<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

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城東地区 株式会社日本マイクロリンク

株式会社日本マイクロリンク 様々な人材育成のしくみを導入して社員のスキル向上と人間形成を支援する

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城東地区

株式会社日本マイクロリンク

様々な人材育成のしくみを導入して社員のスキル向上と人間形成を支援する

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社員の技術取得ストーリー
様々な人材育成のしくみを導入して社員のスキル向上と人間形成を支援する

 インターネットが普及する以前から家電や産業機器などを作動する組込ソフトウェアなどを手がけてきた株式会社日本マイクロリンク。IT産業の歴史と進化を目の当たりにしてきた同社がもっとも力を注ぐのが社員の技術力の向上である。同社の社員の技術力向上の支援のあり方を探った。

技術集団だからこそ何よりも人材育成が大切

 KDDの子会社でエンジニアとして活躍していた藤森社長が独立したのは1986年のことだった。当時は、インターネットはおろかパソコンもそう普及していない時代。ソフトウェア開発といっても現在とは大きく異なる。創業当初は、在籍していた会社からテレックス関連のソフトウェア開発を受注して経営を賄い、年次を重ねるごとにプリンターやビデオカメラの組込ソフトウェアと手を広げていき、会社の経営を軌道に乗せた。
 ところが、1990年代当初のバブル経済崩壊が日本マイクロリンクを窮地に追い込む。企業規模を縮小し、新しい仕事の確保に奔走する。そして出会ったのが鉄道運行制御システムの開発だった。この仕事は現在も同社の主要業務として屋台骨を支えているといい、文字通り同社の救世主となった案件。これで持ち直しを図り、はしご車の制御装置のソフトウェアなど手を広げる一方で、インターネットの普及が同社を後押しし、ネット通販の在庫管理システムなどWeb系のソフトウェア開発など、新規の領域に踏み込んでいった。
 「とにかくIT業界の技術は日進月歩。つねに新しい知識や技術を吸収していかないと事業存続は望めません。そんな変化の激しい業界の中で会社を安定経営するためには社員のスキル向上は不可欠といえるでしょう」
 と語るのは、変化の激しいIT業界で会社を約30年にわたり切り盛りしてきた藤森社長。新しい専門知識やプロジェクトを遂行していく上で問われる人間形成に力を入れているという。

body1-1.jpg技術進化が早いIT業界だから人材育成が大切という藤森文男社長

社員の人間形成から新技術習得まで支援

 まず人間形成の研修として受講できるのが、一般企業を対象に社員研修サービスを提供しているトーマツイノベーションの研修。この研修はグループワークが主体で、様々なテーマを与えられてグループ内で意見交換をしながら課題解決の糸口を探していくというものだという。
 「SEはプロジェクトをマネジメントする能力が求められます。お客様のニーズや課題を把握して、チームを取りまとめながら遂行していかなければなりません。そんなSEの仕事を考慮すると、意見を出し合い、それをチームでまとめていくというグループワーク研修は有効だと考えて社員に参加させています」(藤森氏)
 同社がこの研修に初めて参加したのは約4年前のこと。1年に3回の研修だが、その効果は覿面で、それまで挨拶の声が小さかったり、自分の意見をあまり言うことのなかった社員も驚くほど活発になったなど、参加した多くの社員に変化が現れたという。
 さらに、東京都が中小企業支援の一環で行っている処遇改善サポート事業による支援を受けている。その中の資格取得支援により、日本オラクルのデータベース認定試験の合格者を出すなどの成果を上げている。
 また、外部講師を招いての社内研修も数多く開催。中でも人気なのが、今、世間を席巻するiPhoneやAndroidといったタブレット端末のアプリ開発に必要な技術を学ぶ機会も設けている。しかも同研修で学んだ知識を活かして自社パッケージのアプリ開発も行った。それが「メールdeレポート」という日報管理システムである。
 「社員には新しい知識を身につけてもらう機会にもなるし、そこで学んだことを活かしながら積極的に自社製品の開発もしていきたいと考えています」
 藤森社長がそう語るのには、受託開発を主業務とするIT企業の悩みがある。受託業務は社内で行うこともあるが、客先に出向いてシステム開発のメンバーとして働くケースも多い。その際に、引き合いがあるのは比較的年齢の若いSE。キャリアを重ねるごとに活躍の場が失われるというジレンマがある。
 そうした環境を打破するためにも自社パッケージのアプリ開発は、年齢に関係なく取り組める事業であると同時に、事業拡大を図るチャンスにもつながる。
 社員のスキル向上とともに今後の事業展開を見越した研修でもあるのだ。

