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城東地区 株式会社今野製作所

株式会社今野製作所 「爪つきジャッキ」を武器に若手社員が新卒3年目から海外市場の開拓を牽引

株式会社今野製作所

「爪つきジャッキ」を武器に若手社員が新卒3年目から海外市場の開拓を牽引

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城東地区

株式会社今野製作所

「爪つきジャッキ」を武器に若手社員が新卒3年目から海外市場の開拓を牽引

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海外市場開拓への挑戦ストーリー
「爪つきジャッキ」を武器に若手社員が新卒3年目から海外市場の開拓を牽引

 通常の油圧ジャッキに比べ、格段に低い位置から重量物をリフトアップできる「爪つきジャッキ」。このパイオニアである今野製作所は海外へ挑む。

日本の製造業界から全幅の信頼を集める「爪つきジャッキ」

 一般的にジャッキといわれると、自動車のタイヤ交換や修理をするときに車体を持ち上げる道具をイメージする。最大の特性は、「小さな力で重量物を持ち上げ、支えること」にある。
 「通常の油圧ジャッキは、重量物の下にジャッキ本体を潜り込ませて持ち上げればいいのですが、中にはジャッキを潜り込ませるスペースがないというケースもあります。当社が開発した『爪つきジャッキ』は、フォークリフトのような“爪”を上下させることで、20ミリ程度の隙間さえあれば最大10トンもの重量物を持ち上げることができ、位置合わせもミリ単位まで可能にしています」
 今野浩好社長がそう胸を張るのは、同社が1975年にパイオニアとして開発・商品化に成功した「爪つきジャッキ」。同社が主戦場とする工場の製造ラインにおける工作機械等の設置作業では、工作機械の位置取りがミリ単位で計算・計画されており、機械を安定稼働させるためにはそこに誤差が許されず、ジャッキを噛ます隙間を確保しにくい状況が多々ある。
 そこで本領を発揮するのが同社の「爪つきジャッキ」。強靭な爪と微細な調整機能が工場ラインの緻密な構築作業にアジャストし、日本の厳格な品質・安全基準に対応するツールとして、製造業界から全幅の信頼を寄せられているのだ。

body1-1.jpg「それぞれの強みや得意を伸ばし、チームでサポートし合うのが当社のスタイルです」と語る今野浩好社長

海外市場の開拓に乗り出すものの、“意識の違い”に直面

 同社の誇る『EAGLE(イーグル)』というブランド名を冠したジャッキの使い勝手は、国内では多くの企業が認めるところ。ところが海外を相手にすると思うように事が運ばなかったと振り返るのは、3年前から海外営業の最前線に立つ玉木巧さん。その要因に日本と海外の意識の違いを指摘する。
 「ASEAN諸国を中心に販路拡大を進め、評価はすこぶる良好だったのですが、いざ価格の話に移ると、『それだけの予算があれば、私の国では何人もの作業員を雇えますよ』と、商談が破談になってしまうことが少なくなかったんです」
 グローバル化の洗礼を受けた玉木さんだったが、自分たちの製品を信じ、その必要性を訴え続けた。ASEAN諸国の製造業にとって日系企業は最重要クライアントであり、日本ブランドが求める品質水準をクリアするためには、それ相応のツールの導入が欠かせない。ジャッキへの先行投資は、必ずや日系企業からの信頼獲得という大きな成果となって返ってくる。品質への意識が薄かった現地企業に対して、そうした意識啓蒙から地道に行ったことがやがて実を結び、インドネシア、インド、タイ、スリランカで次々と販売代理店との契約締結を取り付けていった。

