真空ポンプで日経優秀製品・サービス賞を受賞<br>銀行ATM用真空ポンプはほぼ独占。顧客の「新しくやりたい」に耳を傾け、試作から共に歩んで開発ノウハウを蓄積

株式会社 三津海製作所

有名企業と並び、超小型真空ポンプで日経優秀製品・サービス賞を受賞
銀行ATM用真空ポンプはほぼ独占。顧客の「新しくやりたい」に耳を傾け、試作から共に歩んで開発ノウハウを蓄積

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輝く技術 光る企業

株式会社 三津海製作所

有名企業と並び、超小型真空ポンプで日経優秀製品・サービス賞を受賞 銀行ATM用真空ポンプはほぼ独占。顧客の「新しくやりたい」に耳を傾け、試作から共に歩んで開発ノウハウを蓄積

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  • 社名:株式会社 三津海製作所
  • 設立年月:1960年2月
  • 資本金:1000万円
  • 従業員数:18名(パート含む)
  • 代表者:代表取締役 渡辺幸一
  • 社員平均年齢:43歳
  • 初任給:170,000円手当別
  • 主な勤務地:大田区東蒲田2丁目16番13号/2丁目36番21号
  • 休日:土曜日、日曜日、祭日、夏季・冬期休暇、有給休暇、専用カレンダーによる
  • 本社所在地:東京都大田区東蒲田2丁目16番13号
  • 電話番号:03-3736-4341
  • 公式HP:http://www.mitsuvac.co.jp/
  • ・銀行用や医療用など、さまざまな真空ポンプ・コンプレッサーを開発・製造
  • ・年間20件ほどの試作に付き合いノウハウを蓄積。営業を持たない社内体制
  • ・一国一城の主になりたい社員を応援するのれん分け制度も
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業種

無給油ロータリー真空ポンプ・ブロワの開発・製造

事業紹介

当社は、1958年(昭和33年)創業以来、現在に至るまで無給油式ローターリー真空ポンプ・ブロワを初めダイアフラム式真空ポンプ、ピストン式真空ポンプ・コンプレッサーの製作に着手し、『知行合一』の精神をもとにオンリーワン企業を目指し技術の向上と品質の改善に努力し、また『マッチ・ザ・ポンプ』の合い言葉のもとにお客様に満足して頂ける製品を提供し続けております。
特に「故障の少ない、ミツミの製品は安心して使える」という産業界の信用となり医療機器をはじめ印刷機械・写真製版・自動化省力化機器・原子力周辺機器・介護機器と幅広い分野に利用されております。
さらに、最新鋭のNC・MCなどの工作機械を多数導入し新製品の開発はもとより、ISO9001の取得により尚一層の品質管理と省力を実施し、顧客の皆様の期待にそうべき、日々努力を重ねております。
近年特に、医療用・介護用・ペット用に重点をおいた製品開発を実施しています。

何を作ってる?

銀行のATMや自動紙幣計算機、歯医者が施術中に使う唾液や歯石などを吸引する装置の携帯型、ブランド店が服などに付ける値札専用の印刷機、補聴器内の湿気を取り除く乾燥装置――。三津海製作所は「新しくこんなことをやりたい」という顧客の話に耳を傾け、さまざまな真空ポンプやコンプレッサーを開発・製造してきた。 中でも銀行のATM等については、同社製ポンプがほぼ独占状態。紙幣の束から1枚ずつ、繊細な力加減で正確かつ高速に吸い寄せられるポンプを開発した。 「ほかの真空ポンプ・コンプレッサーメーカーは、『そんなに需要が増えない』と思ったようですね。だから、当社以外は断ってしまった。実際、しばらくは月に5~10台程度の注文。それが一気に毎月300台~1500台も必要になり、他社が気付いたときには、もう間に合わなかったのです」(渡邊幸一代表取締役。以下、同) さらに1999年には超小型真空ポンプ「MP-3」シリーズで日経優秀製品・サービス賞の日経産業新聞賞を受賞。表彰式には渡邊社長が出席し、トヨタ、東芝、ドコモなどの大手企業の社長・幹部と並んで、表彰を受けることになった。

