<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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株式会社 日本熱電機製作所

株式会社 日本熱電機製作所 おいしく炊ける炊飯器の開発を助けた極細温度センサー<br>モノづくりのさまざまな場面で温度を測るシース熱電対。極細0.15mmで計測不可能を可能にし、新製品開発に貢献

株式会社 日本熱電機製作所

おいしく炊ける炊飯器の開発を助けた極細温度センサー
モノづくりのさまざまな場面で温度を測るシース熱電対。極細0.15mmで計測不可能を可能にし、新製品開発に貢献

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輝く技術 光る企業

株式会社 日本熱電機製作所

おいしく炊ける炊飯器の開発を助けた極細温度センサー モノづくりのさまざまな場面で温度を測るシース熱電対。極細0.15mmで計測不可能を可能にし、新製品開発に貢献

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  • 社名:株式会社 日本熱電機製作所
  • 設立年月:1957年5月
  • 資本金:1,000万円
  • 従業員数:18名
  • 代表者:代表取締役 童子 俊一
  • 社員平均年齢:47歳
  • 初任給:面談の上
  • 主な勤務地:本社
  • 休日:月2回土、日・祝日、GW、夏期、年末年始、有給休暇
  • 本社所在地:東京都北区昭和町 2-6-5
  • 電話番号:03-3893-5421
  • 公式HP:http://www.nndalloy.co.jp/
  • ・さまざまな工業用途で温度を測るセンサーを開発・製造
  • ・異なる金属をつなげ、温度差が生む電圧から対象の温度を計測
  • ・新製品開発に生かす。0.15mmで計測不可能だった温度を測る
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業種

・熱管理器具の開発・製造・販売
・温度測定用精密機械、温度センサの開発・製造・販売

事業紹介

0~∞ これが私たちのチャレンジ・フィールドです。

具体的には、次のような製品を作っています。

【熱電対】
一般的な工場等で使用される温度センサです。

【特殊熱電対】
特定の用途向けに使われる特殊温度センサで、次のような製品があります。

⇒超低温度域センサ
マイナス160℃前後の温度も測定できるセンサです。LNG気化装置などで使われています。

⇒超高温度域センサ
2,000℃~2,100℃もの超高温も測定できます。Al2O3、BN、Si、等の単結晶製造装置などで使われています。

⇒多点式センサ
マイナス160℃~プラス600℃までの範囲に対応し、1つのセンサで数点から十数点までの複数個所(マルチポイント:MP)の温度を測定できます。

上記のような温度測定の実現に向け、私たちは未知の領域へ常に挑戦しています。

【事業内容】 さまざまな工業用途で温度を測るセンサーを開発・製造

金属や樹脂を溶かす、半導体に使うシリコンの結晶化を促進する、電気炉を一定の温度にまで加熱する――。モノづくりをする上で、さまざまな場面で温度センサーを使い、温度を計測する必要がある。 日本熱電機製作所が作っているのは、そうした場面で使用するシース熱電対という温度センサー。直径0.15mmという極細のシース熱電対を作り出せるのは、国内に同社含めて数社ほどしかない。 数社ある中でも、0.15mmのシース熱電対を作る技術を応用してみせるのが同社の得意分野。1本のセンサーで複数点の温度を測定できる多点式センサーなど、用途に応じて最適なセンサーを開発する力で、同社は他社よりも一歩先んじている。

03.jpg 複数個所の温度を測定できる多点式センサー
04.jpg 高温にも耐えられる温度センサー。
このような用途別のセンサー開発に秀でている

【原理】 異なる金属をつなげ、温度差が生む電圧から対象の温度を計測

熱電対とは、種類の異なる2本の金属を接合して回路にしたもの。接合した2個所に温度差が生じるほど、回路内に大きな電圧が掛かる現象を利用。発生した電圧の大きさから2個所の温度差を算出し、計測対象側の温度を導き出す。 接合した部分を計測対象に近づけて温度を測る必要があることから、酸化マグネシウムなどを詰めた保護管に収納してあることが多く、そうした形状になっている熱電対をシース熱電対と呼ぶ。 シース熱電対が細くなれば細くなるほど、温度変化が早くなり、より素早く温度を計測できるようになる。さらに、微小な対象物の温度計測が可能になる、わずかな隙間でも通して内部の温度を計測できる、といった利点がある。

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06.jpg シース熱電対を1点ずつ手作業で仕上げていく

