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城東地区 志幸技研工業株式会社

志幸技研工業株式会社 徒手空拳からのチャレンジ。夢の自社ブランド品をリリースし、さらなる成長を目指す

志幸技研工業株式会社

徒手空拳からのチャレンジ。夢の自社ブランド品をリリースし、さらなる成長を目指す

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城東地区

志幸技研工業株式会社

徒手空拳からのチャレンジ。夢の自社ブランド品をリリースし、さらなる成長を目指す

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会社発展ストーリー
徒手空拳からのチャレンジ。 夢の自社ブランド品をリリースし、さらなる成長を目指す

 特殊な技術を要する地中送電線の電力工事・保守をはじめ、電気工事業の高い技術で事業を展開する志幸技研工業株式会社。たった一本の細い綱を頼りに創業し、以後、その綱を太く、次々と増やしてきた。2011年からスタートした高齢者見守りサービス「ネットミル」が好調な同社。そこには社長の地域への思いがあった。

皆の幸せを目指すと思いを込めて創業

 志幸技研工業の創立は1992年。大手企業に勤め、部長への昇進も確実視されていた吉川裕社長だったが、40歳を迎えたのを境に、「社長になりたい」という夢を叶えるべく、辞表を提出し、「気のあった若者(現常務取締役宮坂宏二)」と起業。生まれ育った荒川区に事務所を構え、「皆の幸せを目指す」との思いを社名に刻んだ。
 もっとも、創業前にはっきりとしたビジネスプランがあったわけではない。唯一のよすがは、「(電気設備工事大手の)関電工が協力企業を探している」という知人の情報。仕事の内容はというと、地中の高電圧送電線の工事と保守。難易度は高く、特殊機材も必要だが、ライバル企業は少なくチャンスがあるという。

body1-1.jpg「策を弄してもうまくいくことは少ない。自然体でいれば仕事はやってくる」と吉川社長

プライドと人情で新規開拓

 電力工事の経験もなかった吉川社長だったが、そのチャンスにかけた。急ぎ機材をそろえて、関電工に営業をかけたところ高い評価を受けて受注。ライバル企業の多くが、工事用の機材を関電工から借りていたが、吉川社長は自前で機材をそろえたことで、「志幸技研工業に任せれば、全部自分たちで持ち込んでやってくれる」と評価されたのだ。事実、その後もライバルを差し置いて受注を繰り返し営業範囲も関東一円に広げた。
 当初は「ドライバー一本なかった」と吉川社長。まったくのゼロからのスタートだったが、そのかわり2つの武器を持っていた。一つは、「人にできて、自分にできないことはない」という自信。飛ぶ鳥を落とす猛者の揃う大手企業でもまれた経験がプライドを育み、使ったことのない高価な装置の購入もためらうことがなかった。もう一つが「困ったときに助け合える人のつながり」だ。地元の寄り合いでは積極的に役を引き受け、知り合った経営者らとは、機会を設けてはつながりを深めた。最初のビジネスチャンスも、そうした親交から生まれたものだった。
 以後、志幸技研工業は、関電工の工事で蓄積した技術ノウハウと吉川社長が築いたネットワークを武器に事業を展開。官公庁や民間のビル・マンション・工場・事務所などの電気工事設計と施工を手がけ、さらに、電気工事に付帯する空調工事や通信工事、土木工事、店舗や住宅の総合リフォームにも仕事の幅を広げていった。
「僕らが工事することで、ただのコンクリートの構造物が、電気の通う建物になる。やりがいがありますね」(工務部電気設備グループ施工チーム藤本直さん[=入社8年目28歳])と、社員も意気軒昂だ。

