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城南地区 日化設備工業株式会社

日化設備工業株式会社 確かな技術で水まわりの「安心」に応えるプロフェッショナルたち

日化設備工業株式会社

確かな技術で水まわりの「安心」に応えるプロフェッショナルたち

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城南地区

日化設備工業株式会社

確かな技術で水まわりの「安心」に応えるプロフェッショナルたち

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挑戦し続ける創業50年の歴史ストーリー
確かな技術で水まわりの「安心」に応えるプロフェッショナルたち

 「心は高く、身は低く、辛抱は宝、継続も力」。これは日化設備工業株式会社の創業者、高本篤会長の座右の銘である。1966年に創業というから50年の歴史を刻む、まさに「継続も力」を地でいく会社である。業務は主に上水・下水をはじめとした水まわり及び空調も手がけるといった生活にはなくてはならないライフライン関連。業界はオリンピックに向けての建築ブームで湧いているが、同社の好調ぶりを支えるのは時流だけではない。地道な努力と、施主や建築業者との間で養ってきた人間関係があってのことだという。人と技術に根ざした半世紀の軌跡と、日化設備工業株式会社の今、そして未来についてお話をうかがった。

浄化槽から水まわり全般への展開

 高本篤会長は長野県出身。日立製作所で営業マンとして10年の経験を積んだが、出向先の経営陣と営業現場との温度差を埋め難く、1966年に独立の道を選んだという。
 「父は根っからの営業マン。そして厳しく熱い人」と話すのは、二代目を継いだ高本裕己社長。営業を天職とする高本会長の信条は人と人との信頼関係を大事にし、できるだけ顔を見て話すということ。それは会長職についた今も変わることはないという。
 創業の地は自宅。事務所にお金をかける余裕はなかった。それでも天に授かった人当たりの良さと話題作りのうまさ、そして、柔軟さと力強さという人間力一本で日立製品のモーターなどを売った。経営に弾みをつけたのは、汲み取り式から水洗トイレに移り変わる時代の流れだった。営業の主軸を日立化成が開発した浄化槽に切り替え、販売と設置に力を傾けた。時代のさきがけであった。一般家庭からも水洗トイレ設置の問い合わせが舞い込み、配管からタイル張りまでを一貫して行い、高い利益率を上げた。浄化槽を開発した日立化成の「日」と「化」をもらって、社名を日化設備工業とした。
 まさに社運を好転させた浄化槽であったが、都内の水洗トイレは70年代半ばにほぼ普及した。高本会長はその先の需要減を見越し、新たな道を模索した。そして1973年に得たのが東京都指定給水装置工事事業者及び東京都指定排水設備事業者の看板。以来、上下水道のエキスパートとして事業を展開している。1984年には現在の本社が建つ大田区を拠点に、品川区、世田谷区をはじめとする都内から川崎市、横浜市と、幅広いエリアの工事を請け負っている。
 時流に乗りトントン拍子の会社発展にも思えるが、半世紀の歳月が常に順風満帆だったはずもない。「継続の力」を生み出すには、「辛抱」もしなければならなかった。
 上下水道の仕事は、当初は同業者からの下請けが多く利益率が低かった。これでは仕事がいくら忙しくしていても利益に繋がらない。そうした時期もぐっと辛抱。そうした苦渋を舐めたからこそ、工期の短いプレハブ住宅に着目するという発想が芽生えたというのだ。ひらめきは確信に変わった。建築業者に営業を行い、新たな活路を切り開いていった。
 現在の業務は、公共事業が3割、民間7割。民間は低層マンションやデザイン住宅などが多い。バブル期から現在までも、城南地区や川崎市などでは、土地の有効活用を考えた低層マンションなどの建築需要は多い。「大切なのは技術力への信頼」と高本社長は言う。
 高本会長が営業の人なら、二代目は技術の人だ。会長の背中を見て育った二代目には経営の真髄を見抜く嗅覚が備わっていたのだろう。会社が飛躍するには経営者として技術面に詳しくなければ駄目だと確信したと力強く話す。水まわりはいわゆるライフラインのひとつだけに些細なミスも許されない。それを社員に徹底して信用を積み重ねてきた。
 「私たちは水まわりのプロという自負を糧に事業を展開してきましたし、これからもその姿勢が揺らぐことはありません。日化に頼めば絶対に安心、それが他社との大きな差別化になります」

