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城東地区 株式会社城東特種自工

株式会社城東特種自工 探究心と多能工化で独自技術を進化<br>特種業務専用車両を都内で唯一製造

株式会社城東特種自工

探究心と多能工化で独自技術を進化
特種業務専用車両を都内で唯一製造

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東京カイシャハッケン伝!企業
城東地区

株式会社城東特種自工

探究心と多能工化で独自技術を進化
特種業務専用車両を都内で唯一製造

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一生モノの技術を身に付けられるユニークな自動車製造ストーリー
探究心と多能工化で独自技術を進化 特種業務専用車両を都内で唯一製造

 清掃や工事、消防など、特種な業務に使われる自動車は、いつの時代も子どもたちに大人気だ。その車両を都内で唯一、車体から完成まで一貫製造する会社が城東特種自工。少数精鋭の職場では一人何役も任され、一生モノの高い技術を身に付けることができる。

一念発起で創業 仕事がしやすい好立地

 昔から建設資材の集積場として発展した新木場。今も場所によっては木材がほのかに香るその街角に、黄色の高速道路の作業車や、赤い消防車両、青や緑の清掃車など、鮮やかな色の特種業務専用車両がずらりと並ぶ。
 榎元社長は以前、別の特種業務専用車の製造会社で営業部長を務めていた。
 「日本初のキャンピングカーを作ってモーターショーにも出品していた会社です。高い技術を持つ職人がそろっていましたが、突然、建築など他部門との分社化で、車部門を廃止する方針を打ち出しました」
 得意先の仕事や残された社員はどうするのか。懇意にしていた取引先からも「信頼がなければ仕事を頼めない。続けてほしい」と依頼され、一念発起して、新会社を立ち上げた。 
 榎元社長は「この周辺は住宅がほとんどなく、企業ばかりなので、板金や溶接の音を気にすることなく作業ができます」と立地の良さを説明する。

body1-1.jpg「先輩の昔ながらのやり方も、若手の新しい挑戦も大切」と話す榎元社長

高い技術で独自の仕事 板金から塗装まで何役も

 創業当初は主に電力関係の工事車両を手掛けていた。東日本大震災を機に、現在は消防車・警察関係や道路公団の仕事も増えている。
 「技術の下地があったから、経験のない難しい仕事にも挑戦してこられました」
 多種多様な特種車両の中でも、電気制御関係のものを得意としている。消防車などは毎年、仕様が変わり、新しいものを一から作る面白さもある。
 「それまでと同じ仕事では技術の停滞です。自動車メーカーにはない技術を我々が進化させて形にします。車種によってはロボットと同等の制御が求められるんです」(榎元社長)
 時間と経験の積み重ねで培った高い技術で、全国でも同社にしか造れない車両があると榎元社長は語る。
 現在、製造現場で働く社員は13名だが、「一人3役、50人分働きます」と言うように、同社では一人の社員がメインの担当を持ちながら、サブとしても鈑金、溶接、塗装といくつもの仕事を任される多能工化が進んでいる。
 「会社の存在価値を高めるために、新しく、難しい仕事に常に挑戦するには、二重三重に仕事ができなければ成り立ちません。現場で一人前になれば、完璧な設計図を一から書き起こさなくても、自分のやり方で作れるようになります。早くて5年、通常は10年かかると言われますが、それも先輩が親身になって指導します」(榎元社長)
 最高齢の社員は76歳。本人のやる気と技術があれば、働くのに年齢制限はない。ベテランから中堅への技の継承はほぼ完了した。

body2-1.jpg三次元CADなど若手が得意な新しい技術も積極的に導入している

個々の力量が問われる現場 好奇心旺盛な人に最適

 製造部の井上部長は「図面通りにいかないことが当たり前」と話す。正解がないだけに、想像力と創造力が試される。
 「製造現場だからチームワークも大切です。その一方で、一人で一貫して仕事を任されることもあります。私は誰にでも臆せず自分の意見をぶつけますが、若手でも年齢に関係なく意見を聞いてもらえる社風です」
 幼少時から工作好きで、車両を狙い通りに作れた時や、お客様から高評価を得た時の充実感は最高だ。後輩指導も行う井上部長は、「好奇心旺盛で、責任を持って真面目に取り組めるなら経験不問です。ものづくりに興味があり、他社にない仕事をしたい人にはもってこいの会社ですよ」と話す。
 仕事を続けてこられたのは「充実感があったから」と振り返る。
 「ここまで仕事を終わらせてから、と区切りを付けようと迷ったときもありましたが、仕事を終えるといつも達成感で胸がいっぱいになります。仕事の大変さや苦労はどんな職種や職場でもあることだと思いますが、業務の内容に関心を持って、やる気を結果で示せるかが、仕事を続けられる秘訣ですね」
 工事や行政関連など、公共に資する仕事が多く、例年、年末と3 月の年度末に仕事のピークを迎える。その分、春先は閑散期にあたり、その期間は有休ではなく公休扱いのまとまった休みをもらえる。
 2018年に開催された上野公園の読書イベントで、自社で製造した出版社の読書推進キャラバンカーをわが子に初めて見せたという井上部長。トラックの荷台部分が図書館仕様になっていて、絵本をいっぱい詰めて全国を巡っている。絵本好きの親子にとって夢のような空間だ。
 「今はまだ3歳ですが、もう少し大きくなったら反応が楽しみです」
 社員一人ひとりの技術とアイデアで特種な車を製造する同社。今後も公共性の高い特種業務用車両の製造に誇りを持って取り組んでいく方針だ。

body3-1.jpg井上部長の仕事の支えは、「一品モノ」の車を作り上げる充実感や達成感

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コンビニも店舗ごと車に!全国で引っ張りだこ


 特種業務用車両は多種多様です。当社が得意なのは電気制御系の車で、高速道路でよく使われます。トンネルの崩落事故が問題として取り沙汰された後は、トンネルを走りながら中の亀裂の有無を調べる車も作りました。昔の検査可能速度は時速20kmでしたが、今は100kmで走っても検査可能です。
マンパワーが限られる中で、全国から引っ張りだこの人気車です。
 東日本大震災では、津波で店舗が壊滅的になった被災地へ駆けつけるため、コンビニエンスストアから「移動コンビニ車」を依頼されました。トラック側面の片側が開くと、コンビニの店舗そのものです。被災者に日用品を迅速に届けて喜ばれました。震災復興がひと段落した今は、過疎地で買い物難民の高齢者に商品を届ける車として活躍しています。(榎元社長)

edit-1.jpg自動で階段が下りる移動コンビニ車edit-2.jpg中はコンビニの店舗そのまま。移動中にも商品が落ちない工夫がされている