<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

文字サイズ

中央・城北地区 株式会社マルヨシ

株式会社マルヨシ 女性が伸びやかに活躍し、キッズやママの目線に立ったバッグづくりを推進

株式会社マルヨシ

女性が伸びやかに活躍し、キッズやママの目線に立ったバッグづくりを推進

mry
東京カイシャハッケン伝!企業
中央・城北地区

株式会社マルヨシ

女性が伸びやかに活躍し、キッズやママの目線に立ったバッグづくりを推進

main_mry

女性社員のモノづくりストーリー
女性が伸びやかに活躍し、キッズやママの目線に立ったバッグづくりを推進

 バッグメーカーとして60年の歴史を刻む株式会社マルヨシ。キャラクターバッグやランドセル、スクールバッグ、マザーバッグと、同社のバッグづくりは女性の活躍抜きには語れない。彼女たちのものづくりへの情熱とともに、その活躍を後押しする環境について掘り下げていく。

1年休業してのカナダ留学でデザイン力をグレードアップ

 マルヨシでは、本社に工房を設け、企画を起こすところから始め、デザイン、サンプル作成、製品化、そして品質検査までの全工程を自社内で完結する体制を敷く。デザイナーの豊田久美さんは、年3回の展示会へ出展するキッズ向けキャラクターバッグのデザインに日々取り組んでいる。
「ショルダーバッグ、デイパック、さらにはトートバッグに巾着と、キッズものの形状は大人向けに負けず劣らず多種多様。対象年齢に応じたサイズや持ち手の長さを検討することはもちろん、材質やカラーバリエーションにはトレンドも取り入れるなど、キッズ向けのバッグづくりはとても奥が深いです」
 そうした情報はセミナーや展示会等でのキャッチアップはもちろん、TV新聞、雑誌、ネット情報もマメにチェック。また、街中を歩いている時や、友人とのおしゃべりを楽しんでいるときでもデザインへと頭が向いている時があるという。
 取得した情報は社内外の関係者たちの間で揉んでいく。意見を交わすのはプランナーやデザイナーだけに限らない。いくらデザイニッシュでトレンドをとらえたものでも、コストや量産効率などが見合わなければ、まさに絵に描いた餅。生産ラインのスタッフや営業、業務に携わるスタッフの意見にも耳を傾けることも必要になる。いいものづくりには多角的な視点での試行錯誤が不可欠というわけだ。
 そうした多くのスタッフの間で揉まれた企画からオリジナル製品が誕生することもあれば、人気キャラクター×人気アーティストとのコラボ製品の開発に至ることもある。そうした過程の中でセンスとデザイン力にさらなる磨きがかかるのだと豊田さんは目を輝かす。
「本社内に工房があるという環境は、モノづくりの現場が間近にあるということ。サンプル作成の際にもフェイスtoフェイスで細部までリクエストでき、修正の対応も迅速かつ的確に進みます。こうした態勢は本当に心強く、新しいアイデアもスムーズにデザイン化していけますから、デザイナーにとってこれ以上の環境はなかなかないんじゃないでしょうか」
 と、豊田さんは満足げに語る。
 感性や発想力は仕事場以外でも培われるものという認識は全社的なもので、同社はそのバックアップも惜しまない。例えば、業務とは直接関係ないように思える習い事にも、スキルアップ支援制度として会社が受講費の半額を負担。豊田さんは仕事帰りに陶芸教室に通っている。
「ゼロから発想を広げて創造するという面では、デザインも陶芸も広い意味でリンクしています。ろくろに向かうと集中力が鍛えられますし、息抜きとしてもすごくいい時間を過ごせます」
 と、仕事とオフタイムの融合を歓迎している様子。
 実は豊田さん、中学生の頃から留学を夢見ていた。しかし、なかなかチャンスに恵まれずにいた。それでも海外への思いは色褪せることなく、このままではきっと後悔するという思いを募らせ、2年前に1年休業してカナダへ留学したいと丸吉裕和代表に直訴した。キャリアのあるスタッフが戦線を外れるのは企業にとっては痛い。ところが、丸吉代表はあっさり豊田さんの強い申し出を受け入れてくれたという。
「成長して戻ってきなさいという言葉を添えて送り出してくれました。海外では自己主張をしないと何も始まりませんから、どんどん前に出て行くというメンタル面もすいぶん鍛えられました」
 と留学時代を振り返る。実際、帰国後は新商品のプレゼンにも物怖じせず挑めるようになったと喜び、また、いろんな国の人々との触れ合いを通じて様々な文化やファッションも吸収でき、今ニーズが高まっている海外からの旅行者向け商品のデザインにもその経験が活かされているという。

body1-1.jpgショップや展示会に足を運んでトレンドを探るという豊田久美さん

切迫早産に直面した飯田さん。会社の支えで乗り切れた

 経理業務を担当する飯田理恵子さんは、現在時短勤務で働く1児のママだ。社内恋愛を実らせて結婚し、お子さんを授かったが、切迫早産に見舞われ早期の入院を余儀なくされた。急な事態で仕事の引き継ぎもままならない状態。しかし、周りの仲間に安心して後を託し、出産に専念できたと飯田さんは振り返る。
「予定よりも3カ月も前倒しで産休・育休に入ることになりましたが、臨機応変に対応していただきました。早産だったので子どもの発育が遅いというのもあったのですが、焦って復職することもなかったので、じっくり子育てに取り組めました。結局、2年もの休暇を取らせていただきました。当社には産休・育休を経て復職した女性社員が多く、2度の産休・育休を経験した先輩もいます。出産・育児に対する周りの理解が深く、復帰後の今も安心して育児に励んでいます」
 マルヨシでは、結婚、出産、入園、入学の節目に祝い金を支給し、経済的な支援も行っている。飯田さんも支援制度をめいっぱい活用し、夫婦揃って定年まで働くつもりと顔をほころばせる。
 復職後の飯田さんの仕事はバッグ素材等の仕入れ伝票の確認・処理だが、それらは通り一遍の作業ではなくなっているときっぱり。やはり、出産、育児、そして主婦という多角的な見地が、伝票に記された素材への好奇心をくすぐり、バッグづくりの一翼を担っている意識、意欲が向上したという。
「当社では今、マザーバッグや母子手帳ケースなど、マザーズグッズの企画・開発にも注力しています。そうした商品づくりの現場に、ママの実感を込めたアイデアを発信していきたいと思っています」
 キッズ・ママ向け商品を主力とする同社において、飯田さんのようなパパママ社員たちの“親目線”によるアイデア提案は、マーケットニーズに叶った商品づくりにも大きな強みになっている。まさにライフイベントの支援が、事業にフィードバックされるという好循環が実現しているというわけだ。

body2-1.jpg伝票処理の際に素材の見本帳も確認する飯田理恵子さん

生産拠点をグローバルに展開。大橋さんは海外生産管理で活躍

 マルヨシは中国、ベトナムの協力工場と提携を結び、海外生産に積極的に取り組んでいる。国際事業部の大橋絵美さんは、ベトナム生産拠点の生産管理全般を係長として指揮をとる。毎月1回はベトナム現地に赴き、工程や品質の管理体制に目を光らせる。
「文化の異なるベトナム人には、日本の常識や固定概念は通用しません。例えば、デイパックに弁当箱を収納できるポケットをつくるにしても、きちんとした規格を指示しないとベトナムでの弁当箱の常識が日本と異なる場合、イメージと違う商品ができてしまう可能性があるんですよね。そうしたギャップを埋めることがこの仕事の難しさです」
 と苦労を吐露する一方で、価値観の相違、つまり、異文化に触れることは面白く、お互いに理解を深めあい、モノづくりのイメージを共有できたときには大きな手応えを感じると、自らの仕事の醍醐味を語る。
 ベトナムの方々と力を合わせてモノづくりに挑む大橋さんは、海外留学で身につけた国際感覚を大いに発揮して、オフタイムの現地の人々と食事を共にするなど、積極的に交流を図っているという。実は大橋さんの目線は、日本とベトナムの未来を見据えている。
「TPPの施行によって、ベトナムは急速な経済発展が見込まれています。“世界の工場”といわれた中国からベトナムへ生産拠点をシフトさせる企業も増えていきます。当社にとってもベトナムは最重要拠点となる国。今後に備え、現地とのリレーションをよりいっそう強めていくつもりです」

