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株式会社 小原工業

株式会社 小原工業 国内にわずか2社。義肢の“半完成品”を作る義肢装具総合メーカー<br>日本刀を作る技術で、0.03mmの狂いもなく義肢を製造。靴中敷や歩行器などの“予防”製品開発にも目を向ける

株式会社 小原工業

国内にわずか2社。義肢の“半完成品”を作る義肢装具総合メーカー
日本刀を作る技術で、0.03mmの狂いもなく義肢を製造。靴中敷や歩行器などの“予防”製品開発にも目を向ける

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輝く技術 光る企業

株式会社 小原工業

国内にわずか2社。義肢の“半完成品”を作る義肢装具総合メーカー 日本刀を作る技術で、0.03mmの狂いもなく義肢を製造。靴中敷や歩行器などの“予防”製品開発にも目を向ける

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  • 社名:株式会社 小原工業
  • 設立年月:1946年4月
  • 資本金:2,000万円
  • 従業員数:22名
  • 代表者:代表取締役 秋山 重幸
  • 社員平均年齢:45歳
  • 初任給:180,000円~200,000円
  • 主な勤務地:東京都世田谷区
  • 休日:土日祝日(第4・5土曜は省く)、有給休暇、夏期・冬期休暇
  • 本社所在地:東京都世田谷区用賀2-18-9
  • 電話番号:03-3700-4631
  • 公式HP:http://www.obara-kogyo.jp/
  • ・国内に2社しかない義肢装具総合メーカー。予防製品にも注力
  • ・日本刀の製造にも用いられる“鍛造”で優れた耐久性の製品に
  • ・0.03mmの狂いも許さない。高精度のモノづくりに定評
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事業紹介

戦後間もない1946年に創業され、全国に約700ヶ所ある義肢製作所に製作に必要とされる半完成品や材料、機械工具等を供給しています。また、昨今はアジア諸国を中心に輸出もおこなっています。

工場では、金属製の半製品、木製の義足、機械工具の製造を行っています。製造は、主に汎用機械を使用したハンドメイド中心の工程となっており、1人前の仕事ができるまでに、早くても3年かかるという職人の世界です。
営業はお客様である義肢装具士の所へ赴き、商品の供給や要望とされるものを承り、弊社の商品にないものは、国内外のメーカーや問屋に問い合わせて探します。

義肢装具の材料は、あらゆるものが材料として使用され、それは、金属、木材、プラスチック、カーボン、繊維、皮革等々、多岐に渡ります。弊社の取扱い範囲は非常に広く、またその材料に対する造詣の深さが問われます。

自身の持つ興味を関連付け、それを深めることができ、それを社会に生かせる会社です。

【事業内容】国内に2社しかない義肢装具総合メーカー。予防製品にも注力

手や足を無くした人は国内に700カ所ほどある義肢製作所で働く義肢装具士に、自分用の義手・義足(義肢)を製作してもらい、病院で受け取ることになる。 しかし、義肢装具士が義肢をゼロから作り出してくれるわけではない。一般的な大きさで作られた“半完成品”を基に、1人1人の体型に合わせて寸法を調整してくれるのだ。そうした義肢の“半完成品”を作っている総合メーカーは、全国にわずか2社。そのうちの1社が小原工業だ。 義肢や腰痛緩和に使うコルセット等の装具以外に、姿勢を正して美脚に見せる靴中敷やリハビリ・介護用の杖・歩行器など、一般向け製品も開発。義肢・装具が必要となる手前で健康を維持できるように、“予防”製品にも力を入れ始めている。