【プロジェクト】 新製品開発に生かす。0.15mmで計測不可能だった温度を測る

熱電対は100年以上前から作られている製品。30年ほど前からシース熱電対を作り始めた日本熱電機製作所は、先行企業との違いを生み出すため、できるだけ極細のものを作ろうと考えた。 苦労の末に完成した0.15mmのシース熱電対は、これまで不可能だった温度計測を可能にした。 例えば、炊飯器で炊く米の中の温度まで測れるようになった。米・水・釜内の空気の温度をそれぞれ計測することで、よりおいしく米を炊ける炊飯器の開発を助けた。 また、エンジンの隙間から、シース熱電対を通せるようにもなった。内部の温度を正確に測ることで、もっと優れたエンジンが誕生するかもしれない。 このように、さまざまな新製品の研究開発に同社製品は貢献している。

07.jpg 極細のシース熱電対を作る際は顕微鏡を使いながら
作業を進める

社長メッセージ
-200℃から2000℃超まで。どんな温度であっても正確に測れるように挑戦を続ける

代表取締役
童子 俊一さん
――0.15mmのシース熱電対、やはり製作は難しいのでしょうか。 0.15mmになってくると、作る人を選びます。1日中、机に向かって顕微鏡をのぞきこんで仕上げていくことになりますから、性格的に細かい作業が好きで、我慢強い人でないと耐えられないのです。 そういった性格面の条件さえ満たせば、あとはモノづくりが好きで、手先がある程度は器用であれば、0.15mmの加工はいずれできるようになります。それでも、作業に慣れて1人前の製品が作れるようになるまで、3年ほどはかかるでしょうね。 絶対零度から無限大まで、どんな温度であっても正確に測れるようにチャレンジしていくことです。 熱電対自体は、100年以上前からある製品です。それでも、いろいろと工夫・改良していくことで、絶対零度に近い低温や、2000度ほどの超高温でも測定できるようになってきました。斬新な製品でなくても、もっと低温・高温が測れる製品、より寿命の長い製品、高精度に温度を測れるさらに優れた製品を生み出していけるように挑戦を続けていきたいですね。 また、大事なことを社員みんなで話し合うようにもしています。そのために2年ほど前、社員全員が集まって話せる会議室を作りました。 最近になって、若手社員を3人採用しましたが、それも会議室で「若手を採用しよう」とみんなで話し合って決めたことなのです。 必要なことを教えたら、そこから先はある程度、自分で考えて自由に行動するようにさせています。 自分で考えて行動することで、初めて気が付くこともあります。それが何よりも、若手の成長を促すのではないでしょうか。 極細のシース熱電対を開発し、超高温や低温でも測れる製品を作り、真空装置の中の温度も測定できる製品を完成させました。 そうした製品は、どれも工業用途で使うものです。今後は工業以外の分野にも挑戦してみたいですね。 例えば、医療分野には注目しています。カテーテルの中にヒーターを組み入れて、不静脈の発生部位を焼いて治すカテーテルアブレーションという治療法が広まっています。ヒーターを使う以上、温度センサーも必要なはず。当社が入り込んでいく余地も大きいだろうと期待しています。 昨年、人材を募集する企業が集まる合同企業説明会に参加しました。30~40社が参加した中で、製造業の企業は当社くらい。それが当日になってみると、一番多く人が集まったのは当社だったのです。 ここ最近、日本のモノづくりについて暗いニュースを聞くことも少なくありませんが、モノづくりは今の世の中にとって絶対に必要なものです。その中で当社が作っているものはちょっと変わったものですが、それでも当社の製品はモノづくりをする上で確実に必要とされるものです。そんな理由があって、多くの人に興味を持ってもらえたのだと思っています。 当社が若手の採用に力を入れ始めたのは最近のことですが、今後も若手の採用を続けていくつもりです。学生の皆さんには、小規模であってもがんばっているわれわれのような企業に目を向けていただいて、就職先としてもぜひ検討してほしいですね。

08.jpg 代表取締役 童子 俊一さん

先輩メッセージ
自社製品のほとんどを検査。1日かかっていた仕事を、4時間ほどで終えられるように

品質管理部 検査
川名子さん
――入社されたきっかけは、どんなものだったのでしょうか? 以前、シース熱電対とは違う種類の温度センサーを作っている会社で働いていました。その会社から転職することになり、合同企業説明会に参加してみたところ、そこに当社が出展していたのです。 前職と同じ温度センサーメーカーということで、前職の経験を生かせるのではないかと思いました。それで興味を持って、面接を受けさせていただきました。 製造部で作られたシース熱電対は、ほとんど私のところに届けられます。届いたシース熱電対について、1点1点、熱を加えたときに正確に温度を計測できているか、保護管の長さや保護管から出ている金属部分の長さ、それに全長は合っているか、と検査していくのが私の業務です。 最近は、短納期で「すぐ欲しい」という注文が増えてきました。検査も手早く短時間で済ませることが求められています。とはいえ、私は入社してまだ半年。入社して間もないころは、要求される速度で対応することが難しかったのです。それでも3カ月ほど経験を積んできたことで、足を引っ張らずに対応できるようになってきました。以前は製品100本を検査するのに1日くらいかかっていたのが、今では4時間くらいで終えられるようになっています。 時には、10日先に納品予定だった製品を「今日欲しい」と無理を言われることもあります。それでも何とか要望どおりに当日中に完成させられたとき、営業担当者から「間に合わせてもらえて、本当に助かった」と感謝の一言をもらえたことがありました。そのときは、「がんばってよかった」と強く思えましたね。 昨日のテレビ番組の話や私が趣味にしている自動車の話など、みんなが気さくに話し掛けてきてくれます。 また、検査は製造の最終工程ですので、時間のやり繰りに工夫が必要です。そんな中でも、ある程度自分で考えた進め方ができることが自信につながっています。 今は検査の仕事を任せられていますが、私はまだまだ半人前です。まだ自社製品の70%くらいしか検査したことがありません。早く自社製品の検査をすべて担当して、1人前になりたいです。 そこまで達成できたら、今度は製造の仕事にも携わってみたいと思っています。 学生時代、私は引っ込み思案で、何事にも挑戦しようと一歩踏み出すことができませんでした。けれど今になって思い返せば、「あのとき、あれをやっておけばよかった」と後悔ばかりです。 学生の皆さんは、私のように後悔することがないように、興味を持ったら何事にも挑戦してみてほしいですね。

09.jpg 品質管理部 検査 川名子さん
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先輩メッセージ
やり始めたころは苦労していた0.5mmの加工も、今ではだいぶ慣れてきました

製造部 極細グループ
青島さん
――この会社に入社したときのことを聞かせてください。 当社のことは、ハローワークで紹介されて知りました。高等専門学校卒で昔からモノづくりが好きだったので、製造業の会社を探していました。いくつかの企業を紹介してもらった中に当社がありまして、事業内容に興味を持ったのです。 それで自宅に帰ってから、当社のホームページを見てみました。すると、「0~∞ これが私たちのチャレンジ・フィールドです」と書いてありました。いろいろなことに挑戦していこうとする姿勢に共感を覚えて、この会社の参加する合同企業説明会に参加してみたのです。 4月に入社して、まだ数カ月です。入社したらまず、半月ほどかけて製造部全体の仕事の流れを覚えました。それから0.15mmのシース熱電対などを作っている極細グループに配属されて、極細のシース熱電対を作る練習をしています。 少しずつ細いものを作る練習へと進んでいまして、最初は0.5mmのものから始めて、少し前までは0.3mm、今は0.25mmの製品を作る練習に入っています。やり始めたころは0.5mmの作業でも四苦八苦していましたが、今はだいぶ慣れてできるようになりました。成長してきている実感があります。 あとは月に1度、極細製品の修理依頼が届きます。毎月数百本ほども届くシース熱電対を私が確認して、「これは途中で芯が切れているから、修理不可能」といったように修理可能かどうかと仕分けしています。修理作業は今はまだ上司の担当ですが、そのように仕分けるところは私が全部担当できるようにもなりました。 それだけの量を仕分けて修理するのに、2週間はかかります。大変な仕事にはなるものの、「これだけの量ができた」と達成感も得られますね。 いろいろな人と深く話ができるところだと思います。 小規模な会社ですから、社員全員が顔なじみです。誰とでも気軽に話ができて、1人1人と深い仲を築けますから、働きやすい職場だと思います。 現段階でやっていることは、あくまで練習です。お客様に納品する製品を作っているわけではありません。とにかく、製品作りを任されるようになることが第一の目標ですね。 何事も前向きに捉えるように心掛けてください。 社会に出て働いてみると、失敗して当たり前です。その失敗をずっと後悔するだけでは、前に進めません。「前回はここを失敗したから、今度はこうしてみよう」と失敗を次に生かせるように考え方を変えてみてください。 就職活動にしても同じことです。「この会社で不合格になった」と落ち込むばかりではなく、「不合格になったのは、きっとここがよくなかった。次は変えてみよう」と反省して、次につなげていくことが大事なのだと思います。 注)掲載している情報は、取材日(2014年7月)時点のものです。

11.jpg 製造部 極細グループ 青島さん
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