body2-1.jpg2カ月に1回のペースで海外に出張し、現地の販売代理店とともに販路拡大に力を注ぐ玉木巧さん

手探りのスタートから3年で海外売上を4倍に拡大

 そんな玉木さんが「海外営業を担当したい」と今野社長に直接申し入れたのは、新卒入社から3年目に入ったばかりのときだった。
「“開拓”という二文字に魅力を感じたんです。まだ手つかずの市場を自分の手で切り拓けるのは営業冥利に尽きることであり、後先を考えず手をあげました」
意気込みはあったものの、海外営業どころか、営業部一番の若手の経験は推して知るべし。実のところ英語すらままならなかったという。当然、壁に直面することの連続だった。
 「海外からの英文メールへの返信だけでも四苦八苦し、1通の英文メールを作成するだけで3時間も費やしたこともありました」と当初の苦労を振り返る玉木さん。頼みの綱となってくれた英文ビジネスメールの入門書は、今では付箋でいっぱいだという。タイの販売代理店向け勉強会の際には、英語が得意な友達や姉にも添削してもらいながら英語で資料を作り上げ、バンコクで10名ほどのタイ人スタッフにプレゼンを行ったという。
 手探りながらもこうした積み重ねがマーケットをこじ開け、玉木さん自身のスキルにも急ピッチに磨きがかかり、担当してから3年で、同社の海外売上は約4倍に拡大するという驚異的な成果をもたらした。
 「現在、開発部門とともに海外向け製品の開発プロジェクトも推進中です。また、ゆくゆくは海外現地法人を立ち上げ、現地でビジネスを推進するという目標も描いています」と、目を輝かせながら語る玉木さんの挑戦意欲は尽きることがない。

body3-1.jpg情報伝達・共有のルールづくりなども、社員同士が率直に意見を交わし合いながら進めている

英語力と海外経験を併せ持つ社員が強力にバックアップ

 取引先を開拓するだけでは、ビジネスは完結しない。海外との取引を行うには貿易手続きが不可欠となり、英文取扱説明書の用意なども求められる。
 そうしたバックアップ業務を担っているのが、時短勤務で子育てと両立するママワーカーの竹本典子さん。経理業務を主とする竹本さんは、TOEICの最高スコア950点という英語力の持ち主。結婚前には7カ月間単独で南米を巡り、その後、メキシコで2年間、「英語よりも得意」なスペイン語を駆使して現地の学校で日本語教師を務めたこともあるという。
 こうした語学力や海外経験ががすぐさま実戦的に機能するわけではないが、海外の空気を知っているのは強み。貿易事務やカタログ・取扱説明書の翻訳業務に取り組み、同社の海外営業に大きく寄与、活躍の場はますます広がっているという。
「貿易業務の経験は一切なく、私にとって初めて尽くし。まだまだ手探りの状態ですが、昨年には外部研修に参加する機会をいただき、貿易実務の基礎知識を身に着けることができました。」
 働く時間帯を柔軟に調整しながらスキルアップにも励む竹本さんは、ジャッキに関しても一切馴染みがなかったが、自ら調べながら取扱説明書の英語翻訳にもトライし、その出来栄えには、海外事業の参謀役を務める大手商社出身のコンサルタントも「技術者が読んでも非常にわかりやすい英文だ」と唸ったという。
 「当社は社員34名の規模ですから、一人ひとりの役割に制約がありません。私は今、下肢に障がいをお持ちの方々のための自動車運転補助装置『SWORD』の事業にも携わっています。そうやって分け隔てなく力を合わせる一体感が、当社の魅力であり、強みだと思います」

body4-1.jpg「当社のジャッキに込められた思いを知れば知るほど、仕事への意欲が高まっています」という竹本典子さん

編集部メモ

平成24年度の「東京都ものづくり人材育成大賞」受賞

 同社創業者の先代がジャッキの開発・製造に乗り出したのは、工作機械の搬入・据付を生業とする“重量物据付業者”から「爪つきの油圧ジャッキを開発してほしい」という要望を受けたことから始まった。当時、ジャッキに関するノウハウはなく、大手ジャッキメーカーに協力を仰ぎ、依頼元の重量物据付業者とも頭を突き合わせて試作を重ねていったという。実に3年もの開発期間を経て、日本で類を見ない「爪つきジャッキ」を完成させ、瞬く間に重量物搬入・据付現場に普及させていった。
 「重量物据付業者やジャッキメーカーとチームで開発に成功したように、当社の強みは“力を合わせる力がある”こと」という今野社長は、現場の社員がどう動くのかを判断し、力を合わせ、チームでゴールに向かう“サッカー型”を標榜し、実践での人材育成に重きを置いている。その取組が評価され、平成24年度には「東京都ものづくり人材育成大賞」を受賞した。

edit-1.jpgチームワークを重視した“サッカー型”の組織でそれぞれの持ち味を発揮する今野製作所の皆さん
  • 社名:株式会社今野製作所
  • 設立年・創業年:設立年 1961年
  • 資本金:3,020万円
  • 代表者名:代表取締役社長 今野 浩好
  • 従業員数:36名(内、女性従業員数5名)
  • 所在地:123-0873 東京都足立区扇
  • TEL:03-3890-3406
  • URL:http://konno-s.co.jp/