body2-1.jpg「町や建物に電気を届ける責任を実感しています」工務部電気設備グループ施工チーム藤本直さん

地域の安心のために一肌脱ぐ

 新たなるビジネスチャンスは、またもや吉川社長の人脈からもたらされた。情報提供者は、地元の消防署長。高齢化の進展する中で独居の高齢者が増えている。問題は一人暮らしのお年寄りが心筋梗塞や脳卒中、熱中症などで、たった一人で命を落とすケースが少なくなく、発見されるまでに何か月もかかる場合もある。何かいい方法はないだろうかという相談だった。
 あくる朝、さっそく吉川社長はスケッチを書いていた。
「警備会社や通信会社が、センサーを使った単純な見守り装置を作っていましたが、有効性は今ひとつでした。うちは電気工事の専門会社。それなら電気の使用量を監視することで何かできないかと考えたんです」
 照明がついたまま、ずっと消えないような状況が電力使用量から判断できれば、住人に異変があったと推定できる。吉川社長は思いついたアイデアをパネルに起こして、荒川区の産業展にポスターを貼り出した。すると、それを見た知り合いが、「電中研(一般財団法人 電力中央研究所)で、似たような研究をしていると聞いたよ」と教えてくれた。
 その情報を頼りに、吉川社長は電中研を訪ねた。そこで見たのは、電力量のわずかな波形の違いから、住人の異変を察知するシステムの試作。さすがと脱帽した吉川社長は、事業化を手伝わせてほしいと申し出た。折から信頼できる事業化パートナーを探していた電中研は、電力工事で20年近く実績を積み上げ、また原理的にも似たシステムを構想していた志幸技研をパートナーとして選定。こうして「ネットミル見守りサービス」はスタートした。
 この見守りサービス、独居高齢者宅に装置を取り付けると、PHSやケーブルテレビ回線を通して、24時間の生活リズム情報を送信する。リズムに異常があると、登録している近親者に、センターからメールが配信されるシステムだ。
 一般向けに販売するほか、2014年8月には荒川区で採用され、65歳以上の独居老人が、申請すれば無料で設置されることになった。月々の利用料も無料化された。これで一気に契約数は数百戸を数えるほどの勢いをつけ、新規事業は波に乗った。
 「自社ブランド品を作るのが夢だった」という吉川社長。その念願はかなったが、「さらに成長させてメジャーな企業を目指したい」と熱い思いを語る。ネットミルが全国で自治体に採用してもらえれば、あるいは、これから急速な高齢化が予想される東南アジアで売り出されれば、とそろばんを弾く。
 「『従業員100人、年商100億』なんていうと、夢がありますよね。でもそういう夢を見られるのも、社長業のいいところ。私と、社員と、社員とかかわり合うすべての人が幸せになれるような会社を目指していきたい」
 サラリーマンなら定年を過ぎ、年金を当てにする世代。だが、吉川社長の団塊世代情熱は衰えることを知らないかのように燃え盛っている。

body3-1.jpg「ネットミル」と管理画面。わずかな電力使用量の変化を捉えてアラートを鳴らす

編集部からのメッセージ

地域への貢献をいちばんに


 「ネットミルが大成功したら、3棟目のビルを建設したい」と意気盛んな吉川社長。だが「それもせいぜい(同じ荒川区内の)日暮里駅前」と笑う。吉川社長の発想のベースには、いつも地域への貢献があるのだ。幼いころから生まれ育った地元には友人も多い。本社社屋からは通っていた小学校も見える。商工会議所などの役員を積極的に努め、地域の困りごとに耳を傾け、その解決手段を考え、ビジネスにつなげてきた。ネットミルにしても、地域のお年寄りの孤独死問題の解決の一助になればと知恵を絞ったものだ。

edit-1.jpg東日本大震災直後、福島第一原発の事態収拾活動にも携わった。危険を承知で社員全員が復旧に手を挙げたというedit-2.jpg地中管路を探る遠隔カメラを備えた特殊車両。同社の事業を支える大きな武器だ

古くて新しい企業の理想像


 「起業時もいまも、経営方針がどうだとかは考えない。ふつうにやっていれば、なんとかなる」というが、それも地域でのつながりを深めてきていたからこそだろう。利益を上げることは後回しにしても、人の役に立ち、地域へ貢献することを目指す。古くて新しい企業の理想像が、そこにはある。

  • 社名:志幸技研工業株式会社
  • 設立年・創業年:創業年1992年
  • 資本金:2,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 吉川裕
  • 従業員数:22名(内、女性従業員数3名)
  • 所在地:116-0011 東京都荒川区西尾久5-7-12
  • TEL:03-3894-2621
  • URL:http://www.cico.co.jp/
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください