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城南地区 電通工業株式会社

電通工業株式会社 積み上げたスキルを活かして 情報産業の新時代に挑む

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積み上げたスキルを活かして 情報産業の新時代に挑む

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積み上げたスキルを活かして 情報産業の新時代に挑む

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歴史ある企業の挑戦ストーリー
積み上げたスキルを活かして情報産業の新時代に挑む

 刻々と進化する情報産業で生き残るには、企業にも継続的進化が求められる。新しいことへのチャレンジ精神を育む電通工業流の人材育成法に迫った。

通信に関わる悩みはなんでも解決

 電話やインターネットはどこのオフィスでも当たり前のように使える。普段気にすることはないが、その裏にはさまざまな機器・配線・設定が複雑に入り組んでいて、それらを機能的に組み上げるには、高度な専門的技術が必要となる。
 電通工業は電話・ファックスやインターネット、火災報知器、構内放送などあらゆる通信設備の設計・施工・保守の一貫サービスを生業としている。情報産業が活発になり始めてからは、パソコン・サーバーの設置、ソフトウェアの開発など、新しい情報技術を吸収しながら、領域を拡大、成長してきた。
 「我々はソリューション、つまりお客様の困りごとを解決するのが仕事です。幸いにも良質なお客様に恵まれ、良好な関係を築いて来られましたから、寄せられる相談も多岐にわたります。時に難解な相談もありますが、そこでアイデアを絞り出した時にこそ、新たなサービスが生まれるチャンスがあるのだと思います。こうして62年にわたって蓄積してきた実績、信頼が当社の一番の武器です」
 そう胸を張るのはソリューション営業本部の太田浩史本部長。日進月歩の情報産業にあっては、進化し続けなければ生き残ることはできない。世の中のニーズに耳を傾け、困難にも挑み続けるチャレンジ精神が必要不可欠なのだ。会社の歴史は、その精神を持ち続けていることの裏付けと言えよう。

body1-1.jpg太田浩史本部長。会社が積み上げた信頼と実績に自信をうかがわせる

回線秘書の登場で、新時代の展望が開けた

 そんな電通工業の戦略的転機となったのが、5年前に特許を取得して本格的な運用が始まったクラウドサービス『回線秘書』の登場だった。誕生のきっかけは、やはり顧客からの相談事だった。
 それは長い付き合いのある顧客からのこんな依頼だった。「通信回線や機器の一括管理をしたい」。どこのオフィスでも同じだが、電話やファックス、インターネットとさまざまな回線があり、大規模になるとそれらが複数本存在する場合もある。さらに、いまはパソコンだけではなく、OA機器や携帯端末、家電にいたるまであらゆる機器がインターネット回線で繋がれる時代だ。あまりに複雑化しすぎて素人の手には負えなくなっているのだ。
 この依頼をきっかけに、需要の高まりを感じた同社は、その顧客用につくったシステムを汎用化。『回線秘書』として立ち上げたというわけだ。
 「これまでやってきたことの延長線上ではありますが、我々が主軸としてきたメンテナンスの有り様が変化する中で、新たな収益源として期待しています。サービスには形がないので難しい部分もありますが、形がないからこそ自由な発想で新しいものを取り込んでいけるのです。サービスはスタートしましたが、回線秘書の進化はいまも続いています」(太田本部長)
 こうした発想ができるのも、技術力あってこそ。営業が顧客のニーズを感じ取り、技術職がそれを実現していくというコンビネーションが、同社の技術力を底上げしているのだ。

body2-1.jpg自らを「汗をかく部署」だという太田本部長。それだけに打ち合わせも真剣だ。

スキルの向上、知識の増加が さらなるモチベーションを引き出す。

 同社の技術力に対する実績と信頼はよく理解できるところではあるが、長年続く企業には、こうした技術力を継承していく使命も課せられている。電通工業流の人材育成法の秘訣は技術力の要となる営業職と技術職の若手たちがどこで学んでいるかにあった。
 入社4年目を迎えた浅深陽平さんは、ネットワークの配線工事や、電話機能を司るPBX(オフィス内に設置する電話交換機)のデータ作業、電話機の設置・配線を担当する、いわゆる技術職。平たくいえば、何もないフロアを電話とインターネットが使えるオフィスの状態まで、一からセットアップする仕事だ。下請け業者に発注するような大きな現場となれば、工事監督という現場を仕切る立場になることもあるというから、相当な経験値が求められるはず。それを4年目の若手が担うというのだ。
 「専門学校でも勉強はしてきましたが、現場は全く違う世界。実際の現場は学校ほど整然としていませんし、時間もきっちり決まっています。タイムスケジュールを管理しながら、現場を回すノウハウは現場でないと身につかないものだと実感しています」(浅深さん)
 実際にオフィスに回線を引く場合は、ゼネコンや建築会社、引越し業者などさまざまな業者が入り組むため、タイムスケジュールが乱れれば、他の業者にも迷惑をかけることになる。調整力と現場での判断力が磨かれていくというわけだ。
 1年目は先輩について現場に行っていた浅深さんも、2年目からは一人で現場を任されるようになったが、言うまでもなくスキル不足を実感させられることもある。忘れられない事件だったと語るのは、会社が休みの日に休日対応で客先を訪ねたときのことだ。
 「二つのビルをつなぐ専用線にトラブルが発生したのですが、自分が知らない接続方法だったのでお手上げでした。完全なスキル不足です。さらに、もう一方のビルにも人がいないと試験ができないので、仕方なく休日中の先輩に来てもらって対処してもらいました。作業を見せてもらってとても勉強になりました」(浅深さん)
 その苦い思い出が経験値となり浅深さんを成長させ、さらに上をめざさせた。仕事の合間を縫って資格取得のための勉強に勤しんだのだ。技術力の向上には現場での経験に加え、理論の修得も必要とあって、会社では資格取得も奨励している。その甲斐あって、今年5月に「AIDD総合種」という通信関係の国家資格で最もランクの高い試験に合格した。仕事をしながらの勉強は大変だったが、仕事に直結する勉強だけにモチベーションは高かったという。理論が経験を手助けし、経験が理論を裏付ける。こうした相乗効果が技術力を底上げしている。
 「何もないオフィスに回線を引いていって、実際にお客様が仕事をしている風景を目にすると、一からものをつくり上げる喜びを感じますね。近いうちに竣工するビルで仕事が入る予定なので、目下そこへ向けて準備を進めていきたいです」(浅深さん)
 勉強も現場も、通信設備工事に関する全てを楽しんでいる様子がうかがえた浅深さん。モチベーションの高さが、技術力向上の原動力なのかもしれない。

