<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

文字サイズ

多摩地区 MIRAI-LABO株式会社

MIRAI-LABO株式会社 「電気」の概念を覆す 革新的な技術を生み出し、 未来型の社会作りに貢献

MIRAI-LABO株式会社

「電気」の概念を覆す 革新的な技術を生み出し、 未来型の社会作りに貢献

mirai-lab
東京カイシャハッケン伝!企業
多摩地区

MIRAI-LABO株式会社

「電気」の概念を覆す 革新的な技術を生み出し、 未来型の社会作りに貢献

main_mirai-lab

未来を開く製品開発ストーリー
「電気」の概念を覆す 革新的な技術を生み出し、 未来型の社会作りに貢献

MIRAI-LABOの革新的なLED技術は、省エネや防災・災害対応に広く利用され、世界からも注目されている。
わずか13名の会社でありながら、特許技術を生かして全製品を自社開発。その視野には100年先も捉えられていた。

LEDの効率を飛躍的に高めるリフレクター技術を開発

 MIRAI-LABOは「水・土・光・風」をテーマに、環境問題に取り組む「未来環境開発研究所」として2006年に起業。その存在を世に知らしめたのが、バイオテクノロジーの応用によるホタル生息地の再生であった。この成功に自治体などから引き合いが相次ぎ、全国130か所に生息地を作っていった。いずれも多くの人が訪れる人気スポットとなったが、そこで次なる問題が浮上した。暗闇の中で大勢の人にホタル観賞を楽しんでもらうには、街路灯を設置して安全性を確保する必要に迫られたのである。ここにある矛盾が立ちはだかった。虫には紫外線を放つ蛍光灯や電球の光に勢いよく飛び込むという習性があり、その生息が危ぶまれることになってしまうのだ。
 それを解決すべく、同社では紫外線を放たないLEDの街路灯の開発に乗り出した。当時、LED照明は開発黎明期にあり、メーカー各社はレンズを通した光の増幅技術を研究していた。しかし、レンズでは光が一点に集中し、広範囲に広がりきらない。その課題を打開するヒントは思いもよらぬところにあった。平塚利男社長が目を付けたのは日本古来のろうそくにあったと明かす。
 「昔はろうそく1本の明かりで部屋全体を照らしていました。なぜ限られた光量で十分な明かりを賄えていたのかというと、かつての住居を覆っていたしっくいの白壁が光を効果的に反射・拡散していたからという点に気付いたのです。そこで私たちは、壁の役割を果たす特殊なリフレクター(反射板)を開発し、光を『点』ではなく『面』にして広範囲を照らし、しかも色彩の再現性に優れたLED照明の開発に成功したのです」

body1-1.jpg「100年後の未来を考えて仕事ができるのは幸せですよ」と平塚利男社長

全員が“開発者”として社会のニーズを具現化

  同社はこのリフレクターを「MiLED(ミレッド)」と命名し、特許を取得するとLED製品の開発に乗り出したのであった。
 「当社の技術を採用したLED照明が大手コンビニエンスストアチェーンの全店舗に導入されました。当時、照明器具のLED化が進むのは2020年といわれていましたが、その普及を一気に前倒ししたと言っても過言ではないという自負があります」
 そう語る平塚社長が次に挑んだのが、自然エネルギーによる独立電源装置の開発である。2008年、環境省からの受託プロジェクトとして、標高2,200メートルの山小屋にマイクロ風車による独立電源システムの設置に挑み、これに成功。さらに大手設備会社とソーラー発電式の独立電源街路灯を共同開発し、全国の公園や無電力地域の街路灯に明かりをともしていった。
 そして2011年、東日本大震災が発生し、社会全体が電力問題を突き付けられた。当時、被災地や避難所の照明にはガソリン式投光器が使われたが、重量がかさむガソリン式は運搬が困難で、騒音や排ガスも被災者を悩ませた。電力会社の要請を受けた同社は、無音で排ガスも発生させない充電式特殊LED投光器「X-teraso(エックステラソー)」を開発。重さ5キロという軽量化によって、夜間救助に当たる救助隊が背負って光を確保できるポータブル機能も付与し、やがて全国の災害現場や工事現場、警察、消防、自治体などから注文が殺到することになった。
 「私たちの製品開発の芽は、『これがあったら役に立つ』という現場のニーズに集約されています。営業スタッフがお客様のニーズを吸い上げ、商品企画に繋げ、開発部門が技術を形にする。つまり、当社では社員全員が開発者。毎朝のミーティングでの情報交換をはじめ、随時アイデアを出し合い、自分たちの技術が100年先の未来を開くんだという意識を全員で共有し、既存にとらわれない製品を生み出しているんです」

