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多摩地区 フューテックス株式会社

フューテックス株式会社 電子ビームアプリケーションの電源に特化。ニッチな分野で躍進する電源メーカー

フューテックス株式会社

電子ビームアプリケーションの電源に特化。ニッチな分野で躍進する電源メーカー

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多摩地区

フューテックス株式会社

電子ビームアプリケーションの電源に特化。ニッチな分野で躍進する電源メーカー

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会社の成長ストーリー
電子ビームアプリケーションの電源に特化。ニッチな分野で躍進する電源メーカー

 電子顕微鏡やX線機器などの電源のみに特化して開発、設計、製造しているフューテックス。まさに超ニッチといえるその分野に、同社はなぜ挑んだのか。その軌跡を紹介する。

電子顕微鏡の高性能電源

 同社が主に製造しているのは、電子顕微鏡用の電源。顕微鏡といえば、ミドリムシやミジンコを観察した理科室の顕微鏡を思い浮かべる人も多いだろうが、あれは光学顕微鏡といって原理は虫眼鏡と同じため、数十倍からせいぜい1500倍程度までしか拡大できない。肉眼では見られないミクロの世界に心躍らせた、かつての少年少女の期待に応えるには、100万倍くらいに拡大できる電子顕微鏡が必要。今どきの電子顕微鏡ともなるとその倍率は驚異的で、1ミリの1000分の1であるマイクロメートルのさらに1000分の1であるナノメートルまで観察できるといい、生物のDNAや物質の原子まで確認できるというから、もはや想像もつかないレベルである。簡単にいえば、電子のほうが光よりも波長が短いため、より微細な世界が見られるのだという。その電子顕微鏡には透過電子型と走査電子型の二種類がある。透過電子型は、電子を結束させビーム状にしたものを物体に透過させ、透過してきた電子を結像する仕組み。一方の走査型は、電子ビームで物体の表面をスキャンし画像に映し出すというものだ。いずれのタイプも電子ビームが細ければ細いほど、より小さいものを観察できるのだといい、その性能を大きく左右し電子顕微鏡のいわば心臓部分ともいえるのが電源だと話してくれたのはフューテックスの福田康成社長だ。
 「電子顕微鏡は例えば3万Vなどの高電圧を必要とします。極細の電子ビームを照射するには、その高電圧出力を少しのブレもなく安定供給しなければなりません。当社の電源はひときわその性能が高いのです」と胸を張る。同社が製造した高性能電源が搭載された電子顕微鏡は、半導体や金属材料、あるいは食品や化学といった多分野で活躍しているというが、創業当初は、社長の両親2人とパート従業員2人が切り盛りするまさに零細企業。自宅件作業場で医療機器や理化学機器の配線や組み立てを手作業で行っていたという。

body1-1.jpg電子ビームアプリケーション用電源の仕組みを解説する福田康成社長

一貫したものづくり体制を整備

 「私が大学進学への準備をしているときに、先代社長の病気が悪化。コンスタントに働けなくなったんです。社長を含めた従業員数4人の会社で社長がいなくなったら、それは倒産を意味します。働いてくれていたパートの方々にも申し訳が立ちませんし、父が作った会社も潰したくない。散々悩みましたが、私が継ぐより他ないと腹をくくり、入社を決めたんです」
 それまで、いわゆるひ孫請けの仕事をこなしていた同社は、二代目社長候補の新人が加わったことで、成長への道筋を歩み出した。発注元の企業と直接取引ができるよう営業活動に奔走する傍ら、指示書に従って製品を組み立てるいわゆる製造の仕事だけでなく、設計や材料の調達まで行う、一貫したものづくり体制を整えていった。
 「きっかけは『私たちが企画をするから、後は全部やってくれると助かるんだけどな』というクライアントの一言です。当時は付加価値なんて言葉は知りませんでしたが、ものづくりの体制が作れれば、私たちの強みになると確信しました」
 この確信は現実のものとなり、設計段階からの仕事を受注した年には前年比200%以上の売上を記録した。

body2-1.jpg設計から納品まで携われるのでやりがい十分と話す、松本勇さん

ニッチに特化し成長を遂げる

 ところが、喜んだのもつかのま、思わぬトラブルが発生した。クライアントから同社で開発した設計図やソフトウェアの提出を求められたのだ。クライアントからの指示ともあって、拒否できない、いかんともしがたい事態だった。
 「開発から携わる仕事のメリットは、開発フィーだけでなく、リピートオーダーが見込めるという点です。しかし、設計図やソフトウェアを渡してしまったら、それが見込めなくなる。この出来事を境にオリジナルブランドの製品開発に乗り出したんです」
 その製品とは超ニッチな電子ビームアプリケーション用電源。理化学機器の電源は先代の頃から受注していた。その経験プラスものづくり体制を整えた以降は、電子ビームアプリケーションの電源開発の技術とノウハウが蓄積されていたのだ。創業から38年、社長の両親を含めた4人で始めた小さな会社は、電子ビームアプリケーション用電源メーカーとして生まれ変わり、やがて40人以上を抱えるメーカーとして成長を遂げた。その成長の原動力になっているのが、高性能電源を生み出す技術者たちである。

body3-1.jpg「やる気さえあれば、どんどんステップアップできる会社です!」と語る金井悠樹さん

同社を支える技術者

 「電源製造の肝は、設定した電圧がきちんと出力されているか確認する調整の作業です。1Vといったら1Vが出るように、ノイズを除去したり抵抗の値を計算し直したりして、誤差がでないように調整するんです」
 と話すのは電源事業部の松本勇さん。工業大学で電気回路工学を学び、前職でもICチップの設計に携わっていたという筋金入りのエンジニアだ。
 「前職では細分化された工程の一部分を担当するという体制が敷かれていたのですが、ここでは設計からお客様への納品まで一貫して携われるので、やりがいが全然違います」
 そんな松本さんの元で電源開発を学んでいるのが、入社2年目の金井悠樹さん。仕事の面白さをこう話す。
 「理論通りに設計しても、想定した電圧が出ないことがあります。それは何が原因なのか、どこの値を改善すれば求める電圧が得られるのか。そんな仕事のことに夢中になっている時が何より楽しい時間です」
 ゆくゆくは自分で設計開発した製品を世の中に出したいと語る金井さん。こうした、ものづくり好きなエンジニアたちが、同社のさらなる発展を担っていくに違いない。

body4-1.jpg自らの手を動かし、はんだ付けを行う

編集部メモ

中小企業の希望になりたい

 「弊社は資金も人脈もない零細企業でした。その会社が曲がりなりにも上場を果たしたら、中小企業の希望になれると思うんです。上場のデメリットも熟知しているつもりですが、それでも多摩地区、ひいては東京、日本の企業を盛り上げられれば本望です」
 と今後の展望を語る福田社長。あわや廃業という局面から復活した同社の躍進ぶりを見れば、決して夢物語に終わらないだろう。

  • 社名:フューテックス株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1978年
  • 資本金:3,900万円
  • 代表者名:代表取締役社長 福田康成
  • 従業員数:42名(内、女性従業員数9名)
  • 所在地:196-0031 東京都昭島市福島町2-28-3
  • TEL:042-549-2888
  • URL:http://www.futex.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください