<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 株式会社アイ・エム・エー

株式会社アイ・エム・エー 広告会社から転身し、ゼロからスタートした住宅制震メーカー

株式会社アイ・エム・エー

広告会社から転身し、ゼロからスタートした住宅制震メーカー

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中央・城北地区

株式会社アイ・エム・エー

広告会社から転身し、ゼロからスタートした住宅制震メーカー

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新ビジネスストーリー
広告会社から転身し、ゼロからスタートした住宅制震メーカー

 制震ダンパーという家の揺れを制御する製品を産学共同で開発し、販売する株式会社アイ・エム・エー。元々は広告会社。それだけにメーカーとして技術的なノウハウもなければ、営業担当者もいない、まさにゼロから事業を立ち上げて成長してきた。その新ビジネスに挑んだ背景と、営業として活躍するキーパーソンに仕事の醍醐味を伺った。

広告会社から制震製品のメーカーに転身を図る

 地震大国の日本では、家屋に求められる耐震基準は他国よりも高い。しかし、阪神淡路大震災や東日本大震災の例を出すまでもなく、それでも万全とはいえない。法律の基準を超える安全性を追求し、安心して暮らせるようにマイホームを守る製品を手がけているのが株式会社アイ・エム・エーである。同社が扱う制震ダンバーとは、木造住宅の柱に取り付けて建物の振動を抑える役割を果たす地震対策建材。信頼性と確実性が求められる製品だけに長年の経験を誇る企業のように思われるが、そうではない。元々は製品開発製造とは無縁の広告会社。もっとも、全く関係がなかったわけではない。建設資材分野の雑誌広告などを手がけていた。
 「父が設立した広告会社として活動していたのですが、そのうちに建築・土木分野の学会誌の編集や広告を受託するようになりました。そこで大学の先生と知り合いになって、制震ダンパーの共同開発を手がけるようになりました」
 と語るのは代表取締役の新熊一生氏。木造住宅用の構造計算ソフトの販促を手がけたことから、その開発者と懇意になり、木造住宅用の制震ダンパーの開発に着手。この開発には同社をはじめ、大手企業2社と大学の4者が参加した。やがて制震ダンパーが完成し、前述の大手2社の内1社とアイ・エム・エーが担当することになった。しかし、当初は思うような成果が上がらなかったという。
 「収益がなかなか上がらなかったため他社は販売から撤退したのですが、当社は地道に販売活動を続けていました。まったく販路がなかったためゼロからのスタートでしたので、営業担当者が直接電話をかけて、工務店を手当たり次第に訪問していました。数年は赤字続きでしたが、やがて黒字に転換するようになり、劇的に変わったのが2011年の東日本大震災後でした」
 と住宅制震メーカーとしてスタートした当時を振り返る新熊代表。ちなみに主要製品「GVA(ジーバ)」は、現在では全国を対象に販売されている。

body1-1.jpg大学との共同開発を契機にメーカーに転身を図った新熊代表

販売促進ツールなどを制作し、工務店などの営業活動を支援

 東日本大震災を契機に、制震製品の必要性が理解され、受注が伸びた制震ダンパーの販売だが、それまでアイ・エム・エーは手をこまねいていたわけではない。販売先は木造住宅を建設する工務店やハウスメーカーになるが、彼らがエンドユーザーである施主にわかりやすく製品説明しやすいように販売促進用ツールを作って支援することで、徐々に実績を積み上げてきた。
 「マイホームを建てようとする一般の方は専門家ではないので、わかりやすく目に見える形で説明できるツールを制作して工務店などに提供してきました。具体的には、振動のメカニズムをわかりやすく説明でき、制震製品を取り付けた建物とそうでない建物の揺れが比較できる模型や動画を制作して制震のメリットを伝えるようにしました」
 振動メカニズムや製品機能の見える化を図ったツールなのだが、この開発には広告会社として長年培ってきたクリエイティビティが活かされたのはいうまでもない。
 こうした販促ツールや近年高まる大地震発生リスクを背景に着実に業績を上げているアイ・エム・エーの制震ダンパー「GVA(ジーバ)」は、現在では月500棟ほどに備え付けられている。販売当初は月50棟前後というから約10倍もの売り上げ増加になる。ただし、最近では大手メーカーの参入も盛んになってきているという。
 「制震ダンパーの普及率は木造住宅全体の5%しかないと言われています。どちらかというと大手メーカーが参入することで制震ダンパーが注目され、市場全体が活性化することを期待しています。また、先行メーカーとして工務店やハウスメーカーと信頼関係を築いてきたという実績がありますから、細やかなフォローをすることで差別化を図りたいですね」
 そう語る新熊代表の口ぶりには、先行企業としての自信が感じられる。

body2-1.jpg明るく自由闊達な雰囲気に包まれている本社オフィス

地域の市場を把握しながら工務店などの新規開拓に挑む

 実際に制震ダンパー「GVA(ジーバ)」を販売するのは、東京、大阪、名古屋を拠点に日々活動する営業担当者たちである。東京本社営業部の戸部政人さんは東京本社のエース的な存在。また大工から転職した経歴の持ち主でもある。
「建築現場で働いていたので、制震ダンパーという新しい技術に大きな可能性を感じて入社しました。営業は初めての経験でしたが前職で培ってきた建築知識を活かしながら活動をしています」
 そんな戸部さんが営業活動で心がけているのが「タイミング」だという。そのタイミングとは何を意味するのだろうか? 営業で訪問しても得意先である工務店などにニーズがなければなかなか成約には結びつかない。しかし、こまめに製品情報や法律の改正などの情報提供をすることで信頼関係が生まれ、その後、制震ダンパーの注文につながることも少なくないという。つまり、自分だけの都合で強引に売るのではなく、相手の状況を見極めながら販売できるタイミングまで待つことが大事なのだという。
 戸部さんが主に活動しているエリアは首都圏が中心だが、時には長野や北陸まで足を運ぶこともある。同社の制震ダンパーの主な対象は大手ハウスメーカーのように自社開発機能を持たない中堅ハウスメーカーから地域密着型の工務店までと幅広い営業販路を開拓している。地方に出かける際は事前にアポイントを取って営業回りをするが、移動の合間にも駅やバスの広告などから地域の工務店情報を仕入れることも忘れない。
 「お付き合いのあるお客様とのパイプを太くするのはもちろん大切ですが、もっとも力を入れていきたいのが新規開拓です。GVA(ジーバ)の性能には絶対的な自信を持っているので、1棟でも多く採用していいただけるように日々の営業活動に打ち込みたいですね」
 そう語る戸部さんの表情からエースとしての自負を強く感じる。

body3-1.jpg首都圏や北陸地域などを対象に精力的に外回りをする戸部政治さん

自らのアイデアでエンドユーザーにわかりやすいパンフレット制作

 戸部さんと同じ東京本社営業部に所属する廣瀬啓介さんは若手のホープ。2013年に大手印刷会社から転職した廣瀬さんは、営業は初めての経験だという。
「前職では生産管理などに携わっていましたが、営業職として働きたいという思いから当社に転職しました。営業はまさしくゼロからお客様と信頼関係を築きながら製品を通して貢献できる仕事。結果を求められる厳しさもありますが、逆にそれがモチベーションになっています」
 アイ・エム・エーの営業スタイルは、展示会への出展やホームページを見た客先からの問い合わせに対応する反響営業もあるが、ほとんどが工務店やハウスメーカーに電話をかけてアポイントを取るところから始まる。約束を取りつけたら客先を訪問し、製品をアピールする。また、廣瀬さんのような若手社員は上司が切り拓いた顧客を引き継いで、販売活動をすることも多いという。
そんな営業活動をしながら廣瀬さんは、あることに気づき新熊代表に提案したという。
「以前のGVA(ジーバ)の商品パンフレットは少し専門的な内容だったんですね。我々のように専門知識のある者なら理解できるのですが、もっと施主さんにわかりやすいカタチで表現できないかと感じました。実際に購入するのは施主さんですから、家族の安心をテーマにしながらイメージ写真を使用したパンフレットに仕上げました。これなら施主さんに製品をお勧めする工務店なども説明しやすくなったと思います」
 パンフレットの改訂に成功した廣瀬さんは、今度は自社のホームページの改善にも着手したいという。日々、営業活動しながら販促ツールにも目を行き届かせ、自らがその業務に携われるのは中小企業ならでの良さともいえるだろう。また、廣瀬さんのパンフレット改訂のケースは、若手社員でも積極的に意見を述べられ、仕事を任せるアイ・エム・エーの社風を物語っている証拠ともいえる。

body4-1.jpg客先への訪問だけでなく販売促進ツールも手がける廣瀬啓介さん

編集部からのメッセージ

革新性を追い求める活気ある企業文化


 アイ・エム・エーはメーカーでありながら自社工場は保有しない。製品の企画・開発、マーケティング、販売は自社で手がけるが、製造生産は100%協力会社に委託しているファブレスメーカーである。その分、社員数が少なく機動性に富んだ経営が可能になる。そんな事業のスタイルを反映してか、営業担当者は精力的な販売活動をする傍ら、市場ニーズを吸い上げて「GVA(ジーバ)」以外の新しい耐震・制震製品の開発に結び付ける努力も忘れない。



制震ダンパーを中心に多彩な製品を提供


 アイ・エム・エーの主要事業は制震ダンパー「GVA(ジーバ)」だが、その他にも多彩な製品や事業も手掛けている。設立時の主要事業だった広告事業は継続しているが、住宅関連では制震ダンパーを中心に耐震や制震に効果があるその他製品も開発している。具体的には、耐震・制震の効果がある「X-WALL(エクスウォール)」やビル・マンションなどの全倒壊防止の「SL‐Cube(エスエルキューブ)」に加え、液状化防止対策地盤補強の「ZEROシステム」など、幅広く営業を展開。様々な製品を提供することで地震などの災害に強く安心できる住まいづくりに寄与する。

  • 社名:株式会社アイ・エム・エー
  • 設立年・創業年:設立年 1991年
  • 資本金:2,000万円
  • 代表者名:代表取締役 新熊一生
  • 従業員数:20名(内、女性従業員数6名)
  • 所在地:104-0041 東京都中央区新富1-7-7
  • TEL:03-3553-5400
  • URL:http://www.imanet.jp