body2-1.jpg4本のLED照明が自在に稼働し、15メートル先も明るく照らす「X-teraso」

貢献の大きさを胸に、現場の社員たちが躍動

 平塚社長の言葉に、営業本部の平塚雷太本部長と町田彩果さんも深くうなずく。平塚本部長は営業として全国を飛び回りながら、顧客ニーズと開発を繋ぐ商品企画の役割も担っている。新製品であるリフィル(詰め替え)バッテリー式発電機「G-CROSS(ジークロス)」の開発において、顧客ニーズを注ぎ込んだという。
 「ガソリン式発電機には給油時に爆発事故を招く恐れがあり、CO2排出、騒音問題、重量による運搬性の低さなどの課題もありました。それらを解決するべく、無音で電力を止めることなくバッテリーの交換を可能とする『G-CROSS』の開発に挑んだのです。開発メンバーと仕様を検討すること約2年、使いやすさや持ち運びやすさにとことんこだわり、人力で一般車両に積み込めるほどの軽量化に成功。まさに全員のアイデアと技術を集めた結晶です。同製品は多摩ブルー賞技術・製品部門の優秀賞にも選出され、自治体などから順調に注文を頂いています」
 町田さんは東京都の各市区の自治体に向けて、防災・災害対応時のための備蓄品や花火大会や祭りなどの照明として自社製品の導入を提案している。「X-teraso」を提案する際には、自ら軽々と背負い、製品の魅力をプレゼンしているという。
 「災害時の帰宅困難者の誘導訓練や消防の操法訓練などに『X-teraso』を活用していただくなど、導入の輪が着実に広がっています。地域の花火大会の照明に使っていただいた際には、来場されたほかの自治体の方の目に留まり、『防災の備蓄品として検討したい』とお声を掛けていただけたこともあるんですよ」
 防災や環境の課題解決に貢献できることに、大きなやりがいを感じている町田さん。社長や本部長が新婚の町田さんの声に耳を傾け、今後のライフステージに向けて産休・育休や在宅勤務などの制度充実に取り組んでくれていることにも心強さを感じているという。学生時代に学んだスペイン語を生かし、ゆくゆくは海外にも自社のLED技術、蓄電技術を広げていきたいと、その抱負を語ってくれた。

body3-1.jpg環境への取組みと世界進出のビジョンに共鳴し、入社を決めたという町田彩果さん
 

編集部メモ

オーガニック野菜の工場生産事業に着手


 MIRAI-LABOでは海外にも製品を供給し、世界の防災や災害対応、省エネの役に立ちたいというビジョンを描いている。さらに、LED照明、ソーラー発電・蓄電、そしてホタル再生事業で培ったバイオテクノロジーの技術を結集させ、廃校となった幼稚園や学校の施設を活用したオーガニック野菜の工場生産事業にも乗り出すという。これによって、食糧危機への備えや過疎化地域の振興に繋げていく構えだ。同社の未来を開く取組はますます広がっていくに違いない。

edit-1.jpg幅広い年代の社員が経験と発想を結集させ、製品開発に挑むMIRAI-LABOの皆さん