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有限会社ケア・プランニング 担い手不足の介護業界に「待った!」新しい刺激と多様な人材が高齢化問題に挑む

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担い手不足の介護業界に「待った!」新しい刺激と多様な人材が高齢化問題に挑む

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担い手不足の介護業界に「待った!」新しい刺激と多様な人材が高齢化問題に挑む

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介護業界のイメージ向上ストーリー
担い手不足の介護業界に「待った!」新しい刺激と多様な人材が高齢化問題に挑む

 高齢者人口が増え続ける一方、介護に携わる人材は減り続けている。デイサービス・訪問介護サービス等で地域を支えるケア・プランニングの取組とは――。

新しい刺激がマンネリ仕事を打破する

 「毎日同じような仕事の繰り返しだから飽きてしまったり、どこに行っても同じだと思って会社を辞めてしまうんです。高齢者をお風呂に入れたり、おむつを替えたりするのはもちろん大切な仕事ですから一つひとつ真摯に向き合っていますが、それ以外にも様々な経験をさせていくことが離職防止につながると考えています」
 ケア・プランニングの中原修二郎社長は人材戦略をこのように説く。一般に介護業界の人材不足は低賃金・重労働といわれるが、本質的な問題は、仕事をルーティンワークにしてしまっていることだと分析する。
 超高齢社会を迎えた日本において、介護の需要は日々高まっているが、それに反して担い手は減少を続けている。その原因はいくつか考えられるが大きく分ければ、少子化による若者人口の減少と、離職率の高さだろう。この2つが解決しないことには、日本の高齢化問題は深刻化する一方。そこで、離職防止策として同社が掲げたのが冒頭の戦略だ。
 企業としては、同質のサービスを安定的に提供するのが当然だが、それだと働く職員にとってはマンネリ化してしまう。そこで新規プロジェクトの企画や広報、営業といった介護以外の業務にも関わることで、新しい刺激を感じられるようにしているのだ。その中で、社員が自分の新しい可能性に気づいたり、成長したりできれば、仕事に飽きることがなく、楽しく続けられる。結果、離職率が下がるのではないかというわけだ。
 そのために、同社では新しい取り組みにも積極的だ。例えば、「Pepper」などのロボットを介護用として導入。高齢者や認知症の人の会話相手として好評だという。そもそも同社はヘルパーステーションとしてスタートしたが、ケアマネージャー、訪問介護、デイサービス、障害者雇用支援、ヘルパー講習など毎年のように新規事業を立ち上げ、拡大してきた経緯がある。新しい事業への取組は社長の方針なのだ。
 それゆえ、はじめこそ新企画は経営陣によるトップダウンで行っていたが、最近はその社風が根付きはじめ、社員発の企画も形になり始めているという。その第一号が「ひまわりプロジェクト」だ。

body1-1.jpg介護業界の改善や高齢化問題など壮大なテーマに挑む中原修二郎社長

ひまわりプロジェクトが生む部署同士の連携

 ひまわりのカードに、職員への感謝の言葉や、利用者からかけれられた印象的な言葉を書いて、壁に貼っていくというこのプロジェクト。壁一面に貼られたひまわりのカードは、介護という仕事がどれだけ人の役に立っているかという証明になる。見える化することで職員のモチベーションアップを図るというわけだ。
 さらに、同プロジェクトが動き出してから各事業部間のコミュニケーションも活発化したという。同社にはデイサービスや訪問介護を中心として、様々な事業部があるが、利用者を迎え入れるデイサービスと、利用者の自宅に行く訪問介護では方法論が大きく異なるため、あまり連携は取られない。その上、法律で事業ごとに管理者を置かなければならない決まりになっているため、どうしても縦割りになりがちで、横のつながりが薄い状況があった。
 しかし、プロジェクト始動後はどこの事業部にどんな動きがあるのか、そして利用者からどう見られているのかが、共有できるようになった。これにより事業部を超えたコミュニケーションが生まれ、互いに意見交換をしたり、相談に乗ったりするムードができあがったのだという。もともと事業部ごとに違う発想や視点を持っているため、そこで生まれる化学反応も大きなものが期待できる。
 「介護業界というと特殊な業界に思われがちですが、企画や広報、営業などやっていることは他の企業と変わりません。社会的な課題に対して、ビジネスを通して貢献、解決していく。その手段が介護だというだけで、実態は意外とクリエイティブなんですよ」
 と語るのは、ケアマネージャーと介護部門の統括を務める増田信宏さん。日頃から職員の雑談からアイデアのヒントをすくい上げることを心がけているといい、ひまわりプロジェクトもそんな中から生まれた。他にもITやSNSに詳しい職員に広報を任せるなど、職員と一緒になって巻き込む形で企画を進めることで、刺激を与えているという。こうした一人ひとりの声がすぐに形になることも中小企業の魅力そのもの。介護だからといって特殊ではないと増田さんは念を押す。