body3-1.jpgPBXの調整を慣れた手つきでこなす浅深洋平さん

0からのスタートだからこそ伝えられることがある

 営業職として奮闘するのは、入社2年目の桑名祥代さん。営業職に就きたいという漠然とした思いから業種にはこだわらず就職活動。そこで気に留めたのが母校に業者として出入りしていた電通工業だった。無事、就職口を見つけた桑名さんだったが、実は自分のスマートフォンも使いこなせないくらいの機械音痴。高度な専門知識が必要とされる世界に人一倍の苦労をしたという。
 「先輩の打ち合わせについて行っても、知らない用語が飛び交っているので、メモすら怪しい状態でした。それでも必死に書き取って、調べて、聞いての繰り返し。自分なりに調べて、『こうしたらどうですか?』と先輩に相談に行くと『それじゃあダメなんだ』と返されることも少なくありません。相談することの大切さを実感しています」(桑名さん)
 現在は、官公庁を中心に一人で営業に回っている。毎年のように部署異動が起こる官公庁では担当者が通信設備について全く知らないということも多く、その都度一から説明をするため、伝わりやすい説明のコツは徐々につかめてきたと手ごたえを語る。自身が0からのスタートだったからこそ、わからない人の気持ちを考えた丁寧な説明ができるのも桑名さんの強みだろう。
 機械が苦手でありながら、そこに至るには一方ならぬ努力が必要だったことは想像に難しくない。だが、個人の努力に加えて会社のサポートも大きかったと証言する。
 サポートというのは同社が営業の社員に認定している社内資格のこと。公的な資格を推奨する技術職に対して、営業職には独自の基準を設定。ロールプレイ型の試験を入社1年目は年8回、それ以降は年2回実施して、その点数に応じて級を認定するというものだ。会社の役員がズラッと顔をそろえる中、一人で営業トークを披露する新人社員にかかるプレッシャーは計り知れない。それだけにめきめきとメンタルが鍛えられるのだという。
 「先輩から担当を引き継いだばかりのころは、『○○先輩に言っといて』と前任者の名前を出されることも多く、悔しいような、寂しいような思いがしていました。それがある時を境に、私宛に連絡をいただけるように切り替わったんです。お客様に指名されると頼られていることを実感し、お客様のためにという気持ちが一層強くなりましたね」(桑名さん)
 将来的には、受注の提案から見積もり、作業員の手配、入金などすべての工程をカバーし、営業に一本電話を入れればすべて解決するという状態をつくりたいと希望を語る。
 常に新しいことに挑戦し続け、新世代の育成に力を入れる電通工業。それぞれの持ち場で成長し、活躍する若手が、日々の仕事を楽しんでいる様子が伝わってきた。

body4-1.jpg地道な努力を続け、成長の実感を語る桑名祥代さん

編集部メモ

カメラでつながる全国のオフィス

 電通工業には大阪や名古屋など全国にオフィスがある。普通であれば、離れたオフィスのスタッフと顔を合わせるのは年に数回がいいところだが、同社ではWebカメラを使って全国のオフィスをつないでいるため、毎日のようにスタッフ同士が顔を合わせることになる。
 東京のオフィスでも部屋ごとにカメラとモニターが設置され、モニターの分割画面には全国のオフィスの様子がリアルタイムで流されている。会議もこれを通して行うため、交通費の大幅な節約になっているという。
 とはいえ、これも単なる節約術というわけではなく、チャレンジの一環。常に新しい技術に目を光らせ、実際に自分たちで使ってみることで、使い勝手や課題を確認。さまざまなアイデアのヒントを探しているのだ。こうした日々の積み重ねが新たな技術を生み出しているのであろう。

  • 社名:電通工業株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1954年
  • 資本金:2億19万円
  • 代表者名:代表取締役社長 有若 信雄
  • 従業員数:168名(内、女性従業員数13名)
  • 所在地:140-0011 東京都品川区東大井5-11-2 K-11ビル
  • TEL:03-5479-3711
  • URL:http://www.dentsu.ne.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください