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中央・城北地区 明成建設工業株式会社

明成建設工業株式会社 大正創業の老舗は建築の新しい可能性も開拓。若い力の採用にも意欲的

明成建設工業株式会社

大正創業の老舗は建築の新しい可能性も開拓。若い力の採用にも意欲的

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明成建設工業株式会社

大正創業の老舗は建築の新しい可能性も開拓。若い力の採用にも意欲的

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若い人材が会社の未来を開拓するストーリー
大正創業の老舗は建築の新しい可能性も開拓。若い力の採用にも意欲的

建築の新築工事やリフォーム、不動産売買・管理などを手掛ける明成建設工業。90年以上の歴史は、大いなるチャレンジ精神が紡いできた。

建築サービスにも果敢にチャレンジ

  明成建設工業が創業されたのは、今から90年以上も前の1926(大正15)年にまで遡る。この年、創業者である西村亀吉氏が、大工として東京・中野区に拠点を置き、活動を開始。以来、時代の変遷とともに高度化する技術を着実に吸収し、建築のプロ集団として着実に歩んできた。
 現在は学校をはじめとする官公庁案件、マンション、オフィスビル、個人住宅など、ジャンルを問わない物件の施工管理を手掛けている。さらには不動産全般にフィールドを広げており、住宅のリフォームや不動産賃貸・売買・管理、シェアハウスの運営などにも携わっている。社員数約30名規模の会社ながら、事業の多彩さは大手に引けを取らない。
 実は90年代までは、ここまで事業が広がっていなかったという。当時は官公庁系の建築が主体で、まさに作ることに特化していた。変化をもたらしたのは、当時一社員でしかなかった西村剛敏社長が、会社運営に加わったことがきっかけだった。
 「不動産業界が変化し続ける中で、いつまでも作ることだけに特化していたのでは立ち行かなくなると考えました。そこで、建築に付随するサービスを扱っていくことで、暮らし全般に関わる企業を目指していくことにしました」
 最初にサービス面の充実化に着手したのは1995年のこと。新たに住宅リフォーム事業を立ち上げることになった。当時は、住宅のリフォームといってもその認知度は低く、「洋服を直すことか?」と言われるような時代。それでも西村社長は大手メーカーとタッグを組んで丹念に顧客を開拓し、徐々に実績を積み重ねていった。
 「サービスという局面でお客様と接すると、そこに住む人や利用する人の考え方が分かるようになり、これはきっと会社の発展に繋がっていくという確信が生まれましたね」
 その成果がシェアハウス事業誕生に繋がった。きっかけはあるご夫婦から持ちかけられたリフォーム相談。家の一部を賃貸で貸し出したい、そのためにはどんなリフォームがいいのかという話だった。ニーズを丹念に拾い上げていった結果、賃貸よりもシェアハウスとして提供したほうが適切だということになったのだが、そこでたくさんのノウハウが蓄積されていった。それをさらに発展させたのが、今日のシェアハウス管理事業というわけだ。無論、この例に限ったことではない。同社の厚みある事業の数々は生の声を丹念に拾い上げてきた産物なのである。
 なお、同社は2018年5月に社名変更を予定している。これには“暮らすこと”“建てること”という、同社が大切にしてきた二つの事業を融合させることで、第三の価値を生み出していきたいとの思いが込められている。まだまだ建築業界に新しい風を送り込んでくれることになりそうだ。

body1-1.jpg事業の多角化に果敢にチャレンジしてきた西村剛敏社長。リフォーム事業なども業界に先駆けてスタートさせた

社員が“ワクワク”しながら働ける制度を用意

 人材育成に注力してきた点も、今日の同社の発展の基盤を作り上げた。その特色は、人間力とプロ力の両方の醸成に力を入れることに尽きる。
 「いくら建築のプロとしての技術を鍛えても、人間としての力なしには良い人材には成り得ません。樹木の根が人間力とすれば、プロ力は枝葉の部分。セミナーや研修、社員同士のコミュニケーションの活性化などを通して、人間力を高めることに注力しています」
 無論、資格取得者に助成金を出したり、悩みを相談できるメンターを配置したりといったプロとしての飛躍を支える制度も導入している。これらの制度は「Mハッピープログラム」というプロジェクトの一環として組み込まれている。このプログラム、社員が幸せであれば、働くための意欲が湧いてくるとの考えのもと、働きやすい、“ワクワク”する職場作りのための様々な制度が網羅されている。例えば、禁煙したい社員への助成金の支給、会社所有のトレーニングジムを365日開放、自転車通勤手当などは代表的なところだろう。どんなことでも社員同士で祝い合う「祝ってチョーDAY」、西村社長が恋愛中の社員にスペシャルディナーをプレゼントする「恋愛どんどんしようプログラム」といったユニークな試みも展開。社員の意見を反映しながら、そのメニューは目下のところ拡大中だ。
 西村社長曰く、「Mハッピープログラム」を始めたからといって、社員の働き方に劇的な変化があったわけではない。それでも続けているのは、社員との約束を果たすためだと笑みを浮かべる。
 「会社として社員を大切にすると公言している以上、発言と行動が一致しなくてはなりません。こうした制度を作り、なおかつウェブサイトを通して世に公表することで、私は社員との約束を果たしているつもりです」
 会社と社員の信頼関係作りに、「Mハッピープログラム」は何よりも貢献を果たしているのである。

body2-1.jpg本社1階は、『来店型・提案型』のリフォームショップ

良いところも悪いところも明らかにする採用活動を展開

  6~7年ほど前からは新卒採用に取り組むようになり、毎年、継続して採用しているという。30名規模の小さな会社で新卒を採るのは決して簡単なことではないが、社内でゼロから人材を育て上げれば、将来、会社としての可能性が大きく広がっていくとの思いから、手を緩めずに採用をし続けている。
 採用責任者である課長は、かつて700人規模の会社で新卒採用を手掛けてきた経験を買われて入社した。同社ではそれまでの経験に加え、小規模企業ならではの取組が功を奏した結果だと話す。実際、建築系の人材は引く手あまたという状況の中で、2017年度は3名の新卒者を採用することに成功したという。
 「知名度があるわけではありませんから、まずは私たちの温かみのある企業風土を知ってもらおうと、学生一人ひとりとしっかりと接していくことを心掛けました。じっくりゆっくり学生と向かい合うことができたからこそ、良い結果に繋がったと思います」
 2017年度の場合は全社的な協力を得られたのも結果を後押しした。課長は学生たちを自社の建築現場に案内して、綺麗に見える点も、そうではない点もすべて明らかにしていった。また、採用のパンフレットなどは社員たちが全て手作りした。決して派手ではないが、会社の個性やアットホームさが如実に伝わる一冊が仕上がった。会社にリアルな姿を率直に伝える努力が実を結んだのだろう。
 社名変更などを受けて、今後、同社は企業としてさらなる発展を目指していくことになるだろう。その中では、新しく加わる人材の成長は必要不可欠な要素となる。
 「会社全体の雰囲気がさらに前向きになれば、より発展していけると思っています。現時点での資格の有無や知識、スキルなどは問いません。前向きさを前面に出して、周囲を引っ張っていく人材に出会いたいですね」と、課長は次なる若い力に期待を寄せている。

body3-1.jpg採用の責任者である課長は、シェアハウスの運営なども手掛けるなど、マルチに活躍中。ちなみに自社のシェアハウスは、若手社員なら格安で入居可能

女性施工管理者として、最前線で仕事に挑む

 2017年入社の建築部の一人は、専門学校で建築設計を学んできたという。特にインテリアに興味があったことから、就職活動では内装の改修を重点的に手掛けるリフォーム事業を有する企業を志望した。大手も含め複数の内定をもらったそうだが、明成建設工業を選んだ。それにはいくつかの理由がある。
 「当社の場合、素晴らしい技術を有しているのがホームページを見ていて伝わってきましたし、出会う社員の皆さんの人柄の良さにもひかれるものがありました。何よりもぐっときたのは採用担当者の話。多角的に技術を身に付けられる可能性が広がることがよく理解できて、ここで頑張りたいと思うようになりました」
 リフォームの設計者を志望していたものの、自分の奥行きを広げていきたいからと施工管理者を志望。1年目の6月から東京都内の7階建てマンションの工事現場に配属され、2人の先輩とともに円滑な現場運営に取り組んでいる。最初は書類の整理などの簡単な仕事からスタートしたが、ほどなくして材料や工程の写真撮影、CADでの図面修正、そして、設計図上の線などを実寸サイズに落とし込む“墨出し”といった専門性の高い作業に携わっていった。
「墨出しを万が一にでも間違えてしまったら、図面とは違う部屋ができてしまいますから、責任重大な仕事に携わっていることになります。最初は分からないことも多く、先輩方に頼ってばかりでしたが、次第に一人で完結させることができるようになりました。自分で墨出しした部分が完成したときは本当に嬉しかったですね。一部分ができただけでこれだけ嬉しいのですから、きっと建物全体が竣工を迎えたときは、泣いてしまうほど感動してしまうかもしれません」
 若手社員のさらなる成長が楽しみなところだ。

body4-1.jpg社長や上司との距離も近く、気軽に相談に乗ってくれる環境

編集部メモ

男女を分け隔てなく登用していく


 90年以上の歴史を紡いできた明成建設工業では、企業目的に「MEISEIクオリティの提供を通じてお客様と社員相互の幸せを実現し、永続的に社会に貢献する」の一文を掲げている。ここでいうMEISEIクオリティは「MQ5」という五つのキーワードに細分化される。すなわち、人、経営、サービス、所品、環境、それぞれの品質を指す。最上位に人の品質を置いているのは、人材が成長してこそ、初めて企業が成り立つと考えているからだという。同じ考えを共有している社員がそろっているからこそ、同社の社員たちはいずれの立場であっても能動的に行動し、自己研鑽に励み続けているのである。
 女性が多い組織でもあり、社員の4割以上を女性が占める。2017年度採用の3名の新卒も女性だ。だが、意識して女性を採用したわけではない。男女を問わず、優れた人材を募るという方針を打ち立てているだけであって、たまたま女性が多くなっただけのことだという。性別や年齢を問わず、誰もがフラットにチャンスをつかめるのが、同社の何よりのセールスポイントといえよう。

edit-1.jpg2017年度の新卒採用では3名の女性が一気に入社。業界ではまだまだ少数派の女性の施工管理技士なども積極的に育てていく考えだ