<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 株式会社日本工業社

株式会社日本工業社 顧客に寄り添い時代のニーズを的確に捉え、事業の裾野拡大に成功

株式会社日本工業社

顧客に寄り添い時代のニーズを的確に捉え、事業の裾野拡大に成功

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中央・城北地区

株式会社日本工業社

顧客に寄り添い時代のニーズを的確に捉え、事業の裾野拡大に成功

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時代の変化に対応ストーリー
顧客に寄り添い時代のニーズを的確に捉え、事業の裾野拡大に成功

 大手企業の各種資料の複写で事業を拡大し、幅広いオフィス関連事業へと発展してきた日本工業社。その成長背景には時代のニーズを察知する変化対応力があった。

大企業の複写業務からオフィス関連事業へ拡大

 経営に精通した人々の言葉の一つに「企業は社会に必要とされるから存在する」というのがある。その言葉を逆から読み取ると、社会から必要とされる事業を提供し続ければ、企業は長く歴史を刻み続けられるということになる。日本工業社の設立は1945年。70年を超える時を刻み続けてこられたのは、時代のニーズを的確に捉えて臨機応変に事業を展開してきたからということになろう。
 同社は大手鉄鋼メーカーの図面作成をきっかけにして、図面、契約書、会議書類などの青焼き(現在のコピーの前身の形)を請け負う、今でいうところのコピー業者として業績を伸ばした。今でこそ、オフィスに複写機は当たり前のように存在するが、かつて導入企業は少なく、同社への依頼度は高く、やがて取引先のオフィスの一部に「複写センター」を設けて複写部門を一手に引き受けるケースもこなすようになった。それが評判となり、大手石油会社や素材メーカーの複写業務を受託して事業を拡大していった。
 やがて複写機の時代になると複写機が急速に浸透。同社の事業環境はその方向性を余儀なくされた。その一つが、複写機はメーカーが提供し、同社は複写業務の代行業としての役割を担うという形だった。
 「大手企業では毎日、膨大な資料のコピーやプリントをしなければなりません。ですから、たとえ複写機を導入したとしても、その全てを社内で行っていたら大変な作業になります。そこでお客様がその時間を本来すべき仕事の時間に充てられるために、当社は複写のアウトソーシングを行ってきたわけです。しかし、複写方法は青焼きと呼ばれる方法から複写機に移行し、その後は複合機やペーパーレス化へと移ってきました。長い歴史の中で技術革新が進みオフィスの業務の在り方も変化しましたし、ペーパーレス化など環境に対する意識も大きく変わってきました。そんな変化を敏感に察知しながら、お客様から選び続けられる会社になるためにサービス内容も変化させてきました」と語るのは米田和秀代表(取材当時)である。複合機を取り巻く環境はまさに日進月歩で、オンデマンド・プリンティングサービスやデジタル印刷に対応しながら取引先のニーズに応えていった。
 更に、オフィス内の消耗品・文書管理などのオンサイトサービス、オフィス移転やレイアウト、内装工事などオフィスを新たに構築するサービスも提供するといった事業へと拡大、その可能性の裾野はまだまだ広がると米田代表は話す。

body1-1.jpg大手企業のニーズを把握して常に新たなサービスを提供する米田和秀代表(取材当時)

理念経営を実践して社員の連帯感を作る

  取引先のニーズと進化する技術に対応しながら、時代とともに変化してきた同社。しかし、一方では会社経営ではぶれてはならないこともある。それが企業文化、つまりコアバリューや経営理念、行動指針である。同社ではそれに基づいた価値観構造を構築し、全社員が一丸となった経営を目指している。
 「当社では、5段階のピラミッド型の価値観構造を構築しています。まず底辺を支える人事ポリシー、それに沿った行動指針を制定して、ビジョン、経営理念(ミッション)、コアバリューを実現するために行動しています。この価値観を全社員が共有し、社員が自らの業務を遂行する上で、常に経営理念や行動指針と合致しているかを自問自答してもらっています」
 その中でも特に重視しているのが「HERO`S」と呼ばれる五つの行動指針である。これは、Harmony=協調性あふれる行動、Energy=満ち溢れるエネルギー、Reality=現実を見極める眼、Originality=個性豊かな人間性、Step by Step=一歩一歩、着実な成長を、という五つの言葉の頭文字を取ったものである。この五つを発揮することで、「自律的な人材を育てる」ことを目指している。社員には、各種研修や日ごろの業務を通じて五つの行動指針が発揮できるよう教育を徹底する。
 米田代表にはライフワークもある。それは自らが発足した「100年経営企業家倶楽部」の活動である。中小企業の課題の一つに、事業を次の世代にどのようにバトンタッチしていくかという事業継承問題がある。この解決策を探るために知人の経営者に声を掛けて、「100年続く企業になるにはどうすればいいのか?」を考えるフォーラムや、会社見学ツアーなど多種多様な活動を展開している。
 同社は米田代表が4代目の経営者。同じ課題を持つ経営者とともに考え、事業継続のヒントを見つけることが、自社のみならず多くの中小企業を元気にするという信念で精力的に活動する。

