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株式会社七星科学研究所

株式会社七星科学研究所 製造現場ごとの異なるニーズに応える知る人ぞ知る産業用コネクタメーカー<br>図面より先に試作品を持っていく。「一歩先」を心掛け、少量多品種の製造と最適化した組織で顧客の心をつかむ

株式会社七星科学研究所

製造現場ごとの異なるニーズに応える知る人ぞ知る産業用コネクタメーカー
図面より先に試作品を持っていく。「一歩先」を心掛け、少量多品種の製造と最適化した組織で顧客の心をつかむ

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輝く技術 光る企業

株式会社七星科学研究所

製造現場ごとの異なるニーズに応える知る人ぞ知る産業用コネクタメーカー 図面より先に試作品を持っていく。「一歩先」を心掛け、少量多品種の製造と最適化した組織で顧客の心をつかむ

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  • 社名:株式会社七星科学研究所
  • 設立年月:1943年9月
  • 資本金:4000万円
  • 従業員数:203名(2006年3月現在)
  • 代表者:取締役社長 鈴木 芳久
  • 本社所在地:東京都中野区上高田1-49-15
  • 電話番号:03-3386-3181
  • 公式HP:http://www.nanabosi.co.jp/
  • 東京都には知る人ぞ知る会社がたくさんある。株式会社七星科学研究所もそのうちの1社。産業用のコネクタメーカーとして少量多品種の製造に特化し、1社ごとに異なる細かな要望に対応してきた。機敏な対応が求められるため、「常に一歩先を目指して」という基本方針を掲げ、ベテラン・若手を問わずに社員のチャレンジを促してきた。同社が育んできた企業文化に焦点を当てる。
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事業紹介

丸型メタルコネクタ(メタコン)を主軸に防水コネクタなど幅広い製品をご提供しております。電力関連、機械関連、FA機器、通信インフラなど様々な分野で活躍しております。
また、ダイカスト成形も承っております。

千や万という種類が存在する産業用コネクタの世界

機器間で電気・データを橋渡しするコネクタ。身近なところでは、イヤフォンのジャック、パソコンのUSBコネクタなどが挙げられるが、規格が統一されている民生用に対して、産業用の規格は実にさまざま。1社ごと、場合によっては製造現場ごとに求められる機能が異なるため、千や万といった種類のコネクタが存在する。 そんな産業用コネクタのメーカーとして、広く名を知られているのが株式会社七星科学研究所。コネクタ以外にも金型にアルミや亜鉛を流し込んで鋳物を製造するダイカストや、コネクタの関連製品として光通信機器も手掛けている。 七星科学の事業に共通しているのは、少量多品種に特化したモノづくりに取り組んでいるところ。お客様の声を聞きながら、新しい製品をつくっていく。その積み重ねが膨大な種類の製品の製造を可能としているのだ。 コネクタの種類が多くなっている理由について、同社取締役社長の鈴木芳久氏は別の角度から次のように説明する。 「最先端の電子技術とは違って、コネクタはつくった商品が陳腐化しません。何十年も前の製品がまだまだ製造現場で使われているので、どんどん積み上がって点数が増えているのです。結果、部品点数がすごい数になる。その組み合わせでまた新しいものをつくるので、バリエーションがさらに増えていきます」 大手のコネクタメーカーは、そこまで細かい要望に応えない。小規模なメーカーは対応するかもしれないが、品質保証をする試験装置がそろっていないところが多い。細かな要望に応じながらも、提供する製品の品質まで保証できるところが七星科学の強みになっているという。

shacho2.jpg 取締役社長 鈴木 芳久さん
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図面よりも先に試作品を見せることで顧客の隠れた要望を引き出す

産業用コネクタの世界では、各製造現場が独自のコネクタを採用していることが多いため、新しいコネクタに交換しようと思っても、別の会社に発注することが難しい。「コネクタメーカーは新しい会社を開拓しようにも、他社のコネクタを採用している企業を開拓するのは生半可のことではありません。でも、逆に1回使われると守りやすい。そういう変わった業界なのです」(鈴木氏) そういった業界の特殊性や、同社が元々は研究所から法人化した企業だという背景もあってか、同社にはユニークな習慣が根付いている。顧客企業から「こんな製品がほしい」という要望があったら、普通は図面を持って提案しに行く。ところが同社は、先に試作品をつくってしまう。図面の代わりに試作品を見せるようにしているのだ。 「お客様は驚かれることが多いですね。『もう品物にしちゃったの?』と。図面と比べてもやっぱり反応が違います。触り心地、重さ、形、すべてを目と手で確認できますから。 試作品を手にすることで『もっとリングの周りをこうしてくれ』『大きさが思っているよりも大きい』といった感想が出てきます。それを改善していくことで、お客様の要望を満たすものを作り出せます。そうした感想の中には、自社の別製品にフィードバックできる感想もありますから、その意味でも試してもらうことは大事なのです」(鈴木氏)

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ものすごく先に行く必要はないけれど、ちょっとだけ先を目指して

図面よりも先に試作品を見せる営業方針にもその一端が現れているように、七星科学は「常に一歩先を目指して」という基本方針を掲げている。営業でも品質でも技術でも、他社より「ものすごく先に行く必要はないけれども、ちょっとだけ先を目指しています」(鈴木氏)。社員には普通に働くのではなく、ちょっとだけ先を目指してチャレンジすることを求めているのだという。 社員全員がチャレンジ意識を持つように、発言者の顔ぶれが固定されがちな会議はできるだけ開かない方針。それよりも部署の壁を越えて、立ち話でも良いから気軽に話し合うことが励行されている。若手・ベテランにかかわらず、社員が活発に意見交換をすることで、自分の意見を伝えて、新しいことにチャレンジできる環境を整えようと工夫しているのだ。 そんな七星科学で求める人材は、専攻を問わない。機電系以外にも広く門戸を開いている。 「ただ一つ言っているのは、『モノづくりの好きな人がほしい』ということ。自分で図面を描く人もいれば、機械を動かして製造する人もいる。いろんなモノづくりへの関わり方がありますが、『モノづくりに携わることが好き』という人がほしいのです。 何よりも好きであることが大事になるのです。好きなら勉強しますし、覚えます。けれど、好きでないならどこかで無理が出てきますから。 専門で学んでいても、モノづくりが好きではない人もいるでしょう。ですから、当社はまず『モノづくりが好き』だという人を大事にしたいのです」(鈴木氏)

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先輩メッセージ
製品2万点のうち、かなりの割合がお客様の要望に応えてカスタマイズしたもの


技術部 部長補佐 兼 技術二課 課長富永さん

――業務の内容について教えてください。
設計から生産準備まで、製造部門へ渡すところまでを一貫して見ています。 当社にはコネクタだけで製品が2万点あります。そのうち、3分の1から半分ほどの製品がお客様の要望に沿ってカスタマイズしたものです。お客様から「こうしてほしい」と言われたことをどう実現するか。それを考えていくのが私たち技術部の仕事なのです。
――お客様からの要望にはどのようなものがあるのですか?
コネクタを外して別のものに取り付けるのに、ネジを回す形式では10〜20秒ほど掛かってしまいます。製造現場では、その積み重ねで製造時間が増え、コストにはね返ってしまいます。ですから、その時間を減らせないかと簡単に取り付けられる形式を考えることもあります。 逆にコネクタをほとんど外さないお客様もいらっしゃいます。ずっと外さないままで性能を長期間維持できるようにしてほしいという依頼もあるのです。お客様によって本当に多種多様ですね。 中には、試験用の装置で使われるコネクタで、3年くらい掛かって試行錯誤した末に形になった製品もありました。高温・高湿・高圧力の状態に置かれるため、そういう環境の中でも保つように、コネクタ内に充てんする材料や、コネクタの形状を工夫しました。
――貴社の強みはどんなところにあると思いますか?
表面処理の工程以外、コネクタ製造に必要な工程を社内で扱っているところですかね。各現場に行って、「こうしたいんだけど、どうだろうか」と気軽に話ができます。そのおかげでお客様への提案の幅がものすごく広がっていると感じています。 例えば強度を求められたとして、部品を付加して強化するやり方以外に、充填する材料を変えることでシンプルな設計ができることもあります。そうすることで安価に製造できますから、お客様にものすごく喜ばれて、私たちもうれしくなります。
――働いていて感じる貴社の魅力は?
社風が自由なところです。会社の上層部が社員のやろうとすることに対して否定をしません。いろいろな角度から後押ししてくれます。 私は化学を専攻していましたが、この会社に入って初めて「考えたものが形になる」ことの魅力を感じるようになりました。最終的に形になるところを見られるのも、この会社で働く魅力だと思います。
――今後はどういった点に力を入れていきたいですか?
私自身、さまざまな現場で先輩から話を聞き、いろいろなことを教わってきました。頭の中だけで考えるよりも、見て聞いてみた方が勉強になります。当社は外注をほとんど使っていませんので、それを会社の中で実現できる環境があるのです。 そういう習慣を後輩たちにも身に付けてもらいたいですね。そうすることで、お客様への提案にも幅が出ると思います。

shain1.jpg 富永さん

先輩メッセージ
畑違いでも「とにかく見てみる」姿勢が生んだ出会い


技術部市川さん

――就職先として貴社を選ばれた理由を教えてください。
自宅に工場見学の案内が届いたことがきっかけでした。私は化学を学んでいましたので、畑違いの会社ではありました。ですが、「工場見学に行くだけなら特にデメリットは何もない。とにかく見てみよう」と。当社以外にも、専門性や企業の大きさにはこだわらず、募集が出ている企業にはいろいろと足を運んでみました。
――工場見学をしてみた感想は?
自由そうな会社だと思いました。良い意味で張りつめた空気ではなく、失敗しても良いから大きな仕事をやらせてもらえるような会社に入りたかったので、入社したいと思うようになりました。 面接自体も圧迫するようなものではありませんでしたし、回数も他社と比べて少ない回数で内定をいただけました。「求めていただけているんだ」という感じがしましたね。
――入社してからこれまで、どのような業務を経験してきましたか?
最初の半年間は、さまざまな部署で研修を受け、各部署の業務を経験しました。その後の半年間は製造現場で実習を積み、本格的に技術部として設計に取り掛かったのが2年目からですね。 設計の仕事には2種類あります。一つはお客様が「ほしい」と言ってくださったものを形にする仕事。もう一つはどんなお客様にも使っていただけるような製品の設計です。 後者のカタログに載せて販売する製品にしても、仕様を改良・改善することが必要になってきます。設計を見直したり、今までにない性能を持ったものを考えたりしています。
――貴社のどんなところが好きですか?
部署の壁が低いところですね。部署の壁を越えての仕事がしやすいです。相談事を持ち込んでも、ちゃんと対応してくれるところが良いと思います。
――今後の抱負を教えてください。
自分がまだまだ未熟ですから、まずは自分に求められていることを把握して、そこまで到達できるように努力していきたいです。
――学生に向けてのアドバイスをいただけないでしょうか。
専門性や、企業の大きさにこだわって就職活動をするのはもったいないと思います。畑違いでも、自分がどういう仕事をやりたいのか決まっている人でも、会社を見て回ることで新しい発見があるかもしれませんよ。

shain2.jpg 市川さん