03.jpg 義手・義足(義肢)の“半完成品”を製作

【加工技術】日本刀の製造にも用いられる“鍛造”で優れた耐久性の製品に

義肢の骨格をつくる金属は、ハンマー等で何度も叩く“鍛造”という加工方法で鍛え、形を整える。鍛造は古くから日本刀などの刃物を製造するときに用いられてきた加工法。金属内部の隙間をなくして、金属結晶を微細化、結晶の向きをそろえることで強度を高めていく。 他社も鍛造によって義肢に使う金属の形を整えるが、1回~数回だけ叩いて成形するドロップ鍛造というやり方を採用。何度も叩いて鍛えた小原工業の製品は、他社製品と比べてずっと耐久性に優れている。 そんなやり方で義肢を作っているのは、世界的に見ても同社だけ。義肢は2~3年で取り替えることになるが、同社製義肢はそれくらいの期間は優に耐えられる強度があると評判だ。

04.jpg 少しずつ調整しながら、組み立てていく

【職人の技】0.03mmの狂いも許さない。高精度のモノづくりに定評

強度だけでなく、精度の高さも小原工業製品の特長。義肢の関節部分、2つの金属部品の丸穴を重ねてボルトで固定する継ぎ目を見ると、ほとんど隙間が空いてない。 「0.03mmでも寸法が狂うとガタが生じる」と考え、機械に頼らず手でやすりを掛けて最終調整。あまりにも高精度なため、“半完成品”の同社製義肢を完成品へと調整する際、わずかでも歪ませるとうまく動かなくなる。義肢装具士の腕が問われ、「義肢装具士を育てる製品」と言われるほどだ。 他にも、湿気を吸うと膨張する木で作った足に、金属の足首を取り付けた義足など、異なる素材を使った高精度のモノづくりも得意分野。業界内でも、屈指の技術力を持つ会社として知られている。

05.jpg 金属だけでなく木やゴムなども使って義足を作る

社長メッセージ
“まじめ”に打ち込むことで、いつか仕事を“楽しい”と思えるようになる

代表取締役
秋山 重幸さん
――義肢装具だけでなく、一般向けの“予防”製品にも力を入れ始めたのは、最近のことなのでしょうか。 はい、3代目の私の代になってからです。祖父が起業して、父が海外との取引を始め、私の代になって一般向けの製品も売り出すようにしました。 というのも、義肢製作所は国内に700カ所ほどありますが、日本の人口は頭打ちです。これから市場が拡大することはないでしょう。義肢材料を全般的に取り扱う義肢装具メーカーも当社の他にもう1社しかありません。会社の売上を今以上に増やすには、海外に販売していくか、一般向けの市場に新製品を投入するしかないのです。 義肢装具の海外向けの販売としては、中国・韓国・ロシアなどに輸出しています。日本製ということで信頼いただけているようで、現地の製品と比べて値段が多少は高くなっても「買いたい」と言ってくれるお客様はいらっしゃいます。海外向けの販売は少しずつ増えてきてはいますが、まだ会社全体の売上に占める割合はわずかです。今後、台湾にも進出するなどして、売上を増やしていきたいです。 もう1つの一般向けの新製品としては、美脚用の靴中敷(インソール)「アゲハ」など、7年ほど前からいくつかの製品を発売しています。最初のころはあまり売れませんでしたが、テレビ番組に取り上げられたことも追い風になり、ここ2~3年で売上が増えてきました。まだそれほど多くはないですが、売上に占める割合も徐々に増えてきています。 社長としては「もう少しだけなら手を抜いてもいいのではないだろうか」と思うこともありますが、まじめで手抜きができない社員ばかりです。手間が掛かったとしても、鍛造での加工にこだわっていきたいです。 鍛造での加工以外に、最近では鉄製義肢を作れるメーカーも当社くらいになってきました。主流になってきたアルミ製義肢と比べると、鉄製義肢は加工が難しくて手間も掛かります。それでも、当社には「悩んでいるお客様のためになら、採算度外視で対応しよう」という考えが浸透しています。重度の患者さんにとっては、鉄製義肢の方が必要とされることもありますから、今後も鉄製義肢を作り続けるつもりです。 そのような考えが浸透しているのも、当社を設立した祖父が「手や足という大切なものをなくされた方に、もう2度と悲しい思いはさせたくない」とずっと社内で言い続けてきたからだと思います。今でも祖父の考えが、私や会社の中で根付いているのでしょう。 「まじめに楽しく働いてほしい」ということですね。 “まじめ”と“楽しい”は相反する言葉のように感じるかもしれませんが、趣味でも仕事でも、何かにこだわって“まじめ”に打ち込むことで、“楽しい”と思えるようになります。真摯に仕事と向き合うことで、新しい発想も生まれてくるかもしれません。そのためにも「まじめに楽しく」働いてほしいですね。 知らないことが出てきたらインターネットで検索してみて、答えが見つからなかったらあきらめる。最近の若者の中には、そんな傾向があるように感じます。 一方でモノづくりの場合には、「情報がないからできない」と考えていては先に進めません。自分の手を動かさない限り、形にはなりませんし、どこが課題になるのかも分からないのです。「何も情報がないのだからこそ、自分が作り方を考えるのだ」と挑戦できる姿勢を持ってください。 自分で考え出して創作する。だからこそモノづくりの仕事は、とても創造的な仕事なのだと思います。

06.jpg 代表取締役 秋山 重幸さん

先輩メッセージ
最初の5年は要求どおり仕上げるのに手一杯。ようやくやりがいを感じられるように

工場
菊池さん
――この会社に、関心を持ったきっかけは? 父親が当社の工場長として働いています。私は以前、ボディーガードとして働いていたのですが、父親から「工場長に今度なるから、お前も手伝ってくれないか」と頼まれました。 製造業のことは何も知らなかったものの、「とにかく1度、働いてみようか」と思って入社しました。やってみないことには、「仕事が楽しいのか」「やりがいを感じられるのか」といったことは分からないものですから。 そうですね。金属加工から製品の組み立てまで、何でも担当しています。 数ある仕事の中でも、特に好きなのは義肢の骨格になるグラインダーという金属部分を砥石で削る研削の工程ですね。研削した後にめっきを掛けたり、研磨したりすることになりますが、研削の仕上がりの良し悪しが最終製品でも目に見えて分かるので、ごまかすことができません。その分、きれいに仕上げられたときには、気分がいいですね。 また、当社が作る製品は“半完成品”ではありますが、それが義肢製作所に届けられ、義肢装具士の手によって、義肢を必要とする人のために形を変えていくことになります。最終的に利用してくれる人の顔を直接見えるわけではありませんが、それでも誰かの役に立つ製品を作れることには胸を張れます。 そうしたやりがいを感じられるようになったのは、最近になってからですね。先ほど、「やりがいを感じられるかは、やってみないと分からない」と言いましたが、最初の5年間は、とにかく要求水準に合格する加工をすることで手一杯でした。入社して10年経って、やっと少しずつ、やりがいを感じられるようになってきたところです。 当社にはノルマとして課されている目標はありません。でも、自分たちなりにその日の仕事量について目標を立てて、時間の使い方を工夫しています。今後も「今日は何時までに製品を何点作る」と決めて、緊張感を持って仕事を進めていきたいです。 また、自分自身の技術力も高めていくつもりです。加工作業は機械を使ってするものがほとんどですが、最終的に調整する段階になると人間の手による微調整が必要になります。 特に、義足のかかと部分の調整は大変ですね。義足の大部分は木でできているのですが、湿気を吸うと膨らんでしまいます。一方、かかと部分には衝撃を吸収できるようにゴムが使われていて、足首の部分には金属が取り付けられることになります。性質が異なる素材を使いながら、やすりで少しずつ削って形を整えていきます。手で触りながら「もう少し削ろう」「これ以上は削り過ぎだ」と感覚的に判断しながら、ゴムと木がぴったりと当てはまるように加工していくのです。 そのように技術者として感覚、経験、勘などが求められる作業が多いですから、そうしたところを磨いていきたいですね。 行動を起こす前に、「行動を起こすとどうなるか」といろいろ綿密に考えることも大事でしょう。けれど、考え過ぎていては行動できません。時には思い切って開き直り、いろいろなことに挑戦してほしいです。 そうすることで、私が未経験のモノづくりの仕事にやりがいを感じられるようになったように、これまで気付かなかった自分の新しい才能・性格に気付けるかもしれません。そういった才能の芽が見つかるように支えてくれる大人たちも周囲にきっといるはずです。若い皆さんは挑戦を恐れず、行動に移してください。

