<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城南地区 株式会社マーシュ

株式会社マーシュ 消費者のリアルな声を届ける、マーケティングリサーチ会社

株式会社マーシュ

消費者のリアルな声を届ける、マーケティングリサーチ会社

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城南地区

株式会社マーシュ

消費者のリアルな声を届ける、マーケティングリサーチ会社

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地道な努力が実を結ぶ会社発展ストーリー
消費者のリアルな声を届ける、マーケティングリサーチ会社

 80万人を超すモニター会員を抱えるマーケティングリサーチ会社、マーシュ。いかにも今どきの会社に思えるが、その立ち上げは実にアナログなものだった。

消費者心理を市場調査で掴む

 マーシュの事業を一言でいえば市場調査だ。食品でもスマートフォンでも自動車でも、何か一つの商品を生み出しヒットさせるには、消費者心理を掴まなければならない。ユーザーはどんなものを欲しているのか、あるいは、既存の自社商品に対してどんな感想を持っているのか。そんなメーカーが要望する市場のリアルな声を企業へ届けるのが同社のミッションである。
 その消費者の声を、同社は主に3つの方法で集めている。一つ目はモニターリクルートといって、例えば、「スマートフォンのある機種を使っている男性」や「あるコンビニエンスストアで週に3回は買い物をする女性」といったクライアントが求める条件に合致する人を会場に集めアンケートをとるというもの。これは同社が保有する登録会員の中から厳密審査した者を会場に集めて行うという。つまり、会員集めはネットでやるがアンケートは実際の会場で行うというものだが、アンケートもWeb上で完結させるという調査も行っている。「アンケートに答えてポイントをゲット!」といったバナー広告を見たことがある人も少なくないだろう。そうした広告で集めた会員からアンケートをとるというわけだ。3つ目が、会員に商品サンプルを送り、その使用感を答えてもらうというもので、食品や日用品、それに介護用のおむつなど多品目を扱うという。
 同社は、創業して18年のまだまだ若い会社。創業者の町田正一社長にとって起業は学生時代からの夢だったという。アパレルメーカーや商品企画の会社で経験を積んで独立したのは34歳の時。文字通り、満を持しての船出と思いきや、どうやらそうではないらしい。

body1-1.jpg同社の事業内容を說明する町田正一社長

足を棒にし、ひたすら飲食店を回る

 実は創業前はこれといった具体的な事業プランはなかったと振り返る町田社長。唯一、その視界の隅にインターネットがあった。創業の3年前、阪神淡路大震災が発生し、そこでインターネットの威力がクローズアップ。さらに、同じ年の暮れにWindows95が登場。巷は本格的なネット時代の到来に期待を膨らませた。しかし、ネットが世の中に与える影響の大きさは語られてもそれをどう活用するかは暗中模索の状態だった。
 「当時はインターネットを活かせば、きっと何かできるんじゃないかと誰もが思ってはいたのですが、まだ漠然としていましたよね。私もいろいろ考えて、とりあえず、ネットは一つのコミュニティーなのだから、人の集まるサイトを作って、そこに大勢の人を集めれば何か生まれるだろうというので動き始めたんです」
 しかし、いくらネット上のこととはいえ、人集めは口でいうほどに簡単なことではない。“会員になってもらうには何か特典がなければならない”と考えた町田社長は、当時トレンドの中心だった田園都市線沿線の飲食店を回って、サイトで紹介する代わりに、ワンドリンクサービスやランチクーポンといった割引特典を出してもらえないかと交渉して歩いたのだ。実は町田社長、その時はまだ会社勤めをしており、営業廻りは仕事終わりと週末に限られたという。しかし、起業の志が疲れを上回った。足を棒にして半年、なんとか会員を募れるところまでにたどり着いた。登録は無料でお店のクーポンや情報が得られるというお得感は思惑通りに人々を動かし、1年半後には5000人もの会員が集まった。