body2-1.jpg感謝の言葉が壁にびっしり。仕事の意義を感じずにはいられない

多様性が介護業界を救い、社会問題解決の一手となる

 新企画への取組は、実は職員のモチベーションアップだけが目的ではない。世界に先駆けた超高齢社会を突き進む日本では、この先どんなことが起こるか誰にも予想がつかない。どんな変化にも耐えられる企業には、多様な人材から生まれる多様なアイデアが必要なのだ。そのため同社では、社会的な命題でもあるダイバーシティを尊重した雇用体制を取っている。
 「労働人口が減少する高齢化社会では、空き時間が1~2時間しかないワーキングマザーや、高齢者、障がい者、外国人など、多様な人の力を借りなければ、成り立ちません。理想をいえば、要介護の利用者がうちを利用しているうちに元気になって、ここで働いてくれるくらいになったらいいですね」(中原社長)
 そんな冗談が冗談に聞こえないくらい、同社の人材は多様だ。例えば障がい者なら、すべてのことが不自由なわけではなく、一部の仕事なら普通にこなせる場合がある。これまでは配膳業務のように誰にでもできる仕事でも、人手不足のために介護の専門職員が兼任していたが、それを障がい者などが代わりに担当できれば、手が空いた専門職員は専門職員にしかできない業務に集中できる。そうすれば、その分、サービスの質が向上するわけだ。
 他にも外国人雇用は将来的に世界中で高齢化が起きた時に、日本型の介護ビジネスを輸出するノウハウを蓄積するため。介護が海外展開できる有力な産業に発展すれば、介護報酬の改善や担い手の増加など、いまの介護業界が抱える問題も解決が見込める。社会的使命感だけではなく、合理的な経営戦略的な裏付けに基づいて雇用を進めているのだ。
 女性の働きやすさを語ってくれたのは三浦理沙さん。2011年に入社し、その後1年の産休・育休を経て、15年にデイサービスの管理職として復帰した。現在は、時短勤務の正社員として子育てと仕事を両立させている。
 「きつい仕事と言われることもありますが、私はそうは感じません。むしろ利用者さんに教えられることばかりですよ。対人関係のコツなど豊富な経験談を聞けますし、『あなたがいないと寂しいわ』なんて言われると、がんばろうって気持ちになります。夏祭りなど、職員たちと一緒に企画をして利用者さんに喜んでもらえるとやりがいを感じますね」
 利用者と一緒にレクリエーションに取り組むいきいきとした姿から、使命感を持って仕事に臨み、やりがいを感じている様が感じ取れた。育休明けで時短勤務でありながら、管理職を任され、それを見事こなす三浦さんの姿は、これから産休・育休を取る女性にとって良いモデルケースとなりそうだ。

body3-1.jpgチームワークの良さが新発想を生む

誰かに必要とされる。それが仕事のモチベーション

 こうした多様性を尊重する同社の考え方が社会に浸透すれば、高齢化の問題点の一つである労働人口の減少に歯止めがかけられるかもしれない。さらに、会社が成長すれば地域も活性化してくるなど、一企業だけの取組ではなく、社会問題への取組に発展させられる可能性を秘めているのだ。こう考えると、たしかにクリエイティブな仕事になりそうだ。
 「仕事を続けるモチベーションは最終的に、誰かに必要とされているということを実感できるかだと思います。その点、介護ほどそれを感じられる仕事はそうありませんよ。利用者にとって最後の出会いになるかもしれない中で『あなたに会えてよかったわ』などと言われたら、感激です」(中原社長)
 人から必要とされる社会貢献度の高さと、一般企業と同じように自分のアイデアを実現してキャリアアップできる同社。介護業界を見る目が変わりそうだ。

body4-1.jpgざっくばらんなやり取りから、新企画のヒントを探る増田信宏さん

編集部メモ

地域行事への参加を通して、荒川区を盛り上げる


 ケア・プランニングの社員が町内会に参加し、定例会への参加や、夏祭りでの神輿の担ぎ手として活躍している。町内会も年々高齢化しているため、神輿の担ぎ手不足は深刻な問題。そこへ同社の若い社員が入ることで活気づいているという。
 「荒川区は小さい会社が多い地区です。地域を住みよくしていくことを考えた時、一つの会社では限度がありますから、会社の利益だけを考えるのではなく、業界や地域が連携して高めあっていく関係を築くことが大切です」(増田さん)

edit-1.jpg親しみとぬくもりを感じる外観
  • 社名:有限会社ケア・プランニング
  • 設立年・創業年:設立 2003年
  • 資本金:資本金 1,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 中原 修二郎
  • 従業員数:70名(内、女性従業員数40名)
  • 所在地:116-0002 東京都荒川区荒川4-9-11
  • TEL:03-3805-6369
  • URL:http://www.best-kaigo.com