body2-1.jpg職場では社員同士が相談し合うなどフランクな雰囲気に包まれている

旺盛な向上心で新しい技術を習得

 社員のスキル向上に取り組む日本マイクロリンクだが、若手社員の中でメキメキと頭角を表わしているのが2013年入社の渡邉裕樹さんだ。渡邉さんは日本オラクルのデータベースの有資格者でもある。子どもの頃からゲーム好きで独学でプログラミングを勉強したという経歴の持ち主。日本マイクロリンクには社員の意見を取り入れてくれるオープンな社風に惹かれて入社。そんな社風の中でスキルを向上させるとともにアイデアあふれるSEとして活躍している。実は先述した日報管理ソフトも発案したのは渡邉さんだという。
 「当社では毎年1回、便利なソフトのアイデアを社員が出し合うコンテストを開催しています。日報管理ソフトはそこで発表したものです。こうした社員の意見を吸い上げながら、いろいろなことにチャレンジできる社風ですから刺激に溢れていますよ」
 そう語る渡邉さんは、向上心あふれるSEでもある。オラクルのデータベースの資格を取得したのも、システム開発でデータベースの構築に関わる際に、「どうせ携わるならエキスパートになりたい」という向上心からチャレンジしたもの。そこで利用したのが、前述の東京都の処遇改善サポート事業。支援メニューの1つである資格取得支援を活用し、オラクルのデータベースの資格試験に挑み見事に合格した。
 「とはいっても取得したのはオラクルブロンズ。本当のエキスパートになるには、もっとレベルの高いシルバー、プラチナの資格が必要です。今後は上位資格を目指してさらに勉強に励みたいですね」
 と謙虚に話す渡邉さんだが、彼が同資格を取得したおかげで日本マイクロリンクにはデータベース構築の依頼も増えたという。まさにSEのスキル向上が事業の拡大に結び付いた好例といえるだろう。

body3-1.jpgつねに新しい知識や技術の習得に取り組む渡邉裕樹さん

文系出身者でもSEとして活躍できる環境

 日本マイクロリンクは文系出身のSEが活躍する企業でもある。まだ少数派ながら女性SEも活躍している。そんな女性SEの一人が増田友貴さん。2014年入社の増田さんは、SEとしての基本知識がまったくなかったが、生活を支える「ものづくり」という情報システムの社会的貢献度に魅力を感じて入社した。
 「プログラミングは入社後に覚えました。基本のC言語からC#などを上司がマンツーマンで教えてくださったので3か月である程度のプログラミングは書けるようになりました」
 日本マイクロリンクは先輩が後輩の技術指導をするのが伝統的な研修スタイル。社員も多くはないため、手厚い指導が受けられるというメリットがある。しかもテキスト類も豊富に取り揃えられるなど、新人社員が学ぶ環境が整えられている。
 3か月の研修終了後には、受託開発のひとつである列車制御システムの開発に携わり、列車の安全運行のためのシステム構築に当たっている。「人命にも関わるシステムなので、つねに緊張感をもって仕事に臨んでいる」という増田さんだが、最近はプログラミングの作成だけでなく、顧客対応を任されることも増えているという。
 そんな彼女が次に目指すのは、ネット系のJavaScriptの習得やAndroidやiPhoneのアプリ開発に携われるようになるための技術の習得だ。これらの技術をマスターすれば、さらに活躍できる分野が広がることは間違いない。入社2年目ながらSEとして確実に成長を遂げる増田さんの表情は明るい。

body4-1.jpg入社2年目ながら顧客との打ち合わせなども任される増田友貴さん

編集部からのメッセージ

自社パッケージ商品で新たな事業開拓に挑む

 社員の人材育成の一環として、AndroidやiPhoneのアプリ開発に不可欠な知識や技術を習得した結果、生まれたのが自社パッケージのスマホ用アプリである。すでに販売されているのが「グラフdeレポート」と「メールdeレポート」という2商品だ。
 「グラフdeレポート」は、室内の温度データや電力データなどをWeb画面でグラフ表示できるアプリである。いわゆる温度や電力の「見える化」を図った商品で、オフィスやマイホームの室内の温度管理、電力消費量の管理に利用できるものだ。
 もう一方の「メールdeレポート」は、スマホなどから送られてくる社員の日報データを電子メールで受信してデータベースに保存。このデータを解析して日報の管理をはじめ、作業者別月報の集計、業務の件名別月報集計といったものを画面に表示できる。外出が多い営業職の業務管理や同社のように顧客先に出向いて仕事をすることが多いIT企業では重宝されるに違いない。
 日本マイクロリンクではこうした自社パッケージのソフトを今後も開発していく予定で、事業の柱になる販路の開拓にも余念がない。

  • 社名:株式会社日本マイクロリンク
  • 設立年・創業年:設立年 1986年
  • 資本金:2,000万円
  • 代表者名:代表取締役 藤森文男
  • 従業員数:30名(内、女性従業員数3名)
  • 所在地:110-0015 東京都台東区東上野1-18-6タカラ第三ビル4階
  • TEL:03-3837-5951
  • URL:http://www.mlink.co.jp
  • 採用情報:ホームページよりお問い合わせください