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中央・城北地区 春日基礎株式会社

春日基礎株式会社 培ってきた技術が社員の誇りとやりがいを生む。他所ではできない仕事がここにある

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培ってきた技術が社員の誇りとやりがいを生む。他所ではできない仕事がここにある

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春日基礎株式会社

培ってきた技術が社員の誇りとやりがいを生む。他所ではできない仕事がここにある

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社会を支える技術力ストーリー
培ってきた技術が 社員の誇りとやりがいを生む。 他所ではできない仕事がここにある

 外観から見て取ることはできないが、縁の下で私たちの生活を支える杭(くい)。
そんな杭打ち工事を手掛ける春日基礎には、歴史の中で培ってきた技術と
それに裏打ちされたやりがいがあった。

構造物を地下で支える杭基礎

 あらゆる構造物は、ただ地面の上に建っているわけではない。その下地には構造物を支える「杭(くい)」がある。杭打ちがしっかりしていなければ、構造物は地盤沈下によって傾いたり、小さな揺れでも倒壊したりといった危険に晒されることになる。いわば、構造物の杭は縁の下の力持ち的存在なのである。
 春日基礎は創業以来、地中に鉄製の杭を打ち込んで構造物を支える杭打ち工事を専門に扱ってきた。そのほとんどの取引が鉄道や高速道路というから、まさにインフラを支える企業といえる。
 「地下化にしろ高架化にしろ、鉄道工事は限られたわずかな時間しか作業できないんです。それだけに綿密なスケジューリングは欠かせませんし、技術力もそれ相応に求められます」と説明するのは、齋藤貢司代表。先代から会社を継ぎ、20年以上先頭に立って同社を引っ張ってきた。
 「私たちの仕事は、出来上がったものを売るのではなく、まだないものを“できる”という仮定で売る仕事。いわば、信頼のやりとりなんです。鉄道の軌道内での作業など、難しい仕事を任せて頂けるのは、培ってきた技術力や実績のおかげです」

body1-1.jpg「春日基礎にしかできない仕事がある」と齋藤貢司代表

自ら選び取ることが会社を守る力になる

 もちろん、順風満帆に50年の歴史を刻んできたわけではない。1990年代後半からの不良債権問題が金融機関だけではなくゼネコン危機へと進んで行き、顧客先にも渦中の会社があった。
 ゼネコンから仕事を請ければ、今の売上げは立つ。だが、数か月後の工事終了時に支払いをするだけの力は残っているのか。きちんと回収できるのか。悩みに悩んだ結果、齋藤代表は経営が落ち込んでいたゼネコン数社との取引を打ち切る決断をした。
 「業界全体が不況に見舞われている中で、会社を育ててくれた顧客との関係を絶つことは、身を切るような思いでしたが、決断を先延ばしにして工事代金の未回収を発生させるわけにはいかないので、今決断すべきだと考えたんです」
 積み重ねてきた実績と信頼、そしてそれを継承する社員の力が、会社を支えた。多くの同業他社が倒れていく中、春日基礎は、自ら顧客先や金融機関を選ぶことで、不況の波を乗り切ったのだ。
自らの足で立つことで、不況の波を乗り切ったのだ。
 「私たちのような小さな企業だと、自分たちにしっかりとした経営力がないと、あっという間に倒れてしまう。技術だけでなく、財務内容や社員にとってのやりがいなど、長い歴史の中で意識して経営力をつけてきたからこそ、今があるのだと思っています」

body2-1.jpg社員一人ひとりの技術力が、会社を支えている

継承される技術と新たな挑戦が社員のやりがいを生む

 入社12年目の二ノ宮純平さんは、高校時代は普通科。工業の知識は皆無に等しく、入社当初はずいぶん苦労したという。
 「当たり前のように飛び交う言葉の意味が分からないんですから途方に暮れました。当然、工具や資材の名前も知らなければ、簡単な指示もなかなかこなせない。先輩に聞いたり、自分でも勉強したりしながら、とにかく一つずつ覚えていくしかないと必死でした」
 一口に杭打ち工事といっても、穴を掘って杭を埋めるだけではない。掘った穴が崩れないように土留め板を入れたり、杭をクレーンで持ち上げたり、杭を固定するためにセメントを流し込んだりと、様々な工程があって初めて1本の杭が立つ。それだけに、習得しなければいけない技術や知識は数限りない。
 「地盤や広さ、高さなど、現場の条件は一つひとつ違うので、毎回勉強です。ただ、それだけの技術を結集しての作業なので、難しい現場ほど、杭打ちが完了したときには達成感がありますね」と二ノ宮さんはやりがいを語る。
 子どものころから重機に憧れていたという三浦勝則さんは、入社10年目。現場責任者として、重機・資機材の段取り手配、ゼネコンの監督との打合せ、施工時の品質・安全管理などを行っている。
 「現場責任者になったのは、昨年、26歳のとき。こんなに若いうちに責任者に抜擢して頂くとは思っていなかったので、ふわふわしたような嬉しさを感じると同時に、責任の重さを感じました」
 若き責任者として三浦さんが心掛けているのが、当たり前にとらわれないこと。同じ作業をしていても、もっと効率的で安全な方法がないかと、常に考えるようにしているという。
 「長年研究され、磨かれてきた技術ですから、簡単にはいきません。それでも、現場で先輩などに意見を言えば聞いてくれますし、納得するだけの説明ができれば、やってみようという空気になる。自分の提案で作業が効率的になったときは嬉しいですね」
 高い技術力と、新しいことにも挑戦できる場。この二つがあるからこそ、社員は誇りとやりがいを持って働いているのだろう。
 「先輩方は皆、経験・知識・技術の全てが豊富でレベルが高い。自分も早く追いついて、春日基礎というブランドを支えていきたいです」(三浦さん)

body3-1.jpg「早く現場を引っ張れるようになりたい」と二ノ宮純平さん。これからも技術を磨いていく

編集部メモ

社員の健康が会社の基礎力になる


 同社には社員の健康を考えたユニークな手当がある。その一つが、「禁煙手当」。たばこを吸わない人に付与されるものだ。
 「建設現場というと、喫煙者が多いのかなと思っていたのですが、むしろ逆でした。実際に、社内の喫煙者は減っているみたいです」(三浦さん)
他にも、健康診断の結果が良いと「健康手当」、献血をすると「献血手当」などが付与される。社員一人ひとりの健康が会社を支えるという考え方が、同社には根付いているのだろう。