body1-1.jpg「大切なのは技術力への信頼」と語る高本裕己社長

何よりも大事なのは、他の業種とのコミュニケーション

 日化設備工業は全員営業。社員一人ひとりがそれぞれの顧客を担当し、見積り、受注から施工、入金までを一貫して行っている。現場をわかっている担当者がすべてを行うことで、顧客が困っていることにきめ細かな対応ができるというわけだ。それだけではない。人と人との繋がりを醸成することにもなる。施工の件で建築会社を訪ねたら、別の部署から「水まわりで困っているから相談に乗ってくれ」と言われて仕事が広がったこともあったという。水まわりなら、あらゆることに精通している社員だからこそできることだ。
 「それぞれを分業化すれば仕事は効率的になるのでしょうが、当社くらいの規模ですと、それぞれがマルチに動かなければなりません。しかし、だからこそ、水まわりの知識が立体的なものになりますし、それゆえの信頼も獲得できているんだと思います」
 高本社長の言葉にも自信がみなぎっていた。
建設現場では色々な業種の人が働いている。水まわりはそのすき間で仕事をするだけに、あらゆる業者との綿密なコミュニケーションが不可欠となる。
 「施主とのコミュニケーションはいうまでもなく、設計者や大工に電気、ガスの施工業者などとも良い関係で仕事を進めていかなければなりません」
 と現場監督も務める田中真剛副社長も強調する。建築現場では仮設の水道から工事がはじまるので、水道業者は一番長く現場にいるのだ。それだけにたくさんの業者と交流することになる。
 「現場の様子は日々変わっていきますから、日々の情報がとても大切になります。ちょっとした情報が後々の作業に大きく関わってくることもありますから、スタッフには、とにかく現場で話をするようにと指導しています。世間話でいいんですよ」
 と田中副社長。休憩時間に缶コーヒーを奢ったり奢られたり、そんなところからもコミュニケーションの輪が広がるのだという。
顧客は新規に限らない。配管のメンテナンスや、受水槽の清掃などで訪ねた現場も営業のチャンスになる。マンションの住人や管理人に「困っていることはありませんか」と一言かけることが仕事に繋がる場合もある。
 個人住宅では奥様の意見が強く反映される。とくに水まわり、キッチンや洗面所は主婦の持ち場である。この声に耳を傾けないわけにはいかない。実際に奥様方からの問い合わせも多い。
 「先日も十年前に施工したお宅のメンテナンスに出かけたら、トイレを改修したらどのくらいになるのかと相談を持ちかけられました」

body2-1.jpg「若者の就労の環境づくりが必須」 業界の悩みを語る田中真剛副社長

安定した需要があるものの、職人さんの高齢化が深刻

 田中副社長が目下のところ頭を痛めているのが職人の高齢化。就職難の時代であっても3K、5Kと敬遠する若者が少なくない。景気が持ち直した今はなおさらのことだという。
 「若者の就労のためには環境づくりが必須です。福利厚生や給与などは企業努力でなんとかできたとしても、仕事のきつさを改善していくには弊社だけの力では如何ともしがたい。関係各所の協力が欠かせません」
 と田中副社長は眉を曇らせながらも、持ち前のコミュニケーション能力を発揮して、周囲の協力を取り付け、改善を進めているという。たとえば、建物の一階の配管は職人が床下に潜って作業しなければならないが、それらは工程を変えることで改善するのだという。
 目配りは欠かせない。田中副社長のそんな意見に賛同し、現場は学びの場でもあるというのは、入社16年目の現場監督、上村進一さん。
 「今、新人と組んで現場を回っているんですが、新人は素直に感性を働かせますから、意見が新鮮だったりするんですよね。それを大事に育てたいですから、失敗しても構わない。フォローはこっちでするから思いっきり仕事にぶつかっていけと指導しています」
なんとも頼もしい先輩だ。
 上村さんは「水まわりはなくてはならない仕事。つまり、どんな時代であろうと需要はあるという安定感と将来性を買って選んだ」という。当然、ライバルはたくさん存在する。そこで仕事を獲得していくためには、確かな仕事をすることが何より。日々の現場で学び、新しいことを吸収し、自らを高めていけば、信用度は上がり、その分、やりがいのある仕事にも臨める。住宅が完成した時の喜びはもちろん、一つの作品を作り上げたというやりがいも感じるし、そうした充実感が給料にも反映されるという。
 「この仕事は奥が深いので、まだまだ自分を高められるし、夢と安定、どちらもある仕事なんです」上村さんは自分の仕事に胸をはる。

body3-1.jpg現場スタッフと打ち合わせをする上村進一現場監督

編集部からのメッセージ

社員の顔を毎日見ることが肝心


 社員数が60名を超えると、毎朝社員の顔をきちんと見ることができなくなる。それ故に会社の規模は今ぐらいが丁度よいと高本社長はいう。
「社長である以上、毎朝社員の顔を見て、一人ひとりの健康状態までわかっていないと駄目なんです。社員と社員の家族にまで責任があります」
 これは高本社長が会長から受け継いでいることの一つでもあるという。会社の規模は今のままでいいが、より多くの利益は企業として追い求めていく。それが社員の給料に反映され、幸福に繋がるからだ。
 「50年続いた重みは感じています。これからも、施主さん、建築業者など人の繋がりを大事にしながら、50年後も地元に愛される会社でいたい」
と高本社長は笑顔で語った。

edit-1.jpg高本社長を囲んで
  • 社名:日化設備工業株式会社
  • 設立年・創業年:設立年 1969年
  • 資本金:1億円
  • 代表者名:代表取締役会長 高本篤/取締役社長 高本裕己
  • 従業員数:45名(内、女性従業員7名)
  • 所在地:143-0021 東京都大田区北馬込2-1-30
  • TEL:03-3774-3341
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