body3-1.jpg現地の屋台でも食事を楽しむという行動派の大橋絵美さん

入社26年目の竹村さんは、時短勤務で父の介護を全うした

 マルヨシはバッグの製造に加え、7年前から自社製品を問わず傷んだバッグの修理も手がけている。その修理事業のマネジメントを担っているのが、入社26年目の竹村房美さんだ。
 竹村さんは7年前、父親の介護という大きな試練に直面。在宅介護を希望する父親の意思を尊重し、介護と仕事を両立する生活に踏み切った。しかし、父親の様態は安定せず、介護に追われて定時に出勤することがままならない日々を余儀なくされた。先が見通せない状況に心労が蓄積し、竹村さんは退職して介護に専念することを考えた。しかし、年齢を考えると再就職が難しく、将来への不安は募るばかり。そんな竹村さんに丸吉代表がある提案を持ちかけた。
「介護のための時短勤務は前例がなかったのに、丸吉代表は私と父親のことを親身に考えてくれて、デイサービスの送迎に立ち会えるよう、10:00~17:00の勤務で頑張ってみないかと無期限の時短勤務を提案してくださったのです。その気持ちが本当に嬉しかったです」
 それから2年間、時短勤務を続けながら、父親の最期を見届けることができた。そして、フルタイム勤務に復帰すると、立ち上げまもない修理事業部を任されることになった。
 持ち込まれるバッグの状態は、一つとして同じものがない。金具や革などの素材も違えば、縫製の仕方も異なる。職人とともにその状況を一つひとつ見極め、オリジナルに近い部材を探し出し、丁寧に修復を重ねていく。ゼロからのモノづくりとは違ったアプローチだからこそ、見えてくることもあるという。
「様々なバッグの修理に向き合うことで、傷む箇所の傾向が見えてくるんです。そうした情報は自社製品の品質や耐久性を高めるヒントになりますから、自社の商品企画や生産現場へフィードバックしています。こうした事業部の壁を越えた連携力、もっといいモノをつくろうという一体感も、同社の強みです」

body4-1.jpg事務職時代には社内のIT化にも尽力した竹村房美さん

編集部からのメッセージ

モノづくり環境を整え、オリジナルブランドも好調

 マルヨシの東京本社工房には、バッグの企画・デザイン・製造を一貫して手がけられるよう、特殊ミシンや革漉き機、持ち手裁断機などの設備に加え、自社工場の銚子工場とオンラインで型データを共有できるCAD/CAMシステムも稼働。自社オリジナル製品だけでなく、有名ブランドやキャラクターグッズなどのOEM生産まで、幅広く受諾できるのはこの環境があってのことと誰もが口を揃える。
 もちろん、施設の充実だけでものづくりは完結しない。工房には細かなニュアンスまでカタチにする熟練した職人も多く在籍し、デザイン・品質にこだわり抜ける体制が整っている。
 ワークライフバランスの支援も実に手厚く、たとえば、スキルアップ支援制度ではダンス教室や料理教室、フィットネスジムなどに通う費用も会社が半額負担。有給休暇も半日単位で取得することが可能で、結婚・出産・育児の支援制度も充実。安心してモノづくりに励める環境がさらなる発展を醸成することを実感させるお手本のような企業といえよう。

  • 社名:株式会社マルヨシ
  • 設立年・創業年:創業年 1957年
  • 資本金:9,800万円
  • 代表者名:代表取締役社長 丸吉裕和
  • 従業員数:120名(内、女性従業員数85名)
  • 所在地:113-0022 東京都文京区千駄木3-48-5
  • TEL:03-3828-2131
  • URL:http://maruyoshi-bag.jp