body2-1.jpg会議では忌憚のない意見が交わされる

5000人の会員をいかにして活性化させるか

 「集まった会員をどうやって活性化させようとあれこれ事業プランを思案していた頃に、リサーチ会社がアンケートの協力者不足で困っているという話を耳にしたんです。当時は、街中で声をかけてアンケートを集める手法が中心で、調査員の対人ルートや関係者の友人、知人でまかなっていることも少なくありませんでした。ものは試しと色々なリサーチ会社に5000人の会員を抱えていると話したところ、感触がよく、モニター会員の紹介業を始めました」
 起業を目指して動き始めてから2年、それまでほぼ収益はなかったというが、このモニターリクルート事業で1年後には1000万円の売上を実現した。それを機に法人化し、会社を軌道に乗せるため、営業に経理にと奮闘し、夜中帰宅し早朝出社する日々を2年程続けたと振り返る。
 「体力的には辛かったですけど、補って余りある充実感でした。何より、夢を叶えられていることが嬉しかったんです」
 創業から18年目を迎えた同社の売上は15億にものぼる。直感に従い、行動を起こし、並外れたバイタリティで突き進み、会社経営という夢を叶えた町田社長。現在は、やる気ある若者の力になりたいと人材育成に力を入れる。そんな社長を慕う同社の社員は少なくない。実査部ネットリサーチチームの三重野唯さんもその一人だ。

body3-1.jpgネットリサーチの業務を語る三重野唯さん

やりがいを醸成する職場環境

 大学でマーケティングを専攻していたという三重野さんの業務は、Webアンケートの作成、回収、集計、クライアントへの納品といった一連の作業の進行管理。その仕事の面白さをこう語る。
 「アルコール飲料のパッケージでA案とB案のどちらがいいかというアンケートをとった時のことです。アンケートではA案と回答した人の方が多かったのに、実際に商品が市場に出た時はB案のパッケージになっていたんです。これはどうしたことだと集計結果を分析し直してみたら、ターゲットにしている30代男性だけは、B案の解答が多かったんです。これこそリアルなマーケット活動の醍醐味ですよね。こうした経験の積み重ねがアンケートの精度を上げていくんです」
 そう話す三重野さんは、リサーチ業務の傍ら新卒採用業務にも従事している。
 「実は、入社1年目の頃に、採用活動もやりたいと社長に直談判したら二つ返事でOKしてもらったんです。やる気さえあれば、若手でもどんどん仕事を任せてもらえます」
 若手育成に力を入れるとともに、女性の労働環境向上にも注力している。営業部WEBマーケティンググループの大宮千佳さんは1年か月の育児休暇を所得した後、現職に復帰している。
 「育児休暇を取って復帰している先輩が多かったので、私も自然と働き続けようと思えました。休む前はクライアント対応の仕事もしていましたが、それだとどうしても残業が多くなってしまうので、現在は様々な商品やサービスの口コミサイト、シェアビューの運営など、残業が少ない仕事をしています。仕事が終わったら子どもを保育園に迎えに行って、お風呂に入れて、洗濯をして食事も作ってとてんてこ舞いの私にとって、こうした配慮はとても助かります」
 学生時代は働きながら育児をしているとは思っていなかったという大宮さん。同社に入社したことで、子育てしながら働き続けるという選択肢が生まれたのだろう。

body4-1.jpg仕事と子育ての両立に毎日、奮闘しています!

編集部メモ

若者にチャンスを与えたい

 やる気ある若者を応援したいという町田社長は、同社の八戸事業所の責任者を、27才入社2年目の女性社員に任せた。さらに、今年立ち上げる大阪事業所の責任者に至っては、入社1年目の社員に任せるのだという。
 「やる気があれば、年齢は関係ありません。きちんとフォローもするので会社としても不安はありません。前向きな若者はいくらいても足りませんので、ぜひチャレンジしてきてほしいです」
 向上心ある若者にとっては、これ以上にやりがいと夢が持てる制度はそうはあるまい。

edit-1.jpg1階のモニタールーム。アンケートのみならず、メーカーの新商品お披露目会にも使われ、ユーザーとメーカーのリアルな意見交換の場になっている。