body2-1.jpg経営理念や行動指針を共有したことで社内は一体感にあふれている

恵まれた環境が成長スピードを速めてくれる

 入社後4~5年はコピーセンターで顧客の書類などの複写や製本、文書管理に携わり、現在は、営業を担当している中原陵さん。入社10年目の今は顧客の新規開拓に当たる。
 「既存のお客様からご紹介いただいた企業にアポイントを入れて訪問しています。この仕事をこなすには、まずは既存のお客様の信頼を得るところから始めなければなりません。『日本工業社の中原なら紹介しても大丈夫だろう』という評価を頂かないと、紹介すら難しいですからね」
 そう笑顔で話す中原さん。信頼を得るためにも顧客と頻繁にコミュニケーションを取るように心掛けている。例えば、製本した資料などの納品完了後、しばらくしてから「いかがでしたか?」と出来上がりの感想を聞くことも忘れない。顧客の満足度を把握して、より高いサービスを提供するためにも不可欠なことだという。そんなきめ細やかな配慮が認められて新規のお客様を数多く紹介してもらえた。
 そんな中原さんには忘れられない出来事がある。ある企業の挨拶状の印刷を受注したときのことだった。顧客からレイアウトの最終修正をもらい作業をしたのだが、その最終校正を見せることを怠ってしまった。
 「修正したのでお客様に見せなくても大丈夫だろうと勝手に判断してしまったのです。そのときにお客様は、私の上司に『中原君を怒るけどいいですか?』という了承を得て私に注意をしてくれました。そこまで細やかな配慮をして怒ってくれる人はなかなかいないと思うんですね。そんな温かいお客様がいること自体が恵まれていること。当然、その後は同じ失敗は二度としないように気を付けています」
 社内のみならず顧客との良好な関係を築ける環境が、中原さんの成長の源泉のようだ。

body3-1.jpg新規顧客を開拓するためにフットワーク軽く活動する中原陵さん

入社間もない時期から仕事を任せてくれる社風

 石毛裕里菜さんは、老舗で安定経営、しかも取引先は大手企業でいて、女性が活躍できる職場という点に魅力を感じて2014年に入社したという。企画管理部に所属し、初めは経理、庶務などの業務に携わってきた。現在は、売上げ・支払の管理、経費管理や業績管理、さらには給与計算や入退職の各種手続などまでを兼務する。
 「初めて任された仕事が社内報の制作でした。経営方針や社内プロジェクトの紹介、社員のプライベートの過ごし方を紹介するなど様々な企画に携わりました。こうした社内報の制作業務を通して当社の事業や各部門の役割、社内制度などを学べた以上に全社員と仲良くなれたことが良かったですね」
石毛さんはそう振り返り、更に経営者と社員との距離が近くてとてもアットホームだと語る。
 外部セミナーにも積極的に参加できる環境も整っており、キャリアが浅くても幅広い知識やスキルを身に付つけられる。すでに幅広い知識を身に付けた石毛さんは、人事担当者として新入社員のマナー研修のプログラムを自らが作成し講師としても活躍する。その表情には自信に満ちあふれていた。

body4-1.jpg仕事を任せてくれる社風がやる気に繋がるという石毛裕里菜さんの表情は明るい

編集部メモ

中小企業のIT化を支える事業も展開中


 大手企業にサービスを提供する同社には、オフィス業務に関連する幅広いノウハウがあり、それを多くの中小企業に提供していこうと新たな事業展開を推進している。特にオフィスのIT化はコスト削減や業務の効率化を図れるが、どのように活用すれば良いのかをイメージできない中小企業も多い。そこで同社では、自社オフィスをショールーム化して、実際に導入しているセキュリティ対策や名刺管理クラウドサービスなどを紹介しながらIT化の活用方法を直接コンサルティングしているという。

  • 社名:株式会社日本工業社
  • 設立年・創業年:設立年 1945年
  • 資本金:1,000万円
  • 代表者名:代表取締役 米田 安司
  • 従業員数:29名(内、女性従業員数14名)
  • 所在地:104-0033 東京都中央区新川 2-26-3 住友不動産茅場町ビル2号館5階
  • TEL:03-6280-5510
  • URL:https://jiinet.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください