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城南地区
キング通信工業株式会社

キング通信工業株式会社 長年にわたって培った技術を応用して高齢者の見守りシステムを開発

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長年にわたって培った技術を応用して高齢者の見守りシステムを開発

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キング通信工業株式会社

長年にわたって培った技術を応用して高齢者の見守りシステムを開発

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新製品開発ストーリー
長年にわたって培った技術を応用して高齢者の見守りシステムを開発

 セキュリティ機器メーカーのキング通信工業は、新しい事業を創出するべく、高齢者の安全を守る画期的なシステムの開発に成功した。

高齢者の安全を見守るシステム開発に挑戦

 安全、安心が声高にいわれる時代、侵入防止などに活用されるセキュリティ機器は社会に欠かせない存在となっている。1968年設立のキング通信工業は、オフィスセキュリティやホームセキュリティに関わる各種センサー、コントロールパネル、防犯カメラなどを開発し、警備会社や商業施設などに提供してきた。
 「これまでは時代の趨勢で順調に事業拡大してきましたが、少子化を考えると警備関連の機器だけで安定経営は続けられないだろうと、自社技術を転用できる分野を模索してきました。その結果、行き着いたのが介護市場です。2014年に発売した『高齢者見守りシステム』はその第1弾です」
 そう新市場開拓のあらましを語るのは同社の茂木俊介代表取締役社長である。「高齢者見守りシステム」とは、壁に取り付けたセンサーが物体までの距離を測り、それを集約して人間の動作を認識するというもの。これで高齢者がベッドから転落しそうな動作を認識。その画像データは通信でタブレット端末にリアルタイムで送られる。危険な動作の場合はアラームで知らせ、すぐに介護者が高齢者の居室に直行して転倒などを防止するというものだ。
 実はこうした開発には、様々な技術が要求される。まさにハードウェア、ソフトウェア、そして双方を繋ぐファームウェアのすべての技術を保有しているキング通信工業の真骨頂。新しいシステムを開発するにも、他社との連携は不要。すべてを自社内で完結させることができる強みを生かして開発に乗り出したのだ。

body1-1.jpg高齢社会で大きな可能性を秘めた新規事業開拓を打ち出した茂木俊介社長

保有技術を応用して操作性の高いシステムを開発

 「高齢者見守りシステム」の開発プロジェクトが立ち上がったのは2012年。まずは「高齢者見守りシステム」のプロトタイプを開発し、数百カ所にも及ぶ福祉施設に持ち込み、高齢者を介護する人々の意見を聞くところから始まったという。
 「介護士の皆さんはとにかく忙しいですから、手間がかからず、扱いが簡単でないと普及は難しいというのをテーマに取り組みました」
 そう語るのは、同プロジェクトを統括した営業統括本部事業開発課の吉村真人係長。長年にわたって機械警備の開発に携わってきた実績が買われてプロジェクトのリーダーに抜擢された。
 苦心したのが身体の動作を正確に認識するためのセンサー精度とセンサーで認識したデータの画像処理だった。動きを的確にセンサーが捉え、かつ画像もわかりやすく再現しなければならない。しかも、プライバシーを守るために身体をシルエット画像で認識するものが求められた。技術の結集と微調整との格闘になった。2つの技術が最高潮に達し、高齢者がベッドから起き上がったり、はみ出したりするのを認識できるようになった。
 苦労続きではあったがモチベーションのあがる話が舞い込んできた。プロジェクト内容が認められ、2013年に経済産業省のロボット介護機器開発・導入促進事業に採択された。この認定によって補助金を受けるなど開発に弾みがつく。
 そして2014年末にようやく「高齢者見守りシステム」が完成。経済産業省の紹介などで各種展示会への出品を行いながら老人ホームをはじめとした福祉施設などに販売をしていった。
 「完成後は営業の推進リーダーとしてシステムを世に送り出す重責を担うことになりました。やっと完成したシステムですから、一人でも多くの高齢者の安全を守れるように日々営業活動に励んでいます」
 吉村さんにとってはわが子のような高齢者見守りシステムを世に広めるために、足繁く福祉施設などに通い、すでに多くの施設で導入されている。

body2-1.jpg高齢者見守りシステムの開発リーダーに抜擢された吉村真人さん

トライアンドエラーの末に高精度のセンサー開発に成功

 キング通信工業にとって大きなチャレンジとなった「高齢者見守りシステム」の開発だが、実は複数の若手社員も同プロジェクトに参加している。その一人が2013年に入社した開発技術部の村平宏太さんである。村平さんは大学院に進学し、博士号まで取得した画像処理の専門家。入社後すぐに同プロジェクトに配属され、センサーの精度向上に努めた。
 「物体までの距離を赤外線で測り、それを集約して物体の形を認識するのですが、物体特性によってノイズが発生して正確な物体の形を認識できなかったんですね。その原因を突き止めて改善ということの繰り返しでした。さらに、画像処理という難題も突きつけられましたが、クリアした時は格別の喜びでした」
 入社1年目からの重責であったが大きな達成感を得ることができたと喜ぶ村平さん。今は新たな画像処理の開発に取り組んでいるという。

body3-1.jpg博士号を持つ村平宏太さんはセンサー精度や画像処理の向上で貢献

多くの人々に役立つアプリ開発がやりがい

 村平さんと同じ開発技術部の遠藤可奈子さんは、タブレッド端末の操作性向上に取り組んできた。遠藤さんがもっとも配慮したのが、シンプルで分かりやすい画面レイアウトだったという。
 より多くの人に利用してもらおうという狙いから、汎用性の高いiOS、Android、WindowsのOS3種類を対象にしたアプリケーション開発に臨んだ。
 「それぞれのプログラミング言語を使って開発しなければなりませんから、まずはそれぞれの開発言語を習得することから始めました。社内でも全ての開発言語を知っている人は少なく、インターネットや書籍をずいぶん読み漁りました」
 苦労が多かった分、App storeやGoogle Play Storeに自身が開発したアプリケーションが配信された時は大きな達成感を得たという。そんな遠藤さんが現在、携わっているのは「高齢者見守りシステム」の次期アプリケーション。新たな機能を付加させて、より使いやすい製品へと進化させていくのが使命である。「高齢者見守りシステムのアプリケーションのことなら遠藤に聞けばいい」という社内の信頼を獲得し続けるために、開発の日々を送る。

body4-1.jpg使いやすい高齢者見守りシステム開発を心がけたという遠藤可奈子さん

編集部メモ

専攻分野を考慮した配属が組織活性化につながる

 理系学生が大学で専攻した分野に直結した仕事に就けるとは限らない。とくに大手企業ともなると業務は細分化され、学生時代に身につけた知識や技術が活かされることはそう多くはないといわれている。
 ところがキング通信工業の若手社員の多くは、専攻分野に直結した仕事に就いている。村平さんと遠藤さんも画像処理やソフトウェア開発という学生時代に学んだ知識を活かしながら活躍している。
 「画像処理の開発に携われるのは入社動機の一つでした。自分の興味のある分野を究めていくのはモチベーションにもつながります」(村平さん)
 このように本人の希望を優先して配属するのがキング通信工業の伝統。しかも若手社員にも責任ある仕事を任せるのも同社の社風の一つである。こうした企業風土の中で、自らの夢や目標に向かって主体的に働く社員が多く、それが同社の活気にもつながっているようだ。