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中央・城北地区 株式会社mihaku

株式会社mihaku 近代経営を武器に日本料理業界を働きがいのある職場に

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近代経営を武器に日本料理業界を働きがいのある職場に

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近代経営を武器に日本料理業界を働きがいのある職場に

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日本料理の革命ストーリー
近代経営を武器に日本料理業界を働きがいのある職場に

 和服姿の女将が、「うちのお店」ではなく、「うちの会社」という。近代経営を持ち込んで、日本料理業界に革新をもたらそうとする企業の姿を追った。

世界文化遺産登録の陰で

 落ち着いた空間で心地よいもてなしを受けながら、旬の味覚に舌鼓を打つ。長く受け継がれてきた和食の粋は、世界文化遺産にも登録された日本の誇れる文化だ。だが、担い手不足から絶滅の危機に直面していることも事実。厳しい徒弟制度や不安定な雇用、夜中心の長時間になりがちな勤務時間、そして飲食業に向けられる世間の目も手伝って、積極的にこの業界を目指そうという若者は少ない。
 そこに現代的な経営ノウハウをつぎ込み、伝統的な食文化に革新をもたらそうとしているのがmihakuだ。
 2003年の設立以来、毎年1店舗強のペースで新規出店を続け、現在、京都烏丸、銀座、赤坂、西麻布、北京などに本格日本料理店12店舗を展開する。看板メニューの「出汁しゃぶ」は、秘伝のつゆで食すオリジナルのしゃぶしゃぶで、都心の舌の肥えた食通たちをも唸らせている。
 社長の中嶋一生氏は、中学時代から経営者になることを夢見ていたという。滋賀県の実家は寿司店。子どもの頃から帳場を覗いては自分ならこう工夫するなと日々考えていた。大学を卒業すると大阪の老舗料亭に修行に入ったが、そこで厳しい現実を目の当たりにする。「調理場ではプライドさえボロボロになる厳しい修行に、次々と同僚が辞めていき、仲居も過剰なホスピタリティを求める風潮に辟易していた」と語る。そんな中でも少しずつ腕をあげ、もっと日本料理を追求したいと考えていた矢先、勤め先が閉店した。
 「日本料理は本当に素晴らしい。これをもっと広めていきたい。しかし、その担い手はどんどん減っている。どうすればよいかと考えたとき、自ら社長となって、業界の体制を自分でなんとかしようという思いを止める理由が見つかりませんでした」
 こうして24歳で会社を設立し、京都に一号店をオープンした。

body1-1.jpg日本料理業界に新風を吹き込みたいと意気込む中嶋一生社長

働き方改革を日本料理業界に持ち込む

 経営の基本に据えたのは、「すべての人に心からのおもてなし」という理念。近江商人に伝わる「三方よし」という言葉から生まれたもので、お客様はもちろん社員や業界関係者など関わるすべての人が喜べる事業となることを目指した。
 料理に力を入れる一方、働き方でまず手につけたのは労働時間の短縮だ。創業時から週休二日を徹底。営業時間も昼の部、夜の部合計で2時間短縮した。
 「もちろん、休みが多いからといって遊び疲れてもらっては困ります。しっかり休んで、いいパフォーマンスでおもてなしをしてほしいと願ってのことです」
 そのおもてなしも女将から仲居へ暗黙のうちに伝えられていた手順を、徹底的に研究して、マニュアル化した。
 「お客様がお飲み物をこぼされたときは、二人体制で一人が布巾を持って走り、もう一人が代わりのお飲み物を用意するといった具合です。拭き終えたと同時に新しい飲み物が届けば、お客様は感動してくださる。おもてなしというと心の持ち方ばかりが強調されますが、サービスとして提供する以上、90%くらいまでは共有できると自信がつきましたね」
 仲居として入社すると、A4用紙で高さ20センチを超えるマニュアルを覚えることがまず最初の仕事になる。厳しいようだが怒られながら覚えるよりもはるかに成長は早い。

body2-1.jpg時間を見つけてはマニュアルの更新に取り組む

「日本料理の世界を残してくれ」

 「自分が成長できている、自立できたということが実感できる。それがなによりの働きがいです」とは中堅社員の菊田浩子さん。調理専門学校を卒業後カフェに就職したが、接客に興味を覚え、24歳で転職。現在は、瓢喜 香水亭京橋店で女将を務める傍ら、業務効率化のための社内体制作りにも携わっている。
 「入社4年で女将としてお店を任せていただいたり、業務改革も担当させてもらえる。働いた分だけお給料にも還元されますし、会社に貢献できているという実感があるのは、うれしいですね。結婚・出産も考えています。女将の仕事は、家庭と両立できるのだということを後輩にも見せたい。私自身が働き方改革のモデルになりたいです」
 新入社員の佐藤沙耶さんは、六本木本店の勤務。大学卒業後、すべての方におもてなしという理念に惹かれ、就職した。
 「私自身、まだ発展途上ですが、お客様に『ありがとう、おいしかったよ』と言われるのは、本当にうれしいですね。信頼されるスタッフになって、後輩ができたときもよい先輩として目指してもらえる存在になりたいです」と目標を語る。
 中嶋社長には忘れられない言葉がある。
 「修行時代にお世話になった親方が、お亡くなりなるとき、こうおっしゃったんです。『日本料理の世界を残してほしい』。僕の思いもまったく同じです。働き手がリスペクトされて、若い人がどんどん目指す業界になるために、休んでいる暇はありません」

body3-1.jpgお客様の声や表情が成長につながると佐藤沙耶さん

編集部メモ

日本料理界の未来を占う挑戦

 中嶋社長は、遠くない将来、証券市場に上場を果たそうという計画を立て、ことあるたびに社員に呼びかけている。日本料理店で上を目指そうとなると、料理長の上はもう独立するしかない。しかし、当然大きなリスクがあって、そこに踏みきれる人は少ない。成長が望めないとなれば、モチベーションも下がる。そうした負の連鎖を断ち切ることを狙っているのだ。
 「社員にキャリアアップしてもらうためには、会社の規模を大きくして、ポストを増やしていく必要があります。そのためには、成長し続けるほかありません。上場という夢をみんなで共有して、それに向かって歩んでいく。日本料理業界では異例かもしれませんが、中小企業としては珍しいことではありません。」
 そう語る中嶋社長の表情は、サバサバとしている。mihakuの挑戦は、日本料理業界の未来を占う試金石といえそうだ。

edit-1.jpg「成長を実感できる職場です」と話す菊田浩子さんedit-2.jpg全社の社員が集まっての経営計画発表会。日本料理店らしからぬ光景だ
  • 社名:株式会社mihaku
  • 設立年・創業年:設立年 2003年
  • 資本金:3,000万円
  • 代表者名:代表取締役社長 中嶋 一生
  • 従業員数:60名(内、女性従業員数33名)
  • 所在地:104-0061 東京都中央区銀座7-16-14 銀座イーストビル8F
  • TEL:03-6228-4180
  • URL:https://kyujin.hyoki.jp/
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください