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城南地区 株式会社アタゴ

株式会社アタゴ 卓越した技術力でつねに進化し続ける世界有数の屈折計メーカー

株式会社アタゴ

卓越した技術力でつねに進化し続ける世界有数の屈折計メーカー

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城南地区

株式会社アタゴ

卓越した技術力でつねに進化し続ける世界有数の屈折計メーカー

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製品開発ストーリー
卓越した技術力でつねに進化し続ける世界有数の屈折計メーカー

 糖度、塩分、酸度などの濃度を測る屈折計という測定機器を開発・製造・販売するアタゴは、同分野で世界有数のメーカー。154ヶ国以上で使用されている同社の製品は、世界の人々から使いやすさと精度の高さから信頼されている。こうした製品づくりを支えているのが、つねに新しい技術・製品開発に取り組むチャレンジ精神だ。

製品のデジタル化など世界に先駆けた技術を開発

 スーパーなどでりんごやみかんなどの果物の横に「糖度13度以上」といった説明書きがあるが、これは糖度計と呼ばれる測定器で測った糖分の値である。「光の屈折」という現象を応用して、液体中に溶解している可溶性固形分(糖・塩・酸・タンパク質など)の濃度を測る屈折計と呼ばれる機器で測定できるのだが、糖度計もそのひとつだ。
 屈折計は、溶解している物質ならば糖分であれ塩分であれ、測定できる機器で、株式会社アタゴはこの分野で世界有数のメーカー。同社の歴史は古く、1940年に前身である雨宮精器製作所が設立され、1950年代には早くも海外に輸出を始めている。
「当社は祖父が屈折計を開発して立ち上げた会社なのですが、この分野に特化した事業を展開して、つねに技術革新をしながら進化してきました」
 と語るのは3代目の代表取締役社長の雨宮秀行氏。雨宮社長が言うように、開発当初は顕微鏡のような大きな機器だったが、1971年には手持ちで測れるコンパクトな機器を開発し、76年には世界初のデジタル屈折計を開発。そのサイズも年々、コンパクト化することで、ユーザーが使いやすい機器へと進化させていったのだ。
 同時に測定対象も拡大させてきた。果物など食品の糖度や塩分、あるいは酸度などを測定する屈折計は、食品工場、果樹園などの農作物栽培の現場で使用されているが、切削油濃度、土壌水分、エチレングリコール濃度、防錆剤濃度などを測定できるモデルなども開発。これらの製品は、石油製品や医薬品の開発・製造の現場で活用されている。
各種受賞歴も華々しく、グッドデザイン賞を複数回受賞するとともに、発明協会会長奨励賞、特許庁長官奨励賞など、枚挙にいとまがない。こうした実績をみるだけでも、絶え間ない技術革新がアタゴの成長エンジンになってきたことはいうまでもないだろう。

body1-1.jpg「未知の領域にチャレンジする、それがアタゴの企業文化です」(雨宮社長)

シーズを重視した開発で新しい価値を創出する

 つねに社会に先駆けて新しい製品をつくり続けてきたアタゴの製品開発に対する姿勢にはやはり他と一線を画すものがある。市場のニーズを吸い上げて製品開発するのは大切だが、それだけでは業界のトップを走り続けることはできない。新しい技術を生み出す一方で、まだニーズが顕在化していない市場に新しい価値を提供することも大事にしている。
「これまでにない技術を開発して新しい製品をつくり、市場に提供する、いわゆる『シーズ』も重視しています。作り手の発想によって新たな製品を開発し、エンドユーザーの利便性を向上させることもメーカーの大切な役割です。また、研究開発を積極的に取り組むことはトライアンドエラーの繰り返しですが、そのプロセスで様々なノウハウが蓄積されます。それが当社の大きな強みになっているのも事実です」
 と雨宮社長が語るように毎年、研究開発の予算を確保して積極的に取り組んでいる。いわば、研究開発型のメーカーであるアタゴでは、常時、3、4案件ぐらいの新技術の開発に取り組んでいるという。当然、すべてが製品化にこぎつけるわけではないが、こうした長年にわたる研究開発の蓄積が、同社を屈折計の世界有数のメーカーに押し上げたのである。

body2-1.jpg広々とした本社オフィスは若手社員の姿が目立つ

高齢社会や幅広い分野の製品づくりに役立つ粘度計を開発

 同社の新技術の開発を担うのがNEXT部である。先述した屈折計のコンパクト化といった使いやすい製品の開発は他部署で担当するが、NEXT部はアタゴにない新しい技術開発がミッション。それだけ仕事のハードルは高い。
「当社が開発したコンパクトな屈折計などは、技術的に韓国や中国などで類似品が作られるようになってきました。まだ精度の高さで当社にアドバンテージがあるとはいえ、10年後はどうなるかわかりません。そこでNEXT部の使命は、将来を見越した製品開発なのです」
 そう語るのはNEXT部の中島吉則部長。このNEXT部は社長の直轄部門として位置し、トップの経営戦略が色濃く反映された製品開発を担っている。つまり、将来を見越して、大きく成長しそうな分野をターゲットに技術開発を行い、新しい製品づくりに挑んでいるのだ。
 そんなアタゴの挑戦が結実したものに粘度計がある。粘度計とは、文字通り食べ物などの粘性を測定する機器。正月になると、お年寄りが餅をノドに詰まらせるという事故が発生するが、そんな食べ物の安全性を確保するために活用できる機器だという。
「この機械を使えば、ある一定の粘度を超えた食べ物は、例えば、幼児やお年寄りに提供しないという判断も可能です。すでに日本は高齢社会を迎えていますが、食品メーカーだけでなく病院や介護施設でも利用ニーズは高いと考えています」
 粘度計の活躍の場は食品に限らない。塗料、接着剤、化粧品など、幅広い分野で応用されている。例えば、塗料を使用するシーンだけでも多様だ。ビルなどの建物をはじめ、クルマ、家電、パソコンなど様々な製品に塗料は施される。粘度計を活用することで、材質に合わせて最適の粘度の塗料でペイントできるようになるというわけだ。
 アタゴでは、この粘度計をさらに進化させて、よりコンパクトに、そして低価格モデルを開発して、多くの分野に供給していく予定だ。

body3-1.jpg10年先を見越した新製品の開発に挑むNEXT部の中島吉則部長

国際色豊かな社員を採用し、世界各地で販売網を築く

 優れた技術力によって世界的なメーカーへと成長してきたアタゴには、もうひとつ大きな強みがある。それは販売力だ。全世界154ヶ国以上で使用されている屈折計を供給している営業部門の国際力だ。ロシア人、エジプト人、ベトナム人などの国際性あふれる社員たちは、それぞれに母国周辺エリアの営業担当になることが多い。そんな一人がエジプト人のハーテム モハマドさんだ。
「国や地域によって経済や政治状況は違うのはもちろん、ビジネス習慣や文化も違います。だから各地域の文化や価値観を理解した現地出身の人間が担当したほうがスムーズに行く場合が多いんです」
 ハーテムさんの担当はエジプトなどの北アフリカと中東エリア。この地域は人間関係を重んじる傾向が強く、アタゴの製品を販売する代理店やエンドユーザーとの良好な関係づくりに力を注ぐ。メールでのやり取りだけで済ませるのではなく、できるだけ電話で連絡を取り、出張の際は多くの人と会うように心がけている。
 北アフリカや中東での屈折計の用途は食品関係が多いという。例えば、サウジアラビアではなつめやしを使用したチョコレート生産が盛んだが、その糖度を測る機器として売り込むなど、各国のニーズを把握しながら適切なプレゼンテーションを行っている。
また、同エリアは地理的には日本よりヨーロッパがはるかに近い。グローバル市場でのアタゴの競合相手のひとつにヨーロッパのメーカーがあるが、そうしたライバルに負けないように要望や問い合わせなどにはクイックレスポンスで応える。相談があれば丁寧に対応するなど、地理的なデメリットを人間関係でカバーし、シェア拡大に取り組んでいる。
 実はハーテムさん、エジプトで観光ガイドをしながらチョコレートなどのお土産品をつくる工場を経営していた。そこで使用していたのがアタゴの糖度・濃度計だった。その後、日本に留学して就職活動していた時にアタゴと再会したのだという。そこに不思議な縁を感じて入社を決意したという。
 北アフリカはこれから経済発展が見込まれるエリア。基幹産業が農業から工業へと移行することが予想されている。農業だけでなく工業分野にも屈折計の提供というカタチで、母国エジプトはもちろん、北アフリカや中東の経済発展に寄与したいという。入社から3年目のハーテムさんは夢に向かってまい進する。

body4-1.jpg北アフリカや中東の経済発展に貢献したいというハーテムさん

編集部からのメッセージ

チャレンジ精神を発揮し、未知の領域を開拓する企業文化

 アタゴには社内用語として「アタゴリアン」という言葉がある。雨宮社長いわく「チャレンジ精神を発揮しながらスピード感を持って仕事に打ち込める社員」を指すのだそうだ。そしてアタゴリアンと呼べる社員を一人でも多く育てることが会社の成長につながると考えている。
もちろん、旺盛なチャレンジ精神はアタゴの企業文化として根づいている。この企業文化の源をたどると雨宮社長の学生時代に起因する。雨宮社長は、当時のテレビ番組「野生の王国」にあこがれてアフリカなどを一人旅した経験をもつ。サハラ砂漠などで死に直面したことが幾度かあったというが、そんな試練を乗り越えて旅を無事に終わらせることができた。自分の興味あることには果敢に立ち向かう姿勢は、仕事でも貫かれ、そんな雨宮社長に感化され企業文化として根づいていったのだ。
まだビジネス商圏として未知数のアフリカや南米などにも積極的に進出する同社の営業活動も、そんな企業文化の表れとして捉えることができるだろう。

  • 社名:株式会社アタゴ
  • 設立年・創業年:設立年 1940年
  • 資本金:1億円
  • 代表者名:代表取締役社長 雨宮秀行
  • 従業員数:日本190名,海外101名
  • 所在地:105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー23階
  • TEL:03-3431-1940
  • URL:https://www.atago.net/
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください