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城東地区 松山油脂株式会社

松山油脂株式会社 働き方を自分で選べる会社に。 働き方プロジェクト「WORK2020」始動

松山油脂株式会社

働き方を自分で選べる会社に。 働き方プロジェクト「WORK2020」始動

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松山油脂株式会社

働き方を自分で選べる会社に。 働き方プロジェクト「WORK2020」始動

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働き方改革ストーリー
働き方を自分で選べる会社に。 働き方プロジェクト「WORK2020」始動

天然素材や伝統製法にこだわった石けんなどが人気の松山油脂。
社員がやりがいを持って主体的に働ける環境を目指し、働き方改革に乗り出した。

新たな価値観のもとで、新たな制度作り

 石けんやボディソープ、ヘアケア、スキンケア製品など、自然派の自社ブランド製品を世に送り出している松山油脂。そのこだわりは強く、合成の香料や着色料を使わないのはもちろん、石けんは釜焚き製法という伝統的な製法で100時間かけて焚き上げている。とてつもない時間を要しているが、一般的に使われている脂肪酸中和法という製法では時間短縮はできても、原料に含まれる天然の保湿成分が抜けてしまう。その点、釜焚き製法なら肌に優しい保湿成分が残るため、あえて保湿成分を添加せずとも、突っ張らない洗い上がりになるというのである。
 こうした妥協しない姿勢は製品の質にも確実に反映され、松山油脂ブランドは多くの人に愛されている。そして、それは消費者に限らない。
 「私が求めるのは、松山油脂が好きで、当社で働きたいという社員。実際に製品を使って良かったという理由で入社した社員もいるんです」と話すのは、松山剛己社長。
 もちろん、もともとユーザーだったという社員ばかりではないが、社員は一様に製品に誇りを持ち、いきいきと働いている。
 「残念ながら子育てや介護といったやむを得ない理由で退職していく人もいました。働き続けたいと思っても諦めなければならないという環境をどうにかできないかと考えて、2017年の4月から『WORK2020』という働き方プロジェクトを始動しました」
 2020年はオリンピックイヤー。外国から様々な人や物、価値観が入ってくるこのときこそ、凝り固まった価値観を変えるときだと松山社長は考えた。「WORK2020」で目指したのは、社員の選択肢の拡大と、主体性を持って働き続けられる環境作り。具体的な制度は、社員も交えて何度も会議を行いながら決めていったという。

body1-1.jpg松山剛己社長は父である先代から会社を継ぎ、自社ブランドを大きく成長させた

社員主体の制度改革「WORK2020」

 「ある日、社長から人事や経営に関する本を渡されて、『今度これについて討議するから』と告げられました。そのときは自分がそうしたことに関わると思っていなかったので、疑問だらけでしたね」
 こう話すのは、総務経理部の富川義夫さん。「WORK2020」のコアメンバーの一人だ。具体的な内容は軽井沢にある研修所に着いてから聞かされた。集まった管理職の社員に向け、松山社長は「これから新しい働き方を作っていきたい」と切り出し、2日間にわたる協議が行われた。上司とともに中心的な役割を任された富川さん。自分に何が務まるのかという不安と、どんなものができるのかという期待を抱きながら、役職者としてではなく、より現場に近い一社員として意見するように心掛けたと振り返る。
 「入社以来、生産、品質保証、営業企画と、様々な部署を経験してきた私だからこそ分かること、言えることがあると考えたんです。泊まりがけでアイデアを練っていきました」
 そこで構築されたたたき台をもとに、今度は管理職以外も含めた会議を行った。生産管理部の大池美保さんは、この会議に参加した一人だ。
 「社長から、こうした会議をするから参加したい人は参加するように言われたんです。働き方に関する大事な内容だったので、社員代表として出なければならないなと思いました」
 社員代表とは、社員の投票によって隔年で選ばれる代表のことで、大池さんは2017年から務めている。5日間にわたって行われたこの会議では、たたき台をもとに細かい部分を詰めていったという。
 「代表として、疑問を残してはいけないという姿勢で臨みましたから、曖昧な部分にはどんどん突っ込んでいきました。あるだけではなく使える制度になるよう、集まったみんなで意見をぶつけ合って、形を作っていったんです」

body2-1.jpg富川義夫さん(写真右)は、総務として工場見学なども担当。左に写るのが、石けんを焚く釜だ

働き方を選び、活躍できる会社へ

 そうしてできた制度の中でも核となるのが、働く時間を自由に選択できるフレックス・コアタイム制度。月~木曜日の7時半~19時半のうち、9時半~16時半をコアタイム(必ず勤務する時間)とし、全ての会議をこの中で行うことにした。もともとあった朝礼も昼に移したという。
 「今までは朝礼を大事なことを伝える場にしていたのですが、保育園の送り迎えなどがあるとそれを聞き逃してしまう。会議も同じです。誰もが同じ条件で働けるにはどうしたらいいかと考えた結果が、この形です」と松山社長。さらに、月~木曜日というのにも理由がある。
 「時短勤務でなければ、週の標準勤務時間を40時間としています。平均的に月~金曜日まで1日8時間ずつ働いても良いし、月~木曜日まで1日10時間、計40時間働き、金曜日を休みにしても良いんです」
 もちろん、休みにしなかった分は残業手当として支払われる。これだけ選択肢が広がれば、仕事とプライベート、家庭の時間のバランスを、時と場合によって自由に組み立てられる。大池さんは、働き方の変化をこう語る。
 「明日はどうしても仕事が重なるから今日は早く帰ろうとか、朝早く行って夕方から遊びに行こうとか、フレキシブルタイム(社員が自分で決められる時間)を調整する事で、そうした選択ができるんです。自分で選べると思うと心に余裕が生まれましたし、時間の使い方にメリハリができました」
 実際の仕事量が変わったわけではないから、時間の調整は難しい面もある。現在、それぞれの部署の部長が先頭に立って、既存業務の中にシステム化や機械化などができる部分がないかなど、業務の効率化や取捨選択も進めているところだという。
 「制度は作って終わりではありません。こうした改正ができるのも、外部に任せず、自分たちで頭を寄せ合って作ったからこそ。2020年に向けて実際に使いながら、より良いものにしていきたいです」と未来を展望する松山社長。現在、社員とともに経営理念や方針を作る「VISION2020」も動き始めている。社員がやりがいと主体性を持って働ける環境を作るために動き続ける同社、今後のますますの活躍が楽しみだ。

body3-1.jpg同社の製品の一部。製法へのこだわりが質を高め、広く愛されている

自社製品への誇りと「WORK2020」

 「入社前から使っていたからこそ、多くの人に当社の製品の良さや、使っていただければ分かる毎日の小さな幸せを届けたいです」(大池さん)
 「『WORK2020』を通じて企業としての魅力を作ることで、製品の魅力も広く知ってもらえるようになればと思っています」(富川さん)
 2人の言葉からも分かるように、同社の社員は皆、自分たちの手掛ける製品を愛し、そこに誇りを持っている。「WORK2020」がそこに加わり、さらなる働きがいが生まれたことは間違いなさそうだ。

body4-1.jpg挨拶が飛び交う和気あいあいとした社風も、社員の働きやすさに繋がっている