07.jpg 工場 菊池さん
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先輩メッセージ
義肢装具を必要とする方の役に立ちたいから、急ぎの仕事でもがんばれる

事務
西川さん
――入社までの経緯を教えてください。 世田谷区にある公益財団法人で求人情報を探していたら、当社の求人情報を見つけました。希望していた事務職で募集していましたから、面接を受けてみました。 以前から「人を引っ張っていくよりは、陰から人を支える縁の下の力持ちでいたい」と思っていましたから、事務の仕事で働けることを最優先事項にして探していました。 それまでに、多くの会社を就職先として検討していましたし応募したこともあったのですが、義手・義足を作る会社と出会ったのは初めてのことでした。「こんな会社もあるのか」と驚きましたね。 事務職として3年目になります。仕事の流れとしては、お客様から注文を受けて、工場に製造を依頼し、製造に必要な部品が足りているかと在庫を確認して、足りないようだったら仕入れ会社に頼んで部品を取り寄せるといった進め方になります。 事務の仕事をするようになって驚かされたのは、取り扱っている製品・部品の点数が多いことですね。最初のころは、お客様からどんな製品を注文されたのかと把握することにも苦労しましたし、どの部品はどの仕入れ会社に依頼すれば届けてもらえるのかと記憶していくことも大変でした。今も不安に感じながら仕事している面はありますが、それでも入社直後と比べたら、だいぶ慣れてきたと思います。 大変なことも多い仕事ですが、お客様や協力会社の方から「西川さんは元気だから、電話をもらえると明るい気分になるよ」と言っていただけたことがあります。そうして褒められるのは、とてもうれしいことですね。 また当社で作り上げた製品は、手や足をなくした方のお役に立てるものです。お客様である義肢装具士から、急ぎの仕事を頼まれたときには無理をしないと納期に間に合わないこともあります。それでも義肢装具士の先には、手足をなくして困っている方がいるわけです。無理をしてでも無事に納品できたときに「おかげさまで間に合ったよ」とお礼の言葉をもらえると、お客様の力になれたことはもちろん、その先にいる人の役に立てたと思えて、やりがいを感じられます。 社員がみんな、優しいところです。 例えば営業部長は、裏方の私のことも気遣ってくれて、取引先の義肢製作所に同行させてくれることもあります。取引先に行くと義肢装具士が義肢を装着させている様子を見せてもらえて、「私の仕事は社会に貢献できている」と実感でき誇らしくなります。 また社長に誘われて、何人かの社員でダーツバーに行くこともあります。社員同士の仲がいいところも自慢です。 もっと義肢装具の知識を身に付けたいです。製品・部品の名前と作っているメーカーの名前、実物の形状がしっかりと一致するように記憶していくことが、私にとって当面の課題です。 私自身が社会に出てみて感じたのは、やはり笑顔と元気とあいさつは絶対に大事だということです。 自分が笑顔でいると相手も笑顔で返してくれます。だから私は、電話するときに顔が見えなくても、笑顔を心掛けて元気に話し掛けるようにしています。そうすることで相手にも笑顔・元気になってもらえて、良好な関係を築けるようになると信じています。 注)掲載している情報は、取材日(2014年7月)時点のものです。

09.jpg 事務 西川さん
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