03.jpg 真空ポンプの組み立て作業

会社の強み

三津海製作所の主力製品はほとんどが、どこかの企業と試作から取り組み、量産化したもの。歯医者用の携帯型コンプレッサーにしても、もともと9.8キロあった重量を「もっと軽くしてほしい」という要望を受けて、4.5キロにまで軽量化。さらに改良を進め、現在は2.4キロにまで軽くしている。 試作には毎年、20件ほど挑戦。そのうち量産化できるのは1~2件ほどしかないと渡邊社長は明かす。けれど挑戦を続けることで、徐々に小型化・軽量化のノウハウを社内に蓄積。以前は試作分の費用は自社で負担することが多かったが、最近は「試作費用を負担してもいいから何とか頼めないか」という相談も増えてきた。 そして同社には営業担当者が1人もいない。その代わりに、販売代理店を増やし、しっかり協力して売ってもらう戦略。従って販売代理店が魅力的に感じる製品を作り続けないと売ってもらえない。「営業がいなくても売れる製品を作ろう」としている。

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職場としての魅力

三津海製作所には「のれん分け」制度がある。ある程度の技術を身に付けたら、会社が社員の独立を支援。工場を立ち上げるのに必要な製造装置などを会社から無償で提供する。これまでに6人が独立。配偶者の出身地である群馬に工場を構え、地元で一国一城の主となった社員もいる。 「仕事は当社からも依頼し、できるだけ切らさないようにしています。一緒に働いていただけに、仕事はしやすいのです。突然受注量が増えたときに、のれん分け先に頼むことで、臨機応変に製造量を増やせるという利点もあります」 そして、職場の人間関係は家族のよう。スキーやアウトドアといった共通の趣味がある社員同士が集まり、かなりの頻度でイベントを企画。会社から何か言わなくても、自然と親睦を深めようとする雰囲気がここにはある。

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社長メッセージ
量産ではなく、開発のところで売上を立てられるような開発型企業にしていきたい

代表取締役
渡邊 幸一さん
――日本経済新聞社の賞を受賞されたこともあるそうですね。 日経優秀製品・サービス賞を受賞したポンプは、お客様からの依頼を受けて、パワーはそのままで、サイズを8分の1にまで縮めたものです。 受賞候補の製品、200点に選ばれた時点で「すごいことだね」と喜んでいたのに、そこからさらに50点に絞り込まれたところでも私どもの製品が残っていました。ほかの企業はどこも有名企業ばかりで、中小企業は私どもくらいでしたからね。 選考してくれた東京大学の先生が私どものポンプを見て「このポンプ、すごいですよ。けれど、世に出すのが2~3年は早かったですね。ここまでの小型化を求める顧客はまだいないでしょう」と言われました。実際、それから3年くらいは鳴かず飛ばず。それが徐々に使われるようになってきて、今では当社の稼ぎ頭になっています。 日本の産業界は、どんどん海外に生産拠点を移してしまっています。比較的まだ残っているのは医療関連の生産拠点くらいですが、それでもかなりの部分が海外に出ていっています。 そう考えると、もっと試作のところに力を入れて、量産ではなく開発のところで売上を立てられるような開発型企業にしていかないといけません。国内での量産が見込めるのは医療関連の製品と、環境関係くらいになるでしょう。 環境関係といえば、少し前から微小粒子状物質(PM2.5)が話題になっています。PM2.5の飛散状況を観測するために、観測装置の取り付けが急ピッチで進んでいます。当社も装置用の製品を作っていますので、量産が追いつかないくらいの注文が入っています。 これも大企業が「そんなに売れないだろう」と思って手を付けていなかった分野ですね。これから中国や韓国でも「導入したい」という声が出てくると思います。来年以降、もっとうれしい悲鳴が出るような状況になってほしいと願っています。 当社が求めるのは「会社によって働かされる」ではなく「会社のために働いてあげる」という意識を持った人材です。 経営者のように主体的に物事を考えて、例えば1時間かかっている仕事があるのなら、それを55分に、さらには50分に短縮できないかと常に考えてほしいです。それができる人材にはとても魅力を感じますね。 言い換えると、「大企業の一員として働きたい」という人よりも「中小企業でも自分の考えたように、好きなように働ければいい」と考えてくれる人ですね。そういう人が一番理想的です。 入社してから技術を育てることはできますが、最初の考え方というものは、なかなか変えることができません。ですから、経営者のように自分の仕事について主体的に考えられる人材が望ましいです。

08.jpg 代表取締役 渡邊 幸一さん

先輩メッセージ
先輩の仕事は1000分の1ミリ単位の精度。自分も精度を高めて追いついていきたい

機械課
大久保さん
――三津海製作所のことはどうやって知ったのでしょうか。 学生のころから機械加工の仕事に興味を持っていました。職業訓練校でモノづくりの技術を1年間学び、訓練校からの紹介で当社のことを知りました。 当社のポンプは、銀行のATMや医療の現場などで使われています。身近なところに使われている製品を作っているということで、当社に興味を持つようになりました。 NC旋盤やマシニングセンタなど、3種類ほどの製造装置を使って金属を加工しています。 入社して十数年が経ちました。最初のころは右も左も分からなくて、先輩たちから加工方法について少しずつ教わりながら覚えていました。何とか自分1人で仕事ができるようになってきたのは5~6年目くらいからでしょうか。加工の精度としては100分の1ミリ、1000分の1ミリ単位の仕事が求められます。装置が十分に温まっていない状況で加工するだけで、寸法は狂ってきてしまいます。きっちりと寸法を合わせないといけないので、とても気を使いますね。 難しい仕事ですが、その分、ポンプが形になったところを見ると、うれしいです。そのポンプが銀行のATMなどにも使われていると聞きますので、普段の生活の中でATMなどを見ると非常に感慨深いです。 分からないところがあれば上司が優しく教えてくれますし、働きやすい職場です。みんなの仲もいいので、そこが一番働きやすいと感じる点でしょうか。 一通りの仕事を自分1人で全部できるようになりたいです。機械加工なら、何でもできるように覚えていきたいですね。 まだ私が使いこなせていない装置もあります。任される加工の内容で考えてみても、先輩方は1000分の1ミリ単位の精度が求められることがほとんどなのに、私はまだ100分の1ミリ単位の精度の仕事が主になっています。対応できる加工の種類を増やすだけでなく、精度も高めていくことが課題ですね。 三津海製作所は働きやすい会社です。社長も優しい方で、環境に恵まれています。ハローワークなどで当社の求人と出会うことがあれば、ぜひ応募してもらいたいですね。

09.jpg 機械課 大久保さん
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先輩メッセージ
試作の仕事を成功させることで、もっと世の中の役に立つ製品を作り出したい

開発課
高森さん
――どういった縁から、入社されたのですか? 父親が当社で働いていた縁から入社しました。働いていて充実した毎日を過ごしていた父の姿と社長の人柄を小さなころからよく知っていましたので、この会社で働きたいと自然に思えました。 入社前はそれほど詳しいわけではなかったのですが、銀行や医療関係などで当社の製品は使われています。小さな会社ではありますが世界に通用する技術を持ち、社会に役に立っているところがいいなと思いました。 お客様から「他社に依頼したけど応じてくれなかった。三津海さん、何とかお願いします」といったご相談を受けて、設計に取り掛かることが多いですね。 過去の設計を思い出しながら、「今回はここをこうすれば依頼された大きさに収まるだろう」などと考えながら設計していきます。実際、作ってみないと分からないところはありますが、過去の設計を基にしていますから、大きく外すことはありません。まずは試作し、動かしてみて、徐々に細かいところを詰めていくやり方で開発を進めています。 これまで設計を担当した製品の中には、超小型の真空ポンプ「MP-3」シリーズがあります。日経優秀製品・サービス賞をいただいた製品ですね。サイズを大幅に小さくしながらも、「これくらいの性能を出してほしい」「重さはもっと軽くしてほしい」といった要望が多く、非常に苦労しました。表彰式を見に行ったのですが、会場には中小企業は当社くらいで、ほかは全部大企業。「すごい賞をもらったのだな」と驚きましたね。 日々、難しい仕事ばかりですが、難しいからこそやりがいがありますね。うまくいったときには自信につながります。そこが面白いです。 うまく製品ができたときには、お客様から社長宛にお礼状が届くこともあります。そういう話を聞くと、「苦労したかいがあったなあ」としみじみ感じます。 働く職場としては、社長や専務がすごく身近なところにいますから、相談しやすい環境です。設計についても、悩んだら気軽に専務から助言をもらえますし、現場の人に「こういう加工はできるか」とすぐ確認を取ることができます。そういうところが職場の魅力なのではないでしょうか。 今後については、医療関係の分野などで、もっと三津海製作所の名前が知られるようにしていきたいです。介護関連の仕事も増えてきていますので、そうした試作の仕事を成功させて、もっと世の中の役に立つ製品を作り出したいですね。 自分に合う仕事を見つけるのはなかなか難しいと思います。ですが、「自分はできる。役に立てる」と思って一生懸命に働こうという気持ちがあるのなら、いつの間にか自分に合ってくる仕事、何とかできる仕事はたくさんあると思います。そういった仕事に巡り会ってほしいですね。

先輩メッセージ
完成形が見えた方が面白い。1つの品物を完成させる達成感が味わえる

製造課
田中さん
――就職先を考える際、三津海製作所のどんなところが魅力的だったのでしょうか? 私が入社したのは17歳のころ。高校も卒業せず、職業訓練校で1年程度勉強しただけの若者でした。そして訓練校から紹介された求人票が、当社のものだったのです。 訓練校で勉強したのは機械加工でしたが、この会社では加工した金属を組み立てて製品にする。組み立てまでやる会社はそう多くありません。1つの製品をしっかりと完成させられるところに魅力を感じました。 絶対、完成形が見えた方が面白いですよね。作っていて何に使うのか、どんな形になるのかが分からないよりも、ずっといいです。1つの品物を完成させる達成感が味わえるのではないかと感じました。 はい。ポンプ単体を作ることもあれば、ポンプを含めた機械1台を丸ごと組み立てることもあります。組み立てに使う部品の点数も毎回違い、新鮮な気持ちで仕事に臨めます。 機械加工をする機械課では、100分の1、1000分の1ミリ単位の加工をします。それだけの精度が求められるわけですから、組み立てをするときにも、わずかなゴミでも混ざってしまってはいけません。ポンプの音が変わってしまいますし、性能は落ちてしまい、寿命も短くなってしまいます。気持ちの込め方で本当に製品の寿命が1年で終わるのか、2~3年持つかが変わってきてしまうのです。機械課のみんなが気持ちを込めて高精度で仕上げてくれた部品ですから、私たちも気持ちを込めて組み立てていこうと責任を感じています。 ポンプはどちらかというと、あまり人目に付かない裏側にある製品です。「どこで使われているの?」と聞かれて、「ここだよ」と答えて初めて「そうなんだ」と感心してもらえます。けれど裏側からでも、ポンプはちゃんと世の中の役に立っています。命にかかわる医療でも使われていますし、大切なお金を取り扱う銀行でも使われています。 そういった裏側で、縁の下から支えるポンプという製品に携わっているのが私の誇りなのです。 繰り返しますが、私が入社したのは17歳のときです。社会人としての常識・礼儀も知らない若者が、挫折せずに10年間も同じ仕事を続けられたのは、この会社の職場環境がよかったからに違いありません。 先輩が社会のことや仕事の進め方を教えてくれて、先輩や仲間が一緒になって私の悩んでいるところを解決しようと面倒をみてくれる。そんな職場だからこそ、私は働き続けることができたのだと思います。 当社の製品には「MITSUVAC」というロゴが入っています。ロゴを入れている以上、その製品が高品質でないと、当社の信頼に傷が付いてしまうわけです。そうならないように、注意深く製品を組み立てていきたいです。 そしていつか、「made in Japan」と同じように「made in mitsuvac」が高品質の代名詞として使われるようになっていくといいですね。 「自分のやりたいこと」を分かっていない人は多いでしょうし、それを見つけるのは難しいことです。 「こんな方向性のことをやりたい」と思っていても、実際に働き始めたら「正反対の方向性のことをやりたかった」と気が付くこともあるかもしれません。 そういうときに大切になってくるのが基本。小学校・中学校・高校で教わる基本をしっかり学んでおけば、途中で方向性を変えたくなっても何とかなります。 機械加工においても基本は大事なのですが、何においても基本を疎かにせず、大切にしてほしいです。 注)掲載している情報は、取材日(2013年6月)時点のものです。