<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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中央・城北地区 株式会社カネコ

株式会社カネコ 測量とデータ解析技術で鉄道の進化と安全性を支える日本屈指のメーカー

株式会社カネコ

測量とデータ解析技術で鉄道の進化と安全性を支える日本屈指のメーカー

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中央・城北地区

株式会社カネコ

測量とデータ解析技術で鉄道の進化と安全性を支える日本屈指のメーカー

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記憶に残るプロジェクトストーリー
測量とデータ解析技術で鉄道の進化と安全性を支える日本屈指のメーカー

 鉄道の線路をどのように敷くか――業界用語で「線形」と呼ばれるその軌道は、鉄道の安全性・快適性を維持する上で極めて重要なファクターとなる。株式会社カネコは、鉄道の軌道の測量を専門として創業64年。高い安全性と効率性を誇る日本の鉄道は、同社の技術なくしては語れないといってもいい。

日本中の鉄道の開業に立ち会って・・・

 軌道計測部の鈴木久雄さんは、測量ひとすじ35年。これまでに青函トンネル、本州四国連絡橋、九州新幹線、北陸新幹線など、日本で開業するありとあらゆる鉄道の新設に携わってきた。
1988年に開業した青函トンネルの現場を踏んだのは、20代のころ。海底を走る鉄道は画期的と、当時日本中から注目された。若き鈴木青年は、日本屈指のプロジェクトに武者震いを覚えたと当時を振り返る。
「2年ほど竜飛岬付近に張り付いて青森側の路線の測量を担当しました。ケーブルカーに乗って地下100メートルほど降りていって本坑に入り、測量したことを覚えています。夜、驚くほど星がきれいだったことと、休憩時間には毛布にくるまっていなければならないほど寒かったことが印象に残っています」
記憶に新しいところでは、今年3月に開業した北陸新幹線の現場にも赴いた。測量作業は足掛け4年にも及んだ。
「北陸新幹線の軌道上は、トンネルが連なっている上にトンネルの断面が小さいのが特徴。そこをいかに理想的な『線形』でレールを敷くかに苦慮しました」
 鉄道の線路は、トンネルの真ん中にただレールを敷けばいいという単純な話ではない。トンネルも曲がっていれば、地面の高低差もある。さらには、狭い坑道を高速で駆け抜ける新幹線の車体の傾きなど、レールの線形は緻密に計算されて導き出される。
 安全性を守りつつ、求められるスピードが維持でき、かつ乗客にとって乗り心地がいいものでなければならない。条件は、おのずとシビアなものになる。鈴木さんら軌道計測部が現場で集めた測量データは、計算を担当する部署に上げられ、そこで過去のデータやさまざまな条件を加味して解析され、理想的な線形が導き出される。
 同社は、鉄道の測量を手掛けて約60年。日本中のありとあらゆる鉄道の測量に関わってきたその経験値は、他社の追随を許さない。
「一般的な測量会社は、測量したら終わり。当社の場合は、さまざまな鉄道事業に関わった蓄積がありますから、そうしたデータをもとに解析し、最善の数値をはじき出せる。そこが当社の大きな強みです」

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過去の蓄積をもとに理想的な「線形」を導き出す

 軌道計測部営業課の佐藤賢さんは、入社14年目。これまで、現場での測量をはじめ、そこから上がってきたデータを解析する計算部門、さらには発注者のさまざまな要望を聞き取る営業部門と一連の業務に携わり、経験を積んできた。これまで、九州新幹線、台湾新幹線、青森新幹線、北陸新幹線などに携わった。
2007年に開業した台湾新幹線は、はじめての海外プロジェクトということもあり、胸が躍ったと話す。台湾新幹線は、同じ地震国である日本の鉄道の安全性が買われ、日本の新幹線システムがいわば海外に輸出された画期的なケースだった。
「計算部隊の一員としてプロジェクトに参加しました。計画そのものが遅れていたこともあって、現地入りした直後から缶詰状態でデータ解析の毎日でしたが、国を代表するようなプロジェクトに関われるのは大きなやりがいでした。しかも、日欧共同の事業でしたから、他の国のやり方とすり合わせを求められる場面も度々。海外の鉄道設計の考え方を学ぶ貴重な機会にもなりました」

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災害時の鉄道復旧、安全運行を支えるメンテナンス事業

 新しい路線の開業にともなうプロジェクトに携わることの多い同社ではあるが、災害時に痛手を受けた鉄道網の復旧など、メンテナンスという側面での活躍も少なくない。
「『あまちゃん』の舞台でも知られる岩手の三陸鉄道北リアス線は、東日本大震災の影響で線路が山側に倒れてしまったり、桁が外れてしまったところが随所にありました。そういった線路を復旧のためにも度々、現地に赴きました」(鈴木さん)
また、同社ではこれまで手掛けた鉄道事業のノウハウやデータを生かして、さまざまな機器を開発し、メンテナンス事業も手がけている。一例を挙げると、線路のゆがみを計測する「トラックマスター」や線路とホームとの距離を計測する「ホームマスター」といった製品が鉄道の安全運行に活躍している。
「機器で測定したデータをお客様にお渡しするだけでは、何を意味しているかわかりませんから、データをグラフ化するなど可視化し、わかりやすく提供します。JRをはじめ、鉄道会社各社と契約し、定期的にこれらの機器を用いてメンテナンスを行っています」
と話すのは、入社20年目を迎えるシステム開発部情報処理課の岩本雄一さん。
 鉄道はまさに日々の生活に欠かせないライフライン。いわば、同社のメンテナンス業務は、安全な運行を陰で支えている。そうした業務内容に魅力を感じて今年、入社したのが浅野茉美さんだ。
「弊社の業務内容を知って、とても社会的意義の大きい仕事だと思いました。いまは、データ解析の業務を担当しています。まだ勉強中の毎日ですが、ひとつ一つの数字が安全性に関わることになりますから、とにかく間違えないように細心の注意を払って業務にあたっています」

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日本を代表するスケールの大きい仕事。地図にのる仕事

 社員は異口同音にそのやりがいの大きさを語る。
「長期間、現場に入り込んで、つぶさに測量していきますから、新幹線開業を迎えたときには、オレがこの線路を敷いたぐらいの気持ちで感無量です(笑)。鉄道の開業は全国的にニュースでも報じられますし、日本を代表するスケールの大きい仕事に関っているというやりがいも大きいですね」(鈴木さん)
 また、佐藤さんは、現在、来年開業予定の北海道新幹線に携わっている。
「発注者の要望には、すべて添えるような態勢で臨んでいます。いろいろな角度から解析を行って、厳しい要求にも応えられる線形を導き出せたときには、技術者冥利につきます。自分たちの計算した線形が地図にのるのですから、それはうれしいですよ」(佐藤さん)と、カタチに残る仕事の喜びを語る。
 メンテナンスに携わる岩本さんは、「鉄道の安全を僕たちの手で守っているんだという誇りを持って仕事に臨めます」と胸を張る。
 社員ひとり一人がプライドをかけて仕事に取り組んでいる。それが同社の発展と日本の鉄道技術の発展を支えている。

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編集部からのメッセージ

受け継がれている創業者金子慶尚氏の理念

 創業者である金子慶尚氏は、戦時中に中国の鉄道部隊にいた人物である。左右レールの傾きを測る水準器の改良型を考案。終戦後、その技術を生かして創業。金子氏のレールの研究にかける情熱は、現在も同社の社是として受け継がれている。
<社是>
一、われわれは常に創造の精神と不屈の意志をもって仕事にはげみます
一、われわれは常に世界の発展に貢献するという自覚をもって仕事にはげみます
一、われわれは常にわれわれ及び社会の生活向上のために仕事にはげみます


200にものぼる知的財産権。「発明賞」でモチベーションアップ

 同社では、創業以来研究開発部を設け、人材育成に取り組んでいる。過去、取得した知的財産権は200にのぼる。こうした技術を生かして、雨量計や風速計といった気象関連機器や落石検知器やなだれ検地装置といった保安計測器のほか、消防関連機器など、鉄道分野を越えて製品開発を手がけている。もっとも独創的な技術開発には「発明賞」を設け表彰、社員のモチベーションアップに寄与している。