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株式会社 仲代金属

株式会社 仲代金属 金属を髪の毛1本の細さに“切る”。世界唯一の加工技術<br>電子機器の重要部に使われるアモルファス合金を“切れる”のは仲代金属だけ。金属を細く薄く、0.1mm単位でエアバッグ用極細線・モバイル端末用電池向け部品などを加工

株式会社 仲代金属

金属を髪の毛1本の細さに“切る”。世界唯一の加工技術
電子機器の重要部に使われるアモルファス合金を“切れる”のは仲代金属だけ。金属を細く薄く、0.1mm単位でエアバッグ用極細線・モバイル端末用電池向け部品などを加工

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株式会社 仲代金属

金属を髪の毛1本の細さに“切る”。世界唯一の加工技術 電子機器の重要部に使われるアモルファス合金を“切れる”のは仲代金属だけ。金属を細く薄く、0.1mm単位でエアバッグ用極細線・モバイル端末用電池向け部品などを加工

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  • 社名:株式会社 仲代金属
  • 設立年月:1976年8月(創業:1974年1月)
  • 資本金:2,500万円
  • 従業員数:45名
  • 代表者:代表取締役 安中 茂
  • 社員平均年齢:39歳
  • 主な勤務地:東京都足立区・新潟県阿賀野市
  • 休日:土日祝日
  • 本社所在地:東京都足立区加平3-14-11
  • 電話番号:03-3605-7730
  • 公式HP:http://www.nakadai-metal.com/
  • インタビュー動画はこちら
  • ・0.1mm単位で“切る”。エアバッグ用極細線・モバイル端末用電池の重要部品を加工
  • ・その日の温度・湿度次第で微調整。一人前になるまで10年以上
  • ・世界でも仲代だけ。アモルファスを髪の毛ほどに切る技術
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業種

金属箔の精密スリット加工・シートカット加工

事業紹介

仲代金属は金属スリット加工の専門業者です。様々な性質を持つ材料を切断し、幅を細く加工するのがスリット加工です。
当社のスリット加工は薄い金属箔を 例えば髪の毛と同じ細さまで切断するという 世界最高の技術を誇ります。
この技術と精度が認められ、様々な分野のエネルギー面や安全面で必要不可欠な製品に使用されています。

自動車エアバッグ用SRC(電気信号線)をはじめ、様々な自動車関連部品
モバイル端末などの電池用部品
エアコンなど家電製品用トランス部品
リチウムイオン電池発火事故防止のための極小試験片(シートカット加工)

これらはほんの一例ですが、エアバッグ用SRCは世界の6割を占めるなど、多くのシェアを持つ数々の製品に携わっています。
近年では、当社スリット品に高付加価値を施した業界初となる二次電池向けタブリード部材の「バリレス製品」の開発にも成功し、蓄電池特有の発火や変形、液漏れ防止に期待されています。

当社はこれからも自社の技術に磨きをかけ、“軽薄極細化”加工の限界に挑み続けます!

【事業内容】0.1mm単位で“切る”。エアバッグ用極細線・モバイル端末用電池の重要部品を加工

削る、押し抜く、研磨する。モノづくりにはさまざまな金属加工の技が必要になるが、金属を“切る”技を磨いてきた技術者集団がある。スリット加工・シートカット加工を専門にする仲代金属だ。 細く、薄く。届けられたテープ状の金属を、スリット加工によって0.1mm単位で糸状にまで細くしていく。そこからさらに細かく裁断し、板状に仕上げるのがシートカット加工。0.1mm×0.1mmという極小品を作ることも可能だ。 同社の手で高精度に切られた金属は、精密部品の核となる部分に用いられる。例えば、世界で作られる自動車エアバッグの約6割、国内で製造されるモバイル端末用リチウムイオン電池の約4割に同社の加工品が使われている。

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【職人の技】その日の温度・湿度次第で微調整。一人前になるまで10年以上

スリット加工を例えるなら、はさみと紙。はさみの刃を程よく開くと、その間に紙を滑らせるだけで切れてしまう。スリット加工もそれと同様、金属に刃物を滑らせて切っていく。 「刃物をどうやって金属に当てるか」「どれくらいの力を掛けるのか」といったところにノウハウがある。機械の設定をほんの少し変えるだけで切れ味は大きく変わってくる。 金属の種類によっても勝手が違い、どんな金属でも切れるようにと用意した刃物は500種類以上。その日の温度・湿度次第で加減を微調整する必要もあり、マニュアルどおりでは通用しない。 簡単な加工を1人でできるようになるまで2~3年、一人前になるまで10年以上もかかる。まさに勘と経験が物を言う職人の仕事だ。

04.jpg 切る金属の張り具合などを手で確認し、
ダイヤルを微妙にひねって加工条件を調整する

05.jpg 仲代金属に依頼される加工の中でも、
特に作業環境が求められるものは、室温を一定に保ち、
宙を舞うほこりなどにも配慮したクリーンルームで加工

【プロジェクト】世界でも仲代だけ。アモルファスを髪の毛ほどに切る技術

電源変圧器など、電子機器の重要部分に使われるアモルファスという合金がある。この金属を切れるのは、世界でも仲代金属だけだ。 金属はそう簡単に壊れないが、アモルファスは力の掛け方次第で簡単に砕けてしまう。脆くもあるが、非常に硬く、普通に切ると刃物がすぐ使い物にならなくなる。同社の前に6社が挑んですべて失敗。同社も1年かけて試行錯誤し、ようやく「金属に逆らわず、行きたいように行かせながら切る」という境地を見出した。 さらに技術を磨き、今では髪の毛1本分ほどの幅で四角形に切ることも可能に。アモルファスの加工依頼は増え続け、増産に対応できるように新潟工場を整備。地元の若者を採用して、技術継承に努めている。

06.jpg アモルファス加工をしている新潟工場で働く皆さん

社長メッセージ
いつも平常心で心をきれいにしておかないと、いい仕事はできない

代表取締役
安中 茂さん
――アモルファス合金をスリット加工できるのは、世界でも貴社だけだと伺いました。貴社で加工したアモルファスは、どのような製品に使われているのでしょうか? カーナビや変圧器、パソコン、電動自転車、太陽電池などに使われています。 アモルファスを加工しているのは、当社の新潟工場です。「これまでの常識では不可能な加工をするのだから、経験者も未経験者も変わらない。それならいっそ、未経験の若者を育てて覚えてもらおう」と考えました。3000坪(約1万m2)ほどの敷地を用意して増産に備え、地元出身の若者を採用して育てています。 既にスマートフォンのような機器が登場してきていますが、今後はさらに高性能な機器がパスポートほどの大きさで使えるようになると言われています。そこまで小さくするには、極薄の金属を何十枚と積み重ねて作るようになるでしょう。そうなったときには、髪の毛ほどの細さにまで金属を加工できる当社の技術が、今よりさらに重宝されるはずです。 スリット加工・シートカット加工で一人前になるまで、最低10年はかかります。 というのも、当社の装置は誰にでも扱えるものではないからです。数値を入力してコンピュータ制御で加工するのではなく、装置を動かしてみて、職人の手と目と耳でその日の状況を感じ取り、勘と経験を頼りにつまみを回して最適な状態に設定するのです。そうしないと、金属をきれいに切ることはできません。 そうした金属を切るノウハウをできるだけ分かりやすく社員に伝えようと、私自身がさまざまな金属を切ったときの加工方法を実際に切った金属の見本と共にノートに記して残してきました。今ではノートが本棚1台分ほどの場所を取るようになったほどです。 それだけ職人の技にこだわるのは、当社が自分たちの技を売っているからです。一般的なモノづくり企業は、素材を仕入れてきて加工した“部品”を売ります。当社はお客様から素材を預かり、それを“切る”行為に対して対価を頂いているのです。対価に見合うだけの“切る”技術を見につけていなくてはいけません。 いつも心に波風を立てず穏やかにしておかないと、大切なお客様の材料を切れません。切ったときの心の状態は、多かれ少なかれ、加工品に影響してしまいます。「仕事が忙しい」「家庭で嫌なことがあった」といったことで心を乱しているときは、うまく切れません。いつも平常心で、心をきれいにしておける人でないと、いい仕事はできないと思っています。 スリット加工は楽しいですよ。金属の切り方は1つに決まっているわけではありません。どんな刃物を使うか、どのように装置を調整するかと考えていくと、切り方の可能性は数百万通りにも広がっていきます。その中から最適な切り方を探すのが私たちの仕事。その魅力が分かってくると、たまらなく面白くなります。 日本のモノづくりは、これからです。これから再び、日本のモノづくりのすごさが注目されるはずです。そんな時代に備えて、当社のような会社のことを、もっと若い人に知ってもらいたいものですね。

07.jpg 代表取締役 安中 茂さん

先輩メッセージ
「金属加工には付き物」と言われたバリを残さない加工法を編み出す

加平工場 生産グループ グループ長
安藤さん ――どんなことがあって、「この会社で働きたい」と思うようになったのでしょうか。
転職することになって求人情報を探していたところ、当社の情報を見つけました。仕事内容に書いてあったのは、「スリット加工」という聞き慣れない加工方法。「どんな加工だろう」と興味を持ったのです。 それで詳しく調べようと当社のホームページを見てみたら、社長のインタビューが掲載されていました。「水が流れたいところに流れていくように、金属も行きたいところに行かせながら切る」ということを語られていて「奥深い仕事だな」と感動し、「自分もこの仕事に携わりたい」と思うようになりました。 スリット加工で金属を切っています。自分で加工もしますが、グループ長としてお客様からの注文を10人ほどの社員に割り振って、注文どおり仕上げるように進行管理するのも私の役割です。 今、力を入れているのは「バリレス加工」です。金属を加工すると一般的には、加工切断面に突起(バリ)が残ってしまうものです。けれど当社は、バリをゼロに近づける加工法を編み出しました。 時折、「携帯電話の電池が発火した」といったニュースを耳にしますが、その原因の一因が加工切断面のバリにあると言われています。電池の端子に使用する部品にバリが残っていると、バリが電池内部に傷を付けてしまい、わずかな傷から発火事故へと発展していくのです。 当社の技術を使って加工すればバリがほぼなくなり、もっと安全な電池を作れるようになります。現時点でも、モバイル端末の電池向け加工は多いのですが、バリレス加工によって、もっと注文が増えると期待しています。 この会社で働いていて感じるのは、非常に奥の深い仕事だということです。私はこの仕事を9年続けてようやく「こうすれば上手に切れる」という感覚を何となくですが持てるようになってきました。 ですが今でも壁にぶつかり、先輩たちに相談し、アドバイスをもらいます。そのとおりに修正してみると途端に問題が解決するので、先輩たちの技術のすごさ、この仕事の奥深さを改めて感じますね。 自分ももっと切る技術を極めていきたいと思います。 「仲代金属」という社名は、「仲よく代々」という思いを込めて付けられたものです。その社名のとおり、先輩・後輩の間で気軽に話し合える雰囲気があります。 難しい加工に直面したとき、どうにもうまくいかず、悩んで気持ちが落ち込んでしまうこともあります。そんなときには、先輩たちが察して励ましてくれることが、自分にとって支えになっていると思いますね。 お客様からの要望は、「より薄く、より軽く」と年々厳しくなっていきます。お客様を満足させるためには、注文どおり薄く軽くするだけでなく、バリレス加工のように、それ以上に高度なことに挑戦していく必要があると考えています。 常に現在の技術に満足せず、お客様の要望にしっかりと応えられるように技術を向上させていきたいです。 私がこの会社に入ったきっかけは「スリット加工」という言葉に興味を持ったからでした。 そのように、少しでも気になったり興味を持ったりしたことがあれば、詳しく調べてみるなど一歩踏み込んでみてはどうでしょうか。興味を持って行動に移すことで、いい結果につながると思います。

08.jpg 加平工場 生産グループ グループ長
安藤さん

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先輩メッセージ
アモルファスを加工できるのは新潟工場だけ。そのことに、自分も誇りを感じる

新潟工場 生産グループ グループ長
本間さん
――どんな縁から、こちらの会社で働くことになったのでしょうか? 叔父が新潟工場で働いていまして、「いい会社だから一緒に働かないか」と誘ってくれたのです。 最初はモノづくりの仕事に興味を持っていませんでしたが、叔父から「世界でこの会社にしかできない加工がある」と紹介され、「それなら工場見学くらいなら行ってみようか」と思うようになりました。 機械で金属を“切る”ということができるのか半信半疑だったのですが、工場見学に行ってみたら、とにかく驚きましたね。実際に加工現場を目撃して「自分もやってみたい」と考えが変わりました。 まずはアモルファスの加工を任されました。しばらくは先輩の横に付いて、加工方法を教えてもらいました。少しずつ仕事を任せてもらい、自分の手を動かしながら学んでいきました。 本格的にアモルファスを加工しているのは、世界で当社の新潟工場だけです。少しだけの加工なら他にもやっている工場があるかもしれませんが、新潟工場ほどの規模・速さで加工できる工場は他にないと断言できます。私自身、アモルファスの加工には誇りを持っています。 少しずつ先輩に教わりながらできる範囲を広げていき、1人で一通りのことができるようになったのは、2~3年経ったころだったと思います。そうしたら欲が出てきて、「今度はもっと別の金属を加工する技術を身に付けたい」と思うようになり、新潟よりも多種多様の金属を扱っている東京の工場への配属を希望しました。 配属後、さまざまな金属を少しずつ切らせてもらい、今はより難易度の高い四角線の加工に取り組んでいます。断面が正方形になっている導線で、例えば丸断面になっている今の電線から四角線に置き換えると、モーターなどをもっと高性能化できるようになります。非常に難しい加工ですが、うまくできたときにはうれしい気分になりますね。 私が「東京の工場でもっと技術を磨きたい」と願い出たら希望を実現してくれたように、「これをやってみたい」と言えば真剣に検討してくれる会社です。 時折認められないこともありますが、そんなときはしっかりとその理由を説明してくれるので、納得感を持って働けています。 東京まで出てきて技術を学んでいるわけですから、こちらでしっかりと技術を身に付けて、新潟工場に持ち帰りたいです。 そして新潟工場で働く若手社員に、私が学んだことを広めていきたいですね。 世の中には、さまざまな仕事がありますが、当社のスリット加工・シートカット加工は、そう簡単に習得できるものではありません。奥深い技術で、どんなに経験を積んでも、さらにその先がありそうだと感じています。 そんなスリット加工をさらに極めていく今の仕事は、本当に面白いです。当社のような金属を切る仕事には終わりがなく、生涯をかけて取り組める仕事だと思います。 注)掲載している情報は、取材日(2014年12月)時点のものです。

09.jpg 新潟工場 生産グループ グループ長
本間さん